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第93回東京箱根間往復大学駅伝競走 往路
1月2日(月)大手町読売新聞東京本社前~箱根町芦ノ湖駐車場入口
往路4位 5:36'09(トップとの差2'40")
1区 21.3km 服部弾馬 1:03'56(区間1位)(通過1位)
2区 23.1km 山本修二 1:09'05(区間11位)(通過8位)
3区 21.4km 口町亮 1:03'41(区間3位)(通過4位)
4区 20.9km 櫻岡駿 1:03'52(区間4位)(通過3位)
5区 20.8km 橋本澪 1:15'51(区間12位)
大手町を勢いよくスタートした
服部はラストスパートをかけ区間賞を勝ち取った
来季を見据えエースが集まる2区に挑んだ山本修
口町は好走を見せ順位を4つ上げた
出雲、全日本の悔しさを力に変えた櫻岡
苦しい表情を浮かべながらも4位でゴールした橋本
3年ぶりの王座奪還へ往路で流れをつくりたかった東洋大。1区にエースの服部(済4=豊川)を起用し、リードを奪いにかかるも差は思うように広がらず。チームの主力である口町(法4=市立川口)や櫻岡(済4=那須拓陽)が好走を見せ、順位を押し上げるもトップとは2分40秒差の4位でゴールとなった。
例年よりも遅いペースで進められた1区。集団から飛び出しても、追い付かれてはスローペースになっていく展開に、ラスト地点まで先頭集団は崩れなかった。ここから服部が揺さぶりにかかったが、他大にも余力があり思うように人数が減らない。「自分の持ち味が最も引き出せる場所」と位置付けたラスト1km。服部の陸上人生を支え、応援に駆け付けた兄弟が見守る中、エースとしての意地を見せ再び集団を突き放した。見事1位でタスキをつなぐも「もっと後続との差を広げたかった」と悔しさをにじませた。どのチームも服部を警戒しており、思うようなレース運びができなかったのだ。続く山本修(済2=遊学館)は1位で鶴見中継所をスタートしたが、わずか8秒の僅差で5チームがタスキリレー。どの大学もエースを投入する花の2区。追ってきた5チームにのまれたもののレースプラン通りに集団に食らい付いていく。しかし残り3kmからペースが落ち、苦しい走りで8位に順位を落とし3区の口町へ。
東洋大の救世主口町が帰ってきた。出雲駅伝、全日本駅伝をけがで出走を回避していたがここで力走を見せた。前を追うために始めは思い切ってオーバーペース気味で入るも、失速することなく落ち着いて駆け抜ける。着実に大きくなっていく前を走る選手の背中。ラスト5kmで帝京大と駒大に追い付き、「3校の中ではトップで渡したい」という強い思いで苦しい中でも何度も小刻みにスパートをかけた。今季けがに悩んだ選手とは思えない圧巻の走りで区間3位。順位も4つ押し上げ櫻岡へタスキをつないだ。続く櫻岡もこれまでの2戦で思うような結果が出ず悔しさを味わった。距離が延び往路の重要区間となった4区。「最後に後輩に残す走りをしたかった」と最後の箱根に挑んだ。前半は区間賞ペースでレースを運び、早大との差を確実に縮めていった。後半に苦しい走りとなったが粘り切り、3位まで上げて5区の橋本(工4=館林)へ望みをつないだ。
橋本はこれまでメンバー入りは果たしたが出走はかなわず、箱根への思いは誰よりも強かった。自分なりに山対策を行ってきた努力はチーム全員が認めており5区を任された。中盤の小涌園からペースを上げていく予定だったが上げ切ることができない。なかなか前の早大との差を詰められず、逆に後ろの順大に追い付かれてしまう。橋本はきつい表情を見せながらも必死に追いかける。「しっかりやってきたことを最後出し切ってゴールに入れ」と酒井監督の言葉に自分を奮い立たせ、順大から16秒差の4位で往路のゴールテープを切った。
4位ではあるがトップ青学との差は2分40秒。往路を2位でゴールした昨年よりも差はない。復路は箱根の経験者が少ないが、 “怯まず前へ”のチームスローガンのもと、最後まで力を振り絞り上位を目指す。
■コメント
・酒井監督
往路優勝をしたかっただけに、不完全燃焼な走り。想定よりも悪い往路タイムだった。暑さはあるとはいえ、4区、5区を最後しっかり走らせたかった。(山本修の起用は)全日本のアンカーでも実力を付けてきた。来年を見据えても2区を経験させておきたかった。20kmまではまずまずだったが、ラスト3kmから落ちてしまった。そこはまだまだかな。(最後、橋本には何と声をかけたか)キャプテンとして最後までやってきた。区間タイムは良くないが、しっかりやってきたことを最後出し切ってゴールに入れと話した。(復路について)1区間1区間混戦なので、しっかりミスのないようにやって、最低でも総合3位は狙いたい。
・1区 服部弾馬(済4=豊川)
絶対条件である区間賞は獲れたが、もっと後続との差を広げたかった。自分がマークされすぎていて、思った以上にペースが上がらなかった。(残り5kmで出たときは)かなりいいペースで3kmくらいいけたので、これで集団の人数が少なくなるかと思ったが、最初のペースが遅すぎたので、他の選手にまだ余力があり上手くいかなかった。(その後の切り替えというのは)六郷橋の下で少し仕掛けた。ラスト1kmは自分の持ち味が最も引き出せる場所だと思っていたので、いけると思い力を出した。(今後は)実業団にいき、そこではトラック競技が中心となると思うので、経験を生かせるよう頑張りたい。(最後の箱根駅伝だが)出雲駅伝、全日本大学駅伝と苦しんできた年だったが、そこから切り替え箱根駅伝を目指してやってきた。前半区間の選手の結果はあまり良くなかったが、明日の選手には頑張ってもらいたい。(兄や弟がラスト1kmにいたが)兄から受け継いだこのチームを自分が引っ張っていけるように、ここからラストスパートやってやるんだという気持ちになった。また、弟が実家を継いでくれたので、自分が今こういった舞台に立ててると思う。感謝の気持ちを持って、頑張ろうと思った。
・2区 山本修二(済2=遊学館)
ずっと前から2区を走ると言われていたので覚悟はしていた。1区が1位で来ることは信じていた。その通り(服部)弾馬さんがラストスパートでしっかりつないでくれて、スタートはリラックスして走ることができた。(レースプランは)後ろから強い選手が来ると思っていたのでそれに付いていくこと。(監督からは)後ろの選手を使って、できるだけ付いて行ってラストの坂で仕掛けるように言われていた。
・3区 口町亮(法4=市立川口)
区間賞という目標は達成できなかったが、前の大学を追う最低限のところはできた。欲を言えば早大までというとこはあるが、順大、帝京大、駒大のところまで追い付くことができたのは最低限仕事ができたと思う。(レース展開は)前の(山本)修二が前が見える位置で渡してくれたので、前を追っていこうというように入っていった。最初はオーバーペース気味ではあったがそうしないと前に追い付けないので。10km手間くらいで少し落ち着いてからもう1回前を追う走りをした。(レースプランは)前半速いペースで入って10km以降粘っていくというプランで考えていた。(スパートは)後半の展開によると考えていた。帝京大、駒大にラスト5km過ぎてから追い付いて、その3校の中ではトップで渡したいと思っていた。2校とも苦しそうで自分も苦しかったが何回か小刻みにスパートかけた。(4年生同士のタスキリレーとなったが)自分も櫻岡もその後の橋本も最後なので、自分と櫻岡で橋本にいい位置で持っていければ橋本がしっかり走ってくれるという思いで渡した。
・4区 櫻岡駿(済4=那須拓陽)
もっといい形でタスキを渡してあげたかったが力及ばず申し訳ない。(レースを振り返って)前が見えている展開だったので早大までは抜いて少しでも差を縮めたかった。前半は差を縮める走りができたが、やはり早大の鈴木くんに思い通りに詰めることができなかった。(レースプランは)4区は起伏もあるし気温も比較的高いので、予定通りにペースを刻むことを意識していたが、やはり後半は苦しくなってしまった。(距離が延長された4区は)今までの4区は勢いでいける部分もあったが、距離が延長された4区は難しい部分もあり、簡単ではないコースだった。(4年生として最後の箱根路は)この1年間、チームに迷惑をかけてしまったので、最後に後輩に残す走りをしたかった。その思いを持ってレースに挑んだ。
・5区 橋本澪(工4=館林)
力通りの走りができなかった。小涌園からペースを上げる予定だったが、余裕がなくて後半上げられなかった。(早大の背中も見えていたが)自分もきつかったが、前とも詰まっていたので早大は抜けるかなと思った。でも、7秒差まで詰めたあとそれ以上がなかなか詰まらなく、ヘアピンカーブのところでは差を付けられてしまった。(山対策は)どんな形でも箱根に出たかったので、自分で取り組んだ。バイクで心肺を追い込んだり、トレッドミルで傾斜をつけたりなど。(最初で最後の箱根だったが)走れたことは良かったが、主将としてチームに恩を返すのはここしかないと思っていた。悔しいが、明日までは東洋大のキャプテンなのでしっかり切り替えてサポートしていきたい。(復路に期待することは)初めての選手が多いので楽しんでほしい。王座奪還は厳しいタイム差だが、去年より差はない。6区から流れをつくって、頑張ってほしい。
TEXT=福山知晃 PHOTO=松本菜光花、玉置彩華、外狩春佳、中村緋那子、畑中祥江、菅野晋太郎