記事
第86回日本学生陸上競技対校選手権大会
9月8日(金)〜10日(日) 福井運動公園陸上競技場
▼2日目
男子100m 決勝
(風:+1.8)
1位 桐生 9"98
※日本人初9秒台、日本新、日本学生新、大会新、東洋大新
多田(関学大)とし烈な優勝争いを繰り広げる桐生
表彰台では満面の笑みを浮かべた
ついに悲願の達成だ。全日本インカレ100m決勝の舞台で桐生(法4=洛南)が日本人未踏の9秒98という記録を叩き出し、会場を大いに沸かせた。
日本選手権で敗北を喫した多田(関学大)との直接対決が注目される中、迎えた100m決勝。序盤はスタートが得意な多田にリードを許しながらも互角に持ち込むと、 中盤から終盤にかけては得意の伸びで詰め寄り、僅差で多田に競り勝った。フィニッシュタイマーはなんと“9.99”。会場からどよめきが起こる中、「10秒00にならないことを祈っていた」と桐生。やがて電光掲示板に“9.98”の数字が表示されると、場内は大歓声に包まれる。桐生は喜び を爆発させ、競技場を駆け回り雄叫びをあげた。
「天が与えたご褒美なのかな」と梶原監督は語る。洛南高校時代に10秒01をマークし、9秒台に大手をかけてから4年。特に今季は世界陸上の個人代表落ちを経験し、苦しい時期を過ごしてきた。今回が東洋大のユニフォームを着て最後の100mのレース。「たくさんの人が観ていて、その中で9秒台を出せたのですごくうれしい」と桐生は改めて喜びを噛みしめた。
今回、世界へ向け新たなスタートラインに立った桐生。次の目標は「世界の舞台での9秒台、自己ベスト」だ。日本人唯一の9秒台記録保持者として、世界の舞台へより一層の期待が高まる。日本陸上界を背負う存在として、これからも桐生の戦いは続いていく。
◾️コメント
・梶原監督
(桐生の結果について)今回のインカレは最後のインカレだから一番お前がやりたいようにやろうというところで、リレーに出なければそれでいいと、本人にそういった話をした時に100mも200mもリレーも全部やりたい、そして全部勝ちたいと言っていたのでそうしようと。足に不安があり、200mの予選を少しやって100mの決勝をやるかどうか決めようと。本当に直前までどうするか、最後に本人が100mもやりますということで走らせた。今まで順調に練習して、今日こそ(9秒が)出るよと言われてなかなか出なかったり、日本選手権なんかも苦しい思いをしたり、そういうことを経験しながらも一生懸命やってきた事に対する天が与えたご褒美なのかなと思う。最初に9秒台に大手を掛けて、その後いろんな人間が迫ってきて日本選手権で負けて。でも一番最初に(9秒が)出せてよかったなと。条件さえよければ9秒台は出るよと言ってきたのでようやく現実になってうれしい。ただ、まだ最初の壁を打ち破った段階だからこれからが本当の勝負というのは思う。でも大学生のうちに破れてよかったのかと思う。本当によくやった。
・桐生(法4=洛南)
100mのときはたくさんの方々が観ていて、その中で9秒台を出せたのですごくうれしい。(タイムを見たときは)9秒99で止まったので、10秒00にならないことを祈っていた。(今大会は)出るからにはしっかり勝負したいと思っていた。この記録に甘えずにまた来年から一からスタートしたいと思う。今年は世界大会に出れなかったので、世界の舞台で9秒台、自己ベストを出せるような選手になりたいので今後も応援よろしくお願いします。
TEXT=大谷達也 PHOTO=大谷達也、福山知晃