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天皇賜杯 第85回日本学生陸上競技対校選手権大会
9月2日(金)~9月4日(日) 熊谷スポーツ文化公園陸上競技場
▼3日目
男子200m 準決勝
3組 (風:-0.3)
1着 桐生 20"92 ※決勝進出
男子200m 決勝 (風:-0.1)
1位 桐生 20"60
男子1万m競歩 決勝
2位 及川 40'49"85
DQ 河岸
DNS 松永
男子4×400mリレー 決勝
1位 東洋大 (松原ー桐生ー櫻井朴ーウォルシュ) 3'05"48 ※東洋大新記録
男子走高跳 決勝
9位 山下 2m10
男子総合得点 6位 40点
男子トラック得点 4位 40点
男子多種目優勝 1位タイ 4種目 (同位は日大)
初優勝を果たし笑顔を見せる男子マイルメンバー
桐生は200mでも優勝。今大会3冠となった。
及川は懸命な歩きで2位に入った
全日本インカレ3日目、男子4×400m(以下、マイル)リレーでは2走に桐生(法3=洛南)を加え東洋大新記録での見事な初タイトルを獲得。さらに桐生はこの日、男子200mも制し、前日の男子100mと合わせて3冠を達成した。そして、男子1万m競歩でも及川(済3=愛知)が自身初の2位表彰台に上がるなど大活躍の最終日となった。
ついに悲願達成だ!今大会の最終種目として行われた男子マイルリレーで、東洋大は予選からオーダーを変更。リオデジャネイロ(以下、リオ)五輪男子100m代表の桐生を2走に起用する異例のメンバー構成で圧巻の走りを披露した。一番外側の9レーンでスタートした1走の松原(法1=九州学院)は得意のアウトレーンで加速に乗ると、トップに並んでバトンパス。予選では精彩を欠いた松原だったが「桐生さんが入ったことで後ろに安心感ができた」と本来の自分の走りを取り戻していた。続く桐生は、スタミナの心配を物ともせず前半から果敢にトップ争いに食らい付く。慣れない距離に最後は失速したものの、射程圏内でバトンを次につないだ。3走を任された櫻井朴(総2=國學院栃木)は昨年1年生ながら3位に貢献した実力者。ここで再びトップに追い付くと、最後はアンカーのウォルシュ(ラ2=東野)に託された。バトンをもらいすぐさま先頭を奪った後は、最後の直線でもギアを上げ勝負あり。栄光のゴールラインを一番に駆け抜けた。
今大会で今季初の200mに挑んだ桐生だがマイルリレーに出場するのは高校2年次以来5年ぶりのこと。異例の采配を組んだのが梶原監督だった。「たぶん優勝タイムが3分4秒~5秒で相当速いレース展開になる。速いレース展開で持っていける人間はあとは桐生しかいない」。見事な作戦勝ちだった。また、マイルリレー決勝の前の200mではスタートから飛び出した桐生がそのまま優勝。最終的には100m・200m・マイルリレーの3冠を果たした。
その他、男子1万m競歩では及川(済3=愛知)が山西(京大)とのデッドヒートの末、2位でフィニッシュ。7000m過ぎには先頭に出るなど攻めの姿勢を貫き、昨年4位で表彰台を逃した悔しさを晴らした。男子走高跳の山下義(法4=小樽水産)は2m05から挑戦するも、記録は2m10に留まった。5位から14位までが2m10の争いとなったが、無効試技数の差で惜しくも入賞とはならなかった。
3日間に及ぶ熱戦を繰り広げた第85回全日本インカレ。桐生とウォルシュの二人のオリンピアンは順当に力を発揮。2年連続の多種目優勝校1位の立役者となった。終始30度を超える暑さの3日間だったが、季節は間も無く秋を迎える。短距離部門は再来週の関東新人を機に徐々にシーズンオフへと向かっていく。そして長距離部門は駅伝シーズン開幕まであとわずかと迫ってきた。各部門、1年の集大成が試される時期へ移行する。
■コメント
・梶原監督
桐生の200m優勝は間違いない。まだ記録を狙っていくような状況ではないから、まず強さを見せつけて勝てればいいと思っていた。狙い通りのペースでやってくれて良かった。走高跳の山下は最初は助走にキレがなかったが、だんだん助走も良くなってきた。2m15は3回のうち2回は跳んでいた。助走が良くなっていたので、3回目入る前に1足、助走のマークを後ろにしていたが、もう1足半下げていれば最後足が引っかからずに跳べたと思う。そこが悔やまれる。最後に表彰台に乗せてあげたかった。マイルの優勝タイムは3分4秒~5秒で相当速いレース展開になると予想していた。速いレース展開で持っていける人間は桐生しかいないと思った。桐生がダメだったら、監督として私がみんなに謝ればいい。いい位置でバトンをつないでくれて、松原も櫻井も今までのベストラップできてくれたので、比較的ウォルシュはトップを見ながら自分のレースができていた。来年も一段階上げていければ学生記録も狙える。桐生もマイルを走る喜びを感じてくれたみたい。4年生は試合に出た選手は少なかったけれど、就活など忙しい中でも、毎日グランドに出て引っ張ってくれて、チームを奮い立たせてくれた。(全カレを通して)やはり桐生、ウォルシュの二枚看板。それに頼ってしまう。リレーは他の3人がよく走ってトップに近いところで持ってきてくれて、個人の力を確実に付けているが、個人で桐生、ウォルシュの他に決勝に残っていくような人間が増えていかないと本当の意味での強いチームにならない。リレーで頑張った下級生の中から個人で、まずは学生の試合で決勝に残って上位を狙ってほしい。
・桐生(法3=洛南)
(マイルは)最終的に優勝できたので良かった。(マイルの出場が決まったのは)200mの決勝が終わってから。まじかよと思った。オーダー出したと言っていたのでもう行くしかないと思って。(マイルを走った経験は)高校2年生のときに。5年振り。(今回走ってみて)疲労で足がパンパン。(200mは)優勝を狙っていたので最低限度優勝ができたので良かった。(タイムは)最後がスーッといけたのであんな感じかなと。(3日間振り返ってみて)リオ五輪後でこれだけ走れたのでまあまあ良かった。
・ウォルシュ(ラ2=東野)
(400mの優勝より)マイルの優勝のほうがうれしい。みんなが頑張っていい位置でバトンをくれたのでリラックスして走れた。バトンをもらったときに前に一人しかいなかったので、絶対に勝てると思った。(2冠になったが)400mは勝って当然だった。マイルも狙える位置にいたので勝ててうれしい。(今後400mでは)日本記録を出して来年世界陸上に出て、メダルを取りたい。マイルは東洋大が強くなってきたので関カレ、全カレで優勝したい。
・櫻井朴(総2=國學院栃木)
マイル優勝できてうれしい。2走に桐生さん、4走にジュリアンがいるので安心して走って、ジュリアンにもトップ争いで渡せたら勝てると思っていたので予想通りの展開になって良かったと。(マイルに桐生が出場することが決まったときは)アップの前に監督から言われて、自分はいつも2走なので2走桐生さんになって外れたと思った。一瞬落ち込んだけれど3走で呼ばれて頑張ろうと思った。バトンを渡せば優勝できると思っていたので最強のメンバー。(お母さんが応援に来ていたが)いつも全国各地に応援に来てくれていて、本当に感謝している。いつも大きな声で応援してくれているので、家族には一番感謝している。(全カレに臨むまでは)マイルのメンバーがまだ決まっていなかったので選考レースがあって、そのレースで勝って出場できた。優勝に貢献できてうれしい。(今後は)関東新人があるので、来年の全カレ標準を切ることと、マイルでは今後どの大会でも日本一でいたい。
・松原(法1=九州学院)
関カレで2番だったときに、メンバー全員で「次は1番取るぞ」と話していた。東洋大のメンバーというよりは部員全員で勝ち取った金メダル。本当に取れて良かった。(部員全員で取ったというのは)関カレのときに冨樫さん達と一緒に取ろうと約束していた。今日のレース前にも冨樫さんの分まで4年生の分までしっかり走るということを冨樫さんに伝えた。走れなかった人の分まで走れたと思う。(予選よりもいい走りに見えたが)予選はダメなレースだったので、それから切り替えて決勝に臨んだ。決勝は桐生さんも入ったことで後ろに安心感ができたので自分に集中することができた。ジュリさん(ウォルシュ)もいたので絶対に負けないなと思っていた。(1番アウトレーンのスタートは)関カレの決勝でもアウトレーンだったので、アウトレーンがいいなと思っていた。9レーンと聞いたときは、(思いが)通じた!と思った。(個人の400mでは予選落ちだったが)世界ジュニア代表の福岡大の松清が僕のライバルだが彼に勝てたことは合格点。マイルに向けていい刺激が入ったが、来年、再来年は僕も個人で点を稼いでもっと東洋に貢献したい。まだ1年生だが、桐生さんジュリさんに頼らず自分も東洋を支えられる選手になりたい。
TEXT=伊藤空夢 PHOTO=畑中祥江、福山知晃、大谷達也