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第86回日本学生陸上競技対校選手権大会
9月8日(金)〜10日(日) 福井運動公園陸上競技場
▼2日目
男子100m 決勝
(風:+1.8)
1位 桐生 9"98
※日本人初9秒台、日本新、日本学生新、大会新、東洋大新
男子200m 予選
6組(風:+0.9)
7着 松尾 21"77
7組(風:-0.4)
1着 桐生 21"41 ※準決勝進出
男子800m 予選
3組
7着 眞柄 1'54"85
4組
5着 増田 1'53"73
5組
5着 松崎 1'54"14
男子5000m 決勝
8位 山本 14'00"77
男子110m障害 予選
4組(風:-0.3)
5着 児玉 14"59
男子10000m競歩 決勝
2位 池田向 40'28"43
3位 及川 40'32"57
5位 川野 40'37"47
男子4×100mリレー決勝
2位 東洋大 (津波ー与那原ー松尾ー桐生)39"42
男子4×400mリレー予選
2組
2着 東洋大 (櫻井朴ー齋藤旬ー吉津ー池田仁)3'09"59 ※決勝進出
男子走幅跳
(風:+2.0)
1位 津波 8m09 ※大会新、東洋大新
初のタイトル獲得に笑顔を見せる津波
与那原(奥)は最後まで日本一を狙い走り続けた
全カレでも上位フィニッシュを果たした池田向(左)と及川(右)
桐生(法4=洛南)の日本人初の100m9秒台に会場中が沸き上がった全日本インカレ(以下、全カレ)2日目。桐生以外にも東洋大からは多くのメダリストが誕生した。中でも走幅跳で津波(ラ2=那覇西)が大会新記録の8m09をマークし大学初タイトルを獲得。また、10000m競歩では池田向(済1=浜松日体)が2位、及川(済4=愛知)が3位でゴールし、全カレでも東洋大競歩部門の強さを見せつけた。そして2連覇がかかる4×400mリレー(以下、マイル)もタイムで拾われ、最終日の決勝へ無事駒を進めた。
今シーズン前半は故障のため試合に出られていなかった津波。1本目はわずかに踏切版を踏み越えてしまいファールになるも、3cm、4cmと細かく助走の位置を調整していった。2本目で7m71、3本目で7m76と記録を伸ばし2位でベスト8に残った。追い風が強く吹き好記録が連発した中、8m越えの期待が高まっていた後半の跳躍。「桐生さんのおかげ」と話すように津波が跳ぶ前に100mの決勝が行われ、桐生が大記録を打ち出していた。この勢いに乗った津波が5回目でついに8m越えの大ジャンプを見せ、会場を再び沸かせた。祈るように電光掲示板を見つめ、映った数字は“8m09”。これまでの大会記録である8m01を更新し、初優勝を飾った。「優勝してまさか(8m)跳べるとは」と驚きながらも笑顔で振り返った。8mジャンパーとなった津波が今後も東洋大のフィールド部門を盛り上げていく。
優勝を狙い勢いに乗る桐生と津波を擁して4×100mリレー(以下、4継)挑んだ。2走の与那原(法4=那覇西)の体調が万全ではなかったが、4年間リレーメンバーとして走ってきた彼を梶原監督は「最後にお前と心中するからしっかり走れ」と送り出した。体調不良を伺わせない力強い走りで3走の松尾(総1=神辺旭)へバトンをつないだ。この種目5連覇を狙う中大に遅れてアンカーの桐生にバトンを託すと一気にその差を詰めた。しかし、あと一歩及ばず2位でゴール。梶原監督も「勝ちたかった」と悔しさをにじませたが「今の状態からよく頑張った」と選手たちを称えた。
もう一つのリレー種目であるマイルはエースのウォルシュ(ラ3=東野)を温存して予選に出場した。1走の櫻井朴(総3=国学院栃木)が持ち味である前半は落ち着いて入り、後半伸びる走りでトップでバトンパス。2走と3走は1年生が務め、他大に追いつかれても最後にしっかり前を抜かしてアンカーの池田仁(総3=岩村田)へバトンが渡った。最後まで城西大との一騎打ちとなったがラスト100mでかわされてしまい2着でゴール。タイムで拾われ決勝へ進み、2連覇の希望をつないだ。決勝ではウォルシュも登場し、狙うは優勝ただ一つ。
全カレでも競歩部門の強さは健在だ。10000m競歩はユニバーシアードの20㎞競歩の代表3名が出場しハイレベルなレースが展開。及川は「自分なりのレースができた」と振り返るようにスタートすると積極的に前に出て、先頭で歩みを進めた。これに池田向と川野(総1=御殿場南)も続き集団はすぐに分かれた。しかし、2000mで再び大きな集団になると先頭の入れ替わりを繰り返すだけで、さほど順位は変わらなかった。及川が2度の注意でペースが落ちた中、1年生二人が前回覇者の山西(京大)に食らい付いていく。後半には集団もばらけていたが山西が8000m過ぎにペースを上げ、これについていったのは池田向だけだった。し烈な先頭争いが続くもラスト1周で山西に突き放され、池田向は2位でフィニッシュ。途中後退した及川も最後に追い上げを見せ、3位まで順位を押し上げた。川野も5位でゴールし、全日本の舞台でも競歩部門の強さを見せつける結果となった。
桐生のみならず各種目で、実力を発揮した大会2日目。最終日には200mとマイルが残っており、再び東洋大旋風を巻き起こす。桐生は100mに続いて200mも制し2冠を、マイルは前年度チャンピオンとしての意地を見せ、4継で獲り落とした優勝を狙う。
■コメント
・梶原監督
(4継は)与那原が体調を崩していて、(ウォルシュ)ジュリアンを使おうかと思ったけど、やっぱり与那原も4年間桐生と4継を走ってきた人間だから、最後にお前と心中するからしっかり走れと言った。やっぱり勝ちたかった。もうちょっとだったと思うけどやっぱり中大は中大で意地もあるし、相手が一枚上手だった。残念だったけど今の状態からよく頑張ったと思う。力及ばすといったところだった。(津波については)4継で予選から桐生無しで津波をアンカーで使う可能性があったところを、次の走幅跳の助走のリズムが崩れるから桐生を使うつもりでは無かったが津波のためにも桐生に4継を走らせた。それがあったので走幅跳に集中して調整できた。前日助走の動きもよかったし、踏切の感じも良かった。踏切が合えば7m90くらいはいくぞということでやってきて、風をうまく捕まえて3、4センチずつ助走のマークを下げたりということをした。最後もう少しテンポを刻むか、助走を下げようかというところを1回1回確認しながらやってきた。助走を課題としてやってきてそこがうまくはまった。まさか8m09までいくとは思わなかった。本人もびっくりしていた。
・酒井監督
(位置づけは)短距離が関東インカレでなかなか調子が合わなかった選手が、今回しっかり合わせる時期だったので長距離の方も5000、10000を中でもしっかり勝負できる選手を出そうと。その中でも西山が日本人トップになったり(山本)修二は最低限8位入賞した。駅伝に考えれば修二はもうワンランクやっていかなければいけないと確認できた。競歩は2、3番でユニバーシアード金メダルの山西くんは強かった。及川も最後のインカレでしっかり3番に入ってくれて良かったと思う。川野も5位と。競歩の方は来年もしっかり入賞できるようにしていきたい。短距離の勢いに競歩もしっかり乗れたし、非常に収穫は大きかった。出した選手がそれぞれ内容のあるレースをしたと思う。桐生の9秒台、日本新、日本学生新でTUがすごく誇り高くなったので駅伝でさらに光り輝くようにやっていきたい。
・及川(済4=愛知)
優勝を狙ってはいたので悔しいは悔しいが最低限3位に入るという目標は立てていて目標を達成できたので良かった。ユニバーシアードの後だったのであまりそこまで考えずに最後のインカレというとこでしっかりインカレに調子を合わせて優勝を狙っていくつもりでいた。(最後のインカレについて)レッドカードが途中2枚出てしまってペースが落ちたが、調子自体は合わせることができていて、自信を持って臨むことができたのでレース中も前に出て先頭で歩いたり、自分なりのレースができたことに関してはすごくよかった。悔しい面もあるはあるが清々しいやり切ったという思い。正直ゴールできるかギリギリのラインだったが3位という結果はうれしく思う。1年生の池田と一緒に表彰台に登ることができて良かった。ユニバーシアードから帰ってすぐ疲労を抜き、10000m用の体に仕上げてきた。早い動きの練習を取り入れたのがよかった。(今後については)国体があるのでそれに向けしっかり体を休めて、今回歩系の面で課題が残ったので、そこで世界陸上の代表であったり、レベルの高い選手がいるので先輩方についていけるような準備をしていきたい。
・津波(ラ2=那覇西)
(目標は)入賞することだった。優勝してまさか(8m)跳べるとは。最初はファールして2回目で71跳べていたので、調子は悪くないのかなと思った。5回目でまさか8m09を跳んでびっくりした。跳ぶ前に桐生さんが9秒台出して、今回も全部持っていかれたと思った。でも自分も(9秒台は)うれしくて、フィールドの中で叫んでいた。それを勢いにできたらいいなと思っていたので桐生さんのおかげ。(監督からは)スピードに乗っているから少しずつずらして、足が合えば絶対跳べるからと言われた。(今季前半は)3月の後半に結構大きな肉離れをして、試合に出られなかった。治って動き始めたのも7月で、関東インカレも学生個人も出られなかった。(今後は)今回初タイトルだったので、それがまぐれじゃなかったことをしっかり証明できるように、また日本一獲れるよう頑張りたい。
TEXT=福山知晃 PHOTO=福山知晃、小野由佳莉、小島敦希