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2015.10.23
硬式野球

[硬式野球]スポトウ総力取材! 「おめでとう」捕手と指揮官が語る原樹理ストーリー 大学野球編

 ヤクルトから1位指名を受け、プロ入りの夢をかなえた原樹理(営4=東洋大姫路)。晴れの門出を迎えたこの日、成長を近くで見守ってきた野球人たちが秘話とともに祝福のメッセージを寄せた。


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グラウンドで、プライベートで献身的に原を支えた久保


 主に2番手捕手としてプレー、現在は不動産会社に勤める久保翔平捕手(H26年度営卒)。1学年上の先輩にあたり、2年間寮では原と同部屋で過ごした。「友達ですよね、ほとんど。『久保さ~ん、○○っしょ?』とか言いますから」。野球を離れても、近い存在として原と関わってきた。ヒジの手術、チームの、そして自らの成績不振。「辞めたい」。何度となくそんな言葉を聞いてきた。「その度に僕と阿部良(H26年度営卒=日本通運)で交互にご飯連れて行っていましたね」。今日の原があるのは、彼らの存在が非常に大きい。「飯代はかかりましたよ。あいつ高校から体重12キロ増えたんですけど、その半分くらいは僕が投資しました」。そう言って久保は笑った。

 シュートを教えたのも、久保だった。右ヒジを手術して迎えた3年春のこと。「『どうやったら抑えられる?』って聞くのでシュートを勧めました」。最初は曲がりが大きかったので、「真っ直ぐを投げるように腕を振りなさい」と指摘すると切れが良くなった。これが各球団スカウトの評価する「プロでは希少なシュートピッチャー」誕生の瞬間であった。

 とにかく野球が大好きだったという。プロの投手を見て、変化球などすぐに真似を始める。「でもナイター中継見てたら翌日やるのが普通じゃないですか?あいつは僕を連れてすぐ雨天練習場に行くんですよ」。今でも原は参考にしている選手を聞かれると、記者が追えなくなるほど沢山の名前を挙げる。

 苦労もたくさん見てきた。思うような球が投げられない時期、味方の失策に気を悪くすることもあった。「マウンドでいつも怒っているんですよ。だから言いました。じゃあ素直に周りに聞いてみなさいと。もしかしたら守りにくいリズムになっているのかもしれないから。自分が王様じゃいけない、野球はコミュニケーションが大事」。今月19日、久保は2部優勝の瞬間を見届けた。「背中が大きくなったでしょ?」随所に成長を感じ取った。「投ゴロ捕って、以前は横からふわっと投げていた。今は相手の目を見てきちっと投げる。すぐにベンチへ帰らずに、3アウト目のプレーも最後まで見る。大人になったなぁ」。その表情は、とても幸せそうだった。


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4年間二人三脚で歩んできた高橋監督と原


 思わず言葉を詰まらせ、東洋大学・高橋昭雄監督は涙した。「プロに行くために預かっているわけだからね。ホッとしたよ」。高校時代、プロ志望届を提出していれば指名は間違いなかった。肉体的にも精神的にも大きくなるために進んだ大学野球。しかし、チームは2部降格。けがも重なり、プロ入りは遠のいていった。結果の出ない日々は、本人と同じくらい心が痛かったのだ。

 今から4年前、「体全体の柔らかさ、バネがあってこの子ならやれるんじゃないかと思った。具体的なことじゃない、長年の勘だよ」というのが原との出会い。姫路まで足を運び、OBの藤田明彦監督にもお願いし、両親にも必死に東洋大学の良さを説明したという。

 秋季リーグ開幕前、原は言った。「4年間ずっと監督と一緒やったな」。何度もブルペンに付きっきりで指導をした。どんなに力強い球がいっても、高めにいけばそれは抜け球だと厳しかった。試合になれば、1球たりとも失投は許さない。こうして原の制球力はさらに磨きがかかった。

 プロに入るために選んだ大学進学。だからこそ、今春驚異的な投球成績を記録しても「まだ道半ばだ」と言った。そして、今日その夢がかなった。入部前に感じた「長年の勘」が間違っていなかったことを、教え子が証明してくれた。


■祝福コメント

・高橋監督

まさか外れとはいえ1位で当たるとは想像していなかったものですので、大したコメントを用意していませんでした。60試合以上を神宮でやれるということで、ずっと神宮でやらせてやりたいと思っていた私にとっては夢のようです。真中監督がああいう形で外してしまったので、真中監督を失望させないように原が来年以降頑張って、真中監督が「外してよかったな」と「金本監督に譲ってよかったな」というような活躍をしてくれれば、監督としてもうれしく思います。


・久保翔平(H26年度営卒)

営業で外回りをしていて、その時間はずっとソワソワしながら携帯を見ていました。(指名されたときは)自分のことのようにうれしかった。鳥肌がたちました。大学に入ってきたときには、君はプロに行きなさい目線を低く持ってはいけないと言いました。一緒に生活してみて、やっぱりこの子はプロに行かないといけないと思った。みんなが立てないステージに立てる人間なんです。普段は引退しても一緒に服を買いに行くほど可愛い後輩。何かしてあげたくなる、弟みたいなやつです。素材だけなら誰が見ても抜群。ただ、本当に苦労したと思います。神宮でやるために東洋入ったのに2部に落ちて、結果がでない時期もあって。それでも、スタート地点に立つ権利を得ることができた。それは誰でも持てるものじゃない。十分苦しんだから、思う存分やってほしい。これからも苦しいと思うんだけどね。プロへ行ってもきっと飯は僕がおごると思う(笑)デビュー戦はもちのろん、振り替え休日取って見に行きますよ。