Article

記事


2017.09.29
硬式野球

[硬式野球]眠れる主砲のお目覚め弾 中川、グランドスラムに「久しぶりの感覚」

平成29年度東都大学野球秋季1部リーグ戦

9月29日(金)神宮球場

○東洋大11-2立正大


(イニングスコア)

2回戦










立正大







東洋大







×
11


(東洋大)

○飯田(2勝2敗)、甲斐野-西川


・打撃成績

打順守備
名前




(中)
竹原(法3=二松学舎大付)


(左)古田(法4=天理)





山田(総2=桐生第一)


納(総1=智弁学園)
3
(一)佐藤(法2=聖光学院)

4
(二)
中川(法3=PL学園)



5
(三)田中将也(営4=帝京)
6
(捕)西川(営4=浦和学院)


7
(指)
諏訪(総1=浦和学院)




走指
蛭田(法4=平塚学園)




打指
山本(法1=作新学院)



8
(右)宝楽(営4=PL学園)



9
(遊)
津田(総2=浦和学院)








33
11
10


・投球成績

名前


球数

四死球


飯田(営4=常総学院)5 
21
74


3

甲斐野(営3=東洋大姫路)
15
51





中川自身初のリーグ戦でのグランドスラムとなった

ホームに生還後、スタンドから応援する仲間に笑顔を見せた中川


最速である152㌔を量産、安定した投球で自責点0の活躍をした甲斐野

「中大戦より調子がでてきている」と話した竹原は打撃・守備ともに魅せた

 

 リーグ連覇を目指す上で、負ければ勝ち点献上と土俵際に追いつめられる立正大2回戦は9点差をつけて軍配は東洋大に。押し出しの四球で初回に先制すると、4回には宝楽(営4=PL学園)の右翼線を破る適時三塁打で1点を追加。5回に4番・中川(法3=PL学園)の左前への適時打で2点を重ね、6回には再び中川が値千金の満塁本塁打で立正大を突き放す。投げてはエース・飯田(営4=常総学院)から甲斐野(営3=東洋大姫路)の継投で、被安打9ながらも2失点と守り切り、一勝一敗と試合を振り出しに戻した。

 

 これまで6試合を戦い、計5安打。打点はわずか2と四番の役割を果せずにいた。「引き出しがあるというか、何を打つか迷ってしまい、自分のバッティングができていなかった」。小学1年から野球を始め、中学時代、そして今年8月には世界の舞台も経験した中川。広角に打ち分ける技術、遠くに飛ばせるパワーとリフトの強さ。天性の才能、そして惜しむことのない努力を続けてきた中川だからこその悩みである。国内外問わず様々な投手、多様な球種を経験してきたからこそ、バッティングの引き出しが増え、何を打とうか考えてしまい、考えるほど打てなくなる日々が続いた。

 

 主砲の目覚めは監督からの助言だった。体が前に突っ込んでしまう中川に対し、高橋監督が「手を前にして、それを軸にしてまわるように」と指導。監督の教えを胸に、一死1、3塁と好機で臨んだ5回の打席。フルカウントから打球を左前に運び2打点の活躍をみせると、もう勢いは止まらない。二死満塁の好機で回ってきた6回の打席では、内角低めを仕留めると、試合を決定づける一撃が左翼席へと飛び込む。歓声鳴りやまぬベンチ、スタンドの仲間に右手を高く掲げ応えた。中川自身リーグ戦初のグランドスラム、そして1試合6打点の大奮闘に「ここまでチームに貢献できていなかったので、打ててよかった。監督さんの指導のおかげ」と安どの表情を見せた。

 

 目覚ましい四番としての活躍にはもう一つ意味があった。5回の適時打、そして6回の満塁本塁打はいずれも立正大の3番手・釘宮から放ったもの。実はこの二人、6年前に行われた第15AA世界野球選手権の日本代表としてともに戦った仲であった。「釘宮とは一緒に日本代表として戦ったので、特に負けたくなかった」と気持ちが入る。試合後、釘宮に対して2打数2安打6打点の大健闘ぶりに、「釘宮との勝負に勝てた」と中川は笑みを浮かべた。

 

 戦う前から100%確実な勝利など存在しない。「優勝へ向け、先を見ずに一戦必勝で戦っていく」と、星勘定よりも目の前の試合を勝つことに全力を注ぐ中川。目指すは戦国東都の頂、そして大学野球の聖地・神宮球場で一番長い秋を過ごすために。主砲の一振りが頂点への道を切り開く。


■コメント

・高橋監督

中川は手を前に出させたら、2点タイムリーとグランドスラム。大したもんだよ。竹原が最初けががあったからDHにさせていたけど、守備に就いてから打撃がいいんだよ。1番が向いてるね。勝ち点2でも日大が上がってくるからまだ分からない。厳しい戦いだね。3回戦が来週に持ち越されたからこれがどうなるか。勝てるように頑張るよ。

・中川(法3=PL学園)

打てない期間が続いていて、ここまでチームに貢献することができていなかったので今日は打てて本当に良かったし、監督さんの指導のおかげです。つまった打球や、体が前に突っ込んでしまっていたので、手が出しやすいように、手を前にして、軸でまわるようにということを監督さんに言っていただいた。ここまでずっと野球をやってきていて、引き出しがあるというか、考えてしまって、何を打つか迷ってしまい、自分のバッティングができていなかった。(ホームランを打った時)久しぶりの感覚で、打った瞬間は(ホームランか)分からなかった。釘宮とは一緒に日本代表として戦ったので、特に負けたくなかった。釘宮との勝負には勝てましたね。優勝へ向け、この先どうなるか分からない。先を見ず、目の前の試合を一戦必勝で戦っていく。立正大から勝ち点を取ります。

・竹原(法3=二松学舎大附)

立正大戦になってから前の中大戦より調子は出てきてる。1つのバロメーターとして逆方向にもヒットが出てよかった。1日挟んで各投手の傾向や得意球を頭に入れて臨んだ打席でその成果が出せたものと出せなかったものがある。出せなかった分は次の立正大戦で発揮したい。(昨日の一日でチームとして)中軸が機能したら確実に勝てるというのは毎試合言っていることだし、4番が打てば極論勝てる。その中で今日は4番の一振りが響いたと思う。(フェンス際の当たりで好捕があったが)打たれた瞬間は正直入ったと思ったけど、ライトの宝楽さんがまだ追えると言っていたので追ったら捕れた。(次戦、国学大か立正大との試合となりますが)どちらでも勝つだけ。その中で国学大なら春は2試合で1本しか打ててないから借りは返したい。立正大相手でも勝つことが第一だけど2安打打って出塁率と打率を上げたい。


TEXT=永田育美 PHOTO=伊藤梨妃、永田育美