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2025.02.13
陸上競技

[陸上競技] 第101回箱根駅伝〜紡いだ鉄紺の伝統〜 10区・薄根 守り抜いた20年連続シード権。恐怖心との闘いの中、背中を押したのは"仲間の思い"

第101回東京箱根間往復大学駅伝競走

1月2日(木)・3日(金)

大手町読売新聞東京本社前発着


総合9位 東洋大   10:54'56


往路9位 東洋大  5:27'53

1区(21.3km) 小林亮太 1:02'52(11位通過・区間11位)

2区(23.1km) 緒方澪那斗 1:08'50 (19位通過・区間20位)

3区(21.4km) 迎暖人  1:02'40 (16位通過・区間8位)

4区(20.9km) 岸本遼太郎 1:01'15 (9位通過・区間3位)

5区(20.8km) 宮崎優 1:12'16(9位通過・区間9位)


復路7位 東洋大   5:27'03

6区(20.8km) 西村真周 58'56(9位通過・区間9位)

7区(21.3km) 内堀勇 1:04'16(12位通過・区間12位)

8区(21.4km) 網本佳悟 1:04’18(9位通過・区間2位)

9区(23.1km) 吉田周 1:09’22(8位通過・区間7位)

10区(23.0km) 薄根大河 1:10’11(区間10位)




 「2年の星」が鉄紺の伝統を守り抜いた。全てが決まる最終10区。鶴見中継所から大手町フィニッシュまでの23㌔を駆け抜ける大トリに抜てきされたのは、初出走の薄根大河(総2=学法石川)だ。四つどもえの大激戦となったこの10区。「20年連続シード権獲得」は達成されるのか。勝負の行方はこの漢に託された。




 吉田から8位でタスキを受け取り、鶴見中継所を飛び出した。最初の1㌔を2分50秒切りのペースで突っ込むと、順調に前を走る帝京大の背中に近づく。しかし、想定していた集団形成は早くも5㌔を過ぎた時点で始まった。後ろから東国大と順大が迫り、四つどもえの展開に。こぼれた1校がシード落ちだ。これは第87回大会以来の大激戦であり、ラストスパートを苦手とする薄根にとって、この状況はまさに崖っぷちだった。これまで鉄紺を背負ったランナーたちが紡いだ「鉄紺の伝統」。自分が生まれた時から続く、継続中では最長となる「19年の歴史」の重みがのしかかり、恐怖心との闘いとなった。


 集団はスローペースでけん制し合い、ラスト1㌔でのスパート勝負となる。仕掛けたのは大村良紀(東国大)だ。1人飛び出ると、薄根も必死に食らいつく。最後の直線、2番手を走る薄根は一度も後ろを振り返ることなく、ゴールだけを目指した。「人間は誰かのために勝ちたいと思えば、ラストが苦手な自分でもここまで動くんだ」。覚醒した瞬間だった。持てる力を絞り出し、苦手とするラストスパートを克服。9位でゴールに飛び込んだ。

 無事に「20年連続シード権獲得」を果たし、背負った重責を降ろした薄根は、感情を抑えきれずに涙。鉄紺の伝統を守り抜くために死力を尽くした姿は鉄紺ファンだけでなく、観る人全ての心を突き動かした。




 仲間のために走り抜いた。薄根の手袋に書かれていた複数のメッセージ。左手には前日「4年生の為に」と薄根が自ら記し、当日付き添いを務めた梅崎がその下に自身の名前を、託したい思いを込めながら刻んだ。右手には同期の馬場大翔(総2=仙台育英)、久保田琉月(総2=埼玉栄)がそれぞれ喝入れのメッセージを記した。普段は手袋の感覚が好きではないが、この日は「着けていたことで、最後まで力になった」という。大手町で待っているチームメート。そして、これまでチームを支えてきた4年生のために。仲間への強い思いが、薄根の背中を押したのだ。



手袋を手に持つ薄根


 これまで注目を浴びる機会が決して多くはなかった学年だ。薄根自身も「2 学年自体が弱いと言われてきた」と自分たちの実力を受け止めていた。しかし、薄根の走りが同期への刺激になったことは間違いない。1月12日に行われた東京ニューイヤーハーフマラソンでは、倉本晃羽(総2=伊賀白鳳)が62分台をたたき出して4位入賞。久保田もPBを更新した。「自分にはできない走りだったし、自分もそういう走りができたらと思って頑張って走ることができた」(倉本)。同期も覚醒を目指し、着実に力をつけている。「自分が走ったことにより学年としても今後につながる、また学年の士気が上がるきっかけになった」と薄根も白い歯を輝かせた。弱いと言われてきた鉄紺の2年生が、強いと言われる日がきっと来る。この世代の未来は明るい。




箱根駅伝2日間のレース記事はこちらから➡️https://sports-toyo.com/news/detail/id/27645


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◼︎薄根大河 レース後コメント


ーー今大会を振り返って

 目標としていた順位とは程遠い結果ではありましたが、20年連続シード権を獲得でき来年の箱根駅伝に繋げるための大会にはなったと思います。


ーー付き添いの梅崎選手からはどのような声かけがあったか

 「頑張れ、勝ってこいよ」とありました。


ーー8位でタスキを受け取ったときの心境は

 後ろが秒差だったので、落ち着いてレースを進めていけば問題はないとは思っていました。緊張はしてはいましたが、笑顔では受け取ろうと思っていました。


ーー集団になることは想定していたか

 想定はしていましたが、思っていたよりも早い段階で追いつかれたので、少し焦りはありました。


ーー集団での展開となって、考えていたプランは

 とにかくリズムを崩さないようにと集団の中でラストに備えて溜めようと思ったいました。プランというよりはその場での対応に近いものだったと思います。


ーー苦手としていたラストスパートで競り勝ったことについて

 短いスパートでは分が悪いことはわかってはいましたが、覚悟を決めて走れたことは良かったです。脚が動かなくても、人間は誰かの為に勝ちたいと思えばラストが苦手な自分でもここまで動くんだということを証明できたのかと思いました。


ーー手袋のメッセージについて

 左手には自分で「4年生の為に」と前日に書いて、当日には梅崎さんの名前を書いていただきました。右手には当日の出発前に同期の馬場に「覚悟を決めろ」と久保田に「2年の星GO」と書いてもらいました。手袋自体の感覚があまり好きではないのですが、着けていたことで最後まで力になりました。


ーー学年唯一の出走となったことに関して

 2学年自体が弱いと言われてきて、唯一の出走となったのは、本来なら数人でて結果を出したいところではありました。しかしながら、自分が走ったことにより学年としても今後に繋がる、また学年の士気が上がるきっかけにはなったと思います。


ーー今後に向けて目標

 チームとしてはやはり箱根駅伝は3位以内の東洋の定位置と言われたところを目指していきたいと思います。個人としては、今回の箱根駅伝をきっかけにして10000m28分台、ハーフ62分、三大駅伝で区間賞を目標にしていきたいと思います。


ーー4年生へメッセージ

 ここまで言葉や背中で引っ張ってくれた4年生には感謝しかないです。最後こそはと目標としていた順位には届かなくて申し訳ない気持ちですが、頼もしくて大好きな4年生の為に走れたことは本当に嬉しかったです。ありがとうございました。



TEXT=北川未藍/PHOTO=北川未藍、近藤結希

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