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2016.12.16
ボクシング

[ボクシング]特集 OB・村田諒太選手のスペシャルインタビュー!

 東洋大ボクシング部OBであり、ロンドン五輪で金メダルを獲得した村田諒太選手(H19年度営卒)に、自身の学生時代のことやボクシング部に向けたメッセージをいただきました。(取材日・12月2日、聞き手・玉置彩華、梅山織愛)

 

今なお世界で活躍する村田選手 


――今までの戦績を教えてください。

138戦119勝19敗(89KO)。これだけボクシングをやっていたら300戦くらいはいくんですけど、階級がミドルで人が少ないので。


――全日本ボクシング選手権大会(以下、全日)の戦績は。

大学1年生の国民体育大会(以下、国体)で負けてからはずっと負けていないから、出た試合は全部優勝していると思う。1年生の時優勝、2年生の時は世界選手権で出られなくて、3年生の時はアジア大会で出ていないし、それで4年生で優勝。それがH19年かな。H20年は大学職員で引退していたから出ていなくて、H21年~H23年まで優勝。だから5回かな。


――ボクシングを始めた時期は。

僕は中学1年生からですね。


――当時からやはり強かったのですか。

そんなこと無いですよ。デビュー戦は負けているし…。やめられなかったですね。高校が厳しかったので。


――やめようと思ったことがあったんですか。

今思うといやだなと思っていた時期もありました。


――村田選手のプレースタイルは。

それはその時々によって変わりますよ。判定に合わせて変えていかないと、特にアマチュアはルールがコロコロ変わるから。それに合わせてやっていたので、足を使って距離を取るボクシングのときもあれば、前に入っていくボクシングもしていました。


――判定に有利になるようにしていたということですか。

そう!合わせてやったほうが良いですね。だから今回(木村)蓮太朗(営1=飛龍)が優勝したのも、うまくやってるんでしょうね。リーグ戦のときに見て僕がセンスあるって思っていたやつです。あいつ、お調子者なんですよ(笑)。ああいうのが良いですよ。でもね、全日で優勝しても、それがスタートなんで。優勝したら良いってものじゃないんです。結局、日本一になったからって、もしかしたら就職くらいには役立つのかもしれないけど、誰でも知ってるわけじゃないしね。オリンピックを目指すなら優勝したとしても出られないしね。本当に足掛けでしかないのでね。ここからですよね。ここからどう伸びるか。頭一つ出ないと、海外には勝てないです。そこは彼のこれからの目指すところですね。


――村田選手の大学時代振り返って、印象に残っていることや後悔していることありますか。

後悔していることは無いですね。でも後悔というか、もう少し周りに優しくできれば良かったかなぁ。厳しかったから。特に同級生に関しては上から目線で「俺はもう日本一なんだ」っていう目で見ちゃっていたから、もっと仲間を大事にしていれば良かったなと思います。でも本当に大学時代はいい経験ができますし、大学4年間を過ごした仲間は大人になってからもすぐ集まっちゃうね。地方でも飛んできてくれる。そういう仲間をつくることは4年間で大事だね。ボクシングが強ければ良いわけじゃないし、仲間との良い経験をつくってほしい。学生のときは、こんなこと言われても「何を言ってんの?」と思っていたけど、今ならわかるかな(笑)。


――こんなこと頑張ってほしいなと思うことはありますか。

今、すごく部の状態がいい状態。いい雰囲気でやれている。三浦監督も真面目だし。自分たちに自信を持ってほしいかな。練習量も本当に重ねているし、これだけ自分たちは練習しているんだという自信。


――東洋大ボクシング部の人にも海外を目指してもらいたいですか。

そのね、見える景色っていうのがあるんですよ。蓮太朗はやっと見えたと思うんだよ。登ったから。登ってなきゃ見えない。だから(馬場)龍成(文3=王寺工)もある程度のところまで登ってきたから見えているはず。もし見えてるなら目指してほしい。かといって見えてもいないレベルのやつが、海外なんて言うのは違うわけで。それは足元が見えていない。見えてきた景色を目指してほしい。龍成はまず全日優勝、蓮太朗は海外での試合に勝つことも目指してほしい。


――村田さんの時代と、今の学生のレベルの差は感じますか。

まあスポーツっていうのは常に進化するものですよね。例えば100㍍走も新記録が次々に出るし、そういう意味での進化はしているんでしょうけど。ただ僕らの時代の選手と現役の子で戦うことは不可能だから、強いか弱いかなんてわからないわけで。でも間違いなく部としての雰囲気はすごくいい状態。僕らの時代っていうのはある意味めちゃくちゃな時代でもあったから、実際に僕も後輩に恐怖政治をしていたからね(笑)。でもそれってやっぱりもろいんですよ。強制はさせられても、自主性は育たない。今の学生ってかなり自主的にできる状態になっているし、みんなで頑張ろうっていうのができている。やっぱり自分たちのやっていることに自信を持ってほしい。東洋大の歴史の中で準優勝と比べられるかもしれないけど、だからこそ優勝を狙えると思う。そういう目標をもって頑張ってほしい。簡単に言えばリーグ戦で優勝しちゃえば良いんですよ。そしたら彼らも自分たちの代が一番や!って言えますよね(笑)。


――リーグ戦優勝はできると思いますか。

うん。可能性はあると思います。でもね、可能性なんです。常に可能性はあった。やっぱりそれはね、判定に不満な選手もいるけどそうじゃなくて、東洋大として準優勝しか達成していないから、なんです。1回優勝できたら簡単なんです。箱根駅伝もそうでしょ。東洋大も1回優勝したら、優勝しやすくなったでしょ?1回優勝ってすごく難しい課題ではあるけど、今の大学生の雰囲気を見ていたら突破できる気がするけどね。いちOBとして応援しています。


――来年もリーグ戦は観戦に行きますか。

行くつもりですね。でも僕、大事な試合は見に行かないんです(笑)。だっていやでしょ!「村田諒太が見に来た緊張で負けた」とか言われたら(笑)。だから今日は勝てるぞっていう試合に行く。でも試合の結果はいつも後輩の田中智博(H25年度営卒=東洋大ボクシング部コーチ)に聞いていて、全日もしつこく毎日メールして(笑)。やっぱり気になるんだ。母校だからね。


――村田選手にとってもリーグ戦って大事でしたか。

大事でした。いや、あ、2年生まではまったく大事じゃなかった(笑)。僕は大学に鳴り物入りで入学して、国体は負けたけど全日で優勝して、そっからはもう俺様だったんですよ。「上のやつなんか関係ねーよ」と思っていたんですけど、3年生の時に先輩がリーグ戦優勝しようと僕に対してもきつく部としてまとめてくれたので、そこで初めてついていこうと思えた。だから3、4年生の時はリーグ戦やチームってものを大事にしていたよ。


――ボクシングという競技は開始した年齢関係なく強くなる可能性があるように感じますが、どう思いますか。

開始時期は早いにこしたことは無いけれど、スポーツってセンスが必要だから。極端に言えばいくら練習しても大谷翔平にはなれないよね。ボクシングに関しては、一番大事なのは自信。リングの上に立ったときにてめえが負けると思ったらもう勝てない。だから学生にはいけるっていう、自信を持ってほしい。だから全日の前に龍成にアドバイスしたのは「お前走るの早いじゃん。誰かに負けた?走るの早いやつっていうのは人間の基本。獣を追いかけるとき走るし、獣から逃げるときも走るんだ、人間は。その能力が長けているやつは強いんだ。自信持てよ」って。でも逆に自信が過信になってしまうと駄目。そこのメンタルのコントロールってすごく難しいので、少なくともやってること間違っていないから、自信持ってね。


――村田選手が学生の時と比べて練習量は変わっていますか。

そんなに変わっていない。でも今同じ練習やれって言われたらしんどいなぁ(笑)。


――今のボクシング部の環境と村田選手の時代を比べるとどうですか。

僕らのときはひどいですよ。食事とかも今みたいに出ないし。でもだから逆におもしろかったですけどね。今の学生は良いですよ。寮があって、ちゃんとした食事が出て。でもそれができるのも私立の大学に通わせてくれる親御さんのおかげだからね。ちゃんと感謝して、あとはちゃんと4年で卒業してね(笑)


――馬場選手、木村選手に祝福のメッセージをお願いします。

馬場は、ちょうど僕が全日の前に東洋大に練習しに行って、「何かアドバイスありますか」って聞かれて。僕はたまにしか練習に行かないから、たまにしか行かない人間があーだこーだ言うのって変じゃないですか。見てないのに。だから「君のいいところはどこなの?」って聞いたんです。直前に1発のパンチ力だとかなんとか言ってもそんなすぐに伸びるわけじゃないから、「いいところで勝負するんだよ」とアドバイスした。そのあと準優勝してくれたのはとてもうれしいことだよね。でも彼に関しては名前が売れると、来季のリーグ戦では警戒されるわけですよ。そしたらやっぱり研究されるわけだし、準決勝で破った村田昴(日大)くんも「次こそは」って絶対に思うしね。これからが勝負だよね。成績を残して満足してはいけない。祝福している場合じゃない(笑)。この勝利に満足して君のボクシング人生終わりで良いならそれで良いけどね。蓮太朗にしてもそう。1年生チャンピオンで注目を浴びるだろうけど、全日で金子(日大)と試合してたと思うんだけど、ダウンを結構取られてガクンっとなった試合もあった。勝ったは勝ったけどそういう試合もあったから。試合って僅差なのよ、勝敗ってね。いかに確実なものにしていけるか。蓮太朗にしても馬場にしてもここから、いかに伸ばせるか。でもそれは短所を探してもどうしようもないから、自分のいいところで戦うしかない。あのね、五角形があるとするでしょ。それが平均的に全部出ていても能無しなんですよ。この五角形が小さくまとまったらそれだけの選手だし、自分の長所だけグーンと伸びていたらそれだけで強みになる。自信になるし伸びますよね。


――最後にボクシング部にコメントをお願いします。

一つは、とてもいい状況なんですよ。でも、そういう時に1回事件が起きてしまったので、こういうときこそ気を引き締めないといけない。一流のボクシング部にいるという自覚をもって行動をとってほしい。あとはこれだけの練習している大学は他に無いし、環境にも感謝していろんな意味で自信を持ってほしい。来年のリーグ戦に期待をしているよ、と(笑)。

 

お忙しいところ、ご協力いただきありがとうございました!

 

PHOTO=玉置彩華