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2025年春。東洋大に、新たな精鋭が集結した──。そこで、スポトウ記者である“俺たち”が日々取材を重ねる各運動部の中から東洋大の未来を担うであろう８人の“怪物たち”を厳選。
可能性と存在感を兼ね備えた唯一無二のルーキーズを、今ここに紹介する。次世代のスターを、見逃すな。
第２日は東洋大学女子サッカー部でひときわ輝くルーキー松尾侑芽実（食1＝常葉大橘）。大学入学直後から公式戦に先発出場し、すでにその存在感を発揮しつつある。持ち前のスピードでピッチを駆け抜け、“ボールを持つと何かが起こる“そんな期待を抱かせる彼女のプレースタイルには、持ち前の明るい笑顔からは想像もつかないほどの情熱と覚悟が秘められていた。
松尾のサッカーとの出会いは、7歳の頃。姉の影響でサッカーに興味を持ち、少年団に入ったのが始まりだった。その後“静岡の女王”と称される常葉大橘中学・高校進学。中学時代は3年連続で全国大会に出場し、高校では2年生から全国高校女子サッカー選手権大会でスタメンとして活躍。全日本選手権でも通算２得点を挙げ、着実に実績を積み重ねてきた。
それでも、彼女は高校時代を「悔しい思い出の方が多い」と語る。そこにはチームとして結果を出し切れなかったという悔しさがあった。特に3年時の選手権は、静岡県大会を制したものの、全国の舞台では２回戦敗退。「サッカー自体は楽しかったけれど、もっとやれたはず」という思いが胸に残った。
そんな彼女がサッカーにハマった瞬間は、試合で得点を取った時だという。その喜びやチームの勝利に貢献できたという気持ちが、彼女のサッカー熱を今日まで広げたのだ。グラウンドのどこにいても、常にボールに関わろうと走り回り、ゴールを狙う。そのプレースタイルは試合に負けた時の過去の悔しかった思い出、サッカーをしている時の楽しさ、その両方を持つ彼女のサッカー熱が原動力となっているのだろう。
グラウンドを俊敏な足で駆け回る
目標はプロ、そして世界へ
「なでしこジャパンに入りたいし、海外の強いクラブでプレーしたい。国はまだ決めていないけれど、強いところに行きたいです」と自身の夢を語った松尾。実は高校卒業後の進路として、当初は高卒でのプロ入りも視野に入れていた。しかし「もっと高いレベルで自分を磨かなければ世界では通用しない」という思いから、技術が高く環境も整った東洋大への、進学を選択。ここで４年間成長し、プロ入り、そして海外で活躍することが彼女の大きな目標である。
東洋大での生活は、これまでとはまた違った刺激に満ちているという。「練習時間は高校時代より短いが、その分“頭を使う“ので、とても疲れる」と笑顔をこぼす松尾。「パスを受ける前に、その後ろのビジョンを持て」「90分間、常に先を読め」という監督からもらった言葉は松尾の意識を大きく変えた。試合全体の流れを読み、自分のプレーがどう影響するかを考える視点を手に入れ、技術的な面や戦術的な面でもかなり成長を感じたそうだ。
現在のポジションはMF・ボランチ。中学・高校ではさまざまなポジションを経験し、その中で磨かれた柔軟性と視野の広さは、今も彼女の強みになるだろう。大学ではより戦術理解が求められるなか、持ち前の走力とセンスを武器に、チームの中心選手へと成長を遂げつつある。
4年間でどんな選手になりたいかと問うと、「このチームに欠かせない、絶対的な選手になりたいです」ときっぱり答えた。その言葉に迷いはない。目指すのは、ただの一員ではなく、東洋大女子サッカー部を象徴する存在。そしてその先には、世界の舞台が見えている。
「海外でプレーして、なでしこにも入りたい」
その夢は、簡単な道のりではない。しかし、静岡から全国、そして大学という舞台を経て、その夢に近づいている松尾の姿からは、不思議とその実現が遠くないように思えてくる。
愛らしい笑顔の奥に秘めた、強い芯と努力の積み重ね。まだ始まったばかりの大学サッカー生活の中で、彼女はすでに次のステージを見据えている。目標は大きく、志は高く。一歩、また一歩と夢の実現に向けた挑戦の歩みを力強く踏みしめていく。
TEXT／PHOTO＝森花菜
