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2016.11.23
ボクシング

[ボクシング]新たなチャンピオン誕生!木村、金城がW優勝を果たす

第86回全日本ボクシング選手権大会

11月17日(木)~20日(日) 松前公園体育館


◆フライ級

準優勝 馬場(文3=王寺工)

2回戦敗退 野口(ラ1=高知農)


◆バンタム級

優勝 木村(営1=飛龍)


◆ライト級

3位 秋山(営4=淀川工科)


◆ライトウェルター級

2回戦敗退 中川(ラ2=高知)

1回戦敗退 萱津(営3=大分工)


◆ウェルター級

優勝 金城(東洋大ボクシング部OB)

3位 原田直(営2=崇徳)

2回戦敗退 原田健(営1=安芸南)


◆ミドル級

3位 高江洲(東洋大ボクシング部OB)


◆ライトヘビー級

3位 宮内(済3=習志野)


相手の隙を狙う木村



ストレートで相手を圧倒する金城



※掲載が遅くなり、申し訳ございません。


   愛媛県で第86回全日本ボクシング選手権大会(以下、全日)が開催され、バンタム級の木村(営1=飛龍)優勝を果たした。この大会はアマチュアランキングの影響が一番大きいため、アマチュアボクシングの最高峰とも言われている。この大会での東洋大からの優勝者はこれまで須佐(H19年度法卒)とロンドン五輪金メダリストの村田(H20年度営卒)の二人。木村の優勝は東洋大3人目となる快挙だ。また、ウェルター級の金城(東洋大ボクシング部OB、現自衛隊体育学校)も初優勝を飾り4人目のチャンピオンが誕生した。


   木村自身も「どの試合も審判が違ったらどっちが勝つかわからなかった」と振り返る。その言葉通りどの試合も一筋縄ではいかなかった。

   初戦で接戦を制し、迎えた準々決勝で対戦したのは今まで二度の対戦経験がある金子(日大)。しかし未だ勝利したことは無かった。「三度負けるのはプライドが許さないから、絶対に勝ってやる」と語った木村。その気持ちが彼を動かし、果敢に手を出し続け勝利をつかんだ。

   翌日の準決勝は「一番対戦してみたい」と話していた憧れの選手、中野(東農大)が相手だった。高校時代から中野の試合を何度も見て技術を学んでいた。そのため相手のボクシングスタイルはわかっていたが、パンチを避けるのは難しく、右フックがヒットする。しかし木村も自分の距離感を保ちジャブを打ち続け、手数を稼いだ。どちらも一歩も引かない大接戦。中野が重いパンチを狙う中、木村は素早い攻撃を重ねた。そして徐々に中野の体力を奪いついに、憧れの選手に大金星。しかし「勝ったのは嬉しいが、内容を考えたらちょっと落ち込んでいる」と、試合内容は満足のいくものとはならなかった。

   連戦の疲れもある中、迎えた決勝戦。待ち構える最後の対戦相手は3年の南出(駒大)。木村が「苦手なタイプ」と話す選手だ。試合開始のゴングとともに攻撃を仕掛けたのは木村。先手を奪うとその後も得意のストレートを打つが、南出も譲らず木村の頬を狙い続ける。持ち前のスピードで攻撃をかわすが、自身も南出をとらえることはできない。見事な攻防戦が繰り広げられ、会場中がその試合に見入った。そしてあっという間に約10分の時が流れる。判定の瞬間、レフェリーが挙げたのは右。赤コーナーの木村の手だった。ルーキーの優勝に会場中が驚いたが、一番驚いていたのは木村自身だった。しかし優勝決定の瞬間、彼から喜びの表情は見られなかった。試合後すぐの優勝インタビューでは、「まだ優勝の実感は無い。実感が湧いてきたらうれしいのだと思う」と答えた。試合内容についても「もっと強くなって誰が見ても確実に勝ちというボクシングをしたい」とさらに上を見据えていた。

   リーグ戦での大活躍に始まり、10月の国体では準優勝を遂げ周囲を驚かし続けている木村。そしてその勢いは留まることなく、つかんだ今回の日本一。まだまだ彼の進化は止まらない。


 また、東洋大ボクシング部OBのウェルター級・金城の初戦は序盤こそ固さが見られたが、徐々に本領を発揮し、2ラウンド1分23秒のTKO勝ちを収める。2回戦では、1ラウンド目から積極的に攻撃を仕掛ける相手に苦戦を強いられる。それでも金城は慌てることなく、2ラウンド目からは動きが重くなった相手に対して確実にパンチを当てていく。「全然駄目だった」と振り返ったが、2-1の判定勝ちで決勝へと駒を進めた。自身初の優勝を懸けて臨んだ決勝戦。序盤はボディへの攻撃を多用し、ポイントを稼ぎにいく。2ラウンド目は左右のフックで攻め立てるが、相手も応戦し一進一退の攻防が続く。「スタミナが落ちてしまった」と終盤は足が止まる場面も見られたが、乱打戦を制した。試合後は「負けたかと思った」と振り返ったが、これで国体に続く日本一となった。

 優勝について「全然納得していない。合格点に達した程度」と決して満足のいく内容では無かった。しかし、大会を振り返って「課題の方が多い」と前置きした上で、「自分の距離でしっかり当てることができれば1試合目のように相手は倒れる」と手応えをつかんだ。「国際大会で活躍できるような選手になりたい」。金城の目はすでに世界を見ていた。金城が世界で戦う姿を見られるのはそう遠くはないはずだ。

 



■コメント

・三浦監督

馬場の相手の田中は昨年の全日本チャンピオン。相手のパンチを良く外して、冷静な試合運びができた。馬場の力を100%出し切った試合だったが、パンチを当てるという面で、相手が上回っていた。そういう面では力を出し切った上での課題が見つかった。この大会は日本一を決める大会であり、決勝までいったということだけでも素晴らしい。木村は強豪とずっと当たってきたので、疲れもあるかなと不安もあったが、本人の強い気持ちがそれをかき消してくれた。特に2、3ラウンドはギアを上げられたのが勝因につながった。村田以来5年ぶりの全日本チャンピオン。また、1年生でチャンピオンを取るのは難しいこと。練習の中で、日々追い込んできたので、持ってる潜在能力と本人の努力が実を結んだ結果。東洋大としても3人目の全日本チャンピオンということで非常に嬉しい。準決勝に現役が5人進出できたのは、チーム力が上がっている証拠。馬場と木村はスタイルが違うが、二人共自分のスタイルを追求した。馬場は出入り。空間の支配力が抜群にできていたので、準決勝の村田というすごく強い相手にパンチを空転させ、自分はしっかり当て、誰が見ても勝ったという試合をした。そういう意味では木村もスピード、回転力、連打という自分の武器を100%出し切れたので勝ちが付いてきた。キャプテン馬場龍成が決勝までいって活躍して背中を見せた。この吉報は部員に届いているから、部員も頑張ろうというのを分かってくれたと思う。良い影響を二人が及ぼしてくれる。


・木村(営1=飛龍)
まだ実感湧かないですけど、自分は全国で優勝したことが無かったので優勝できたことは素直に嬉しい。だけど2試合目も準決勝も決勝も審判が違ったらどっちが勝つかわからないような試合をしてしまい、多分自分の勝利に不満な人はいっぱいいると思うので、強くなって誰が見ても確実に勝ちというボクシングをしていきたい。正直パンチは一発も当たってないし、雰囲気で誤魔化した感があるので次はしっかり勝ちたい。1ラウンド目で取られていたので2、3ラウンド目は気持ちでいった。全ラウンド判定は割れると思った。決勝の前日に監督に聞いたら優勝は東洋大で3人目で村田さん以来なのでそう考えるとすごい。村田さんの後を継げるように頑張りたい。周りはみんな喜んでくれたのでそこは素直に嬉しい。


・金城(東洋大ボクシング部OB)
苦戦したから負けたかなと思った。2ラウンド目で自分が落ちてきたから、パワーを抑えて打っていた。収穫は自分の距離でしっかり当てることができれば1試合目のように相手が倒れてくれることが分かった。課題の方が多くて、1ラウンド目から集中して戦えるようにしっかり追求していきたい。(全日本は初優勝だが)自分が年上で年下しかいないから、ここで取れなかったら自分は無理だなと思っていた。合格ラインに到達した程度かなと。(今年一年振り返って)環境が変わって、自衛隊のきつい練習を耐えることができたのが自分の中では大きかったと思う。(これからの東洋大に期待することは)決勝戦で二人も出たのはすごいと思う。自分はベスト4止まりだったので。自慢じゃないけど(笑)結構みんな力付けてきているのかなと感じた。監督の走り込みが効いているのかなと思った。(次の目標は)国際大会で活躍できるような選手になりたい。


TEXT=梅山織愛、豊川拳大 PHOTO=玉置彩華、梅山織愛