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第95回東京箱根間往復大学駅伝競走 往路
1月2日(水)大手町読売新聞東京本社前~箱根町芦ノ湖駐車場入口
往路1位 東洋大 5:26'31※往路新
1区(21.3km) 西山和弥 1:02'35(1位通過・区間1位)
2区(23.1km) 山本修二 1:07'37 (2位通過・区間4位)
3区(21.4km) 吉川洋次 1:02'33 (2位通過・区間4位)
4区(20.9km) 相澤晃 1:00'54 (1位通過・区間1位)※区間新
5区(20.8km) 田中龍誠 1:12'52(1位通過・区間8位)
往路連覇に笑顔を見せた
1区区間賞で流れをつくった西山
最後の箱根となった山本修は花の2区に出走
吉川は3区区間4位と堅実な走りを見せた
驚異的な走りで4区の区間記録を更新した相澤
2年連続5区の田中龍はリードを守り切った
ゴールの芦ノ湖に並ぶ黄金のウエアが一段と輝いて見えた。5年ぶりの総合優勝を狙う東洋大は1区・西山(総2=東農大二)の区間賞から始まり、4区・相澤(済3=学法石川)の区間新記録が勝負を決定づけた。二年連続での往路優勝を飾り、悲願の総合優勝へ向け視界は良好だ。
昨季1区区間賞と鮮烈なデビューを果たした西山が今季も真価を発揮した。スローペースで互いがけん制しあう展開が続く中、迎えたターニングポイントの六郷橋。アップダウンの勢いでロングスパートをかけた西山は誰一人寄せ付けない。昨年の区間賞獲得時を彷彿(ほうふつ)とさせる走りで鶴見中継所にトップでタスキを渡した。二年連続での1区区間賞はフルマラソン日本記録保持者の大迫傑(ナイキ)以来。今季の駅伝シーズンは不調に喘いでいた西山だったが、壁をひとつ乗り越え、ようやく笑顔を見せた。
2年ぶりに花の2区へエントリーされたエース・山本修(済4=遊学館)は西山がつくった勢いを絶やさない。学生トップクラスのスピードを誇る堀尾(中大)と並走して後続を突き放すと、難所と言われる権太坂の上りで堀尾を突き放し単独首位に。最後の箱根を日本人2位の区間4位、さらに67分台の好タイムでまとめ、まさにエースといった頼もしい走りを見せた。しかし、残りわずかのところで猛追を見せたヴィンセント(国士大)に逆転を許し、2位で戸塚中継所を迎える。
序盤は鳴りを潜めていたが、箱根総合5連覇がかかる王者・青学大が黙ってはいない。3区に起用された青学大のエース・森田が驚異的な走りで東洋大に詰め寄る。対する東洋大・吉川(ラ2=那須拓陽)は、落ち着いた走りを展開するも、残り数kmで併走され2位に転落。それでも吉川は動揺することなく自らのペースを坦々と刻み、青学大とのタイム差を最小限に抑えて4区の相澤へタスキをつないだ。
先頭と8秒差でタスキを受け取った4区の相澤。まさに圧巻の走りだった。瞬時に前を行く岩見(青学大)を抜き去ると、そこからは相澤の独壇場。入りの5kmを14分17秒のオーバーペースで展開するも、相澤の走りが衰えることはなかった。着々と後続との差を広げ、区間記録を大きく上回る区間新記録を樹立。「自分でも驚いている」と相澤、自身が設定していたタイムを30秒上回るだけでなく、コース変更前まで「不滅の記録」と謳われた藤田敦史(現・駒大コーチ)の4区区間記録(参考)を更新した。酒井監督も「4区に相澤がいるのがストロングポイント」と隙をついた采配で勝負を決定づけた。
前回と同じく逃げ切りの展開となった山上りの5区。二年連続で山上りに挑んだ田中龍(済2=遊学館)が成長した走りを見せた。2位の東海大・西田が快走を飛ばし、東洋大の背中を捉えようと試みたが、田中龍は一定のペースを守り切る安定した走りで1位を死守。前回のタイムを1分22秒縮める力走だった。昨季はどこかぎこちなかったガッツポーズも一転、自信に満ちた表情で芦ノ湖のゴールテープを一番に切った。
往路優勝を成し遂げた東洋大だが、2位・東海大との差が1分14秒と間近に迫っている。特に6区中島、7区坂口の並びは強力で、東洋大の往路優勝へ一番の敵となるだろう。また、大会5連覇を狙う青学大との差は5分8秒。大きな差はあるが、決して油断はできない。「総合優勝のためにしっかり挑戦者として挑みたい」と酒井監督。5年ぶり総合優勝へ、勝利はもう目の前だ。
■コメント
・酒井監督
(往路優勝した気持ちは)狙っていた往路優勝だったので、達成できてよかった。(往路の戦略は)練習の消化率によって、考えた要素と、区間の勾配と他大学との比較。前回と2、3、4は変えた。(1区西山選手は)西山が出雲、全日本の悔しさを乗り越えての区間賞獲得は非常に大きかった。タイム以上にチームにとっては最高の滑り出しだった。(2区の山本選手について)山本は区間4位、日本人2位だった。山本のタイムも非常にいいが、それ以上に4年生としてエースとして、走らなければいけないんだという、そういうところが感じ取れて、私も感動した。(出雲駅伝以来のレースとなった3区吉川選手について)吉川は本当にギリギリだった。3区は青学大の森田選手が非常にいい走りで来て、それでも彼はいい役割を果たしてくれた。昨年の山本より20秒くらい悪かっただけなので、よく頑張ってくれた。(区間新となった4区の相澤選手は)東洋大としては4区に相澤を置けたというのは他大学のオーダーを見ても、一番のストロングポイントであり、それを発揮しなければ往路優勝はなかったので、それをしっかりやれて、相澤自身もそれを自覚していた。彼自身も自信を持てたレースだったと思う。(2年連続の5区出走となった田中選手に関して)田中は非常に落ち着いて走った。4区で差を広げてもらったという精神的なゆとりもあるが、この1年間で非常に成長できたなというところが出せたと思う。ガッツポーズも去年よりも様になってた。(復路に向けて)往路優勝はしてよかったが、これで安堵せずに明日は明日の戦いがあるので、総合優勝のためにしっかり挑戦者として臨みたい。
・1区 西山和弥(総2=東農大二)
本当にほっとしている。去年以上に自分たちのレベルアップというところが往路タイムで感じられた。去年よりもこのチームは進化しているという手ごたえを感じた。(駅伝で思うような走りができていなかった中での区間賞獲得だったが)思うような走りができなくて1番はチームに申し訳ないという思いがあった。1区でいくということで失敗だけはしないようにいこうと走った。仕事を果たせてほっとしている。(監督からレース前にどんな言葉をかけてもらっていたか)力はあるから落ち着いて。六郷橋の上りではなく上りきってからがヨーイドンだと言われていた。六郷橋を上りきってからスパートをかけた。(レースを振り返って)監督に言われた通りのレースができた。前半スローペースで3分以上かかっていた。1回前に出てペースを整えた。タイタスさん(東国大)が上下移動していた。僕も疲れるが周りも疲れるだろうと思った。スローペースでも15km以降は皆んなも余裕なくなると思った。そこで余裕を持っていたら仕掛けられる思っていて、その通りの展開になった。(復路の選手に向けて)去年よりも今年の復路は厚みを増しているし、力もある。5年振りの総合優勝。鉄紺の真価でくつがえす走りを。自分は下級生としてこれからサポートしていきたい。
・2区 山本修二(済4=遊学館)
僕たち往路はまず2区・3区で先頭に立って、相澤でリードを広げるという昨年と同じようなレースプランだったが、西山が出雲、全日本と苦しいなかで箱根ではしっかりと区間賞の走りをしてくれたので、背中を押されたというか、ケツ叩かれたという感じで、青学大を離さなければいけないという思いで先頭にたったが、中大の選手がいいペースで引っ張ってくれたのでしっかりとついて後半勝負だなと思って、18kmから理想通りの走りができたが、最後苦しくて、国士大の選手に離されてしまっていたので、そこは課題だと思うが、それでも最低限の走りはできたと思う。(2区と決まったのは)今年度もだいぶ遅くて、12月に入ってから。(意識した選手は)留学生や、塩尻には負けたくないなと思っていたが、2人に負けてしまったので、そこはまだ自分の弱さだなと思う。(タイムについて)相澤以上のタイムを出そうと思っていたが、それにも及ばずだったので、少し悔いが残るが、青学大との差を広げることを第一に考えていたので、良かったのかなと。(最後の箱根は)苦しいレースも多かったが、いい流れできていると思うので、油断せずに、まずは往路優勝を目指して、あとは総合優勝もできるようにチーム一丸となってたたかっていきたい。
・3区 吉川洋次(ラ2=那須拓陽)
3区は最初が少し上って下るというコース。前半でしっかり突っ込んだ。先頭で来ることを予想していたので、後半後続を引き離す走りをしてその後ねばるというレースプラン。(レース展開)結果は青学の森田さんがすごかった。自分が少し走れてないような感じがしたと思うんですけど、自分では良いタイムで刻めたと思う。後半きついところあったが、そこは2ヶ月練習できていたなかった練習不足かなと思う。それでもレースの内容としては悔しい結果で終わってしまった。消化不良なところはある。(レース前監督にどんな言葉をかけてもらったか)突っ込んでいけと言われていた。去年は自分のペースで淡々といくという感じだったが今年は走りも変わって出雲あたりから突っ込むレースができていた。怯えることなくしっかりと突っ込んで粘っていけと言われていた。(出雲振りのレースとなったが調整は)出雲の1週間後に怪我をしてしまった。そこから2ヶ月ジョグがまともにできていなかった。バイクとフィジカルをしっかりやって、筋力や体幹を落とさないように意識してトレーニングをしてした。(往路優勝をしたが)率直にうれしい気持ちとほっとしている気持ちがある。自分も昨年往路優勝させてもらっているので、今年も往路で活躍したいと思っていた。それは少しかなわなかったが、自分の区間以外の人がいい走りをしてくれた。自分は貢献できたかよく分からないが最低限の仕事はできたと思うので喜びたい。(復路の選手に向けて一言)自分たちの結果がいい意味でも復路組にはプレッシャーになっていると思う。そのプレッシャーをいい意味でいい走りに変えられると思うので自分達はしっかりと応援サポートして全員で勝ちにいきたい。頑張ってと伝えたい。
・4区 相澤晃(済3=学法石川)
(往路優勝した気持ちは)まだ復路があるが、率直に往路で2連覇できてよかった。(監督からレース前に声掛けは)「自分がなぜ4区に配置されたかというのを考えて走ってくれ」と言われた。「お前はどういうレースを考えている?」と言われたので「しっかり自分のペースで(相手に)付かれないように走ります」と言った。(レースプランは)自分は前半から積極的にいくのが持ち味なので、相手のペースに合わせるのではなく、自分のペースで思い切りいって、後半粘ろうと思ってた。(青学大にリードを許した中でのスタートだったが)森田さんが思ったよりも速くて正直自分も驚いたが、逆に自分がさらに区間新を取って、相手を驚かせるような走りをしたいなと思っていた。(区間新を取ったが)狙っていたが、出たタイムは狙っていたタイムよりも30秒以上よかったので、自分でも驚いている。(復路に向けて)昨年以上に往路で差をつくれたので、復路の選手も去年よりひと回りも、ふた回りも力付けて臨んでいるので、しっかり1秒をけずり出して東洋大らしい走りをして、総合優勝をしたい。自分は各中継所回って激励などして、最後はゴールでアンカーがフィニッシュするのを待ちたい。
・5区 田中龍誠(済2=遊学館)
(2年連続の往路優勝について)昨年の往路優勝は、1区から4区の選手のおかげでできた往路優勝だったかなというのがあるが、今年はしっかり自分も往路優勝に貢献できたのかなと思う。(2年連続の5区で昨年よりも成長したと思う点は)フィジカルをしっかりやってきたのと基礎的なスピードをこの一年でつけてこれたので、それが上りでのタイムにつながってきたと思う。(レース振り返って)タイム的には予想以上。72分台は出ると思わなかった。73分台前半くらいでいけるかどうかという感じで走っていた。レースプラン的には想定通りで、最初はちょっと詰められるかなというのは考えていた。後半粘るというのが自分の持ち味なので、後半はあまり詰められないように走るというのを考えていてそれ通りに走れた。(監督からはどのような言葉をレース中かけられたか)総合優勝が最大の目標なのでそのことを考えて復路に1秒でも多く貯金を残すために最後まで力を出し切って1秒をけずりだせと言われた。(課題と収穫は)課題は、自分の感覚的に後半動いていなかったというのがあったので、もう少しフィジカルとか今まで以上にやらなければならないと思う。(復路の選手に向けて)昨年よりもタイム差があるし、復路の選手は力もあると思うので総合優勝目指してリラックスして走ってほしい。
TEXT=大谷達也 PHOTO=齊藤胤人、美浪健五、伊藤なぎさ、酒井菜摘、大谷達也、望月優希