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2023.07.14
サッカー

[男子サッカー] 「経験じゃなく戦力として見ている」城福監督の期待に応えたMF新井が長崎戦でJリーグデビュー&初G!!

2023年明治安田生命J2リーグ第24節

7月5日(水) 味の素スタジアム


東京ヴェルディ1ー2V・ファーレン長崎

〈得点者〉(アシスト) 

89分 新井(加藤)


〈出場メンバー〉 (※数字は年齢、新井は学部と学年、=後は前所属チーム)

▽GK

マテウス(30=フィゲイレンセFC・ブラジル)


▽DF

宮原和也(27=名古屋グランパス)

山越康平(30=大宮アルディージャ)

谷口栄斗(23=国士大)

深澤大輝(24=中大)


▽MF

齋藤功佑(26=横浜FC)

森田晃樹(22=東京Vユース)→83分 加藤蓮(23=明大)

綱島悠斗(22=国士大)→46分 稲見哲行(24=明大)


▽FW

河村慶人(23=日体大)→46分 甲田英將(19=名古屋グランパス) 

北島祐二(22=アビスパ福岡)→68分 新井悠太(国3=前橋育英)

山田剛綺 (22=関西学大)→62分 阪野豊史(33=松本山雅FC)


関東大学リーグ9節の日大戦で相手を切り返してかわす新井


先月8日にJ2リーグ所属・東京ヴェルディの特別指定選手となった新井悠太(国3=前橋育英)が、5日のJ2リーグ第24節の長崎戦でJリーグデビューを飾った。1点ビハインドの68分から投入されると、89分にカットインからグラウンダーのシュートでJ初ゴールを記録。昨年J3・相模原の特別指定選手だった伊藤恵亮(R4年度国卒=現・SC相模原) 以来となる、Jデビュー戦ゴールとなった。


 緑色の新風が味の素スタジアムに吹き荒れた。6月8日に東京ヴェルディの特別指定選手へと認定された新井は、今節初のベンチ入り。「経験じゃなくて戦力として見ている」と城福監督から声掛けがあった上での出場だったことを明かした。


試合はラインを高く保ち、ボールを保持するヴェルディに対して、長崎はFWフアンマ・デルガド(32)を起点にカウンターを狙う構図に。29分にフアンマのヘディングでの落としから増山朝陽(26)のボレーシュートで失点したヴェルディは、1点ビハインドの68分に新井を投入。今季の東洋大部員では、初のJリーグ出場選手となった左サイドハーフは早速見せ場を作る。


78分、新井と同時期に名古屋グランパスから期限付き移籍で加入した、甲田の右サイドからのクロスに左サイドからゴール前に入り込み反応。これは惜しくも枠外へ。それでも「(甲田が)カットインして顔を上げた瞬間にボールは来るかなと思っていた」と予測の良さを発揮した。


新井の投入直後のファンマのゴールによって差は2点に広がってしまっていたが、このワンプレーからヴェルディのパス回しもよりスピーディーかつ円滑なものになっていく。その後も新井は積極果敢に仕掛けた。83分にはカットインからのシュート。その直後も右サイドに移ってのクロスでヴェルディの攻撃を牽引する。


84分と85分には、マッチアップする長崎の右サイドバック・奥井諒(33)に勝負を挑んだ。しかし、スピードに乗って仕掛けた新井に対して奥井は残していた片足でボールを突いたり、体を上手く入れることで簡単に抜かせない。この少し後から新井はボールを受ける位置を下げ、マッチアップ相手がMFのクリスティアーノ(36)に。その後のプレーでクリスティアーノとの対人において優位に立つことに成功した新井は大仕事をやってのける。


89分、左サイドのペナルティーエリア付近でボールを受けると、対面したクリスティアーノをかわし、バイタルエリアへ進入。プレスが来ないことを確認すると右足を一閃し、地を這うようなグラウンダーのシュートはゴール左隅に突き刺さる。「1枚目の逆を取ることでフリーになる状況をイメージしていた」との思惑のままのプレーを披露し、初出場とは思えない冷静さを見せつけた。


追いつくことはかなわなかったものの、新井の躍動感あふれるプレーはヴェルディサポーターの胸を熱くするには十分なものであっただろう。それでも新井は最初のシュートミスについて「あそこで決めていたら逆転できていたかも」と自らにさらなる向上を求める。個人的にも大学リーグであまり見せることの無いカットインからの一撃は心を震わせられるものが。これからは大学サッカーでの活躍と同時にプロでの東洋大サッカー部員の活躍を伝えたくなった試合であった。


■コメント 

・新井悠太(国3=前橋育英) 

(Jリーグの舞台に立った感想は)

合流した週から終わりまでに3試合があって、1試合目の熊本戦には絡めませんでしたが、城福監督から話があって長崎戦で上位対決にもかかわらず自分がメンバーに入るかもしれないという話をいただいた。その時には、シックスポイントゲームで大事な試合だったのですが、そこで使うということは「経験じゃなくて戦力として見てるから」という言葉をいただきました。自分もその思いに答えようと思っていましたし、入ったからには周りの事は気にしないで自分のプレーに専念しようと、いいイメージを持ってJリーグのピッチに入れたなと思います。

(城福監督も(スタメン発表の)「2時間半前までメンバーは分からない」と言っていましたが、今回の招集は突然でしたか)

城福監督も練習中はかける声であったりを人によって変えないで、忖度なしで平等に見てくれている印象が自分にもあって。そういった面では最後の最後まで選手を見極めて、使う選手や使うフォーメンション、時間帯を決めているのではないのかなと。それに対して自分はいつでも出れるような準備をするだけだなと思っていました。

(長崎戦ではフアンマ選手が相手チームに居ました。Jリーグでもトップクラスのストライカーのプレーから学んだことは)

フアンマ選手に関しては、城福監督が「何も無いところから得点を生み出す力がある」とおっしゃっていたり、個人でゴールをこじ開ける姿であったり、フィジカルで体を上手く使って相手を2、3枚剝がしていく姿は勉強になりましたし、正直自分には真似できないなと思いました。時間の使い方やシュートのミートの部分での上手さも感じましたね。

(新井選手の最初のシュートシーンで甲田選手が良いクロスを上げていましたが、甲田選手とはプレーしていてビジョンが共有できていると感じますか)

ヴェルディの選手はみんなフレンドリーで優しいですし、ピッチの中に立てば不自由なく受け入れてくれます。みんなとても優しかった中で、ヒデ(甲田選手)はちょうどレンタルで自分と同じ時期に練習に来たのもあって、よく練習中に声をかけてくれました。ヒデの左足は、精度が高いのも分かっていたので、(シュートシーンでは)カットインして顔上がった瞬間にDFと反対の動きをしてフリーになれば、ボールは来るかなと思っていた。それで準備をしていたんですけど、ショートバウンドして難しいボールになってしまってシュートを外してしまいました。ああいうのは決めれなければいけないですし、あそこで決めていたら逆転できていたかもしれない時間帯だったので、反省すべきところだなと思います。

(交代後、マッチアップの相手になるであろう長崎の奥井選手とはどのように対人をしようと考えていましたか)

Jのクラブになれば対人が苦手な選手はいないと思っていますし、その中でしっかり戦っていかなければいけないと思っています。ですので日頃から一対一の練習はしていて、自分にもプロに通用する部分は、確立したものがあった。ですので自信を持って相手DFに対人することができましたし、後半相手が10人になっていたので、疲れていた。自分は途中からで体力も余っていたので通用するシーンも何本かくるだろうなと思っており、そういった形になったことに関しては、相手が10人で疲れている状況に、自分が今まで積み上げてきたものをだすだけだなと。

(奥井選手とクリスティアーノ選手とのマッチアップ後、ボールをもらう位置を低くしていました。プロの舞台で応用の利いたプレーができたことは自信になりますか)

受ける位置を低くしたのもありますが、強化部の人などと話して改善点として挙がったのは、ポジショニングが逆に低くて、クリスティアーノ選手と奥井選手に見られてしまうシーンを作られてしまっていたので、むしろ高い位置を取ってサイドバックの選手と一対一のシーンを作れれば良かった。得点シーンに関しては2枚いた状況で2対1を完全に作られるより、1枚目の逆をとることでフリーになる状況を作れればなというのをイメージしていた。それがしっかり体現できたので自信にはつながりましたね。

(東洋大では、伊藤恵亮選手(R4年度国卒=現・SC相模原)以来のJデビュー弾。ピッチに入る前に意識はしていましたか)

ピッチに入る前は、とにかく何も考えないで周りに取られないようにと、自分が100%のパフォーマンスをできるように。根底にはチームの為にという思いがありますが、チームの為にも自分が力を出し切ることが最低条件だと思っていた。だからこそ、やれることをしっかりやろう。と考えてピッチに入りました。入った後は、相手が10人で引き気味だったので、積極的にシュートを打っていこうと思っていました。

(ゴールシーンではカットインがきれいに決まりました。その前の対人でカットインではなく縦に行ったのは布石でしたか)

何シーンか仕掛ける場面があって。中に行って、中に行ってとプレーしていた。でも自分は常に縦を狙ってプレーしているので、2枚いる状況でも毎回縦に行ってみてから、相手がどういう対応をするのかを見たかったのもあります。クリスティアーノ選手の寄せが甘かったので、一回縦に行こうかなと。でも上手くいきませんでした。

(餌を撒くプレーではなかった)

そうですね。自分はずっと縦を狙っていて、得点のシーンでも本当は縦にいきたかった。でも相手の対応だったり、相手選手の行かせたい方向が縦方向だったので、中にいこうと思いましたし、無理やり縦に行くよりかは、中にいって選択肢を増やせばボールも奪われない。そういった面は大学でも判断できているので上手くプレーできました。

(深澤選手との連係も上手くいっていましたね)

内側のレーンと深い位置の両方をとってくれていて、内側でとってくれていれば自分が高い位置でフリーに受けれますし、深い位置でとってくれれば、クリスティアーノ選手を引き出して、サイドバックと一対一になることができる。そこは深澤選手が自分を生かすために上手くやってくれていました。


TEXT=髙橋生沙矢  PHOTO=北川未藍