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第29回出雲全日本大学選抜駅伝競走
10月9日(月・祝) 出雲大社正面鳥居前〜出雲ドーム
総合5位 東洋大 2:15'36 (45.1km)
1区(8.0km) 西山和弥 23'40 (5位通過・区間5位)
2区(5.8km)相澤晃 16'23(5位通過・区間6位)
3区(8.5km) 山本修二 24'29(2位通過・区間2位)
4区(6.2km) 吉川洋次 18'44(3位通過・区間4位)
5区(6.4km) 今西駿介 20'25(3位通過・区間10位)
6区(10.2km) 渡邉奏太 31'55(5位通過・区間11位)
攻めの姿勢でスタートを切った西山
第1中継所 1区・西山(左)→2区・相澤
第2中継所 2区・相澤(左)→3区・山本
第3中継所 3区・山本(奥)→4区・吉川
第4中継所 4区・吉川(右)→5区・今西
第5中継所 5区・今西(左)→6区・渡邉
渡邉は苦しい表情を浮かべながらも走り切った
今大会は王者復活のためのステップとして下級生中心のフレッシュなメンバーで挑んだ。1区・西山(済1=東農大二)が1年生ながらも奮闘し5位でつなぐと、その後3区・山本(済3=遊学館)が区間2位の快走で一時はトップに立つ。しかし後続がそのリードを保てず、結果は5位。今年の駅伝シーズン開幕戦は、個々に課題が残るレースとなった。しかし、これから待ち受ける全日本駅伝(以下、全日本)、箱根駅伝(以下、箱根)へつながる確かな収穫も得られ、王座奪還への兆しを見せた。
距離が短い出雲駅伝(以下、出雲)は前半区間の走りが勝負のカギを握る。1区を任されたのはルーキー西山。また、つなぎ区間とアンカーには相澤(済2=学法石川)ら2年生が起用され下級生の走りに期待がかかるオーダーとなった。
気温は28度近くまで上がり、1区から脱水症状を起こして棄権するチームが出た過酷な今回のレース。その中でも1区・西山は1年生ながら積極的な走りを見せた。“怯まず前へ”。「東洋スピリッツをしっかり継承するような走りをしていきたい」と強い思いで先頭集団を引っ張っていく。後半は粘り切れなかったものの、トップ東海大と24秒差の5位で2区・相澤へ。タスキを受け取った相澤は前の選手を懸命に追うも、なかなか差を縮めることができない。さらに田村(青学大)が区間新記録の走りで猛追。田村に抜かれてしまい、1位とは40秒差で山本へタスキリレー。その山本が怒とうの追い上げを見せた。まず前を走る中央学大、神大を抜かし3位に浮上する。勢いそのままに松尾(東海大)、下田(青学大)と先頭集団で競る展開に。そこから抜け出した下田とともにトップ争いへ。そして一時は1位に躍り出るも中継所直前で下田がラストスパートをかけ、ついていくことができずに2位でタスキを渡す。注目の3区区間賞は6人抜きを果たした順大の塩尻。山本は12秒及ばず、区間2位で「満足のいくものではなかった」と悔しさをにじませた。それでも40秒の差をひっくり返す力走に酒井監督は「山本は非常に良かった」と称えた。
後半に入り山本から託されたタスキを掛け、4区を走るのはもう一人のルーキー吉川(ラ1=那須拓陽)。鬼塚(東海大)が追い上げてきて、3人の先頭集団でレースを進める。後半での巻き返しを狙ったものの自分の力を出し切れないまま、5区・今西(済2=小林)に3位でタスキを渡す。初の3大駅伝となった今西は「自分が区間上位で流れをつくる」と目標を掲げていた。しかし思うように体が動かず気持ちもきつくなっていき、優勝争いからこぼれてしまう。トップと1分40秒差の3位でアンカー渡邉(済2=吉原工)へ。3位以内は死守していきたいところだったが、渡邉は焦りと暑さからか脱水症状を起こし途中失速。日体大と順大にかわされ、5位でゴールテープを切った。
4年生不在で駅伝経験の少ない若いメンバーで挑んだ出雲。酒井監督は「出雲を経験したことで全日本、箱根に続いていくと思う」と、若い選手たちの未来を見据える。チームの中心として戦った山本は「自信と収穫と課題のあるレースだった」と、この出雲路を振り返った。山本のエースへの着実な成長も見られ、また西山と吉川も後半の走りに課題を残したものの区間5位以内でレースをまとめた今大会。この経験を糧に全日本、箱根での王座奪還へ。さらなる飛躍を目指す、鉄紺集団の成長に注目だ。
◾️コメント
・酒井監督
若手中心とは言え出るからには3番を取りたかったところ。収穫もあり、3区の山本は非常に良かった。チームの中ではエース格になりつつあるが、(区間順位で)塩尻(順大)に負けたり、中継所で最後下田(青学大)に競り負けているところでまだ課題も残る。だが前と40秒差遅れてきてもトップに立つんだという戦略を彼なりにこだわってやってくれたことは今までにない、いいところだと思う。昨年の全日本でのアンカー、箱根の2区と確実にエースへの道を歩んでいると思う。(1年生は)1年生ということで考えればまずまずだが、チームの主力として考えると1区ではラストもう少しもがいてほしかった。吉川も先頭に追い付いたところだったので、最低でも2位集団の青学大に付いていくなど、1年生も課題が多かった。(若い選手中心だったが)経験をさせることと次に向けて、出雲を経験したことで全日本、箱根に続いていくと思うので。2年生は相澤ももう少しだったのと、今西、渡邉が区間2桁だったのでそこでレースの流れが止まってしまった。そこは経験をさせると言っても最低限のところはやっていかないといけない。(渡邉は)脱水。他のチームもけっこう棄権者がいた。(暑さも)レースに影響はあった。3番を死守できなかったところは本人も(タスキを)貰う位置で焦りもあったと思う。 (全日本までの課題は)選手層が薄いので、思い切って今使っている選手達を起用できるようにつくっていきたい。ただ、ポイントとなる区間はしっかりレースを組み立てる力はあるので全日本もどこかで仕掛けたいと思う。
・1区 西山和弥(総1=東農大二)
良くもなく悪くもなくという感じだった。(レースプランは)積極的に怯まず前へという東洋スピリッツをしっかり継承するような走りをしていきたいと思い、前半から積極的に前の方でレースを進めていこうと思っていた。(レース展開は)自分のペースの変動とか阪口さん(東海大)と協力してペースの上げ下げができたかなと思う。(終盤は)かなりきつかった。足も動かなかった。追い付かれたらどうしようと考えていて、とにかく現状維持、5番という位置はとにかく確保しないといけないという思いで走った。(初めての大学駅伝だったが)もっとレベルアップしていかないといけない。阪口さんや山藤さん(神大)に歯が立たなかった。
・2区 相澤晃(済2=学法石川)
(起用されたときは)今年は若手のチームということで、自分が主力となってやっていくという思いで走ろうと思った。(レース展開は)自分が思ったより少し後ろだったが、まずは前の人に追いついて並走して前を追っていこうと思った。最初は(前とは)詰まったが途中からなかなか詰まらなくなり、そこからきつくなってしまった。タイム的には想定したタイムとあまり変わらないが、前がもっと良かったので自分ももっと追えれば良かった。前半からしっかり攻めて、後半は粘るという作戦だったがラスト2kmぐらいから粘れなくてペースを落としてしまった。(監督からは)前とは少し離れたところだったので、しっかり最初から冷静に走って順位を上げてくれと言われて頑張ろと思ったが、追いつけなかった。(2年生が多くチームエントリーしたが)チームの中でも主力は2年生に多いので、2年生がこのあとの全日本、昨年度は誰も走れなかった箱根をしっかり走れればいいなと思う。
・3区 山本修二(済3=遊学館)
(レース展開は)1、2区が終わった地点で5位、また前が見える位置でタスキを渡してくれたので前を追うことができた。(レースプランは)最初の5000mを14分1桁で走ろうという思いでいた。(区間2位だったが)やはり区間賞を獲ることを宣言していただけに、満足のいくものではなかったが、自信と収穫と課題のあるレースだった。
・4区 吉川洋次(ラ1=那須拓陽)
(レースプランは)先頭は速い動きでのピッチやスピードなどの動きができていたので、最初に速く入りすぎても自分でちょっと危ないなとは思わずに落ち着いていて、そのペースをコンスタントに刻んでいった。ラスト1kmからもう1度切り替えて1番2番の競り合いのイメージが自分の中にはあった。(2位でタスキを渡されたことについて)やっぱり(山本)修二さんがつないでくれるということで安心はしていたし必ず上の区間で競ってきて自分に持ってくることはわかっていたので、最初に中間地点で順位を聞いたときは自分もうれしかったし、自分にとってもチャンスになっていると感じた。だが、やっぱりまだまだ足りないところがたくさんあるなと感じた。その足りない部分というのが今回の大きな大会で自分のいろんな体的な問題などの弱さが出てしまったかなと思う。(具体的な弱さは)走る前のフィジカルだったり腹筋を入れるというようなことで、弱点のところを走る前にカバーするということを監督からも指示を受けていた。また、ウェイトなどもしっかりやっていたつもりだったが逆に柔軟性などが無かったことが、筋肉的なお腹の問題にもつながってしまったと思う。後半にしっかり戦うという自分のイメージの中でそういう状況になってしまったので、後半も自分の力を十分に出し切れずにずるずると終わってしまったというのが、監督の期待に応えられなかったということですごく自分の中で悔しく思う。
・5区 今西駿介(済2=小林)
(初の大学駅伝となったが起用されたときは)世田谷記録会を走ったときに、出雲を走るなとわかっていたので覚悟していた。区間も大体わかっていた。つなぎ区間だったので、自分が区間上位で流れをつくるっていうのが目標だった。こういう結果になってしまって申し訳ない。(レース展開は)前に青学大と東海大がいたので、最初追いついて楽をしようかと思ったが体が全然動かなくて、気持ち的にもきつくなってしまってずるずるいってしまった。(結果について)自分のところで優勝できる順位と位置だったと思うが、自分が全て前の人の貯金も崩してしまったし、自分のせいでこういう順位になってしまった。今回はしっかり反省して、全日本で勝てるようにしていきたい。
TEXT=稲村真織 PHOTO=星川莉那、小島敦希、福山知晃、伊藤梨妃、藤井圭、大谷達也