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第102回日本陸上競技選手権大会 男子・女子20km競歩
兼 ドーハ 2019 世界陸上競技選手権大会 男子・女子20km競歩日本代表選手選考競技会
2月17日(日) 六甲アイランド甲南大学周辺コース(日本陸連公認コース)
男子20kmW
2位 池田 1:18’01
17位 成岡 1:23’48
DNF 長山
女子20kmW
25位 竹中 1:46’34
池田は終始先頭集団でレースを引っ張った
成岡はベストを3分近く更新し、練習の成果を存分に出した
中盤に位置し前へ食らいつく粘りの歩きを見せた竹中
惜しくも優勝には手が届かなかったが、表彰式では笑顔を見せた
日本陸上選手権競歩はドーハ2019世界陸上競技選手権大会(以下、世界選手権)の代表選考を兼ねており、トップウォーカーが多数出場するハイレベルなものとなった。東洋大からは池田(済2=浜松日体)、成岡(工2=伊賀白鳳)、長山(済1=埼玉栄)の三名がエントリーし、池田が準優勝を果たした。競歩ブロックの成長を感じさせる結果に、世界選手権出場への期待が増している。
優勝を目標に掲げ今大会に挑んだ池田は、宣言通りスタート直後から先頭集団の中でレースを進める。1kmを3分52分で通過する先頭集団はすでに後続を引き離し、5名に絞られた。途中人数の増減を繰り返しつつこう着状態が続くもレースに動きがあったのは7km付近、藤澤(ALSOK)がギアチェンジし突き放しにかかると集団はさらに高橋(富士通)、山西(愛知製鋼)、池田の3名に。14kmを通過して藤澤を吸収すると、16.5km付近でチャンスと見た池田が仕掛ける。スパートをかけるも勝負を決めきれず、レースはラスト勝負になった。残り500mのところで大会4連覇中の高橋が意地を見せトップでゴールテープを切ると、その場に倒れ込み壮絶なレースを物語っていた。その光景を目の前で見せつけられた池田は悔しげな表情でフィニッシュし、1秒差のところで優勝を逃した。
競歩ブロックの中間層を担う成岡は終始中盤でレースを進め自分のペースを守り切り、会心の歩きで自己ベストを3分近く更新した。「練習してきた成果がすごく出た」と自信をつけるも後半の粘りを課題に挙げ、さらなるレベルアップへの余念が無い。酒井監督は「練習でやっていることが表現できた」と練習熱心な成岡を評価した。同じく中盤で歩きを進めていた長山は、16kmのところで腹痛を訴え無念の途中棄権となった。1ヵ月後の全日本競歩能美大会(以下、能美競歩)でのリベンジを誓う。さらに女子20kmWに出場した竹中(食2=秋田商)は、中盤の集団に付けペースアップしても食らい付く粘り強さを見せた。今後はより大きく成長し、勢いをつけていきたい。
池田は優勝こそ逃したものの自己ベストを1分以上縮め、学生最強ウォーカーの名をほしいままにする。また昨年の世界競歩チーム選手権で金メダルを獲得し、世界経験も積みつつある。しかしここで満足する器は持ち合わせておらず、自身の課題について「ラスト勝負に持ち込まないでもう少し前の段階で勝負を決められる、それぐらいの力をつけなくては」と振り返った。今大会で優勝することで世界選手権の代表に内定するが、能美競歩でもそのチャンスはある。さらに能美競歩では学生の世界大会であるユニバーシアードの代表選考も兼ねており、池田はユニバーシアードと世界選手権のどちらも目指しつつ次のレースに向けて準備を進めることになる。「今後は世界への挑戦になる」と酒井監督は池田に期待を寄せた。多数の有力なOBを輩出し競歩界では非常に重要なポジションを担う東洋大なだけに、現役生が世界へ行くことの価値は大きい。また、世界選手権のその先には東京五輪も見えてくる。現役生の池田が日の丸を背負い、世界と、トップウォーカーの東洋大OBたちと、し烈な戦いを繰り広げる日はそう遠くはない。
■コメント
・酒井監督
今回は日本選手権競歩であり世界選手権の選考を兼ねている大会。2番に入るというのは最低限の代表選考を考えるとすごく大事なところなので、ここは優勝は逃したがベスト記録を1分以上更新しての2位というのはよく頑張ったと思う。(成岡選手は)ベストを2分以上更新して目標通りの1時間23分台でいけたので、非常に練習でやっていることが表現できたと思う。彼も本当によく上げてきた。(長山選手は)途中最後16kmで棄権したが、腹痛だった。やっぱりそこが1年生のキャリアの甘いところ。彼はどちらかというと今回が目標というよりも能美大会の方が目標なので、過程の中での経験。(池田選手はユニバーシアードと世界選手権どちらも出場を目指すのか)連戦とはなるが、能美にも出場しユニバーシアードを目指す。そこから世界選手権を視野に入れていく、連戦に耐え得る強さを持たなくてはいけない。(その先には東京五輪が見えてくると思うが)そうですね。池田はオリンピックを目標に据えていく。現役生として代表に選ばれることは長距離部門全体としても勢いになる。(今後の意気込みを)やはり世界大会の代表を輩出していくということは、長距離部門全体で目指すべきもの。三大駅伝での優勝や、インカレでいい成績を残しこの1年間を飛躍のものにする。卒業生にはマラソングランドチャンピオンシップに出る者もいる。現段階で東洋大OBが最多。競歩ブロックではオリンピックで卒業生と現役生の戦いもあるかもしれない、今後は世界への挑戦になる、頑張ってほしい。
・池田(済2=浜松日体)
しっかり先頭集団でレースを進めていき16.5kmのところで1回スパートをかけて、離すというレースプランだった。そこでしっかり離して勝負決めたいという思いで仕掛けた。ラスト500まで3人で争う形になってラスト500になって最後折り返したところで、(高橋)英輝さんにスパートをかけられてそこでうまく食らい付こうとしたが、最後力不足で及ばなかった。(目の前でゴールテープを切られる形になったが)数秒の差といっても力の差は大きかったのかなというのは感じた。ここで負けたから次の課題ができたというのは良かったと思う。(課題は)ラスト勝負というのもあるが、ラスト勝負に持ち込まないでもう少し前の段階で勝負を決められる、それぐらいの力をつけなくてはなと思う。(ユニバーシアードと世界選手権どちらも目指すということで、連戦になってくるが)ユニバーシアードも狙って連戦になるがしっかり準備をして、どちらのレースもベストコンディションで合わせられるようにしていきたい。(世界選手権の先にはオリンピックも見えてくるが)ドーハに出場できたら日本人1位を獲って3位以内に入れば東京五輪内定ということになるので、しっかりそこを1番の目標にしていきたいと思う。(一つ学年が上がるが、今後の意気込み)2019年は東京五輪に向けて非常に重要な1年になるので、コンディショニングを崩さないように1年を通じてしっかり故障せずに歩けるように、練習の継続ができるようにしていきたい。それとやっぱり競歩ブロックは今最上級生がいなくて、自分たち3年生が最上級生となるので東洋の競歩ブロックを自分たち3年生が主体となって引っ張っていきたい。
・成岡(工2=伊賀白鳳)
今回のレースは1時間23分切りというのを目標にしていたが、全体的にスタートしてから4分前後の集団に付けて歩くようにレースを進めていたが、その中でいいペースで引っ張る選手がいたのでそれに付いて落ち着きながら余裕を持って12kmぐらいまではレースを進められた。やっぱり後半で自分の課題で後半の粘りというのがまだできなくて後半少しペースが落ちてしまったが、今までの練習から見ても今回のレースの結果というのは、練習してきた成果がすごく出たと感じている。(後半の粘りが課題ということだが対策は)今はいろんなスタッフと練習メニューを相談しながら各個人に合わせた練習メニューをさせていただいているので、後半のビルドアップであったりだとかペースのリズムチェンジであったりだとかペースに変動をつけながらこらからも練習の強度を上げていって、次は能美があるのでそれに向けて残り1ヶ月疲労を抜きながらもしっかり調整していって、そこでもベストを出せるように頑張っていきたい。(今後の意気込みを)しっかり選手としてこの2年間やってきてだいぶ成長のほうもしてきているとすごい実感できているので、この3、4年目はしっかり後輩に示しがつくような態度というのを背中で教えられるような選手になっていきたい。あとはやっぱり長距離としてもこの3、4年目で箱根駅伝優勝というのを目標に長距離としてもしっかり達成させていきたいので、それに対してもしっかりサポートしていけるようなそういうふうな1年にしていきたい。
TEXT/PHOTO=稲村真織