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2025.08.22
サッカー

[男子サッカー]J13連戦は涙の結果に。天皇杯で見せた最後の挑戦。

JFA天皇杯第105回全日本サッカー選手権大会 第4回戦 東洋大vsヴィッセル神戸

8月6日(水) ノエビアスタジアム神戸


●東洋大1-2ヴィッセル神戸

 

《得点者》(アシスト)

36分 湯之前 匡央(山之内 佑成)


▽GK


磐井 稜真(国2=東京Vユース)

▽DF


荒井 凉(国4=日本大藤沢)

岡部 タリクカナイ颯斗(国1=市立船橋)

福原 陽向(国4=鹿島Y)

山之内 佑成(国4=JFAアカデミー)



▽MF


田制 裕作(国4=柏U-18)

鍋島 暖歩(国4=長崎U-18)→110分 西村 龍留(国3=柏Uー18)

湯之前 匡央(国4=柏U-18)→ 77分 相澤 亮太(国4=大宮U18) 

宮本 新(経2=横浜FC) → 67分 大橋 斗唯(国4=柏Uー18)


▽FW


村上 力己(国4=尚志)→ 67分 依田 悠希(国3=三菱養和SCユース )

髙橋 輝(国3=大宮U18)→120分 仲野 隼人(国4=三菱浦和SC) 


JFA天皇杯第105回全日本サッカー選手権大会(以下、天皇杯)16強として4回戦に勝ち進んだ東洋大はJ1王者でもあるヴィッセル神戸(以下、神戸)と対決。試合開始序盤には失点を許すも、東洋大らしいプレーで前半のうちにMF湯之前1点を取り返す。前戦に続き、脅威のプレーを見せるかと思った後半だったが、体制を立て直したヴィッセル神戸に攻撃を抑えられてしまう。試合後半の終盤には固めていた守りを崩され、1-2で試合が終了。東洋大の天皇杯への挑戦は4回戦で途絶える結果となった。


 今大会の番狂せとして注目を集める東洋大。J1柏レイソルとアルビレックス新潟を連破し、挑んだ今試合では、天皇杯前回王者でもあるヴィッセル神戸と対戦。J1との3連戦に気合いが十分入る東洋大イレブンたち。今回は十分な準備期間を経て、本気でベスト8を狙いに工場までやってきた。そんな彼らの背中を押すように、今試合も応援席には多くのサポーターたちが集まり、東洋大ユニフォームを身にまとい一体感ある応援を披露した。


 迎えた試合開始。先に主導権を握ったのは神戸。高精度なパス回しで東洋大に隙を見せないプレーを展開すると11分に先制点を奪われ、悔しくも失点。

 しかし、今回も勝利を本気で狙いに行く東洋大が反撃の狼煙(のろし)を上げる。前半20分あたりからボールの所持時間が増え、東洋大にもチャンスが巡ると、迎えた36分。左サイドを一直線にDF山之内が突破すると、中央にいた湯之前へパス。速いボールを受けた湯之前だったがタイミングを完璧に合わせ、左足でダイレクトゴール。絶妙なコンビネーションで前半のうちに1点を取り返す。

 今試合も活躍が光る山之内

笑顔を見せる湯之前

 良い流れで後半へ入る東洋大選手ら。油断は許されないと言わんばかりの緊張感を持ち、闘志を相手に向けた後半だったが、やはり前回王者である神戸は強かった。

 試合前半の失態を取り戻すように、勢いを立て直し、隙を見せないプレーで東洋大の攻撃を押さえ込む。なかなか思うプレーができない東洋は、それでも守りを固める東洋は、神戸の攻撃に振り回されず自陣を丁寧に守り抜いた。

 両者得点が動かず均衡の状態は続くと、試合は延長戦へ。120分へ突入という苦しい状況にも、互いに声を掛け合い、ベンチでストレッチを組む選手たち。延長戦前には円陣を組み士気を高める。

守りの要である磐井

延長戦に向けて

 迎えた延長戦でも両者一歩も譲らず、試合はヒートアップ。攻められる東洋大は何度もボールを流し、GK磐井も連続で放たれるシュートを必死に守り抜いた。延長戦を越えればPK戦。そんな緊張感や焦燥感がスタジアムに漂う中 アディショナルタイム1分。

 神戸の放ったゴールを磐井が受けるもボールは後方へ弾かれる。誰もが息を呑んだ瞬間。その隙を見逃さなかった相手選手が頭で押し込むと、ゴールネットが揺れると、選手たちは膝から崩れ落ちるように倒れ込んだ。

 この1点が神戸の勝ち越しとなり、試合は1-2で終了。強者に敗れた選手たちの目には悔し涙が浮ぶも、神戸まで駆けつけたサポーターたちへ深々と感謝の一礼を見せた。


 今大会、初出場にも関わらずイレギュラーな勝者として、大会を大いに盛り上げた東洋大の挑戦は閉幕。天皇杯という新たな舞台に、本気で挑んだ選手ら 。J1相手に対してここまでの試合を見せた彼らのプレーに多くの者が賞賛の声を上げた。



◼️コメント

・井上監督

ーー試合の総括

まず残念。ヴィッセル神戸を相手にして、試合終わって残念っていう戦いをしたチームに対しては非常に誇らしく思います。


ーーヴィッセル神戸に対する活路やプランをどう見出していったか

今正直どの試合を見てもどうやったら勝てるんだろうっていうのが正直な最初の印象でした。

その中で、我々ができることを徹底するしかないので、これまでやって来た中でも、もちろん対戦相手に対してアレンジすることはありますけれども、高い彼らのクオリティに対して少しでも消極的な姿勢を見せると簡単にやられてしまうと思いました。選手達には、「我々には失うものはないから、積極的にチャレンジしようという」ことで彼らもそれを最後の最後まで出せたと思います。

立ち上がりこそ少し相手に押し込まれる場面、相手に対して少し引いたような戦い方でしたけれども、それ以外のところは120分間よく戦ったと思います。


ーーJ1の2チームを破ってJ1王者、前回王者の神戸をここまで追い詰めたこの今大会の戦いについて

こちらの想像をする以上、彼らは1人1人、個人もそうですし、チームとしても高いパフォーマンスを達成してくれた、発揮してくれたと思います。

J1のクラブに対してどうすれば勝てるだろうかというところから始まりましたけれども、私以上に選手たちの方が、彼らはそれぞれに将来で(プロとして)そういう場で戦いたいと思ってる選手が多いので、自分が存在価値だったりっていうのをそれぞれの試合で示そうっていう意思が非常に強く表れたかなと思います。

それはこちらが準備して提供するアイデアだったりっていうものを上回ったんじゃないかなと思います。



・湯之前 匡央

ーー試合を振り返って率直な感想は

本当に上位の相手、プロフェッショナルと真剣勝負ができたっていうところ。

本当に大会通して"楽しかった"っていうのが正直な感想です。


ーーゴールの場面を振り返って

山之内選手が左サイドで、彼のフィジカルだったりスピードだったら突破できるだろうなっていう風に信じてたので、あそこのポイントっていうのは山之内と練習中にも話し合ってたので、そこは練習の成果が出たのかなっていう風に思います。



・磐井 稜真

ーー試合を終えて

チームとしても自分としても本当に120分いいゲームをしてたからこそ、自分の1つのミスでゲームを終わらせてしまったのは、チームの皆だけじゃなく応援してくれてた人達にも本当に申し訳ない。


ーー試合で出来たことは

相手プレッシャーが少し緩んできたと感じてたんで、得点シーンも自分のビルドアップから得点に繋がったから、自分の良さは出せた試合かなと思っていました。しかし、後半押し込まれる中、我慢の時間続き、そんな中でもチーム一丸となって時間を作ってそこまで持って来たけど、結局勝てなかったっていう結果は受け止めなきゃいけない。

この経験を活かしていくのが、皆のためになるのかなと思ってます。


ーー神戸の荒井選手が「お前だからここまで延長まで行けたんだ」ってことを伝えたと聞いてますが、どんな気持ちでしたか?

小さい頃からずっと見てきた選手だったので、そういう選手にそう声を掛けてもらって、嬉しい。気持ちの切り替えに繋がったと思ってます。


ーー延長戦を超えた先にはPKを見据えていたと思いますが

トーナメントは最後PKがあって、キーパーが唯一輝いて勝たせられる試合なんで、試合前からずっと考えてました。だからこそ試合終盤に意地で見せていくというのは、次に生かさなきゃいけないと思います。


ーー天皇杯という大会を振り返って

東洋デビュー戦からずっと戦い続けて、思いが強い大会になったし、だからこそ今日の試合を勝ちに持って行きたかった思いが強かった。

来年は分かりませんが、次出るチャンスがあるんだったら、また本気で狙っていきたいと思ってます。


PHOTO=鈴木真央 TEXT=森花菜