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第93回東京箱根間往復大学駅伝競走 復路
1月3日(火) 箱根町芦ノ湖駐車場入口~大手町読売新聞東京本社前
総合2位 11:11'31
往路4位 5:36'25
1区 21.3km 服部弾馬 1:03'56(区間1位)(通過1位)
2区 23.1km 山本修二 1:09'05(区間11位)(通過8位)
3区 21.4km 口町亮 1:03'41(区間3位)(通過4位)
4区 20.9km 櫻岡駿 1:03'52(区間4位)(通過3位)
5区 20.8km 橋本澪 1:15'51(区間12位)
復路2位 5:35'06
6区 20.8km 堀龍彦 1:00'42(区間13位)(通過4位)
7区 21.3km 小笹椋1:05'16(区間7位)(通過3位)
8区 21.4km 竹下和輝 1:06'49(区間4位)(通過3位)
9区 23.1km 野村峻哉 1:09'47(区間1位)(通過2位)
10区 23.0km 小早川健 1:12'32(区間10位)
芦ノ湖から勢いよくスタートを切る6区・堀
小田原中継所 6区・堀(左)→7区・小笹
平塚中継所 7区小笹(左)→8区・竹下
野村は初の箱根路を区間賞デビュー
鶴見中継所 9区・野村(左)→10区・小早川
アンカー小早川は悔しさをにじませてゴールした
前日の往路を4位で終えた東洋大。2日目の復路をトップの青学大と2分40秒差でスタートするも、背中を捕らえることはできず総合2位。王座奪還とはならなかったが、7区小笹(済2=埼玉栄)は3位に順位を押し上げる活躍を見せ、9区野村(済3=鹿児島城西)も区間賞を獲得。出雲駅伝(以下、出雲)9位、全日本駅伝(以下、全日本)6位の不安を取り払い大健闘の2位となった。
鉄紺らしい走りが戻ってきた。復路スタートの6区はチーム屈指のスピードランナーである堀(済3=大牟田)を起用。調整が遅れ山下りの練習ができていなかったが「思い切って使用した」と酒井監督は来季の主軸を担う堀を送り出した。区間13位ではあるものの4位をキープしタスキをつなぐ力走。1位青学大には離され、16秒前にスタートした3位順大との差も45秒に広げられたが、続く7区小笹は焦ることなくレースを展開する。前を行く順大の背中を徐々に捕らえ始めると、11㎞付近で追い付き並ぶことなく一気に抜き去った。3位に順位を押し上げると、続く8区竹下(済3=東農大三)も攻めの走りを披露。区間4位の好走で2位をいく早大との差を2分49秒から1分6秒差まで追い詰めた。さらに後ろからは区間2位の走りで神大が迫っていたが最後まで逃げ切り、酒井監督も「あそこで追い付かせなかったのは非常に良かった」と評価。復路のエース、9区野村へとタスキをつないだ。「やっと走れた」と野村。出雲、全日本の出場経験はあるも、箱根駅伝(以下、箱根)はこれが初。「抜かなければいけない」という気持ちでタスキを受け取ると、6秒後ろにいた神大はものともせず、懸命に前を追った。17㎞付近で早大を捕らえると、少し後ろで様子を見た後、ついに逆転。関東インカレ2部ハーフマラソン2連覇の実力者である青学大・池田を抑える見事な区間賞で2位に浮上した。アンカーの小早川(済3=武蔵越生)は序盤から苦しい走りを見せるが、仲間の走りに応え2位を死守。選手たちは往路4位から二つ順位を上げる攻めのタスキリレーで箱根路を走り切った。
往路優勝を狙っていた東洋大にとって、往路4位からの復路スタートは想定外。だが、往路に起用された4年生の思いは復路を走る下級生にしっかりと伝わっていた。堀が本調子ではない中、最低限の走りでつなぐと、堀の遅れを取り戻そうと後続の選手も奮起した。全ては4年生にメダルを掛けさせたいため。苦しい結果が続いた今季、チームを明るい雰囲気にしてくれたのはいつも橋本(工4=館林)キャプテン率いる4年生だった。さらに復路の5人中4人が3年生という布陣。これまで箱根未経験世代であった彼らだが、今回の走りを見て酒井監督も「一皮むけてくれた」と称賛した。
出雲9位、全日本6位だったチームが終わってみれば箱根総合2位。打倒青学大の最有力として挙げられていた早大にも競り勝ち、見事に下馬評を覆した。「全日本の後はシード権争いも考えた」という酒井監督だったが、これで監督就任から8年連続3位以内という記録は継続される。2年連続2位ではあるものの、昨年のどんよりとしたチームの雰囲気とは一変、今年は手応えを感じられた様子だった。それでも彼らは決して満足しているわけではない。「2位で満足していては上を目指せない。来季につながるものになった」と指揮官。 “強い東洋”を証明した今、再び王座奪還へと走り出す。鉄紺のタスキは次の世代へ受け継がれる。
■コメント
・酒井監督
出雲、全日本と私の中でワーストの結果ではあったが、戦前から苦戦が分かった上で両大会は迎えていた。箱根は腹をくくって、王座奪還をしようという思いでオーダーをつくってきた。(出雲、全日本は)口町や堀を使えなかったことで前評判を下げてしまった。箱根に関しては学生たちも「このままではまずい」という危機感を持ってきた。私自身も、2016年はリオデジャネイロ五輪に向けて集中していたが、だからといってそれで駅伝が崩れるということになってしまうのは、駅伝と世界を目指す東洋大としては譲れない。最低限の2位になれたということは、4年前のロンドン五輪の時と比べると進化したところだと思う。青学大は強いので、目移りするところはあるが各大学のカラーがある。与えられた環境や学校の特色、練習環境、入ってくる学生も様々。東洋大は鉄紺らしいぶれない走りを目指そうと、チームの気質や生活を11月から見直した。各学年、監督、スタッフ、各々の役割をしっかり確認するなど、地味なことではあるがチームカラーのように凡事徹底をした。学生たちも不安なことが多かったと思うが、今回は悔しさと手応えが織り交ざった形だと思う。体と、そして心をしっかり作らないと箱根路というのは厳しいものだなと、今終わってすごく痛感している。(それぞれの走りの評価は)堀は来季を考えた上でも主軸にならなくてはいけない選手。調子が上がってくるのが遅れたため、専門的な山の練習はできなかった。区間二ケタでも良く走ってくれた。小笹は、2年生の学年主任も務めており1年生の指導などで、今年は苦しんでいた。そういう中で成長の見通しが立ってきたので起用した。8、9、10区は出雲、全日本に使った選手たち。8区の竹下は後ろから追い上げてくる神奈川大学さんを最後まで追い付かせなったのが非常に良かった。それで野村が走りやすくなった。また野村も秒差で区間賞を取れたことで、2区を走った山本修(済2=遊学館)も含め、要を走った選手が残る。いい経験ができた。小早川は、後ろの早稲田に助けられた部分もあるが、ある意味誰にでも(出られる)可能性はあるんだぞということを示せた。出られなかった子たちが奮起してくれたらと思う。3年生は一皮むけてくれた。(全日本の後は)箱根でシード権も危ういと考えた。ただ、それがあったからすぐに箱根へ切り替えることができた。練習も過去2年よりはハードなものを行った。3位以内には入れたが、2位で満足をしていては上を目指せない。学生たちも悔しそうな顔を浮かべていたので、来季につながるものになった。
・6区 堀龍彦(済3=大牟田)
往路は4年生が頑張ってくれて、5区の橋本(工4=館林)さんも前が見える位置で走ってくれたが、自分が離されてしまってタイムも悪いので申し訳ない気持ちしかない。(レースを振り返って)予定としては5kmまで落ち着いて入って、下りから前を追う走りをしたかった。思ったより前に行けなくて後半からは完全に足が止まってしまった。普段通りに走れなくて残念。(前の順大は)上りの途中までは見えていたが、下り始めてからは見えなくなってしまった。焦りで力が入ってしまった。(初の箱根駅伝は)1、2年本当に悔しい思いをして、3年目に挑んだ。振り返れば3年目も納得のいく走りができずに、力が付いてないことを感じた。強い4年生が抜けて、自分たち3年がしっかりしていかなくてはいけない。来年に向けて切り替えたい。(6区の山下りは)自信があったが今回のレースが初めてで、考えが甘かった。1年を通してしっかり練習をできていなかったのが原因だと思う。(3年生が4人出場するが)3年生は初めての箱根駅伝出場で、これまで悔しい思いをしてこの1年間取り組んできた。「やってやろう」という今回にかける思いは強いので頑張ってくれると思う。(後続の選手に向けて)残りは3年生3人と2年生一人で、下級生のタスキリレーなので恐れずに前に攻めて、3位以内に入ってほしい。
・7区 小笹椋(済2=埼玉栄)
タイムはあまり良くなかったが最低限の仕事はできたので、今後につながる収穫かなとは思っている。でもやっぱりタイムや区間順位を見ていくとまだまだ悔いが残る。箱根はまだあと2回チャンスがあるのでそこで必ず結果を出して、来年はもっと上で勝負をしたい。(レース展開は)最初はあまり順大は見えなかったが2、3kmあたりで段々見えてきて近付けていたのでどんどん元気が出てきた。しっかり追えたので良かった。(順大を抜くときは)抜くなら一気に行こうと思っていた。監督にも自分のタイミングで、行くなら一気に行くようにと言われたので。(2年生は今回二人の出場だったが)エントリーには山口(済2=自由ヶ丘)も入っていて、去年より一人増えたのはすごく大きなことだと思う。来年、再来年、箱根に初出場になる選手も出てくると思うがそれでも最初から区間賞を狙えるようにしたい。東洋大にきて走るからには区間賞を取らないといけない。2年生はそういう走りをしていきたい。(4年生のレースを見て)4年生がすごく頑張って走っていて、特にキャプテンの橋本さんはすごく1年間頑張ってきていた。自分から見ていても本当に頑張っていると思っていて、自分が抱えているプレッシャーの何倍ものプレッシャーを抱えていたと思う。そういう意味では橋本さんの走りを見て、最後まで1秒をけずり出した。レース中にもたくさん頭をよぎって、4年生に何もメダルを掛けずに卒業させるわけにはいかないともすごく思ったのでそれも原動力になった。(今回の結果について)2位は3年生のおかげなので本当に助けられた。でも2位では満足できるチームではないので、来年以降優勝をしっかり狙えるチームをもう1回ここから、今日からつくっていけるようにしたい。
・8区 竹下和輝(済3=東農大三)
初めての箱根だったが往路のこともあって、後ろは見ないで前だけを見て走ろうと思って走った。最初は抑え気味でいって、後半頑張ろうと思っていたが後半思ったよりもきつくて上がることなく、ずるずるいってしまった。(監督からは)最初はいいペースだぞと言われていた。後半になってずるずる来てるから切り替えろと何度も指示を受けた。(3年生4人が出走となって)3、4年生がここで東洋の走りを見せようと決めていた。往路を走った4年生全員が(平塚中継所に)来てくれて、アドバイスより自分らしく走れと、明るくいってらっしゃいと言われて、本当にいい4年生に恵まれたと思う。(給水をした松永さんからは)前後の差を伝えられ、ここから頑張るぞと言われて力になった。(後続の選手へ)野村はしっかり練習できていて、3年生の中でも頼もしい選手なのでとにかく自分の走り、あとは楽しんでほしい。
・9区 野村峻哉(済3=鹿児島城西)
やっと走れた。とにかく(早大が)抜ける位置にいた。抜けるというより抜かなければいけないという気持ちでタスキを受け取った。8区の竹下も頑張っていて、その走りを無駄にはできないと思った。(3年生4人が初の箱根だったが)全体的に責任感を感じることが少なく今までやってきた。しかし出雲、全日本と悔しい結果が続いたことで1度チームの状況を見直しミーティングなどを積極的にやった。その中で練習に対する姿勢などは3年生が一番変わった。今回は少しいい結果が出たと思う。(区間賞という結果について)今回はエース区間ではなかったので来年はエース区間で区間賞を取れる実力をつけてチームの優勝に貢献する。今回2位という結果だったが納得はいってない。青学大に7分離されているようでは話にならないので来年こそは優勝できるように頑張っていく。(4年生に向けて)今までチームを引っ張ってきてくれて本当に感謝している。いつも明るく、きつい練習でも橋本キャプテン、(服部)弾馬(済4=豊川)さんをはじめ笑顔を絶やすことのないチームだった。今度は自分が最終学年になるので手本にしていきたい。
・10区 小早川健(済3=武蔵越生)
3大駅伝の中でも注目の大きい駅伝で、チームに貢献することを大前提にして挑んだ。また、それ以上に全日本のときの自分はふがいない走りをしてしまったので、その借りを返す意味でもあった。個人の結果はそこまで振るわなかったが、2位を死守したことと経験をしたことは次に必ず生きてくると思う。自分がタスキをもらった位置が早大とは1分前後だったので、2位死守することがアンカーの役目だった。前半から飛ばしすぎず一定したペースでゴールまで、後半落ちずに走ることがレースプランだった。(3年生同士のタスキリレーになったが)3年生が今回復路を走って、みんなで盛り上げていこうと話していた。全日本のときに野村とタスキをつなぐことができなかった。3年生同士でタスキをつなぐということは、他の学年よりも気持ちがこもっているので、その気持ちを受けてしっかり走ろうと思っていた。スタート前に野村が区間賞を獲ると聞いていたので、自分もその流れに乗って結果を出すという思いで挑んだ。
TEXT=伊藤空夢 PHOTO=小野由佳莉、畑中祥江、中村緋那子、青池藤吾、土橋岳、吉谷あかり