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2016.12.20
アメフト

[アメフト]気持ちで掴んだ勝利 タイブレーク制し2部残留を決める

平成28度関東学生アメフトリーグ・入替戦

12月18日(日) 富士通スタジアム川崎

東洋大7(TB7)-7(TB6)農工大

   0|1Q|0

    0|2Q|0

   0|3Q|0

   7|4Q|7

   7|TB|6


ハドルを終え攻撃に向かう選手達


ディフェンス陣はまとまった守備を見せた


長嶺は主将としてこの1年間チームを引っ張った


声援を送り続けた応援団の力は選手にとっても大きかった


 来年度の2部リーグでの戦いを懸けた入れ替え戦の相手は農工大。第4Qに入り先制タッチダウン(TD)を許すも、即座に取り返し7-7のまま試合はタイブレーク(TB)へ。相手にトライ・フォー・ポイント(TFP)の失敗があり7-6で死闘を制し、2部残留を決めた。

 

 試合前には選手、コーチ、マネージャー全員で円陣を組み、「絶対に勝たなければならない」という強い気持ちを持って試合に臨んだ。前半から複数で相手を囲む組織的なディフェンスが目立ち、農工大に自由を与えない。中でもLB茂見(工4=都立富士)は粘り強いタックルを見せていた。試合後「気持ち的にも耐える時間が長くてきつかった」と振り返ったが、茂見はこの試合最初から最後までチームへ激を飛ばし続け、ディフェンス陣の奮起を促していた。早い段階で先制点が欲しい東洋大は第2Q開始直後、大西(国2=関東国際)が30ヤードラインからのフィールドゴールを狙うも枠を捉えることはできず、なかなか主導権を握ることができない。両校決め手に欠け、得点が動かないまま前半を終えた。

 後半に入ると、東洋大はQB伊勢馬場(食3=横浜栄)を中心としたパスプレーやギャンブルも絡め、6分かけてじりじりと敵陣へと攻め入る。第3Qの終盤ではRB高浦(工4=川口北)が18ヤードの距離を稼ぐランを見せ、勢いを持ったまま勝負の第4Qへ向かった。しかしながら、第4Qの立ち上がり、せっかくのチャンスは相手のインターセプトにより逸してしまう。ピンチを脱し勢いに乗ったのか、農工大のオフェンスが躍動する。中央に空いたスペースにパスを通され、そのままTDを決められてしまった。取らなければならない先制点を許してしまう。だが、「先制されたことで上手く全員のパーツが集まった感じがした」と試合後西村ヘッドコーチが振り返ったように、失点をしてからの東洋大の巻き返しには凄まじいものがあった。WR田松(ラ2=秋田南)、高浦、伊勢馬場が次々とファーストダウンを更新し最後は田松への中央のパスが成功しすぐさま同点に追い付いた。その後も一進一退の攻防が続くが得点は入らず、TBへと突入する。

 後攻を取った東洋大はセカンドダウンまでは完璧に止めるも1本のロングパスを通され、TDを奪われる。その後のTFPでは相手にキックのミスがあり、7点を取れば勝ちという状況になった。相手の反則もあり、エンドゾーンまで5ヤードを切ったところでダイブを続け、TDを奪う。最後は大西がきっちりとキックを成功させ、TB7-6で何とか農工大を振り切った。「最後は気持ちで勝てた」と1年間キャプテンとしてチームを引っ張ってきた長嶺(済4=函館ラサール)も試合後にはホッとした表情を浮かべていた。

 「プレイヤーではなくアスリートの気持ちを身につけてもらいたい」。試合を終えた西村ヘッドコーチの言葉には重みがあった。負ければ3部降格という状況で選手達のプレッシャーは大きかっただろう。この入れ替え戦はメンタルの強さが求められる試合であり、最後まで諦めない強い気持ちがこの結果に繋がったのかもしれない。タフな試合を終え選手達が得たものも大きいはずだ。

 また、今回も多くのOBや父母会が応援に駆け付け、チームを信じて声援を送り続けていた。苦しい時期もあったが、最後まで声を出し、盛り上げるその姿が選手の後押しになっていたのは間違いない。来シーズンもOB、父母会からの期待を胸に、堂々とした戦いを見せてくれるだろう。


■コメント

・西村ヘッドコーチ

正直な感想を言うと農工大は強かった。押しも引きもできずに逆に先制されて、なんとかすぐに同点まで持っていけたんですけど、本当の強さを認めざるを得ない相手だった。(先制されてからは)先制されたとしてもやることは一緒。点を取らないといけないわけだし、それでスイッチが入ったという訳ではないけれど、それで上手く全員のパーツが集まった感じがした。また、先制したことにより相手に気の緩みが少なからず出て、攻めやすくなった。メンタル的な部分が大きかったかなと。(ここまで引っ張ってきた長嶺について)今年1年間長嶺で始まって長嶺で終えた、あいつは最後まで声を出していつも枯らしていた。キャプテンらしいキャプテンだったと思います。(たくさんの応援が駆け付けたが)たくさんのOBOG、父母会やOBのお父さんお母さんまでファンとして来てくれて、歓声は本当に力になっていた。大きい後押しになっていたのは間違いないです。(今年の総括)初戦勝ってそこから引き分け、負けを繰り返して、チームの雰囲気を保つのが大変だった。様々なチーム内問題もあったけれど、長嶺を中心にたとえそれが空回りでもチームをまとめようとしてくれた。(来季に向けて)今日の試合から見ると、向こうはオーバーセレブレーションをしてしまってその反則でこっちの得点に繋がったというのは、やっぱり1つのプレーに一喜一憂してしまうところに問題があった。最後の最後まで試合をやらないといけないというのが分かったと思う。うちは「まだ終わってない、最後までやり通す」といったことをちゃんとやり通した。今日のそういった勝ち方は選手にとってすごく大きいと思う。最後までやり遂げると結果が必ず付いてくるということを少しは感じてくれたかなと。来年度はそういうことが当たり前にできるようなチーム作り、人任せじゃ無くて自分らの行動に責任を持ってくれたら良くなっていくんじゃないかな。大きな目標は1部に残留できるチームなので、上がっても落ちたら意味が無いし、そういうチームじゃだめ。その前に人間的な、プレイヤーじゃなくてアスリートの気持ちを身に付けてもらいたい。個人個人が上に行こううんぬんは今日のこの結果じゃ何も言えない。1人1人がそういう考え方を身に付けた上で結果が伴っていければ良いと思います。


・長嶺主将(済4=函館ラサール)

勝てて良かった。自分たちは一度3部に落ちてしまうと2部に上がりづらくなってしまうので、4年生の最後の責任として後輩に来年のステージを残す負けられない戦いだった。(オーバータイムでは)自分たちも今までに経験がない中で、最後は気持ちで勝てた。相手のフィールドゴールが外れて、そこでオフェンスに気持ちがつながった。(チームの雰囲気は)気持ちはすごく入っていた。だがこういう試合で接戦になると有利なのは下の方なので、このままだと負けてしまうのかもしれないという気持ちは一瞬あった。でも監督、コーチ陣や4年生がサイドラインから声を出して気持ちを切らさないようにしていたのが良かった。(1年間振り返って)上の学年と比較されることが最初は多くて、そのハードルを越えるのにすごく時間がかかった。結局そこは越えられなかったが、それでも後輩が付いてきてくれたのがうれしかった。そういうところで4年生が下に支えられた1年だったと思う。(OB・保護者の方の声援は)毎試合応援に来てくれて、名前を呼ばれる度に絶対に勝たなきゃという気持ちになる。今シーズンたくさん応援をしてもらう中で、勝てないのがすごくプレッシャーだったし申し訳ないと思っていた。でも、チームの調子がいい時に後押ししてくれるOBや保護者の方々の声援があったから今日は勝てたと思う。(4年間を振り返って)今年が一番つらい年でもあったが、4年間楽しかった。最後に勝てたので、より一層アメフトを好きになれたかなと思う。(後輩に向けて)本当に優秀な後輩たちばかりで、自分たちの代だけでは今年のチームは成り得なかった。実力は申し分ないので、やるべきことをしっかりやって勝てるチームを作ってくれることを期待している。


・長岡(ラ4=北多摩)

正直もっと圧倒できるかなという思ったがタイブレークまで行ってしまい、下の代には申し訳なかった。それでも最後勝てたのでそこだけは喜んでいいのかなと思う。序盤にディフェンスが頑張っていたが取り切れなくて、後半1本取られてしまった。それがなければもっと楽に勝てたと思う。攻守に若干の詰めの甘さがあった。(試合前は)ヘッドコーチはいつも言っているが、「笑え、もっと余裕もってやれ」と。チームもそういう感じでできていたので気持ちではできていたと思う。今シーズンとして、自分は「常に笑ってやろう」と言ってて自分なりにはそれができていた。チームの士気が下がらないように、声掛けを心掛けていた。(今年のチームは)ゲームの入りから行くというのができなかった。底を反省して来年つなげていってほしい。(4年間で印象に残っていることは)去年の1部入れ替え戦。常に行けるステージではないと思うので、チーム全体としてもかなり大きな経験になったと思う。(応援に多くの保護者、OBが駆け付けたが)4年間ずっと応援してくれたOB、保護者をはじめヘッドコーチやスタッフにはお世話になったというのがあって、本当に感謝している。(後輩の向けて)この悔しさを来年つなげて、1部入れ替え戦に進み、勝って1部に上がれるように頑張ってほしい。



・茂見(工4=東京都立富士)

思ったよりオフェンスが出なくて厳しい展開だった。ディフェンスはかなり我慢の時間が続いて、気持ち的にも耐える時間が長くてきつかった。1本は取られてしまったけれど、そこを1本で抑えられたのは良かったです。(タイブレークに入る時は)タイブレークにはなったんですけど、あんまりやられる気はしていなかった。特に焦りは自分としては無くて、落ち着いてやれました。(4年間を振り返って)ずっと1年からLBをやっていたんですけど、4年になってポジションがDBにコンバートしたので、そこはかなり難しかった。高校あらずっとLBだったので急にそう言われて、この4年目が一番難しかったと思う。(後輩に向けて)ディフェンスに4年がかなり多くて、そこががっつり抜けて弱くなっちゃうかもしれないですけど、今3年生で出ている新井や大出を中心にして良いチームを作っていってほしいです。


・高浦(理4=川口北)

勝ててよかったというのが一番。オフェンス的には最後にエンジンがかかってきたかなというのがあって、タイブレークで取るしかないと思った。雰囲気的には落ちてはいなかった。4年生は責任を取るというのが一番だったので、そこは意識して頑張ろうといっていたが、なかなか歯車がかみ合わなかった。前半はオフェンスが全然出ていなかったし、盛り上がらなかった。前半はディフェンスに助けられた。(今年のチームは)1、2年生に助けられたというのが正直な感想。ラインも最初は1年生が入っていたし、レシーバーも2年生の大西、田松が活躍してくれた。個人としては、RBは3年の終わりから就いたポジションで、1年生と同じ気持ちでやってきた部分もあり、ともに成長するというのがあった。でも、なかなか1年生には教えてあげたりができず、そこはよくなかった。自分で必死だった。(悔しい試合は)成蹊大戦で引き分けてしまったこと。最後どうしてもとりきれなかった。。(OBもたくさん駆け付けたが)本当に感謝している。OBの方には練習で人数が足りない時に参加してもらったりもした。(後輩に向けて)RBのポジションには1年生が3人いる。いい経験が積めると思うので来年、頑張ってほしい。


TEXT=美浪健五 PHOTO=松井彩音、吉本一生