Article

記事


2016.11.13
サッカー

[サッカー]劇的勝利でつかみ取った昇格 古川体制2度目の1部参戦

第90回関東大学サッカーリーグ戦 2部リーグ(後期)

第22節  11月12日(土) 東洋大学朝霞グラウンド


東洋大1-0神大


ベンチにいた選手・スタッフは喜びを噛み締めた

選手と熱い抱擁をした古川監督

胴上げで何度も宙に舞った


 古川監督はシーズン開幕前にこのようなことを語っていた。「去年、一昨年とあと一歩のところで達成できなかった悔しさを知っている選手が多いので、3度目の正直を達成したい」。そんな強い想いで挑んだ今シーズン、ようやく1部昇格を手にした。


 東洋大を率いて今年で5年が経った。就任初年度は2部リーグで22試合中15勝を挙げ、圧倒的な強さで優勝を果たした。しかし、初の1部リーグでの戦いとなった2年目は、わずか5勝しか挙げられず、昇格後1年での2部降格。続く3年目は昇格戦線の中で最後まで争い続けるも、シーズンを通した勝負強さに課題を残し、昇格を決めた2位とは勝ち点2差の3位で終えた。4年目となった去年は、夏に創部初となる全国大会出場を果たし、また天皇杯予選ではJクラブとも対戦し、チームとして大きく飛躍した年になる。一方のリーグ戦では最終節まで昇格の可能性を残すも、またしてもあと一歩のところで届かなかった。

 節目となった5年目の今年は、部創設50周年の年でもあった。開幕から3試合白星を挙げられず、苦しい状況になるが、粘り強く勝ち点を積み重ねる。終始昇格争いに絡み、最終節にすべては委ねられた。迎えた大一番の相手は2位神大。勝利が絶対条件の東洋大とは違い、引き分け以上でも昇格が決まる相手に苦戦を強いられる。しかし、引き分けも見え始めた後半ATにCKから徳市がヘディングでゴールを奪い、劇的な勝利で1部昇格を決めた。監督は試合終了のホイッスルとともにその場に座り込んだ。試合後、「語る必要がないような、ほんと劇的な勝利だった。スタメンもベンチも応援組もマネージャーも、みんなの想いが集まらないとこういう形にはならなかったと思う。学生に感謝」と振り返った。

 これで4年ぶりに来季は1部リーグで戦うことになった。「前回1部にチャレンジしたときに感じた厳しさというのが記憶の中にもあるし、厳しい戦いが待っている。本当に過酷で毎試合がファイナルのような試合になると覚悟している」と昇格の余韻に浸ることなく次の戦いを見据えた。5年で培った経験を糧に、2度目となる1部の舞台で東洋旋風を巻き起こせるか、監督の手腕に期待がかかる。


・古川監督

ほんと劇的な勝利だった。スタメンもベンチも応援組もマネージャーも、みんなの想いが集まらないとこういう形にはならなかったと思う。学生に感謝。去年は(昇格の条件として)2点差というのも考えながらだったが、今年は90分で勝ち切るということだけだった。今までは勝ち続ければ自力で昇格までひっくり返せる状況だったが、東農大に負けてから、勝ちに固執してしまっていたというところが私にもチームの中にもあったと気づいた。そこから開き直れて、試合に勝つがそこに固執しすぎず、プレー内容ひとつひとつを上げていこうと話した。最後になれば結果がわかるから、結果以上にしっかりプレーしましょうと。ほんとに最後の3試合はそれを体現してくれた。(劇的展開だったが)時間がどんどん過ぎていくし、選手にはじれるなとは言いながらもこちらでは策を講じる必要があった。先に動きすぎても中の選手たちに水を差してしまうこともあるし、いろいろ決断に迫られたが、まずは無失点でゲームを作っていけたことが良かった。先に取られてしまったらもっと厳しくなってしまったと思う。忍耐強く戦ってくれた。(試合終了直後の心境は)信じてはいたけど信じられないというような。どうこれを表現していいかわからない感じだった。未だにわからない感じ。(今年1年のチームは)シーズンの中でも山あり谷ありで、ある程度できる力があるという手ごたえをもってシーズンに入ったが、2部の中で決定的な実力差として試合の結果に結び付けられないようなチームだった。本来であれば優勝も手にできるような感じだったと思うが、運よく昇格争いがもつれたり上位が勝ち点をロスしてくれたりでなんとか踏みとどまれた。ほんとに最後のところで明学大や東農大に負けたときはガタガタと崩れていってもおかしくはない状況だったと思うが、その中で仁紀(佐藤)を中心とした4年生が最後まで真摯にサッカーに取り組んでくれた。(4年生の存在について)毎年4年生の存在感、苦しいときに踏みとどまったりなにかを成し遂げるときには4年生の力がとても大きい。もちろんプレーの面でもそうだけど、このゲームを迎えるにあたって4年生を中心にモチベーションビデオを作ってくれたり、応援のほうでできることをやるからと選手から伝えてくれたり。今年は例年になくBチームにいる4年生が多くて、もちろん彼らをリーグ戦のピッチに送り込みたかったなというのもあった。ただ現状の中で持っていけなかったというのは僕自身の指導力不足というのも感じている。それでも4年生はくさることなくなにかチームにできることというのを自分から見つけてくれた。それが社会に出てからも一番の財産。活きることを学んでくれたのではないかと思っている。(チームの成長を感じる部分は)開幕当初は正直、スタメンは組めても、そこからポジション争いという形での高いレベルでの競争というところまではいかなかった。でも、夏過ぎくらいから誰がメンバーに入っても活躍できるチーム状況になったことで、リーグ終盤調子を落とした選手を調子のいい選手と入れ替えることができたし、最後途中から入って流れを変えられる選手も出てきた。東農大に負けてチームが調子を落としてもおかしくなかったところでもう一度息を吹き返すことができたのは、そういったバックアップの立場からチームにパワーを与えてくれた選手の力が大きかったと思う。(1部リーグに向けて)前回1部にチャレンジしたときに感じた厳しさというのが記憶の中にもあるし、本当に厳しい戦いが待っている。早大や国士大という伝統のある大学でさえ降格を味わっているし、本当に過酷で毎試合がファイナルのような試合になると覚悟している。それでも、1部で戦えるという明確なモチベーションが下級生にはあると思うからそこにむけて一回り二回り成長して来シーズンを迎えられたらと思う。まずは12月に来年の天皇杯の学生の部予選が新チームで始まるのでうかれてる時間はない。次のことを考えてポジション争いなど切磋琢磨しながら、1部に定着してインカレ出場や最終的にタイトル奪取を目指せるようなチームにならないといけないし、昇格した意味が薄れてしまうと思うから、喜びにひたっている暇はないなという感じで次のことで頭がいっぱい。


TEXT=豊川拳大 PHOTO=横山恵美、當麻彰紘、吉本一生、藤井圭、美浪健五、土橋岳