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あと一歩で優勝をさらわれた悔しい春を糧に、ひと夏越えて選手の表情はより引き締まったものになった。勝負の秋、12連勝を掲げるチームの意気込みを4日間に渡りお届けする。
「そりゃあもう(2部)3年目ですから」。自分たちより1季先に2部降格していた日大が春に1部復帰した。「そろそろうちの番だろう」と高橋監督は笑う。その笑みは決してはったりではない。レギュラーも固まり、絶対的エースに悩める左腕も復活。万全の体制で臨む秋。そんな指揮官の言葉で連載企画をスタートする。(取材日・8月29日、聞き手・浜浦日向)
――秋を迎えるにあたり、注目すべき選手は。
増渕(営4・鷲宮)が良くなったよ。
――増渕投手は春季キャンプでは原との2本柱とおっしゃっていましたが、リーグ戦登板はありませんでした。
春は全然駄目だった、焦りがあったね。それが急に良くなった。(練習試合で新日鉄)住金を6回無失点で、この前も明大を完封。六大学の安打製造機・高山を3三振、バットを振らせなかったんだから大したもんですよ。体を開かずに指先でボールを押し込めるようになった。ボールが暴れなくなったね。右バッターのインコースを突いてつまらせたり、バットを折ったりできる。(先発)2番手を固定できるかもね。
――投手陣で他に注目選手は。
甲斐野(営1・東洋大姫路)も良いよ。ボールが若干動くから。交流戦とはいえ5回をピシャッと。自信になったんじゃないかな。あとは左だったら片山翔(法2・大社)。戦力になると思うよ。でもとにかく頼りは原(営4・東洋大姫路)と増渕。
――その頼みの原ですが、秋はどのように見ていますか。
春みたいにハマるとは思っていない。無理にスピードを上げて三振はいらない。コースに丁寧に投げ分けて打たせて取る。プロもそこを評価している。相手も春にやられたピッチャーだと意識してくるから、そこを1、2球で打ち取っていく。省エネ投球で、1試合70~80球くらいでいってくれたらいいね。
――では、打線のキーマンは。
やっぱり笹川(営3・浦和学院)ですよ。チームの4番が自信持ってやってくれないと。東洋の笹川はすげーよって言われるくらいでないと駄目。3割4分か5分、15打点以上ホームラン5本くらいは打ってほしいね。
――全体的に打撃陣の状態は。
良いですよ。阿部(営3・帝京)は内野安打が取れる。ショートゴロでもセーフになりますよ。林(営4・桐生一)も前半は駄目だったけど今は良いですよ。竹原(法1・二松学舎大付)もだいぶ力強くなってきたよ。
――春が終わって秋にかけて取り組んできたことは。
特別なことはない。ただ、テスト期間で勉強している間でもコツコツやってきた。井上コーチの存在も大きいな。選手をちゃんと見てくれている。あとはキャプテンを中心によくやっている。やっぱり学生野球は監督じゃないですよ、リーダーがしっかりしているチームがいいチームですよ。
――ずばり、今季の手応えは。
そりゃもう3年目だもん。こんなにつらい年月はないね。この間までバラ色だったけど、人生勝ったり負けたりだから仕方ない。毎シーズンになるけど今度こそ、寝食忘れても勝ちにいきますよ。といってもお腹は減っちゃうんだけどなあ。日大は自分たちより(2部が)1季長かったわけですから、そろそろうちの番だろうと。ただ青山がいて、立正にも黒木がいてなかなか勝たせてはくれない、紙一重ですよ。2部のバッター(吉田)がJAPANの4番でバカバカ打っているんだから、東都は鋭いですよ。やっている方は地獄ですけどね。
――最後に今季の意気込みをお願いします。
先日、工学部の松下教授が亡くなった。自分の1つ下なんだけど、野球部が大好きな先生でね。優勝したときにパレードでオープンカーの運転手もしてくれた。野球部が初優勝したときにレギュラーを集会所に呼んで夕飯をごちそうしてもらったことは今でも忘れないよ。あれだけ学生が好きな人だったからつらいね、片腕がもげたようだ。だから彼のためにも頑張らないと。今は優勝を経験していない人も多くなってきた。優勝はいいもんだって、そういう人たちにもわかってもらうために、もう一回優勝したいね。
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明日、第2日目は正捕手・後藤田将矢のインタビューをお届けします。