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2023.07.19
サッカー

[男子サッカー] 「目標にする選手は三笘選手なのではないのかな」"NEXT三笘"は東洋大から生まれるのか MF新井が東京クラシックで1A!

2023年明治安田生命J2リーグ第25節

7月9日(日) 国立競技場


町田ゼルビア2ー2東京ヴェルディ

〈得点者〉(アシスト) 

73分 染野(宮原)

83分 染野(新井)


〈出場メンバー〉 (※数字は年齢、新井は学部と学年、=後は前所属チーム)

▽GK

マテウス(30=フィゲイレンセFC・ブラジル)


▽DF

宮原和也(27=名古屋グランパス)

千田海人(28=ブラウブリッツ秋田)→46分 加藤蓮(23=明大) 

谷口栄斗(23=国士大)→66分 山越康平(30=大宮アルディージャ) 

深澤大輝(24=中大)


▽MF

甲田英將(19=名古屋グランパス)→66分 新井悠太(国3=前橋育英)

稲見哲行(24=明大)

森田晃樹(22=東京Vユース)

北島祐二(22=アビスパ福岡)→46分 齋藤功佑(26=横浜FC) 


▽FW

染野唯月(21=鹿島アントラーズ)

山田剛綺 (22=関西学大)→80分 綱島悠斗(22=国士大) 


J2リーグ2試合で1G1Aと大活躍の新井


7月9日に行われたJ2リーグ第25節・町田ゼルビア対東京ヴェルディ戦に、東洋大学在学中の新井悠太(国3=前橋育英)が24節の長崎戦に続き途中出場。前節1ゴールを記録した新井は2点差の66分に投入されると、83分に左サイドを突破し染野の2点目をアシストする。新井は2戦で1G1AとJリーグの舞台で輝けることを結果で証明して見せた。


 J2史上初の国立開催、ヴェルディに所属していたバスケスバイロン(23)の町田への移籍。様々な思惑も絡んだことで、かなりの熱量をもって開催された、同じ東京をホームタウンとするチーム同士の"東京クラシック"。注目度も段違いの今節で観客の目を魅了したのは、4日前の試合で始めてJリーグの舞台に立った大学生だった。


 前節の長崎戦でJリーグデビューを果たし、1ゴールを決めて見せた新井は今節もベンチ入り。早くも城福監督からの信頼が垣間見える選出となった。


 試合前から、流石ダービーと言わんばかりの熱気に包まれた国立競技場。ここまでのムードが作り出されたのは、7月6日に起こったバスケスバイロンの移籍騒動の影響もあるだろう。メンバー発表時、バイロンの名前がコールされた際には大ブーイングが響く一幕も。


 情熱的な雰囲気の中でキックオフを迎えた今節、ゲームは開始早々に動いた。2分、エリキ(29)がヒールパスからリターンをもらいシュートを放つ。これはマテウスが正面で弾いたものの、こぼれ球に藤尾翔太(22)が詰めており被弾。序盤から1点を追う展開に持ち込まれてしまう。


 対するヴェルディは、いつも通りポゼッションを高めながら試合を進めるが、町田のプレスに苦戦。それでも森田のカットインからのシュート、北島のミドルで町田ゴールを脅かす。38分には、エリキのアシストから再び失点。2点ビハインドという苦しい展開でハーフタイムを迎えた。新井も前半のアップ時に、他の選手と悔しさを露わにしていたが、そんな高ぶる若武者に再びチャンスが訪れる。


 反撃の糸口をつかめずにいた66分、城福監督が動いた。DFの山越と同時に新井を投入。「サイドにスペースがある。外側から仕掛けていけ」と自らの長所である、縦への突破を存分に生かせる指示を受けたドリブラーは国立の舞台で躍動した。


 投入時の右サイドから加藤とポジションを交代し、本来の左サイドに移ると、67分には平河悠(22)とマッチアップ。この勝負では当たりで負け、町田ボールのスローインにされてしまう。


 「差を感じた部分ではある」と平河のフィジカルの強さを実感したが、ここで消極的になる新井ではない。68分、山越のロングフィードへ対して、新井は守備に来た町田DFの体を使いながら上手く反転。町田陣内の左サイドでフリーになることに成功する。そのままゴールまで一気に切り込むと、猛烈なプレスバックを見せた平河を切り返しで翻弄し、枠を狙った。しかし、このチャンスは「ニアハイに打てば得点できたのでは」とポストに阻まれ、デビュー戦からの2試合連続弾とはならず。


 交代で良い入りを見せた新井は、69分にも魅せる。町田陣内の左サイドでまたもボールを受けると、平河の股を抜き、もう一人のカバーの選手もかわすと右足を一閃。長崎戦と同じようなシュートシーンだったが、町田のGK・ポープウィリアム(28)が好セーブを見せ、ここでもネットは揺らせなかった。


 しかし、この一連のプレーから確実に流れはヴェルディへ。町田のスピーディーなカウンターも、守備陣の素早いプレスバックで防ぎきると、73分、宮原の正確な右サイドからのクロスに染野が反応。ポープとの競り合いにも勝ち、1点を返す。


 シックスポインターともなる今節、このまま負ければ、首位の町田との勝ち点差が10以上開いてしまう。それだけは避けたいヴェルディを救う起点となったのは、この日幾たびもサポーターを沸かせた男だった。


 83分、深澤が平河の裏のスペースを狙い走り出す新井を見つけ、浮き球のパス。このボールをさらに綱島がヘッドで勢いを付け、スペースに落とす。そこに猛スピードで突入した新井は、再び左サイドでフリーに。「一番に見えた」という染野に左足でクロスを上げるが、町田の選手にディフレクトしてしまう。しかし、この場面を決めきるのが、ストライカーたる所以か。コースの変わったボールに合わせ移動しながら、勢いよく頭を振るとボールはゴールへと吸い込まれた。


 新井は「8割染野選手が決めたゴール」と振り返るが、彼がスペースを見つけ、相手が来ている中でもクロスを上げる勇気を持っていたことも得点につながったと言えるだろう。


 その後は、ヴェルディが逆転に向け猛攻を仕掛けるが、町田も体を張り、得点を許さない。アディショナルタイムのエリキの決定機も枠を外れ、首位攻防戦は2-2のドローで決着となった。


 今節での新井のドリブルを見て、「中島翔哉のようだ」という声もスタンドから聞こえた。そんな新井が理想とする選手は「三笘選手のような無駄なフェイントを入れずに、ステップだけで縦に行ける選手」だという。


 数日前までは、Jリーグの試合に出場経験がなかった大学生が、2試合でチームにとって欠かせないピースに。どちらも上位対決だったことで、与えたインパクトは計り知れないものがある。"NEXT三笘"は東洋大とヴェルディから生まれるのか。スターダムを駆け上がる新井をこれからも見届けていく。


■コメント 

・新井悠太(国3=前橋育英)

(前節の長崎・フアンマ選手に続き、今節で対戦したエリキ選手もJリーグ屈指のストライカーです。何か勉強になったプレーはありましたか)

縦横無尽にピッチを駆け巡って攻守にかかわらず顔を出し、チームに貢献しているなというイメージがあった。自分もあのようなプレーは勉強にしなければいけないですし、思考が止まっていないというか。しっかり状況を把握して、次のプレーのイメージができた中で動きが止まっていない。その一連の動作が90分続いていたので、自分もああいった予測の面であったり、ハードワークの部分は盗んでいかないといけないなと思いました。

(後半のアップ時にボードで指示を受けていましたが、どのような内容でしたか)

セットプレーのシーンで何番に付く、とかポジショニングに関しての指示で、城福監督からは長崎戦と同じで「11人でも相手は引いて守ってくるチームだから、サイドにスペースがある。外側から仕掛けていけ」という感じでした。

(最初右サイドでプレーして、途中から左サイドへ移った。あれも指示でしたか)

本来は交代時に蓮さん(加藤)がいたので彼と(位置を)交代する予定でしたが、スローインでリスタートが早かったので、とりあえずその場でプレーしました。城福監督に「タイミングを見て交代」と言われたので、入れ替わった形ですね。

(新井選手が選手権に出場した際、全国高校サッカー選手権が国立開催ではなかったと思うのですが、国立のピッチは初めてでしたか)

そうですね。自分は初めてでした。今までこれといった成績を残してきたわけでは無かったので。こういった素晴らしいピッチ、味スタ(味の素スタジアム)もそうですけど、偉大なピッチでプレーできた事に関しては非常に光栄に思います。これからもこういったピッチで試合ができるように、頑張っていきたいという目標になりました。

(長崎戦では対人時に「縦に行きたかった」とおっしゃっていました。町田戦では縦にドンドン仕掛けていましたが、前節よりプレーのしやすさはありましたか)

ゼルビア戦も(投入時の)状況はほぼ一緒で。交代時、相手が疲れた状況。ああいった(縦に突破する)シーンを何回も作れた、前向きにボールも受けれたというシーンでしたし、前半であればすごいプレッシャーがあって違う状況がまたあったと思う。けど、対峙(たいじ)する選手とは変わることなく、常に縦を狙って、縦を見せつつ中に。(町田の平河選手は)結構タイトに付いてくる選手だったので、フリーランニングで背後を狙っていたというのもあります。

(ポスト直撃弾のシーン、直後の股抜きのシーンでも上手くプレスをかわしていました。ご自身の中で満足感はありますか)

それでも、入ってファーストコンタクトでは、相手の体の強さを実感しましたし、そこは差を感じた部分ではあります。(平河選手が)疲れ切った状態だったこと。縦に行って対応されたシーンもあったので、まだまだ自分も力が足りないかなと思います。

(平河選手との対人がこれからのモチベーションになった)

ああいった状況でも体を投げ出したり、タイトに付いてくるというのは自分にはないもので。見習わないといけないプレーでした。攻撃だけじゃなくて守備も頑張らなければいけないなと思いました。

(再びポスト直撃弾のシーンについてです。新井選手としては、切り返し後のボールを置く位置はもう少し外に置きたかったですか)

深い位置まで入って、相手選手が全力疾走で走ってくるのが見えた。本来ならば、一個前のタッチで中に(クロスを)上げるのがベターな選択だったと思うのですが、自分はもう一個入って行って。嫌な位置でクロスを上げようと思ったところに、相手が見えたので切り返しを思いつきました。自分の中では結構いい位置、次に蹴れる位置にボールを置けて、シュートを打てたと思うのですが、まぁ、ニアハイに打てれば。得点できたのではないかなと思います。しかし、けどちょっと詰まってしまったので、ニアのポストに当たってしまった形ですね。

(股抜きのシーンのドリブルを見ていて、中島翔哉選手を思い浮かべた。とおっしゃっていたサポーターの方もスタンドにはいました。新井選手の目標とする選手はいますか)

いや、今は特にいません。でも、理想の形としては無駄なフェイントを入れずに、ステップだけで縦に行ける三笘選手のような選手ですね。シンプルに縦に行けたり中に行けたり、クレバーなプレーもあったり。そういった選手が日本にいるので、目標にする選手は三笘選手なのではないのかなと思います。

(長崎戦では甲田選手の逆サイドのクロスからチャンスになるシーンがありました。町田戦でも宮原選手がボールを持って内側を向いている際に裏へ抜け出そうとしていましたが、長崎戦と同じようなシーンを頭に描いていましたか)

相手が3バックだったのか自分も分かりませんでしたが、平河選手がちょっと高めのポジションを取っていて、相手のサイドバックとセンターバックの間にスペースが空いていた。なので、宮原選手が引き返して顔を上げたシーンはもしかしたらいいボールが入ってくるのではないかな、というイメージがあってあそこに入っていきました。

(普段の大学でのリーグ戦時にも右サイドから同じ形でボールが来ることは想定していますか)

常に(同じ形を)狙っていますし。(右サイドから同じようなボールが)入ってくるときは入ってくると思うので、いつかそういった形で点を取れればいいかなと思います。

(アシストのシーンもでしたが、新井選手が抜け出したスペースに味方の選手がヘッドでボールを入れてくれることが多い。あのプレーを経由することによってのプレーのしやすさはありますか)

深澤選手がアウトサイドで浮かしたパスを出して、多分イメージとしては、そのまま自分が走ったスペースに落とすボールだったのかなとは思っていますが、それが綱島選手の頭の方に少しズレて。綱島選手がヘディングで逸らしていなかったら、後ろの選手に(パスを)取られていたと思うので、そこでワンクッション入れて、自分の前のスペースに落としてくれたのは、本当に気の利いたいいプレーだったと思いますし、あれが無かったらアシストも無かったのではないかなと思います。

(アシストシーンではディフレクションがありました。あのシーンでの染野選手の入り方はやはり上手さを感じましたか)

本当に自分はフリーで蹴ることができた。顔を一回上げて中の状況を見た時に、染野選手含めて味方の選手が3枚いて。染野選手が一番に見えたので、そこに早く出そうという気持ちで出しましたが、相手の足に当たってディフレクションした。その中でもああいった形で点を決めてくれた染野選手には感謝したいですし、8割染野選手が決めたゴールと言っても過言ではないかなと思います。

(終盤、町田の中島選手をファウルで止めたシーン。カウンターになりかけたタイミングでイエローをもらいながらも上手くピンチは防いだ形でした)

ファウルで止めるつもりはなくて。顔を上げた時にエリキ選手が走っていて、でも中にも相手FWが走っていた。そこに出されたらヤバいなという気持ちでいたら(中島選手が)顔を上げて足を上げたので、足を振り上げている間にボールを突ければいいと思っていました。

(アディショナルタイムでのエリキ選手の決定機はやはり焦りましたか)

ロングボールもあまり狙っていなかったと思うんですけど、自分が見た時には、靴ひもを結んでいたんですよね、エリキ選手が。それでもロングボールが入った瞬間には、もう反応していて。やっぱりああいったずる賢さは上手いなと感じた部分はありますし。ちゃんとロングボールに対して自分がアタックに行けていれば、相手のチャンスは無かったと思うので、そういった面で言うと、攻守の切り替えであったり守備の強度がまだ課題であると思います。

(今回の2試合、城福監督の下でプレーをしましたが、どのような感想を抱きましたか)

チームの事に熱心で、とにかく上を目指そうと向上心にあふれた監督。自分も付いていきたいと思いましたし、こういった舞台に自分を使ってくださったことはありがたいです。信じてくれたことに関しても、期待に答えなきゃなと思いました。やっぱり(城福監督は)求めるものに妥協が無くて。やってない選手がいたら声を出して指摘するし、本当にいい監督でした。

(これから大学リーグの試合が再開します。還元できることや学びになったことはありましたか)

大学でやってきたことがこっち(Jリーグ)でも通用するとは思いましたし、還元するという面では、、、別にJリーグの試合に出たから自分が偉くなったわけではないので何とも言えませんが、自分は東洋の為に戦うだけなので、変わらず東洋の為に勝ち点3を持ってくる形で頑張っていきたいです。


TEXT=髙橋生沙矢  PHOTO=北川未藍