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2025.07.11
陸上競技

[陸上競技] 3人の4年生が挑んだ学生最後の日本選手権/第109回日本陸上競技選手権大会 男子100m

第109回日本陸上競技選手権大会 兼 東京2025世界陸上競技選手権大会 日本代表選手選考競技会


東京・国立競技場


7月4日(金)~6日(日)



男子100m予選

2組6着 城崎滉青 10"45(風+0.8)

5組7着 成島陽紀 10"53(風+0.2)

6組   栁田大輝 DQ 





 7月4日から6日(日)にかけて、国立競技場で第109回日本陸上競技選手権大会(以下、日本選手権)が行われた。日本のトップ選手たちが集い、日本一の座を争う大舞台。今年は、東京で行われる世界陸上の代表選考も兼ねた重要な一戦となったこの大会に、東洋大から12名が挑んだ。

 男子100mには、栁田大輝(文4=農大二) 、城崎滉青(理4=小倉工) 、成島陽紀(ラ4=東洋大牛久) がエントリー。学生最後の日本選手権に臨む4年生3名が、スタートラインに立った。 




 初日に行われた男子100m予選2組に、城崎が出場した。これまで三段跳で日本選手権に挑んできた城崎だが、今年は足の状態から100mでのエントリー。「変な重圧感や背負っているものがなかった」と、前向きな気持ちでスタートラインに立った。

 健闘を見せるも、中盤から徐々に離され、6着でフィニッシュ。「負けて悔しい」と率直な気持ちを語る一方で、「もちろん三段跳びも頑張りたいが、100mも今後はやっていきたいという思いも芽生えた」と、前向きな変化も語る。悔しさが新たな挑戦への扉を開いた日本選手権だった。






 5組には成島がエントリー。日本インカレから調子があがらなかったという成島は、得意のスタートが光ったものの、7着という結果に。「何もできなかった」と悔しさをにじませた。

 アキレス腱の痛みから、思うように練習が積めないなかで迎えた日本選手権。それでも「ラストになるかもしれない」という覚悟で立った大舞台を、最後まで懸命に駆け抜けた。





 男子100m予選6組には、栁田が登場した。

 2か月後、この国立競技場で行われる世界陸上。その一歩を踏みしめるように、栁田はスタートラインに立った。

 観客の視線が注がれるなか、まっすぐ前を見据え、スタートの姿勢へ。ピストルが鳴った直後、すぐにリコールの2発目が響く。審判は栁田にレッドカードを出した。


 ピストルの前に体が動いてしまい、栁田は不正スタートによる失格。静かに一礼し、トラックを去った。






 男子100mのレースがすべて終わり、静まり返った報道陣の前に、最後に戻ってきた栁田大。ひとり歩く彼を、前の組を走った同期の成島が迎えると、堪えていた涙があふれた。



 その後、成島とともに控室に戻った栁田は、しばらくして報道陣の前に姿を現し、口を開いた。

 「何もないですよ。何もしてないです、スタートすらできなかったので」



 昨年の日本選手権のレース後には、「不安で仕方がない日々だった」と涙ながらに語った栁田。今年は、違った。


 「これで勝てなかったら、自分は100mをやらない方がいいんじゃないかって思えるくらいの練習を積んできた。怖さはなくて、むしろどれだけ速く走れるのか楽しみだった」


 わずか0.005秒差で代表を逃した昨年。圧倒的な力をつけて、この舞台へ帰ってきた。自信を胸に、いい状態でスタートラインに立てたという栁田は、「それが裏目に出ちゃったのかな」と続ける。


 ピストルのタイミングについて問われても、一切の言い訳もせず、「冷静になれていなかった」と自身に原因をみた。





 「自分ひとりで走っているわけではない。僕はタイムや結果を出すことでしか応えることはできないかなと思っていたので、それができなくて本当に悔しいというか、残念というか。今はいろんな感情でいっぱいです」


 舞台に立つのはひとりでも、そこに至るまでの日々はひとりではなかった。そして、レースに挑むその瞬間も、一緒に戦ってくれる多くの人がいたからこそ、結果で、走りで、応えたかった。


 背負っていた責任も、悔しさも、自分だけのものではなかった。





 日本選手権で内定をつかむことはできなかったが、世界陸上への道が絶たれたわけではない。現時点で参加標準記録を突破しているのはサニブラウンただ1人。ワールドランキングでターゲットナンバーである48位以内に入っているのは、栁田を加えた2人のみだ。


 代表枠は最大3人。参加標準記録の突破、またはワールドランキングで48位以内に入ることを条件として、日本選手権の入賞者が優先して選出される。しかし、今大会の入賞者で満たしている者はいない。よって、栁田が代表となる可能性も残されている。



 「今は悔しがって。でも、お前はこんなところで終わるはずじゃないだろ」


 成島からかけられた言葉だという。


 ここで終わる彼ではない。そのまっすぐな思いと、積み重ねてきた日々が、きっと世界への道をつなげてくれる。





◼︎栁田大輝


 何もないですよ。何もしてないです、スタートすらできなかったので。

 でも、これで勝てなかったら、自分は100mをやらない方がいいんじゃないかって思えるくらいの練習を積んできて。実際、僕もそういう手ごたえがあったし、自信もあって、昨日この国立でスタート練習をしてスタートラインに立てたので、去年みたいなオリンピックトライアルで不安でどうしようもないっていう怖さはなかった。むしろどれだけ速く走れるのかという楽しみの方があったので、ワクワクしていましたし、いい意味でテンションも上がって、良い感じだなと思いながらスタートに立てたんですけど、それが裏目に出ちゃったのかなと思います。

 僕ひとりで走っているわけではないので。家族もそうですし、土江先生もトレーナーさんも僕のために本当に多くの時間を割いて、まずはこの日のために全身全霊をかけて力になってくれて、そのおかげもあって今日を迎えることができていた。だからこそ、僕はタイムや結果を出すことでしか応えることはできないかなと思っていたので、それができなくて本当に悔しいというか、残念というか。今はいろんな感情でいっぱいです。

 立ち直れってすぐに言われても無理だと思います。でも、さっき同期の成島には「今は悔しがって。でも、お前はこんなところで終わるはずじゃないだろ」って言ってもらえました。こうなってしまったので、この先のシーズンがどうなるか、全く分からなくなっちゃいましたけど、終わるわけではないので、引きずるかなとは思いますけど、いつかはちゃんと元気に走れるようにしたいなと思います。


ーー不正スタートの判定について

 一応、土江先生に確認はしてもらっていますけど、別に誰かをひきずりおろそうとか、文句をいうつもりはないです。どんな感じだったかを確認してもらいに行っているだけなので、ひっくり返らないとは思いますし、実際リコールのピストルが鳴って、頭の中が真っ白になった記憶がかすかにあるので。

 本当に初めの一歩も出なかったので、全部たらればになっちゃいますけど、あんなにプラスの気持ちで、ワクワクしてスタートラインに立てたのは久しぶりというか、初めてくらいの感じだったので、どこか冷静さを欠いてしまっていた部分があるのかなと思います。


ーー前の組のピストルが長いなというのは感じていたか

 昨日の公式練習くらいから、それはちゃんと頭にあって、結構ばらつきあるなと。それが悪いとかじゃなくて、よくあることで。それはルールの通りにピストルをうってくれているわけなので、そこに対してどうこうではなくて、僕がそれに対応すればいいだけ。それでもちょっと長めになる可能性があるかもしれないというのは完全にスタートの時には頭になかったので、そこは気負いすぎていたというか、テンションが上がりすぎて、集中はしていましたけど、冷静になれていなかったのかなと思います。


ーーこれまで不正スタートになったことは

 3年前、大学1年生ときの織田記念で。でもあの時とはまたわけが違う。あの時はドンピシャで出たと思ったらリコールでフライングとられちゃったんですけど、それとは全然違って、今回は誰が見ても栁田やっただろって思ったと思います。フライングっていうフライングは意外と初めてだと思います。


ーーまだ世界陸上出場の可能性も残っているが、これからに向けて

 もう僕の力でどうこうできるというのは自分の手で終わらせてしまったので。これが決勝に残っていれば標準を切ればどうにかなるのかもしれませんけど、どうにもならないので、何かしらの期限まで待つか、シーズンが完全に終わったわけではないので、すぐに明日から切り替えるのはしんどいかもしれませんけど、徐々に次のレースに向けてやっていけたらいいかなと思います。



◼︎成島陽紀

ーーレースを振り返って

 全カレからずっと調子が上がらないなかで、何もできなかったなというのが感想です。


ーー全カレが終わってから、どのような思いで過ごしてきたか

 社会人になって続けられるかわからなくて、大きい大会はラストになってくるかもしれないので、しっかり準備してやりたいなという思いがありました。ですが、アキレス腱が良くならなくて、練習できない期間が長かったです。


ーー今後のレース予定

 明日、地元に帰って国体予選に出るので、次があるなら国体になると思うので、しっかり準備して臨みたいと思います。

 


◼︎城崎滉青

ーーレースを振り返って

 アップの時点では結構調子も良くて、意外と普通に行ったら行けるのかなって思っていたんですけど、全然そんなことはなくて、中盤から置いて行かれてしまいました。


ーー足の状態はどうだったか

 全カレ終わってから少し休んで、それなりに練習してきたので、そんなに痛くはないんですけど、ちょっとすねがまだ痛いかなというくらいでした。


ーー今年は三段跳ではなく、100mということで、例年と気持ちの違いはあったか

 変な重圧感とか、背負っているものがなかったので、楽しめるんじゃないかなと思っていたんですけど、やっぱり負けてしまったので悔しいです。


ーー前向きな気持ちで挑めた

 三段跳びをやめたわけではなくて、足の状態的に100mになったので、そんなに考えていなかったです。


ーー今後へ向けて

 だいぶ負けて悔しい思いがあるので、もちろん三段跳びも頑張りたいんですけど、100mも今後はやっていきたいかなという思いも芽生えてきたので、頑張っていきたいです。

 


TEXT=近藤結希

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