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2015.08.11
サッカー

[サッカー]関西の強豪・大体大倒し3回戦へ。初の全国大会、総理大臣杯で男たちは伝説となる!

2015年度 第39回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント 2回戦

8月10日(月) ヤンマースタジアム長居

東洋大2-1大体大


<得点者>

56分 田中

90+6分 徳市


<警告>

86分 遊馬


<出場メンバー>

▽GK

沖野泰斗(国4・幕張総合)

▽DF

石坂元気(国4・広島Y)

郡司昌弥(国4・柏U-18)

瀧澤修平(ラ4・東洋大牛久)

長谷川優希(国4・帝京)

▽MF

勝野瑛(国1・浦和Y)79分→徳市寛人(国3・東福岡)

小山北斗(国4・帝京)

坂元達裕(社1・前橋育英)82分→小島正之介(ラ4・常総アイデンティU-18)

仙頭啓矢(国3・京都橘)

▽FW

田中舟汰郎(国3・横浜FC・Y)

遊馬将也(国4・武南)


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先制弾をマークした田中


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スタンドの声に応える徳市


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チームが一体となって勝利をつかんだ


  東洋大初の全国大会は劇的な幕開けとなった。強力な攻撃陣を擁する大体大相手に華麗な連携から先制に成功。その後は決死のディフェンスで体を張り続けロスタイムに突入する。しかし、一瞬の隙を突かれ同点に追いつかれてしまう。誰もが試合終了を疑った94分、CKのラストチャンスにサッカーの神様は微笑んだ。仙頭の正確なキックに合わせたのは途中から入った徳市。救世主の値千金のゴールで3回戦進出を決めた。

  サッカーの神様はいじわるすぎた。それでも、神様は最後に圧巻のエンディングを用意していた。初経験の全国大会、スタメンには高校選手権で大舞台を経験した仙頭、坂元がいたがチームとしての経験値は出場チームで最も少ない。相手はセレッソ大阪に加入が内定している澤上などタレント選手が揃う。東洋大の前評判は厳しいものだった。

  静かな立ち上がりを見せた前半。物語の醍醐味は後半と6分に凝縮されていた。56分、華麗なパスワークから仙頭が右サイドを抜け出すと中へ折り返す。ペナルティエリア内で遊馬が相手と競りながら右足で絶妙な落としをすると中央で待つ小山北のもとへ。振り抜いたシュートはGKに弾かれるも詰めていた田中が仕留めて先制点をあげる。しのいで、つないで、もぎ取った珠玉の1点、「全国大会に出場することが目標ではない」という全員の気持ちがチームの士気を最大限に引き上げた。その先へ―。試合はロスタイムに入り全国大会初出場初勝利の瞬間は刻一刻と迫っていた。しかし、その結末には誰もが予想しなかったドラマが待っていた。

  「残酷すぎる」そう嘆きたくなった。93分、左からシンプルにクロスをあげられると後ろから来た相手選手を捉えられずフリーでゴールに叩き込まれる。一瞬の出来事に、すべてが崩れ去った。それでも選手は残された時間、下を向くことはなかった。96分、あきらめない姿勢がラストチャンスを生む。CK、仙頭はニアで待つ石坂へピンポイントで合わせる。惜しくもクリアされるが、感覚を掴むには十分だった。もう一度放たれたキックはニアを超え中央の徳市へ。ネットが揺れた瞬間駆け寄る選手たち、沸き立つ観客たち、サッカーの神様は最後の最後でようやく笑みを見せた。

  「お前たちのおかげだ―!」。徳市は客席で共に闘うチームメイトへ心の底から叫んだ。静岡・御殿場から続く物語は誰かのものではない、チーム全員主役の物語だ。「失うものはない」と語る古川監督が描く台本以上の物語。大阪の地で朝霞の男たちが伝説を刻み始めている―。その伝説の終演は優勝の2文字で飾られるはずだ。


■コメント

・古川監督

  トーナメントなので勝ち残るということがある意味全てになることだった。東洋は関東の中で認知度がそれなりに出てきた。そのことがある中でどうやって安泰につなげていくことができるかが課題だった。そこが今日のところで実践できた。出て終わりではなく勝てたことは一番の収穫だった。まず選手たちは相手に警戒しすぎていた。だがそういう中でパスを回すことが出来たことや、主導権は握りながら前半を0で折り返したところは今日の勝因だった。先制点を取ったが、追いつかれたというのは反省点ではあるがそこで下を向いていたら連続失点で敗退ということもありえた。選手たちに切り替えろと投げかけたがなかなか声が届かなくて、その中で本当に諦めずに前に行ってくれた。本当に戦う姿勢と応援の選手たちの声援など合わせてチームの勝利というかたちになった。(守備について)後ろと中盤4年生がいるから前線の遊馬だとか仙頭だとか選手たちが攻撃に専念できている。今日も貢献してくれた。(次戦に向けて)次も全国大会だけに楽な戦いはない。こちらはまたチャレンジャーとして、初出場で失うものはないのでしっかり一試合一試合出し切る。次も90分、もしくは延長戦かPK戦が終わったときに勝って、またトーナメントに残っていたい。


・遊馬将也(国4・武南)ゲームキャプテン

 相手は格上のチームだと分かっていた。しっかり認識できていた。その中で自分たちの失うものは何もなかったので一人ひとりが自分たちの力を出せればしっかりと勝てる試合だった。失点後は苦しかったがみんなの応援が選手に力をくれた。(1点目について)もうちょっとスピードを上げて中に入ろうかと思っていたが相手の方が下がるのが早かった。だから自分はちょっと待ってそこで受けようと思っていたら、啓矢から良いボールが来た。北斗が見えたのですこし戻ったボールだったが落としてあげた。上手く1発で決めてほしかったがその後の舟太郎が詰めていたので、そのあたりは全員の成長が見られた場面だった。(次戦へ向けて)FWとして今日点を取れなかった分みんなには次のチャンスをもらった。だからもっとチームを助けられる選手として次の試合に挑みたい。


・小山北斗(国4・帝京)

  初出場ということだったので古さん(古川監督)からも「失うものは何もない」と言われてて、楽しもう、そこに結果が付いてくれればいいなという風に思って試合に臨んだ。総理大臣杯が決まってから2か月ぐらいあったが、特にこの大会の為ということはなく、いつも通りポゼッション練習だったりをしてきてこの大会に臨んだ。古さんにもディフェンスラインとボランチ2枚のところにゼロで抑えろと指示があったので、守備6(割)ぐらいの気持ちでいった。それがうまくハマってくれて良かった。前線の選手が切り替えとかでコースを限定してくれたので、みんなに感謝したい。最後の最後に失点してしまって正直どうなるかなと思ったが、ここで1点取り返せるのが今のチーム力。この勢いを大切にして次も番狂わせを起こしたい。


・瀧澤修平(ラ4・東洋大牛久)

出場ってだけでも歴史を変えたと思うが天皇杯予選で1部と同等にやれたのでみんなすごく自信を持っていた。天皇杯予選では5連勝したこともあり優勝できると思ってやっていたのでメンタル的にも勝利をつかめたと思う。(先に得点を奪ったが)相手に先制点を取られないということを重視していて前よりもクロスの対応などをDFラインははっきりするようになった。チーム全体でも中盤から守備意識が高くなっている。1点を争うゲームは天皇杯予選などで積み重ねてやってきたので、いつも通り集中を切らさないでやっていれば大丈夫だと思ってやっていた。(相手のエースはJリーグ内定者だったが)抑えてやろうと思っていた。抑えればCBも注目してもらえると思うし、逆にチャンスだと思っていた。全然負ける気はしなかったし、強い自信を持ってやっていた。(次戦に向けて)中1日なので、この段階から次の試合の準備は始まっていると思う。しっかり栄養をとって休養をとって挑めば勝てない相手ではないのでしっかりコンディションを整えて臨みたい。


・仙頭啓矢(国3・京都橘)

  前半の入りが悪かったが、後半は思い切ってやるしかないなと思って自分らしいプレーができた。(関西の試合だったが)結構観に来てくれる人も多かったのでもっといいプレーをしたかったが、チームの勝利が一番で、それでまだ関西におれることが決まったので良かった。(2点目の狙いは)今日はコーナーが入る雰囲気があったので、1枚目を越すか越さないかというところを狙った。一回目はニアで元気くん(石坂)に合わせたが、二回目はその奥を狙ったらそれがうまい感じにいったので良かった。(次戦に向けて)明治は予選の時にも負けてるし、もし明治が来たらその借りを返したい。


・徳市寛人(国3・東福岡)

ベンチからのスタートだったが試合内容を見ていても相手のペースでもなかったので勝てるという気持ちはあった。だが、その中で自分が出たときにどんなプレーが出来るか考えていた。(チームの雰囲気は)試合前からすごく気合が入っていたので良かった。(交替時に監督からの指示は)1点勝っている状態だったのでバランスを取るということとシンプルにプレーすることを言われた。(2得点目を振り返って)2本続けてコーナーだったが1本目の時にチャンスが来るなという感覚をつかんでいた。だからもう一回同じ場所に来れば決めるとイメージしていた。その通りになったのでラッキーだった。嬉しかった。(次回に向けて)次戦はどうなるか分からないが自分たちはチャレンジャーとして一戦一戦100%以上の力を出せるように頑張っていきたい。


TEXT=吉本一生 PHOTO=河西樹、當麻彰紘


[次回試合予定]

2015年度 第39回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント 3回戦

8月12日(水) 対明大 ヤンマーフィールド長居にて
18:00 kick off