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2018.10.25
硬式野球

[硬式野球]ドラフト指名直後特別企画!番記者が書く〜甲斐野央編〜

 東洋大から本日の新人選手選択指名会議で中川(法4=PL学園)・梅津(営4=仙台育英)・甲斐野(営4=東洋大姫路)・上茶谷(法4=京都学園)4選手が指名を受けた。今回はスポトウの担当記者がそれぞれの形で担当選手を描く。

   初日の今日は福岡ソフトバンクホークスからドラフト1位指名を受けた甲斐野央。

神宮球場で大学生として最後の取材を受けた

次の舞台では何が待ち構えているのか
トップチームのユニフォームを身にまとう日が待ち遠しい


 こんにちは甲斐野投手を担当してきました須之内(法2=東洋大牛久)です。今日はコラム形式で1年前の甲斐野投手を取材し始めた日を皮切りに話をできたらと思います。


   初めての取材は当時の正捕手西川(H29年度営卒=Honda鈴鹿)選手と同日に行うが順番に取材をする予定でいた。しかし、アクシデントが。なぜか西川選手の取材中、開始から10分も経たないうちに甲斐野投手が入室。「え?」と一言、思わず出てしまった。「同時はさすがにまずいですか?」と聞かれても「まずいですね」と言えるはずもなく。2人同時取材が成立したわけだが、なんとも言い難い1日だった。幸い両選手とも和気藹々(わきあいあい)と話してくれるので楽しいのだが、それぞれの話を聞くのが難しかった思い出だ。それからしばらくして甲斐野投手が代表の強化合宿に選ばれ、愛媛に飛び当然のごとく取材に行った。練習後の第一声は「ほんとどこにでもおるな!」だ。取材可能区域が少なかったが、2日間しっかり話を聞け関東に無事帰還。「代表に選ばれる人はみんなレベル高いから勉強になる」という言葉が帰りの飛行機でなぜか何度も思い返していた。


   オープン戦にも通いつめ、4年春のクローザー転向していく様子も全試合見届けた。「先発でやりたい」と3年秋終了時に話していたところからの転向劇は見事の一言に尽きる。最初は早いイニングからブルペン入りしていたのに、徐々に短くなっていく。夏のオープン戦では少しだけ捕手を座らせ10球弱放っただけでマウンドへ。しっかりと三者凡退で何食わぬ顔で帰ってくる。神宮球場でのブルペン練習はイニング間に遠投を行い、捕手を立たせて投げる。その後は七回くらいにようやく捕手が座るのが大体の流れだ。「どんどん慣れれば出来るようになるよ」と本人は言うが、結局最後までイマイチ掴めなかった。


   春が順風満帆だった分、秋は山あり谷ありだった。自ら「コントロールが良くなれば」と語るが、普段は連続四球は中々与えない。しかし、今秋の中大戦で突如それが現れた。3戦連続の失敗の後、溢れ出た言葉は「チームの輪からはみ出てる」。詳しく聞く前は分からなかったが聞いて納得。「クローザーって助けてもらえない。自分一人。怖いポジションだよ」。勝ちを決める男であると同時に常に反対側には負けがある。それを何試合も連続で突きつけられたからこその言葉だった。


   甲斐野投手のすごいと思うところは"割り切るところ"だと勝手に思っている。3年秋の立正大戦ではサヨナラ暴投負けを喫しているのだが、「あれ!最速だったらしいんだよね!」となぜかハイテンションで語る。さらには連続失敗ですら、「俺スポトウに嫌われてる?毎回(紙面の取り扱いが)小さいじゃん笑 大きく取り上げてよ。『3戦連続失敗からの復活!!おかえり守護神!』みたいにさ」と9月号の梅津(営4=仙台育英)投手の紙面を見ながら笑っていた。失敗を踏み台に一歩踏み上がり、失敗も思い出にしてしまう男なのだ。


   大学生になると「夢は何?」とたまに聞いてくる人は少ないが、1年間に3度甲斐野投手は聞いてくる。自分に夢を訪ねる数少ない存在が夢を叶えた。おめでとうございますと一言伝えたい。そう思った10月25日であった。


■コメント

・甲斐野(営4=東洋大姫路)

野球を始めてからプロ野球に憧れてた。小さい頃は地元が関西で阪神ファン。少し経つと野球ファンになって、すごい打者・投手を見て興奮してた。一番最初にすごい!って思ったのは藤川球児(阪神タイガース)投手かな。本当に憧れた。それからしばらくして中学3年生で見ていた甲子園に原(H27年度営卒=東京ヤクルトスワローズ)さんが出てて。『かっこいいなぁ』って思った。それがきっかけで東洋大姫路に進学して、大学で野球をやったと言っても過言ではない。(野球人生のターニングポイントは)高校時代の投手転向かな。今の自分があるのは明らかにこの時のおかげだし。2年生の冬に投手メニューが打者練習とは別に入ってて、『間違ってるのかな?』って最初は思った。半信半疑でランニングメニューとかをやっていって明けた春先で登板してから三塁手兼投手でやってて。だから投手一本になったのは大学に入ってからだね。1年生から登板機会はもらってたんだけど、チャンスもらってるのに打たれてて。そのせいで長い間出れてるシーズンが3年秋まで少なかった。それこそ、3年秋は2戦目で投げたら抑えれたのがそれまでとの差。何かをして伸びたんじゃないと思う。実践を積んでいろんなことを覚えれた。使ってもらえたから今があるって感じかな。それでたまたま優勝のマウンドもいれた。今のところ2季連続だね。最後のあの瞬間は譲りたくないと言う気持ちがどんどん強くなってる。

(プロ入り後の目標は)まずはやっぱり新人王でしょ。どういう起用法かはその時にならないと分からないけど、多分先発はしないし。そうなると最多ホールドとか最多セーブとか、その役割でトップになって新人王を取りたいね。


■あとがき

 取材し始めた昨年秋から甲斐野投手の神宮球場での投球は1球たりとも見逃さず済んだのがまず嬉しいです。1年間取材に応じて下さりありがとうございました。そして、プロ入りおめでとうございます。今日、この選手コラムを読んでくださった皆様最後までありがとうございました。少しでも東洋大学投手・甲斐野央という選手を知って頂けたら嬉しいです。来週にはこのドラフト会議を受け、スポーツ東洋ドラフト号外を発行予定ですので是非そちらも読んでいただけると幸いです。

そして結びになりますが、この場を借りて甲斐野投手のご家族の皆様へ。拙い記事で最後の1年間を書かせていただいた須之内です。最終戦で声をかけていただき本当にありがとうございました。あと少しの大学生・甲斐野投手も全力で書かせていただきますのでよろしくお願いいたします。

(執筆者・東洋大学スポーツ新聞編集部・甲斐野番記者    須之内海)

〜連載日程〜

10月26日(金)梅津晃大

10月27日(土)上茶谷大河

10月28日(日)中川圭太