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2017.03.30
コラム

第550回 その「おこだわり」、俺にはあるよ!! 執筆者・吉本一生


みなさんこんにちは。引退した3年生で繋いできたこのコラムもラスト2人。「脚が長い」でお馴染みの2人が最終コーナーを激走します。今回のコラム担当は副編集長・吉本一生(サッカー&アメフト担当)がお送りします。

 絶賛就活中の僕ですが、エントリーシートに並ぶ「学生時代に力を入れたことは?」、「学生時代の充実した思い出は?」などを見るとついついスポトウのことばかりが思い浮かんでしまいます。スイーツ研究会で溶けたアイスを売りさばいた学園祭や、動画サークルで撮影した『シン・ゴジラ』の続編『シン・シン・ゴジラ』、新しくできたラーメンサークルの新勧に新入生のフリをして参加したこと…。それでも1番に思い出すのはなぜかスポトウでした。

 

 僕が3年間スポトウでずっと考えてきたことは「こだわる」ことです。昔から僕は人と違うことがかっこいいと思うひねくれ者で、言われたことを言われた通りにやるのがすごく嫌でした。それはスポトウに入部してからも同じで先輩から記事の直しが返ってきても「ここは変えたくない」と駄々をこねていました。何度も直された記事にもなんとか自分のエッセンスを入れようと記事を更新する最終段階で、締めの文章を全部変えて更新したりしていました。問題児でした。

 2年時になると自由度は増し、どんどん自分のやりたいように記事を書いたり紙面企画を考えたりできるようになりました。当時の先輩たちはたびたび「俺たちがナンバーワン」、「スポトウがナンバーワン」という風に言っていたのを覚えています。僕は「なんで?」と正直思っていました。新聞部を比較して順位なんてつけられない。ましてや、新聞部なんて絶対ナンバーワンじゃない。ナンバーワンよりオンリーワンのほうが絶対かっこいい。そう思っていました。

 そんな先輩たちは今のスポトウの上昇気流の序章を丁寧に、そして大胆に作り上げました。僕が3年生になり副編集長になり新体制になったとき、ようやく気づきました。後輩への丁寧な記事の朱入れ(記事の直し)、プロの新聞などを熱心に勉強したり、ときには選手の親や恩師にまで取材に行く姿勢、積極的な広告営業活動、先輩たちのすべての「こだわり」はスポトウをナンバーワンにするためのものでした。僕のこだわっていた「こだわり」とは真逆のものでした。

 そこで、初めて僕の「こだわり」はなんの意味も持たないことを知りました。そして、本当の「こだわり」は、記事の基本、紙面レイアウトの基本、取材の基本を理解したうえで初めて意味を成すのだと気づきました。ナンバーワンに繋がらないオンリーワンなんていらない。目指すべきものがようやく見えた瞬間でした。そこからはもうずっと「先輩にも他大にも負けたくない」というナンバーワンへの「こだわり」だけで動いていました。今までで1番新入生を入れたいとの理由で新勧の料金を大きく値下げして部員からめちゃくちゃブーイングを喰らったこと、営業成績を上げたいとの想いだけであてもなく広告営業に突っ走り準備不足で怒られたこと。それでも意味のある「こだわり」には「根拠のない自信」がずっと付随していて僕は1回も辛いとか辞めたいとか思いませんでした。そして、引退のときに見た景色は紛れもなく自分史上ナンバーワンのものでした。

 

 だからやっぱり「こだわる」ことをやめることはできません。後輩のみんなにもやめないでほしいです。まずは「ことば」から。ことばは誰もが違うものを生み出せます。違う味があります。だから「ここなんで体言止めなの?」「ここ同じ表現続いてるよ?」と先輩に言われたときもちゃんと理由があるならこだわってください。僕は76号終面のサッカーの記事で「思い」と「想い」の使い分け、記事内での伏線回収、韻の踏み方、小見出しのつながりなど普通に読んでいては気づかないところに変なこだわりをして同じサッカー班のメンバーにも若干愛想を尽かされました(笑)。でも、それでいいんです。自分にしか生み出せない言葉で自分にしか書けない記事。それで選手だったり選手の両親だったり読者だったりの心を少しでも震わせることができるのだから。最後に自分の名前が載るのだから自信をもってこだわって。

 そんな「こだわり」を僕は大切にしてこれからも生きていきます。


TEXT=吉本一生

【宣伝】関東大学スポーツ新聞連盟の連盟長としての引退コラムもぜひお読みください。