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秩父宮賜杯 第49回全日本大学駅伝対校選手権大会
11月5日(日)熱田神宮西門前~伊勢神宮内宮宇治橋前
総合5位 東洋大 5:16'29(106.8km)
1区 (14.6km) 相澤晃 43'24(1位通過・区間1位)
2区 (13.2km) 渡邉奏太 38'29 (1位通過・区間2位)
3区 (9.5km) 西山和弥 27'21(1位通過・区間3位)
4区 (14.0km )山本修二 40' 11(1位通過・区間2位)
5区 (11.6km) 中村駆 34'55(1位通過・区間5位)
6区 (12.3km)浅井崚雅 37'29 (4位通過・区間16位)
7区 (11.9km)小笹椋 35'32(5位通過・区間8位)
8区 (19.7km)吉川洋次 59'08(5位通過・区間4位)
第1中継所 1区・相澤(左)→2区・渡邉
第2中継所 2区・渡邉(左)→3区・西山
第3中継所 3区・西山(左)→4区・山本
第4中継所 4区・山本(左)→5区・中村駆
第5中継所 5区中村駆(左)→6区・浅井
第6中継所 6区・浅井(奥)→7区・小笹
第7中継所 7区・小笹(奥)→8区・吉川
堂々の走りをみせフィニッシュした吉川
収穫の大きい全日本大学駅伝(以下、全日本)だった。1区 相澤(済2=学法石川)が区間賞の走りを見せ最高のスタートを切ると、その流れに後続も続く。2位と1分以上の差をつけ、レース中盤まで首位をひた走る。しかし、終盤他大の猛追により徐々にその差は縮められてしまう。6区で先頭を譲るとそこから巻き返せず、最終的に昨年から順位を1つ上げ、総合5位でフィニッシュした。目標であった3位以内には届かなかったが、先頭でレースを進められたことや主導権を握って走れたことなどは大きな収穫となった。
「自信はあった」。その言葉通り、1区・相澤が目覚ましい走りを見せる。レースは序盤から留学生選手の揺さぶりなどもあり、速い展開で進んでいく。それでも、粘って先頭集団でレースを進めた相澤。終盤に何度か仕掛けて、最後に集団から抜け出し後続を引き離す。学生駅伝初となる区間賞を獲得し、東洋大に最高流れを呼び込み2区・渡邉(済2=吉原工)にタスキリレー。同学年の相澤の走りに刺激を受け「自分もやってやる」と意気込んだ渡邉は、1区からのいい流れに乗り快走する。序盤からしっかりとした自分のペースでレースを展開すると、終盤残り3kmで勝負をかけた。タスキを受け取ったときは1秒だった後続との差を13秒に広げ、1位で3区・西山(総1=東農大二)にタスキを渡した。渡邉は各大学のエースが集う2区で、見事区間2位に輝やいた。「後ろに自分がいるから安心して走れ」と山本(済3=遊学館)に言葉を貰った西山は、攻めの走りを見せた。後半の伸びこそは欠いたものの、粘り強い走りでトップを守り切る。自身の誕生日に花を添える走りを見せた。4区・山本は区間賞と後続との差を広げることを目標に掲げた。終始、安定感のある走りで2位の東海大との差を1分以上広げ、まさにエースらしい走りを見せた。惜しくも、2秒差で区間賞には届かなかったものの自分の役割をしっかり果たした。
前半区間は完璧だった。4区でトップに立つという酒井監督の予想を上回り、1区から主導権を握る見事なレース展開となった。
後半区間の先陣を切るのは5区・中村駆(済2=西京)だ。レース前半はいいペースで走っていたものの、「速く入りすぎてしまった分、後半にツケが回ってきて粘り切れなかった」と後半失速。越川(神大)の猛追に差をかなり縮められてしまうも、なんとか1位で6区・浅井(済1=一関学院)にタスキを託した。初めての大学駅伝となった浅井は「調子はいい状態だった」と振り返るも後半はペースが徐々に落ちていき、4位まで順位を落としてしまう。続く7区・小笹(済3=埼玉栄)は1つ前を走る青学大をなんとか捕らえようとするも、なかなかペースが上がらない。後ろにいた駒大に抜かれてしまい、5位でタスキは最終8区へ。最長区間のアンカー8区を任されたのは吉川(ラ1=那須拓陽)だ。アンカーは「プレッシャーを感じる」と語ったが、それを感じさせない落ち着いた走りを見せ区間4位の力走。5位で仲間の待つゴールへ駆け込んだ。自身の結果について「自信になった」と振り返り、今後ますます期待が高まる。
酒井監督は「選手層の薄さと先頭じゃないときの脆さ」を課題に挙げた。しかし、相澤の初めての区間賞獲得や渡邉の出雲駅伝の悔しさを晴らす走り、西山や吉川ら1年生の快走などチームの力は着実に上がっている。酒井監督が「中身に関しては非常に収穫が大きかった」と振り返るように5位という結果よりも、次の箱根駅伝(以下、箱根)へ向け内容の濃いものとなった。総力戦で挑む箱根では、王座奪還を目指し鉄紺集団の底力を見せる時だ。
◾︎コメント
・酒井監督
(区間配置の意図は)4区でトップに立とうと思っていた。1区から区間賞を獲ってくれて最高のスタートだった。(レースを振り返って)5区までは先頭で走っていて、6区がすぐ捕らえられてしまったが6区に関しては選手層が薄い中での1年生の起用なので、そこは覚悟の上。5番ということを考えると6、7区でもう少し走れたら3番はいけたのではないかなと思う。中身に関しては非常に収穫が大きかった。先頭でしか経験のできない育成があるからそれがしっかりできたこと、渡邉も出雲の失敗から今回しっかり走れたことも良かったし、相澤も 初めての学生駅伝区間賞だし、西山も少しずつ良くなってきている。西山以外で3区をつなげられる選手がいるかと言えばいなかった。山本はやっぱり区間賞を獲らせたかった。そこがまだ真のエースと言えないところ。今回エースらしい走りをしたのは神大の鈴木くん。そこに成績が出る。しっかり走ったチームが優勝する。収穫は先頭を走ったり、主導権を握れたこととそれを経験できたこと。課題はやはり選手層の薄さと先頭じゃないときの脆さ。そこをもう少ししっかりやっていきたい。(「1年生のために」と2、3年生が言っていたのは)2年生、3年生が流れをつくらないといけないだろうと(伝えていた)。1年生はまだ右も左もわからない状態なので、2年生になるとだいぶ経験してくる。(箱根に向けて)総力戦で挑むしかないので、今回出た者はさらに。今回出ていない者はなんとかしないと戦にならない。
1区 相澤晃(済2=学法石川)
自分で1区を志願して、1区を走らせてもらった。1週間前の調整でも今までで一番走れていたので、自信はあったしラスト勝負になったら東洋大らしい1秒を削り出す走りをしなければいけないと思っていたので、それができて良かった。想定してたよりも最初から留学生選手の揺さぶりがあって、最初はきつかったがペースが落ち着いてから粘れて、ラストも一回仕掛けて渡しかけてというのを繰り返して、後続を突き放そうと思っていたので良かった。前半しっかり集団で中にいて後半しっかり前に出てラストで勝負する作戦だった。途中抜き切れないところもあったが、自分的には最後しっかりスパートできたので良かった。3大駅伝で初めての区間賞なのでうれしい。後ろの区間まだ7人いて、自分が最初の区間で流れをつくれて良かった。(2年生同士のタスキリレーとなったが)自分たちの学年がカギになると思っていたので、自分たちの学年でしっかり差をつけて1年生に楽させてあげようと考えていた。後続にも2、3年生がいるので1年生のためにも1秒を削り出して、いいところで走らせてあげれればと思う。
・2区 渡邉奏太(済2=吉原工)
(1位でタスキが渡ったが)監督から電話で相澤がすごい攻めてるからと言われ、相澤も区間賞を取ったので、自分もやってやろうと思い走った。(レースプランは)集団で来ると思ったので、しっかり集団でレースを進めて、またエース区間ということもあって先頭が見える位置でタスキを渡すっていう目標があった。先頭でタスキを渡せたので良かった。(レース展開は)最初はあまりハイペースになり過ぎず、しっかり自分のペースでいけた。後半残り3kmのアップダウンで勝負をするというのがプランだった。(集団から抜け出したときは)一緒に走ってた人たちがきつそうだったので、もっときつくさせようと思った。揺さぶりをかけるとあまり反応がなかったのでこれはいけるなと思い最後までしっかり走ることができた。(結果について)走る前は出雲のあとあまり練習ができていなくて不安しかなかったが、今までも駅伝をしっかり走ることができなかったので、今回しっかり走ることができて一安心した。しかし結果は5位と良くないので、箱根に向けてまたしっかり練習していかないといけないと思う。
・3区 西山和弥(総1=東農大二)
(1位でタスキを貰ったときは)今回、本当は2区を走る予定だったが調子があまり上がらず3区になった。「2区いきます」と言ったが奏太さんが「1年生に負担をかけられない、僕が頑張る」と言ってくださったみたい。相澤さんと奏太さんがすごくいい流れで来てくださったので、東海大には詰められたが自分の中ではいい走りができたと思う。(レースプランは)先頭で来るなら自分のペースで気持ちよく走ろうと思った。1kmの通過が2分43秒くらいで、かなり速く入ってしまってそこが後半少し伸びなかった原因だと思う。しかし結果的に粘れたので良かった。(レース展開は)先頭だったのであまり後ろのことは気にせず、どこかで離れているかいないかと判断だけをしようと思っていた。監督から離れているという指示を聞くことができたので、まずまずな走りができたと思う。
・4区 山本修二(済3=遊学館)
1、2年生が前半3区までいってくれた。まず相澤が区間賞で2区(渡邉)奏太が区間2位で単独首位に立ってくれて、西山もしっかり粘っていい走りをしてくれたので僕が4区でエースとして区間賞を獲って、後続との差を広げることが僕の使命だったのでそれを目標にしていた。(西山とのタスキリレーについて)西山は出雲駅伝で思うように走れなくて悔しい思いをしていて、この駅伝にかける思いは人一倍強かったと思う。「後ろに自分がいるから安心して走れ」と声をかけて、のびのびとしっかり1年生らしく攻めの走りしてくれたので僕も思い切り走ることができた。(区間賞争いについては)本来もう少し目標タイムは早かったが、しっかりと後続と1分以上の差を広げることができたので、自分の仕事は果たせたかなと思う。
・5区 中村駆(済2=西京)
差を広げる役目だったが縮められてしまったので、6区を走る1年生とアンカーの1年にもう少し楽な走りをさせてあげることができなくて悔しい。先輩、後輩、同級生のつながりがいい順位でタスキを渡してくれた。最初は楽しかったが、速く入りすぎてしまった分、後半にツケが回ってきて粘り切れなかった。
・6区 浅井崚雅(済1=一関学院)
(調子は)走る前は調整段階1週間の間で徐々に調子が上がってきて、アップの段階でも動いていたのでいい状態で迎えられた。(レースプランは)先頭だったら、自分のペースで走って次の走者に渡す。あるいは、後ろから追う時などは、その人にしっかり付いていってしっかり粘るというプランだった。(レース展開は)最初飛ばしぎみで入ってそこから徐々に落ちていき、後ろの大学に追いつかれ少しは付いていけたが、離されてしまった。
・7区 小笹椋(済3=埼玉栄)
チームみんなで最低でも3位という目標をたててメンバー全員で大会に向けて、満足できるような練習も少しずつできていて故障者が少し出てしまったものの準備の段階としては良かった。(タスキをもらったときは)青学大の背中が少しずつ見えていたので少しでも早く追いつこうと走り出したが、結局差を広げられてしまってとても悔しい。前半から青学大を追って走ったがなかなか差が縮まらなくて、後ろの駒大と一緒に走る形となった。自分のペースがなかなか上がらなかったので、駒大がそこで仕掛けて前に出られてそれに対応できずにズルズルと下がってしまうという展開だった。今までの駅伝でずっとチームの足を引っ張ってきてしまって、まだまだ自分の課題が克服できていない。自分の課題を克服することから明日からの練習でやっていきたい。今回のレースで個人的には情けない走りをしてしまったが、前半の区間では東洋らしい走りを見せられたと思うので、箱根では全員が今回のような走りをして王座奪還に向けて頑張っていきたい。
・8区 吉川洋次(ラ1=那須拓陽)
練習を積んでいく中で監督と話をして自分でこの区間をやってみたいと伝えた。東洋大のアンカーを務めるということは責任も重大でこんなにプレッシャーがあると思っていなかったが、前半のレースをテレビで見ていて最高の流れできていたので自分の自信とやる気につながった。状態も悪くなかったので落ち着いてレースに臨むことができた。(レースの)展開はある程度予測していて、最初はガンガン入らずにペースに乗れるタイムで入ってそこから安定して押していくというのを自分の中で決めていて監督にも伝えていた。 5位でタスキを受け取ったので後ろは見ずに前だけを見て走ろうと思っていた。(前の選手とは)なかなか差が詰まらず中盤広がるときもあったが、後半も焦ったら駄目だと思っていたのでラストもしっかり上りからもう1回切り替えていけたことが区間順位やタイムにつながったと思う。(区間4位は)長い区間で2桁になるのではないかというのもあったと思うが、(区間4位で)かなり自信にもなった。足りないところの方が多かったが、今回長い距離を走るチャンスをいただけたので、すごくたくさんのことを吸収できた。今後、箱根で監督にやりたいことや挑んでみたいことを伝えたい。今回の4区までのチームに貢献できるような、しびれるような走りができるようにしたい。
TEXT=森崎睦仁 PHOTO=松本菜光花、吉川実里、小野由佳莉、稲村真織、大谷達也、森崎睦仁、小島敦希、福山知晃