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第27回出雲全日本大学 選抜駅伝競走
10月12日(月・祝)出雲大社正面鳥居前~出雲ドーム
総合4位 東洋大 2:10'40
1区 12位 高橋尚弥(工4=黒沢尻北) 23'57 (通過12位)
2区 3位 服部勇馬(済4=仙台育英) 16'03 (通過8位)
3区 2位 服部弾馬(済3=豊川) 24'13 (通過5位)
4区 1位 口町亮 (法3=市立川口)17'49 (通過3位)
5区 3位 野村峻哉 (済2=鹿児島城西)18'41 (通過3位)
6区 4位 櫻岡駿 (済3=那須拓陽)29'57 (通過4位)
出雲大社から勢いよくスタートした1区・高橋
第1中継所 高橋(右)― 服部勇
第2中継所 服部勇(左)― 服部弾
第3中継所 服部弾(右)― 口町
第4中継所 口町(右)― 野村
第5中継所 野村(左)― 櫻岡
4位でアンカー・櫻岡がゴールテープを切った
口町は三大駅伝初出場で区間賞を獲得した
4年ぶりの優勝ならず、4位で駅伝シーズン開幕戦となる出雲駅伝を終えた。1区で12位と大きく出遅れたことが敗因となった。しかし3区の服部弾が5位まで順位を押し上げ立て直すと、続く4区の口町も3大駅伝初出場ながら区間賞を獲得するなど鉄紺集団としての意地を見せる。優勝は逃したが、課題であった中間層の力が伸び、十分に存在感を放つレースとなった。
出雲の1区は優勝のカギを握る要の区間である。そのため1区の高橋の出遅れが目標であった優勝に大きく影響した。出雲大社を勢いよくスタートした高橋は得意の下りで勝負に出ようとしていた。一時は先頭に立つが、そこで足をつかったことにより後半の平坦なコースで次々と他大学に抜かされてしまう。1区への気負いや前との差がなかなか縮まらない焦りが高橋に襲いかかる。第1中継所まで残り20m地点でまさかのコースを間違えるアクシデントが起き、この間に2チームに抜かされ12位でタスキリレー。高橋は「本当に申し訳ない」と悔しさをあらわにした。1位の駒大とは1分23秒差。波乱の幕開けとなった。
しかしここから東洋大の怒涛(どとう)の追い上げが始まる。2区服部勇は故障明けで万全な状態ではなかった。それでも最短区間でスピードのある選手がそろう中、主将としての役割を果たし8位まで順位を上げる。そして各大学のエースが集まった3区には現在調子がチーム内で最も良く、酒井監督からの期待も大きい服部弾が出走。「自分がトップに立つんだという気持ちで臨んだ」と話すように、先頭との差を確実に縮めていく。2秒差で区間賞こそ獲得できなかったが、トップの姿が見えない中で3位争いまで流れを引き戻す大健闘を見せた。酒井監督も「あと30秒早い位置でタスキをもらえれば15秒くらい良かったと思う」と語るほど。まさに真のエースとしての走りであった。
服部兄弟がつくった流れに乗り、4区の口町は東洋大唯一の区間賞を獲得した。3位集団は4人の選手で争っていた。口町は、1年次は控えにまわり、2年次にようやくメンバーに選ばれるも大会が中止となり、悔しい思いをしていた。3年目にしてついに果たした3大駅伝初出場。2年越しの思いを込めた走りがラストスパートにつながり単独3位で、5区へタスキをつなぐ。「今まで課題だったラストスパートを十分できたことが非常に良かった」と酒井監督も口町の走りを称えた。すると続く野村も初めての3大駅伝ながら後半の粘りが光り3位をキープ。そのままトップを追いたいところであったが、最長区間を任されたアンカー・櫻岡が中継所では20秒の差があったニャイロ(山学大)に序盤で抜かされ、最後は4位でゴールテープを切った。
優勝を狙っていた出雲駅伝は悔しくも4位で幕を閉じた。しかし3大駅伝初出場の口町や野村が存在感を放ったように、課題であった中間層の底上げへの取り組みが開花し、実戦でも生かすことができた。12位から4位まで順位を大きく押し上げた中盤区間の力は今後の自信になるに違いない。次の全日本駅伝は目前に迫っている。今回の悔しさをバネに鉄紺集団は更なるレベルアップを目指す。
■コメント
・酒井監督
1区で出遅れたことが優勝を逃した大きな敗因。出雲の1区は優勝を狙うチームには大きな重責があって、さらに1区の経験者がいない中だったので高橋は気負いが原因かなと。ミスは責めるが高橋は責めない。全日本で借りをしっかり返してほしいし、ミスに関してはチームとしても反省しなければならないことだと思っている。ただ、2区以降はだいぶ見えない位置から服部兄弟がレースを立て直してくれたので、4区と5区の初出場組がしっかり走れたことにつながった。仮定の話になってしまうが、アクシデントがなければ先頭集団に追い付ける可能性はあったかなと。特に3区の弾馬は、久保田(青学大)に区間順位は2秒差で負けてはいるが、 全く見えない位置での走りだったので、あと30秒早い位置でタスキをもらえれば15秒くらいは良かったと思う。(中間層の選手の活躍については)口町の区間賞は弾馬がいい位置で持ってきて、さらに今までの課題だったラストスパートを十分できたことが非常に良かった。見ていても、一旦少し落ちたところから抜け出して単独3位になったことは大きかったと思う。野村も後ろに追い付かせないで3位をキープしてよく走れていた。前の山村(青学大)と西山(駒大)が競っていた分、区間順位は7秒差で負けはしたが野村も並んでいれば同じくらいで走れたと思う。(全日本駅伝に向けて課題は)つなぎ区間の選手は負けていないと思うので、優勝となるとやはり主力区間。青学大は強いので、服部兄弟や上村に続くあともう一枚をつくらなければならない。残りの期間で少しでも近づけられるようにしていきたい
・1区 高橋尚弥(工4=黒沢尻北)
ずっと集団に付いていき、いけたらいこうと思っていた。最初の方に余裕があったので下りで仕掛けようと思い仕掛けたが、そこで足をつかってしまい後半はもたなかった。そこから前へいこうとしたのに集団から離れてしまって悔しいレースとなった。後ろに(服部)勇馬と弾馬がいて、自分はトップでなくても20秒差以内で走れれば良かったのに離されてしまって、本当に申し訳ないと思う。(これから走る選手に向けて)自分のせいでこうなってしまったが、残りのみんなは調子が良いので少しでも上に上がってほしいと思う。
・2区 服部勇馬(済4=仙台育英)
故障明けということでまだまだ練習が積めていない中でどれだけつなぎの役割を果たせるかを意識して走った。結果的に先頭と少し離されてしまい申し訳ない気持ち。(12位でタスキをもらって)高橋も準備ミスや緊張があったと思う。仕方がない、悔やんでも悔やみ切れないことなので次に生かしてほしい。(レース展開は)前半はおさえていこうと思っていた。後ろから選手がきていたことにも気にせずに走り切れたかなと。後半は主導権を握られて、「最後だけは負けられない」という気持ちで潰滝(中央学大)にラスト勝てた形になった。まだまだ5~6割のコンディション。全然練習できていないので、ここから少しずつ上げていければと思う。(3区の弾馬は)今季調子が良くて、自分の走りができれば区間賞も見えてくる。前半遅れてしまったがそれは気にせずに、3区から流れに乗って頑張って走ってほしい。(チームとして)夏も自分が故障をしていない中でもしっかりといい練習ができていた。とにかく次につなげていきたい。
・3区 服部弾馬(済3=豊川)
(3区を任されて)自分がトップに立つんだという気持ちで臨んだ。しっかり練習できていたので自信はあったが、区間賞は2秒負けてしまったので次へのバネになると思う。(レース展開は)駅伝なのでどうなるかわからないので、自分のペースでいければと思っていた。タスキを受けたときは前とは結構差があった。ラスト2、3kmの下ったところ辺りで早稲田などの集団が見えてきて、自分のペースで押していって追い付いた。(3位争いまで流れを引き戻したが)仕事をしたとは思うが、区間で1位になれなかった。すごく悔しい。(後続に向けて)1、2位とは少し離れてしまったかもしれないが、確実に3位になれる力はあるので、そこは確実にとって、それ以上も狙っていってほしい。
・4区 口町亮(法3=市立川口)
去年は中止で走れなかったし、全日本と箱根はメンバーに入らず、1年越しに走ることができた。3年目にして初の駅伝になったが、走ることができたし区間賞で良かった。(レース展開は)向かい風やコースの地形はあまり気にせず前を追った。4人の集団で走っていたので、その中でかけ引きをする形になった。監督からは3位集団でつなぐことを指示されていた。弾馬が前が見える位置まで追い上げてくれたので走りやすかった。レース中は集団を引っ張る形になり苦しかったが、抜かれずに粘れたので良かった。(5区、6区の選手に向けて)最後まであきらめずに前との差を詰めてほしい。
・5区 野村峻哉(済2=鹿児島城西)
競り合いの展開でのタスキリレーだったので、スタートは一人で走るより走りやすい展開だった。レースプランでは、前半を少し抑えて後半に上げていこうと思っていたが、思ってたより前半のペースが速かった。それでも後半も粘れて走れたの良かった。(周りは意識したか)区間賞を取る気持ちで走った。前の選手も見えていたが、なかなか縮まらないのが苦しかった。(アンカーに期待することは)前も見えてるし、櫻岡先輩も力は十分あるのでトップまで押し上げていってほしい。
・6区 櫻岡駿(済3=那須拓陽)
(アンカーを任されたときは)アピールできる区間なのでしっかり存在感を出したいと思っていた。直前の練習もしっかりできていたので調子は良かった。前のチームを意識するよりも、力まずに自分のリズムをしっかりつくっていこうとしていた。後ろの選手が追い付いてきたら、食らい付いていこうとしていたが、引き離されてしまい実力不足だった。競り合えるレースができたら、仕掛けることもできたのに、ほとんど一人で走る状態になってしまった。(今後は)全日本駅伝では区間賞を取れる走りをし、トラックの持ちタイムも大幅に更新して、上で戦える力をつけたい。
TEXT=福山知晃 PHOTO=小賀坂龍馬、吉川実里、福山知晃、青野佳奈、畑中祥江、伊藤空夢、石田佳菜子、野原成華