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2015.05.08
サッカー

[特集:サッカー]前期第1弾 虎視眈々と淡々と~高橋宏季~

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そのプレーぶりはまさにエレガント


 「1年生らしくない」。その貫禄あるプレーぶりに誰もが口をそろえて言う。正確なボールコントロールと一瞬でスペースを見抜く広い視野で淡々とボールを、ゲームを、操っていく。新加入選手の中で唯一開幕からピッチに立ち続ける男、高橋宏季(国1・FC東京U-18)。試合中は表情を一切変えないクールガイ、しかしピッチを出るとあどけない笑顔を幾度も見せるシャイボーイ。一体、彼は何者なのか。

 開幕を直前に控えた練習試合、新チームのボランチの一角には見慣れない顔があった。派手なプレーを魅せるわけではない。圧倒的な身長や屈強なフィジカルがあるわけでもない。それでも彼がチームの中央に抜擢される理由は確かにある。

 サッカーを始めたのは幼稚園の頃、そこからどんどん魅力に惹かれていった。中学生になるとFC東京ジュニアユースに加入、強豪クラブの下部組織での練習や試合を通して、彼は自分の役割に気づき始めた。「自分のやるべきことはゲームを落ち着かせること」。弱点であるスピードや強さを足元の技術で補うため、一本一本のパスの質、タッチの質にこだわった。1年目は出場機会に恵まれなかったが、自分で決めた道を諦めることは決してなかった。2年目から徐々に出場機会を獲得すると、高校生ではユースに昇格。ユース時代の佐藤一樹監督は、彼を「チームのハンドル」と表現し、そのドライビングテクニックで日本クラブユース選手権準優勝の立役者となった。

 そんな彼の理想のサッカーは、自分たちが主導権を握り、パスで崩していくポゼッションスタイル。そして、その理想が叶う場所が東洋大サッカー部であった。ユース時代には練習試合で対戦を重ね、練習見学も繰り返す中で、東洋大スタイルに惹かれ入団を決意。「距離感やスペースをよく意識できている」と古川監督もチームへの素早い適応を認め、新入生ながら開幕スタメンに送り出した。「思ったほど緊張しなかった」。開幕戦から堂々としたプレーを披露。落ち着いてボールを動かしチームのテンポを生み出し続け、白星に貢献するとここまで全試合でスタメンに名を連ねている。ボランチでコンビを組む小山北(国4・帝京)も「サッカーを知っている」と実力を賞賛。監督や上級生たちからも確かな信頼を勝ち得ている。この男、ピッチでは決して弱みを見せない。

 そんなクールガイだがピッチから一歩出ると普通の大学1年生。毎回取材時にはニコニコと照れくさそうに笑みを浮かべる。「意外とお調子者」と同期の浦上(国1・大宮Y)も語るように、学校生活ではピッチ同様クールに…とはいかないようだ。コラムを書くにあたっても「好きな女性タレントは?」といった質問の答えをはぐらかす記者泣かせっぷりを発揮。「(高橋は)テキトー人間。ノリで生きている」という浦上リークは筆者の中で確信に変わった。

 それでも、サッカーに対する情熱は誰よりも熱いものをもつ。「試合に出つづけて、みんなの期待に応えたい。大学選抜にも入りたいし、いろいろなところから注目される選手になりたい」。この時ばかりは彼の表情に笑みはなく、力強く語ってくれた。日の丸を背負い、いつかは世界の舞台で―。高橋のまなざしは虎視眈々と未来を見つめていた。

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チームの羅針盤として輝きを放つ


■高橋宏季(たかはしこうき)

173㌢/62㌔

H8・6・15

出身/FC東京U-18

血液型/O

ポジション/MF

好きな食べ物/焼肉

嫌いな食べ物/椎茸

好きなサッカー選手/シャビ(FCバルセロナ)

座右の銘/考えときます(笑)

 

第2回は来週、5月16日(土)に掲載します。

お楽しみに!


TEXT=吉本一生