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陸上競技部長距離部門 第92回箱根駅伝直前特集1
酒井俊幸監督インタビュー
王座奪還に向け手応えを語る酒井監督
(2015年共同記者会見より)
いよいよ来年1月2日、3日に迫った箱根駅伝。前回大会3位の悔しさを胸に、東洋大は王座奪還に向けた戦いに挑みます。それに際し、3回にわたって特集を掲載致します。第1弾は酒井監督のインタビューです。
――今年1年行ってきた「変革」とは具体的にどのようなことをしてきましたか
いろいろな観点からの変革なので、一概に「これだけ変えたから良くなりました」ということではありません。まず、心持ちの方では昨年も掲げてはいましたが、上の選手は「世界を目指す」ということ。あとは選手同士「自分さえ良ければ」というのではなくて、しっかりとコミュニケーションをとって、もう一度チームの屋台骨、骨格をつくっていこうと。チームの力を押し上げるためには個人が強くなることは大前提です。ただ、東洋大学としてどんなチームカラーが屋台骨としてあって、鉄紺の引き継がなければいけないカラーの中で「自分たちがどんなチームをつくっていくのか」ということを新チームの立ち上げから段々と定めてきました。
――競技面で変革が生かされた部分はありますか
トレーニング内容に関して、今までよりスピード練習を入れるようになりました。そうなるとそれを可能にするだけのフィジカルの強化もしなければならないので、テクニックとフィジカルの両面も昨年までとは違う取り組みを入れました。それを入れてしっかり自分の身となり骨となるためにもまずは自分の心の方が変わらなくてはならない。「やらされている」ではなくて「このために必要なんだ」と自分で理解しないとまったく力にならないので。
――今年行ってきたことの中で新しく東洋大のスタイル、伝統になりそうなことはありますか
ランニングに関してもうワンランク追求していこうということですね。「走りの再現性」というところで。ユニフォームが変わっても、時間が経っても、例えば「あのときは調子が良かったからたまたま走れた」ではなくて、しっかりランニングを理解する。自分の走り方はどういう特性があって「これとこれができたときに走れる」というような取り組みが特に大きいと思います。
――出雲が終わった後のチーム内の雰囲気としては
1区でああいうこと(※コースを間違える)がありましたが、2区以降でしっかり追い上げができて4位という成績に終わりました。4位で悲観するというよりは「次だ」と。「やるからには青学大に勝とうじゃないか」「負けたくない」という雰囲気がチームの中に出てきていました。青学大は出雲も大会新で優勝して、世間からも「絶対優勢」と言われていましたが、東洋大も出雲よりはいい状態で迎えられるし、そこまで追い詰めた自分たちも悪くないというムードでした。
――改めて全日本駅伝を振り返って
初タイトルになるので、取りたくても取れなかった大会でこれまでの負けた経験がすごく生きました。「初優勝しちゃった」ではなく狙いにいって、さらに強いと言われる青学大にも勝って二重の喜びだったと思います。
――「中間層の選手や駅伝デビュー戦の選手が強い」という東洋大らしい強さも見られました
主力の服部が生きるチームをつくらなければならないので、他の選手たちが服部と同じ区間をできるほどに成長しなければ青学には勝てないと思いました。ですので、「脱服部」宣言をして、今年の夏はこれまでの北海道の合宿や選抜合宿をやめ、全体合宿、全体合宿の中でも中間層を私が見ました。やはりここがしっかり伸びてこないと今年もそうですが次の成長もないと思っています。
――チームの中心となる4年生の4年間の成長ぶりはどう感じられていますか
ファイナルの年は切羽詰まった感があってみんな頑張るんですよね。4年生たちは、1・2年次はすごく苦労してなかなか結果が出ませんでした。それが、上村が2年生で箱根を走り、3年で高橋、寺内と徐々に頭角を出してきて。(渡邊)一磨も全日本を走ったり4年目になってまたさらに力をつけてきました。上級生になって力をつけてきた学年だなと思います。取り組みは非常に真面目な学年ですね。
――後輩に示す姿はどう評価されていますか
「能力がある選手」のやり方ではなくて努力する才能。走る才能だけではなくて、しっかりひたむきに積み重ねることができる才能がある学年です。東洋大学が一番大事にしているのは「ひたむきで実直な努力の積み重ね」。派手じゃないけど、それが結局長く優勝を狙うチームには一番大切なことだし、鉄紺ですから。もろい鉄ではなく、叩いて鋼にするような。それには地味なことの積み重ねです。先輩たちもそうやってチームをつくり、受け継いでいるわけだから、今の4年生もそれをしっかり受け継いでくれています。
――箱根でも「一秒をけずりだす」ために今、していることはありますか
箱根駅伝の優勝、王座奪還への執着心をしっかり持って一つ一つのことに取り組んでいくことが大事だと思います。全日本で勝ったときに私は「駅伝力」という言葉を使いました。個の力だけではない強みが駅伝のおもしろさであり難しさなので、今年のチームが優勝するためには駅伝力が走力よりも勝っていかないと青学には勝てないかなと思います。緩んでおごりや油断が出てしまうと駅伝力は半減してしまうと思うので、おごらず足元を見てしっかりやるべきことをやるという東洋の本来のスタイルに「駅伝力」が合致するのかなと思います。
――箱根駅伝に向けての意気込みをお願いします
優勝メンバーが8人残る青学が非常に有利ではありますが、勝負に絶対はないので、東洋大学は全日本大学駅伝同様に箱根でもスローガンを体現するような走りを目指していき、王座奪還を目指していきたいと思います。
「変革」を行いながら、伝統の「1秒をけずりだす」強さにさらなる磨きをかけた鉄紺集団の走りが今年も箱根路を熱くします!どうぞご注目ください!
取材日:12月6日
聞き手:石田佳菜子
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箱根駅伝まであと8日!
27日(日)は上村和生選手(済4=美馬商)、高橋尚弥選手(工4=黒沢尻北)、寺内將人選手(ラ4=和歌山北)による4年生対談を掲載致します。