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第97回関東大学サッカーリーグ戦1部第20節
11月4日(土) スポーツ日大アスレティックパーク稲城サッカー場
日大2-2東洋大
〈得点者〉(アシスト)
10分 中山
50分 高橋輝(山之内)
〈出場メンバー〉
▽GK
川上康平(国4=JFAアカデミー)
▽DF
西山浩人(国4=新潟U-18)→53分 梅澤魁翔 (国3=大宮U-18)
稲村隼翔(国3=前橋育英)
徳永祟人(国2=前橋育英) →69分 富田英寿 (国4=柏U-18)
山之内佑成(国2=JFAアカデミー)
▽MF
高橋輝 (国1=大宮U18)
清水祐輔(国4=柏U-18)
本間洋平(国4=札幌U-18) →72分 渡井翔琉(国3=千葉U-18)
新井悠太(国3=前橋育英)→67分 増田鈴太郎(国3=東海大相模)
中山昂大 (国3=大宮U18)
▽FW
梅津凜太郎 (国3=鹿島Y)→57分 小野田龍剛(国4=常葉大橘)
中山は普段より高い位置でのプレーで1Gを記録(画像㊨)
今節もゴールを決めた高橋輝、大学サッカー界のフェノーメノとなるか
関東大学サッカーリーグ(以下、リーグ戦)第20節の相手は、前回対戦時に1点差で惜しくも敗れた日大。東洋大よりも2つ上の順位かつ、インカレ出場権を争うライバルなだけに、勝利の二文字がほしい。試合は、序盤に相手GKのパスミスを拾った中山が先制点を挙げ、PKで追いつかれたものの、高橋輝のゴールで勝ち越し。しかし、試合終了間際に同点弾を叩き込まれ、寸前のところで勝ち点3を逃す結果となった。
普段は中盤の底から東洋の攻守の舵を取る男が、スクランブルのトップ下起用でも結果を残した。試合前、東洋大のフォーメーション登録は、いつもの4ー4ー2ではなく、中盤に5人を並べた4-5-1の形に。ボランチの清水、本間、中山の3人がどのように配置されるかが注目だったが、その答えは「ムチャぶりだけど」と試合当日に告げられたという、中山のトップ下起用。井上監督も「ぶっつけ本番に近い形」と明かす大胆なポジション変更だったが、この采配が功奏する。前半10分、日大のビルドアップ時に、相手のU-22日本代表GK木村凌也(2年=日大)がまさかのパスミス。その隙を見逃さずにパスカットした中山は、冷静にボールを流し込み先制点をゲットする。予想外の好機が訪れたことに対し「ラッキーといった形」と最初は振り返ったものの「キーパーは(相手の)その3番に付けたいんだろうなという心理はあった」と果敢にプレスを掛けていた効果が序盤から現れる結果となった。勝ち点3に向けて、幸先の良い1点を奪ったが、日大も食らいつく。16分、右サイドをボールを浮かされて突破されると、ペナルティーエリア内で相手を倒してしまいPKに。川上はコースを当てたが、後一歩ボールに手が届かず。ネット左隅に決められ、同点に追いつかれてしまう。しかし、これまでの課題であった、失点後に大崩れすることはなく前半をクローズさせた。
後半、最近ではスーパールーキーの域を超える活躍を見せる高橋輝が、観衆を沸かす。50分、自陣からのパスを、新井がスルーして山之内にボールが渡る。その後新井との綺麗なワンツーで崩すと、マイナスにクロス。そこへ走りこんでいた高橋輝が左足を強く振り抜くとボールはクロスバーへ。落下し、跳ね返ったボールはゴールインか否か。主審は東洋のゴールに手を向け、勝ち越しに成功した。これで4試合連続ゴールと好調を維持する高橋輝。リーグ戦通算得点は8点となり、現在1年生の最多得点者であるFW・内野航太郎(1年=筑波大)とは1ゴール差に。この差をひっくり返すようなことがあれば、2015年シーズンのMF高橋宏季(H30年度国卒、当時2部)以来かつ、1部では初の東洋大からの新人賞獲得も狙えるだろう。大学サッカー界には、法大にいたFW上田綺世(25=フェイエノールト)や筑波大卒のMF三笘薫(26=ブライトン)など、怪物と言われるような活躍を見せる選手が現れる。高橋輝もまた、彼らに続くフェノーメノ(超常現象)になれる逸材なのかもしれない。試合はその後、アディショナルタイムにリードしたまま突入。イレブンは、幾度となく日大の攻撃をはじき返したが、90+3分に、ゴール前で相手に反転から巻いたシュートを放たれると、失点。つかみかけていた勝ち点3がするりとこぼれ落ちた。
ボランチからトップ下へのポジション変更で、1ゴールを記録し、プレー面でも輝きを見せた中山。ボランチとの違いを「左右どっちも行けたりとか、FWがちょっと走ってくれたら、自分が受けたりとか。そういう部分では自由にやれる」と語り、フリーな動きを体感。ボランチからサイドハーフに転向し、好調を見せる新井のような例もある中で、自身の希望ポジションについては「監督が使ってくれる場所で、全力でやろうかなと思います」と光る歯を見せた。
一方、17節の東海大戦でも見られた、アディショナルタイムでの失点でドローという一番悔しい終わり方ともいえる展開となった今節。稲村と中山も語った「崩れることなく前半を終えた」ことは確実な成長。しかし、密集でのプレーや緻密なマークの受け渡しが求められる、アディショナルタイムの守備は難易度も高い。今節の2失点目は反転やシュートコースなど、相手の上手さも目立ったシーンだったが稲村は「それを運で片づけたら強くはなれない」とキッパリと言い切る。「練習でも、いろんなシステムに取り組みながらやっている」と試行錯誤(さくご)の連続であることを明かした。
人生は必ず成功するわけではなく、失敗も付いてくる。しかし、成功に向けてひたむきな努力を続ける限り、勝利の女神はいつか必ず東洋に振り向いてくれる。それが桐横大、法大との2連戦であると信じている。
▪️コメント
井上監督
最後の最後の失点だったので、結果は残念です。でも、何かしら手を抜いているかというところではないので。全部出し切っても、勝ちきれなかったというところは、真摯(しんし)に受け止めないといけないかなと。せっかく先制して、追いつかれても引き離してという試合展開をして、残り35分位。その中でほぼほぼ(試合を)手中にはできていたと思うんですけど、相手の攻撃を切ることができなかったかなと。残念ですね。
(中山選手のポジションが2トップのSTの位置気味になっていた。今週から練習したことか)
練習は、ほとんどあの形ではやっていないですね。今日ぶっつけ本番に近い形で。これまでのゲームで何回かは、試合の途中からそういう形(トップ下付近)にしたことはありましたが、トレーニングの中であの形でしているかといったら、それはないですね。
(中山選手の高さは前線にいるとポイントになるか)
高さはそこまで攻撃のオプションとして使おうとしているかといったら、そうではなくて。守備のこともそうですけど、攻撃的なラストパスが出せるとか、決定力があるとか、そういうところを期待しての起用なので。
(高橋輝選手は今日で8ゴール目。彼の好調のきっかけは)
最初は高校生の年代から(大学)リーグに入ってきて、少しずつ時間を積み重ねながら慣れてきて。十分自分のプレーが通用すると理解して、自信を付けたのが一番大きいのではないですかね。それでも、対戦相手が対策を立ててきたり、それで上手くいかなかったゲームもありますし。そういうのを一つ一つ、乗り越えて。それ(対策をされる)でも相手に怖いプレーができるようになってきている。元々FWの選手なので、得点感覚はあると思いますが。点の取れるところに入っていける選手ではあると思います。
(ゴールシーンは山之内選手が綺麗にマイナスへクロスを上げた。練習でも同じシーンはよくあるか)
基本的にチームとして相手のどこを奪いにいこうとか、最後のパスをどこでシュートに持っていこうかということは、この形が絶対というのはないですけど。選手たちが最終的に自分たちで判断をする、という形でトレーニングをしています。
(前半日大のビルドアップが上手くいかない場面もありました。あれは予想通り)
でも、少し手こずりましたね。キーパーが(ビルドアップに)入ってきて、当然フィールドの中が数的不利な状況になるので。DFラインが前で起点を作られたりという時間帯があったので、その時間帯は、相手にボールを持たれている。持たせているんじゃなくて、持たれている、という時間帯があったのかなとは思いますけど。後半はそこの部分をハーフタイムで修正が効いて、対応できたんじゃないかなと思います。
(具体的な修正点は)
2トップで追うのではなくて、どうしてもCBの前に相手が3人いて。1トップ2シャドーとか、2トップで、もう一人とか。ボランチの背中の区間にいる選手に対してのプレッシャーがなかなか掛けられなかったので、CBが行けないんだったら、ボランチがそこをケアする。その分相手のボランチに対しては、中山が一つ降りてケアをしながら。そことサイドハーフ、サイドバックの狙いに少し修正を加えた形です。
(日大の攻撃に対して対応する際に「サイドに追いやらない」という声も掛けていましたが、あれの意図は)
サイドにボールを持ってきて、そこから中に入るパスを入れられて、後追いという形になっていたので。縦の方には行かせるけど、中にパスを通させないで、縦を選択させようということで、横には逃げ道を無くそうということは言っていました。
(狭いところに追い込む形)
前半なんかは、縦で狙っているていでも、違う方向にパスを出されて対応しなければいけないという状況が多かったので。できるだけ、予測が利いているサイドに誘導して、そこでプレッシャーを掛けましょうということは言っていました。
(次節、直接上位を争う桐横大戦に向けて)
今日もそうでしたけど、もう自分たちよりも上にいるチームにどう食らいついて、引きずり降ろして、自分たちが彼らよりも上に行くかということしか、我々にはチャンスが無いので。いくつ勝ち点が離れているかですが、それでも後2節ある。次勝たないと最終節にはつながらないので、勝ち点3をいかに取るかということに集中しようかと思います。
・稲村隼翔(国3=前橋育英)
先制できて、前半に先制できる試合の時は、自分たちが良い状態の時が多いので。そのまま勢いを持っていきたかったですけど、ミスから失点。でも、その後崩れることなく前半を終えて。後半にいつもやられてしまうのが、自分たちの課題だったんですけど、その後も点を取れたことは良かった。でも、締め方の部分がまだ締めきれないのが、自分たちの課題は残ったまま。練習でも、いろんなシステムに取り組みながらやっている中で、それを試合で実行する決断だったりというのは、まだまだ課題かなという感じです。
(アディショナルタイムのような場面もシステムで防ぎきれる)
あれだけ押し込まれる時間が続いて、右の裏が狙われ始める回数が多くなると、前も行けなくなるし、前も前で行ったら、セカンド(ボール)を拾えなくてというのがあるので。後ろをどっしりと構えることで、前もセカンドを拾ってとやることがはっきりするので、選手間も少なくなって、スライドも簡単になる。(そしたら)ある程度抑えられるのかなと思いますが、受け身になってしまうので。そこの判断は難しいかなと。
(コンパクトになればなるほど密集する)
ラストのシーンで1点決められたやつとかも、5(バック)にしていたらという。タラればですけど、防げたかなとは思います。
(こぼれ球に誰が行くというのもまた難しい)
そうですね、ゴール前だとなおさら。でも、一番近い選手が出ないといけないというのがあるので。最後のシュートを打たれたシーンは、相手のワンツーを警戒して下がってしまったので、ゴール前のボールを優先しないといけないなと感じました。
(かなりいいコースに行ったシュート。運が悪かったという見方もできなくはない)
いや、でもそれを運で片づけたら強くはなれないので。そこは寄せて打たせないというのを、DFとしてやらないといけないなと思います。
(試合中、ほとんど左サイドから突破されるシーンはなかった。何か日大の左サイドへの対策は練りましたか)
今年1年を通じて、あんまり突破されることがなくて。お互いに、ヤマ(山之内)は身体能力が長けているので、一対一はアイツに任して。自分はカバーと、やることをハッキリできていて。負けることはないので、アイツ(山之内)が。そこは信頼しあってできているので、自信にはなっています。
(今日もかなり対人の強さを見せていた)
一対一で負けないのは当たり前なので。続けていきたいなと思います。
(対人が山之内選手、カバーやクリアが稲村選手)
自分ももちろん対人をやりますし、ヤマがカバーやクリア(をすること)もありますけど、ハッキリするという事は心がけていて。自分とヤマとの間にボールを入れられたときとかも、ヤマが行けるなら行くし、俺(稲村)の方が状態が良かったら出るというのは、常に話しているので。いい関係が築けているのかなと思います。
(次節に向けて)
もう本当に勝つしかなくて、引き分けても苦しくなるので。今までで一番というか、一週間集中してやらないと勝てる相手では無い。ここまで苦しくしたのは、自分たち。今日あんだけ、声を出して応援してくれた選手たちの分まで、戦わないといけないのがピッチに立てる選手の責任なので。練習からもっと厳しさをもってやりたいなと思います。
・中山昂大 (国3=大宮U18)
自分が点を取って先制したところまでは、ちょっと楽に進めるかなと思ったんですけど、もったいないシーンとかPKで失点して。そこからは自分たちの課題だった大量失点、そこ(失点)から崩れていくということは無かったので、良かったと思うんですけど、毎回毎回ああいう時間帯で、勝てそうな試合を引き分けてしまうので。もったいないというか、勝ち点3取れたよねという試合でした。
(東海大戦も似た展開だった)
東海大戦も2点取って勝っていた。そこから守りに入ってしまって。
(ラストシーンのような、コンパクトな密集した場面での守備の難しさは)
自分はボランチで、今日はFWのポジションをやっていたんですけど。より後ろだと、今日みたいにロングボールが入ってきた時に、相手も人数を掛けてきているので、そこに対してチャレンジとカバーをちゃんとやるというのと、セカンドボール(を拾う)というのと。それを最後まで徹底できれば失点はあんまりない。後は自陣でボールを奪われると、今日みたいな失点につながってしまうので、そういうのを無くしていければなと思います。
(ボールを奪われる位置はできれば自陣から遠い方が良い)
そうですね。2-1で勝っていて、ラスト5分位でリスクを冒すよりも、セーフティーに。相手をひっくり返すじゃないですけど。その方があの時間帯は良かったかなと。
(先ほど起用法の話がありました。今日はぶっつけ本番で前線での出場でしたが、起用を伝えられた際の驚きは)
前日や前々日の練習ではずっとボランチをやっていて。ボランチで試合に出るのかなというイメージはあったんですけど、本当に試合前に(井上監督が)来て、監督に「ムチャぶりだけど」と言われて。でも、やることはそんなに変わらないし、より前になったので点を取ろうと。
(これまでのキャリアでFW経験は)
あんまり、、無くはないですけど。結構いろんなポジションをやるんですけど、後ろだったり、ボランチだったりとか、結構真ん中の軸のところは、なんとなく今まではやってきていたので。(前線は)大学に入ってあんまりやってこなかったので、今日はいい経験というか。またやれたら良いなという感じですね。
(プレーしていて楽しさもあった)
前回もポケットという、相手と相手の間を狙って。自分の特長が出る場所だと思うので、今日はシュートを何本か打てたんですけど、ああいうのをもっとボランチでも増やせたらなと思っていますし、いい経験でボランチに生かされると思います。
(シュートの大事さは中大戦の時もおっしゃっていた)
中大戦の時は、入っては行けたんですけど、最後シュートまで行けなかったりというシーンがあったので。
(1点目のシーン。あれは狙い通りの形だった)
狙い通りというか、相手がミスってくれたので。ラッキーといった形ですね。
(元々の目的は、相手のビルドアップをプレスで詰めて、ミスを誘う)
相手のキャプテンのところから、相手はビルドアップをスタートしてくるので。よりキーパーは(相手の)その3番に付けたいんだろうなという心理はあったので、そこをずっと自分の中では狙っていました。
(かなり積極的にプレスを掛けていました。あのプレーもボランチに生きてくる)
ボランチをやっている時に、FWがあれぐらい追ってくれると楽だなとは思っていたので。それをやったというか、体現できれば良いなと思っていたので、後ろがそれで楽だったら良いかなと。
(ヘディングもよく見ましたが意識して行ったプレーだった)
何本かあったんですけど、自分は身長が高いのでそこは強みですし、生かしていきたいポイントではあります。
(新井選手のようにボランチからサイドハーフに転向して、という例もある中で、中山選手にとって、ボランチと今日のような前のポジション。どちらが合っていると思いますか)
ボランチをやるとそんなに自由ではないというか。タスクがあって、自分のゾーンがあってというのがある中で、今日みたいに、ああいう浮いているポジションというか、トップ下のようなところに居ると、左右どっちも行けたりとか、FWがちょっと走ってくれたら、自分が受けたりとか。そういう部分では自由にやれるので、個人的には好きなんですけど(笑)。監督が使ってくれる場所で、全力でやろうかなと思います。
(次節に向けて)
まだ自力でインカレ出場をつかめるところに居るので。そのチャンスがある以上は勝つしかないので、勝ってインカレに向けてやっていきたいなと思います。
[次節試合予定]
第97回関東大学サッカーリーグ戦1部第21節
11月11日(土) vs桐横大 桐蔭学園多目的グラウンド 14:00キックオフ
※関東大学サッカー連盟公式Youtubeチャンネルにてライブ配信が予定されています。
TEXT/PHOTO=髙橋生沙矢