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第92回東京箱根間往復大学駅伝競走 復路
1月3日(日)大手町読売新聞東京本社前~箱根町芦ノ湖駐車場入口
総合成績 2位 東洋大 11:00'36
復路成績 2位 東洋大 5:31'37
6区 4位 口町亮(法3=市立川口)59'41(通過2位)
7区 2位 櫻岡駿(済3=那須拓陽)1:03'46(通過2位)
8区 9位 山本修二(済1=遊学館)1:06'32(通過2位)
9区 5位 高橋尚弥(工4=黒沢尻北)1:10'58(通過2位)
10区 3位 渡邊一磨(ラ4=九州学院)1:10'40
青学大の背中を追って芦ノ湖をスタートする口町
小田原中継所 口町(左)-櫻岡
櫻岡は区間2位の走りでタスキをつないだ
平塚中継所 櫻岡(左)-山本修
初の3大駅伝となった山本修
高橋は青学大に25秒の差を詰めた
鶴見中継所 渡邊(左)-高橋
最後まで差を詰められず総合2位でゴールした
前日の往路を2位で終え「1区間ずつ詰めて粘り強くいきたい」と、巻き返しを図り臨んだ復路。見えない1位・青学大の背中を懸命に追うも、序盤で流れをつくれずその差は広がっていく一方となる。「2位で満足できるチームではないので悔しい気持ちの方が大きい」。王座奪還はかなわず、総合2位でゴールテープを切った。
復路のスタート時で、すでに前をいく青学大との差は3分4秒。反撃のカギとして挙げられた6・7区には、今季駅伝で力を見せた3年生の口町と櫻岡が出走した。口町はデビュー戦となった出雲、全日本と区間賞を獲得しており、今回はその勢いある走りで青学大との差を大きく詰める使命が課せられた。しかし、見えない敵を追う焦りからかオーバーペースを生み出してしまう。逃げる小野田(青学大)も58分台の好記録ペースで走っていたためその差は広がっていき、流れを変えることができなかった。続く櫻岡も、10kmまでは順調にペースを刻むも「終盤自分が粘れなかった」と悔しさの残る走りとなった。
両選手とも後半の失速が響き、前半2区間で上乗せされた差は1分48秒。追い詰めるべきところを逆に離されてしまったことで、「8~10区は楽に逃がしてしまった」と酒井監督は悔やんだ。後半区間の山本修、高橋、渡邊も序盤の流れを引きずる結果となり、巻き返しは果たせなかった。
最終的には7分11秒と大差をつけられての総合2位。圧倒的な選手層を誇る青学大の完璧なレースを前に、王座奪還はかなわなかった。しかし、酒井監督が「心・技・体すべて昨年よりはうちも成長しているし強くなっている」と前向きに振り返ったように、前回大会から成長を感じられる部分も随所にあった。
今回は3位の駒大とも3分ほど離れていたため、復路のレースは終始単独走。およそ20kmの道のりで自らペースをつくり出し、見えない背中を追う苦しさがあった。加えて縮まらない青学大との距離は、焦りとなって選手を襲っただろう。
その中で、櫻岡は中盤まで前回7区区間賞の小椋(青学大)を相手に区間賞争いを演じた。これまで4回出走した3大駅伝では区間3位以内にも入ることができなかったが、復路の重要な区間である7区で区間2位の記録をマーク。「満足はしていないが、昨年の箱根より内容は良かった」と、本人も成長に手応えを感じている。また、高橋は昨年6区で後ろに詰められる焦りから後半に自分の走りができなくなってしまったが、9区を任された今大会では冷静にレースを進め、青学大を25秒追い上げる走りを見せた。
そうした成長を生み出した契機は、変革を掲げて再び箱根の頂点を目指した1年にある。さらなる強さを求め、体力面の向上やスピード強化といった練習面だけでなく、チーム内のコミュニケーションを活発にするなど、4年生を中心に多角的な改革に取り組んできた。そうして駆け抜けてきた1年間は、全日本初優勝につながった粘り強いラストスパートにも見られたように、鉄紺の伝統に新たな色を加えている。「まだまだ改革が完成したわけではなく、その一手の段階」。酒井監督がこう話したように、4年生が築き上げてきたものをこれから新チームで受け継ぎ、一人一人のレベルアップを求めていくこと。それこそが、王座奪還に向けてさらなる変革の一歩となる。
「東洋大学は優勝を目指さなければいけないチームなので、そういう伝統をしっかり引き継いで、来年こそは優勝してほしい」。この1年チームを引っ張ってきた4年生の思いは、後輩たちに託された。優勝を目指すチームである以上、2位で満足することはできない。4年生の思いも背負い、チームは王座奪還へと再び走り出す。
■コメント
・酒井監督
選手層を考えたときに往路で接戦へ持っていかないと総合優勝はないと思っていた。1・2区は想定内だったが、3区で完全に主導権を青学大に渡してしまった。4・5区はその中ではまずまず。特に5区は本当に頑張ってくれた。(復路については)口町は59分40秒切りだが、あそこでもう少しいきたかった。6・7区で詰めなければならないところを6・7区で広げられてしまったので、8~10区は楽に逃がしてしまったなと。(区間配置は)故障者も出たのでベストメンバーではなかった。選手層が薄いチームがベストオーダーを組めなければ、負けるときは大差になってしまう。(足りなかった部分は)心・技・体すべて昨年よりはうちも成長しているし強くなっている。ただ、青学大はレベルの高いことをやっているのでまだすべての部分が足りない。(今季の変革を振り返って)まだまだ改革が完成したわけではなく、その一手の段階。スタッフ主導で視野がせまい中での改革なので、そういうことから変えていかないといけないなという印象(4年生への思いは)よくやってくれたと思う。真面目な学年なので、私主導の改革をよく聞いて、勇馬のこともサポートしてくれた。(来季への意気込み)終わった直後なので具体的なことはまたこれから考察を重ねてやっていくが、まずは一人一人が競技力だけでなく中身の問題も含めてレベルアップ。成長という名の変革、変化を遂げることがまず最初だと思う。
・6区 口町亮(法3=市立川口)
2位で満足できるチームではないので悔しい気持ちの方が大きい。2位でもホッとするような気持ちは全くない。(レース中は)プレッシャーを感じることはなく、少しでも差を縮めようという気持ちで走っていた。(レースを振り返って)最初の1kmを3分、5kmを16分30~40、下りは自分のリズムを刻んで、宮ノ下の平地になるところで切り替えてまた下っていくレースプランだった。実際は最初の1kmを2分50で速く入り、上りも予定よりも速く入ってしまったので、後半動かなくなってしまったのかもしれない。前との差もどんどん広まっていることを聞いて、少し焦りを感じていた。リズムのいい走りができなかった。1分縮めないといけないところを逆に1分広まったので、後半の選手に苦しい走りをさせてしまった。試走よりは良かったが、目標タイムには届かず満足のいく走りではなかった。(今後に向けて)4年生の先輩は前との差を詰めていたが、今回走った3年生はみんな差を広げられているので、4年生のような走りができる学年になっていきたい。
・7区 櫻岡駿(済3=那須拓陽)
往路が終わった時点で3分差ということで、見えないながらも自分たちが差を縮めていけばまだ可能性があったが、自分としても30秒引き離されてしまったので、悔しいレースだった。(監督からの指示は)自分のリズムで積極的に走って、終盤粘っていけということだった。(レースは)相手が見えない中で走るというのは結構きついものがあるが、10kmまでは青学大と同じくらいのペースでいけていただけに、終盤自分が粘れなかったのが残念。終盤が区間賞と区間2位の分かれ目になったと思う。区間賞をとれなかったのが一番悔しかった。中盤は本当にしんどくて、アップダウンの時、もっとペースダウンを最小限にできれば良かった。みんな力を出したと思うが、青山学院に届かなかったということで、来年に向けてもっと実力をつけなければならない。満足はしていないが、昨年の箱根より内容は良かったと思う。(今後に向けて)勇馬さんをはじめとして4年生には練習を引っ張ってもらったり、競技に対するアドバイスをいただいたり、寮生活でもお世話になっていたので、来年は自分たちがそういう役割を担わなくてはならない。自分はやっぱり走りで引っ張っていきたい。最終学年ということでチームの主力にならなければならないので、駅伝では流れを左右するような前半区間を走って、他大のエースと戦えるようになりたい。
・8区 山本修二(済1=遊学館)
本当は8区を寺内さん(ラ4=和歌山北)が走る予定だったが、体調があまりよくなくて僕が走ることになった。調子は悪くなくて今までいい練習をできていたが、前半からなかなかペースをつかむことができずそのままずるずるといってしまった。監督からは始めからリズムをつくらないといけないと言われていたが、それがまったくできずこのような結果になってしまった。7区の櫻岡さんは強い青学大の選手にも果敢にいいペースで走っていて、いい勝負をしてくれた。流れがつくれたと思ったが、うまく引き継ぐことができなかった。前後に距離があり一人で走ることになり、給水もしっかりできたし残り5kmの上り坂も粘れたが、それまでの流れが悪かった。それでタイムが思うように伸びなかった。1年生は二人走ったが2年生は一人も走れなかった。それもあり2年生からは自分たちの分も頑張ってくれと言われていた。小笹とも事前に2年生の分も頑張ろうと話していた。二人とも思うような結果が出せず、区間順位もあまり良くなかったと思う。出雲、全日本そして来年の箱根でまたメンバーに入ってしっかりチームの勢いがつくれるように、僕たちがもう一度頑張らないといけないと思った。
・9区 高橋尚弥(工4=黒沢尻北)
最初はペースが安定しなかったが、中盤は監督の声を聞いて冷静に走ることができた。15㎞くらいで監督から「区間賞狙えるぞ」という言葉を掛けてもらったときは余裕があったが、ラスト3㎞は足がつりそうになって、(タスキを)つなぐだけとなってしまった。最後くらいは区間賞をとりたかったが、届かなくて悔しいレースだった。(4年間を振り返ってみて)最高の仲間とここまで陸上をすることができた。最後は優勝したかったが、本当に最高の4年間だった。(後輩は)準優勝で満足するのではなくて、東洋大学は優勝を目指さなければいけないチームなので、そういう伝統をしっかり引き継いで、来年こそは優勝してほしい。自分は実業団にいくので、自立してしっかり自分で考えて、4年間学んだことを生かしていきたい。
・10区 渡邊一磨(ラ4=九州学院)
率直に悔しい。結果的に青学大に負けてすごく力の差を感じた。4年間走れないことが多かったが監督や谷川コーチ、佐藤コーチ、最高のスタッフと最高の同期と陸上をやれて非常に良かった。楽しかった。4年間通して本当に故障が多くて箱根を走ったのも今回だけだったが、支えてくれた家族や同級生にとても感謝している。準優勝という結果でまだまだ恩返しできなかった部分はある。これからまだ競技人生は続くので、ニューイヤー駅伝やマラソンなどの場で返していけたらいいと思う。(後輩へ向けて)能力が高い後輩が多く、その気になれば自分達の代より強くなれると思うので、来年こそは王座奪還を目指して頑張ってほしい。
TEXT=青野佳奈 PHOTO=野原成華、松井彩音、枦愛子、吉川実里、千野翔汰郎、酒井奈津子、石田佳菜子、伊藤梨妃