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天皇賜盃第94回日本学生陸上競技対校選手権
6月5日(木)〜8日(日)
JFE晴れの国スタジアム
男子4×400mリレー予選
2組1着 東洋大学 3'05"88 Q
大石 亮太
小幡 天優
岸本 恭汰
廿浦 亮仁
男子4×400mリレー決勝
1位 東洋大学 3'03"64 NUR /NGR✨
山﨑 琉惟
平川 慧
白畑 健太郎
廿浦 亮仁
6月5日から4日間に渡って、岡山県・JFE晴れの国スタジアムで天皇賜盃第94回日本学生陸上競技対校選手権(以下、日本インカレ)が行われた。3連覇がかかる4×400mリレー(以下、マイルリレー)に東洋大が出場。最終種目となった決勝で、鉄紺が圧巻の強さで三連覇を達成。さらに学生新記録を樹立し、最高のフィナーレを飾った。
鉄紺が、ついに悲願を達成した。
ずっと掲げてきた「学生記録の更新」。25年間破られなかった記録を、ついに今年の東洋大が打ち破った。
3、4日目に行われたマイルリレー。3日目の予選2組に、東洋大は1走・大石亮太(法1=浜松開誠館) 、2走・小幡天優(法2=自由ヶ丘) 、3走・岸本恭汰(スポ1=洛南) 、4走・廿浦亮仁(法4=埼玉栄)のオーダーで臨んだ。
1年生ながら、関東インカレでも1走を務め、優勝メンバーに名を連ねた大石亮は、全国の舞台でもその実力を発揮し、好スタートを切る。2走・小幡は「先頭でもってくる」と、強い覚悟でオープンレーンになると先頭に立ち、そのままトップで3走の岸本へ。
後方から追われる展開となった岸本。「自分の力を信じて走るだけだと思っていました」。東洋大で培った自信を胸に、先頭をひた走る。最後は廿浦が「少し消極的なレースになってしまった」と振り返りながらも、1着通過を確実にする盤石の走り。一度も先頭を譲らず、他大を寄せ付けない走りで決勝進出を決めた。
左から、小幡、岸本、大石、廿浦
翌日の決勝。この大会、最後の種目となった4×400mリレー。会場に大声援が飛び交う中、4名が姿を現した。
東洋大の1走は山﨑琉惟 (スポ3=洛南) 。スタートから勢いよく飛び出し、そのまま先頭へ。1番手で2走の平川慧(健2=コザ)へ渡すと、オープンレーンになってトップに立ったのは、やはり東洋大。
「絶対先頭で渡す」。個人種目で悔しい思いをした平川は不安も抱えていた中、その意地で後続を引き離し、単独トップで3走の白畑健太郎(法2=米沢中央) へ。白畑も、バトンを受けとった瞬間から、さらに差を広げる圧巻のスピードを見せる。「後半は気持ちでいく」。その言葉通り、その足を緩めることなく、4走へとつないだ。
2走平川から3走白畑へ
アンカーを託されたのは、今年も4年生だった。最初で最後の日本インカレの舞台に立った廿浦亮仁。
「怪我に苦しみ、思うように結果が残せない日々が続きました」
活躍するチームメートたちを横目に、自らの現実と向き合ってきた廿浦。最後につかんだ日本一への挑戦権は、三連覇がかかる大役だった。
最後のインカレで、声援を受けながら先頭を走る
「最後はお前に締めてもらう」。そう監督から送り出された廿浦もとに、バトンが渡る。東洋大は完全に独走状態。それでも、廿浦は前半から攻めた。それは、三連覇とともに掲げる“学生新記録”という目標があったから。
目には見えない、“記録”との闘い。
東洋大は、この舞台で何度も優勝を手にしてきた。その度に挑み、それでも超えられなかった、2005年に打ち立てられた3分3秒71の学生記録。
つながれてきた思い。託されたその悲願が、届く瞬間が訪れた。
バトンを高々と掲げ、廿浦がゴール。電光掲示板には、3分3秒64の表示。鉄紺がついにこれまでの学生記録を打ち破り、25年ごしに歴史を動かした。
喜びを爆発させた
肩を抱き合い、喜びをあふれさせた彼らは、その足でチームメートのもとへ。満面の笑みでハイタッチを交わし、チームとしての悲願の達成をかみ締めた。
最後のインカレを最高の形で終えた廿浦は、「この記録は、予選を走ったメンバー含め7人でつかみ取ることができた。本当に頼もしい後輩に恵まれて感謝してます」と語る。
圧倒的な選手層を誇る東洋大。全員でつかんだ結果だった。
そしてその強さを作ったのは、歴代から受け継ぐ“思い”のバトン。“史上最強”の証明は、チームが追い続けてきた夢だった。
今回、マイルリレーの舞台に立った7人の中で、4年生は廿浦ただ一人。残る6人は、また来年もこの記録に挑む。連覇は、きっと続いていく。そして再び、学生記録の更新へ。
“史上最強”は、これからも塗り替えられていく。鉄紺を纏う、彼ら自身の手によって。
左から、山﨑、平川、白畑、廿浦
◼︎山﨑琉惟
ーーレースを振り返って
学生新記録を目標にしていたので、達成できたことがうれしいですし、自分のレースとしては、積極的に攻めたレースができたのでよかったです。
ーーレースプランはあったか
タイムを出すには、前半から行かないといけないので、前半からしっかり走りました。
ーー学生新記録で優勝という結果について
実感がなかったですが、自分もしっかりメンバーに選ばれて貢献できたことがすごくうれしいです。
ーーメンバーに選ばれた心境は
最近ずっと調子が良かったので、走れたら自分のベストを尽くそうと思っていて、メンバーに選んでもらったので。選ばれなかった人の分までしっかり走ろうと思っていました。
ーー来年に向けて
来年もレベルの高いメンバーの中で争うので、また学生記録をもう一度更新できると思います。それに向けて頑張っていきたいです。
◼︎平川慧
ーーレースを振り返って
個人が少しダメだった分、いろんな不安はあったんですが、メンバーに選んでもらったので、自分の走りをするだけだと思っていました。
ーー学生新記録で三連覇という結果については
優勝は目指していたのはもちろんですが、去年達成できなかった学生新記録というのを目標にしてずっと練習してきたので。優勝というよりは学生記録を更新できたことがすごくうれしかったです。
ーー2走として意識していたこと
走るなら2走かなというのは自分の中でもあったので、イメージはしやすかったです。(山﨑)琉惟さんが先頭で持ってきてくれると思っていたので、あとは3走、4走にいい流れでつなぐために、絶対先頭で渡すということを考えていました。
ーーバトンを渡してから、ゴールを待つ間の心境は
走りとしてはもう少し前半からとばしてもよかったかなというのは感じていた部分はあったので、「学生記録どうなんだ」という、もう少し頑張れたなという思いもありつつ。3走、4走を見ていて、更新できたタイムを見た瞬間に、安心という部分が大きかったです。
ーーあと2年、ご自身の日本インカレは続いていくが
まずは連覇を崩さないということはもちろんですし、毎年毎年、今年を超える学生記録を更新していくということを目指して頑張っていきたいと思います。
◼︎白畑健太郎
ーーレースを振り返って
慧が独走してもってきてくれたので、学生記録を狙って、落ち着いて自分の走りができたかなと思います。
ーーレースプランは考えていたか
独走状態で、前に誰もいないので、自分の走りをするということですかね。前半はある程度、楽にスピードに乗って、後半は気持ちでいくというのを考えていました。
ーー学生新記録を樹立したことについて
去年は学生新記録を達成できなくて悔しい思いをしたので、今年こそ(学生新記録を)更新して三連覇というのを目標にしていたので、達成できてうれしいです。
ーー自信はあったか
自信はありました。
ーー今後に向けて
1か月後にある日本選手権に向けて、疲労を抜きつつ、練習を積めたらなと思います。
◼︎廿浦亮仁
ーーレースを振り返って
予選は着を取るのが大事だったので少し消極的なレースになってしまった。 決勝では、学生記録を狙いにいっていたので前半から積極的にレースができました。
ーー学生記録での三連覇となったが
学生記録はずっとチームとして目標としていたものだったので叶えることができてホッとしました。 連覇に関しては勝たなければいけないチームだと思っているので、しっかり勝てて良かったです。
ーーアンカーとしてのプレッシャーはあったか
とてもプレッシャーはありましたが、監督に最後はお前に締めてもらうと言っていただいたので、絶対やってるという気持ちの方が強かったです。
ーーこれまでの4年間を振り返って
チームメートが活躍する中、怪我に苦しみ思うように結果が残せない日々が続きましたが、最後の最後にずっと目標にして日本一を達成することができて良かったです。
ーーゴール後の心境は
やってやったぞ!って気持ちでした。でもこの記録は予選を走ったメンバー含め7人で掴み取ることができたと思います。本当に頼もしい後輩に恵まれて感謝してます。
ーー最後のインカレを振り返って
やりきった。この一言につきます。
◼︎大石亮太
ーー日本インカレを振り返って
目の前で、自分が走っていないレースで、先輩方が学生新記録を出されて。すごいなと思う反面、やっぱり悔しくて。すごく歯がゆい気持ちになって、もっと頑張らないとなと思いました。
ーー今後の目標
来年には45秒。欲張っちゃうと今年中に出して、世代のトップになりたいなと思います。
ーーレース予定は
日本選手権の予備予選に出て、9月にU20の日本選手権があります。去年、3位で菊田響生(法政大)に負けているので、今年は勝ちたいなと思います。
ーー菊田選手とはインターハイでも戦っているが
負け越しているので、そろそろ勝ちたいなと思います。
◼︎小幡天優
ーーレースを振り返って
1走の大石からもらった順位でキープできたので良かったです。
ーーチームとしての結果について
来年も超えます。
ーーレースプランは
特にありませんでしたが、1番で、先頭でもってくるというこということは思っていました。
ーー今後に向けて
がんばります。
◼︎岸本恭汰
ーーレースを振り返って
2走の小幡さんが先頭で渡してくれて、自分の気持ちとしても楽に走ることができて。そのおかげで、ラスト100も自分の思った通りの走りで、廿浦さんにいい形で渡せたかなと思います。
ーー後ろからのプレッシャーはあったか
プレッシャーはありましたが、自分の力を信じて走るだけだなと思っていました。
ーートップで渡すことを目標にしていた
はい。トップで渡して、4走の選手にできるだけ楽な形で渡したいなと思っていたので、それは果たせたと思います。
TEXT=近藤結希/PHOTO=近藤結希、鈴木真央