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2025.10.23
射撃

[射撃]静かな競技の中に光る選手たちの努力 射撃部の素顔をひも解く密着インタビュー

全日本学生射撃選手権大会(以下、インカレ)目前!普段なかなか知ることのできない射撃部の素顔と、その魅力をひも解く密着インタビューを行いました。




取材日=9月18日

聞き手=三木万由子

※掲載が遅れてしまい申し訳ございません。




◇大月 柊人(法3=下妻第二)

3年生のムードメーカー的存在でありながらも、確かな実力と安定感のある射撃はチームの主戦。インカレでも活躍に注目が集まる。



◇杉若 葉乃(福2=佐野日大)

女性選手でありながらも幅広い種目に挑むマルチプレーヤー。笑顔を絶やさない強靭(きょうじん)なメンタルで今年の大会も駆け上がる。




――いつから射撃に興味を持ち始めましたか

《大月》僕は今年9年目で、中学1年生の頃から射撃をやっているんですけど、当時はちゃんとみんな中学生は部活に入りなさいよみたいな学校だったので、母親から言われて射撃をやってみればという形で射撃場に行ったのがきっかけなんですね。興味というよりかは、そのまま射撃をやって、射撃あるあるなんですけど、「上手いじゃん、上手いじゃん」って評価されて、そのまま射撃の中に入るみたいな感じではありますね。


《杉若》射撃に興味を持ったのが高2の最後です。ちょうどその年に栃木で国体が開催されていて、地元が栃木なのでなかなか(射撃について)教えてもらえなかったというか、人がいなくて。部活じゃなくて個人でやっていたので、射撃をちゃんとしっかりやり始めたのが高3の春ぐらいですね。栃木で自分を教えてくださった方が、たまたま東洋大の監督だったっていうこともあって、楽しいし大学でも続けたいなっていう感じで、今もこうしてやっている感じです。



――初めて銃を持った時の感覚など覚えてますか

《大月》はるか昔すぎて忘れました。(笑)忘れましたけど、ビームライフルからエアライフルに移行した時の、反動もあって、ちゃんと音が出て、当たる音もして、撃っている音もして、撃っている感覚もしてっていうのは、ほんのりですけど、感覚としては残っているのかなと思います。


《杉若》銃初めて持った時、最初はビームライフルから始めたんですけど、銃とかライフルって聞くと、当時はクレー射撃とかのもう火薬バンバン出す、ごっつい銃をイメージしていて。ビームライフル持った時は光線でパって出るやつなんで、おもちゃみたいな感覚なんですけど、でもそれが段々エアライフルとかスモールボアライフルとか火薬使う銃を使用するようになると、段々「あ、本物の銃持ってる」みたいな感覚が湧いてきました。



――射撃を続ける中で一番のやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか

《杉若》自分は練習とか試合とかで、自己ベストが出た時にやりがいを感じます。


《大月》自己ベストもそうですけど、個人種目なんで自分で考えて、セッティングを動かすこともありますし、そのセッティングが、ここをこうしたらもっと良くなるんじゃないかな、みたいな感じで仮説を立てて、ちゃんと実行できた時や結果が伴った時は自分の経験も生きて、かつ実力も伴ってきてっていうのが分かるのででやりがいを感じることあるかなと思います。



――初めて競技に出場した時の思い出やエピソードなどありますか

《大月》自分が中学生の頃結構エリートだったんで(笑)、3ヶ月ぐらいでエアライフルを持てたんですよ。でもその時の記憶はすごく残っていて。高校生と点数を競っていたので、ベースが高校生基準になったっていうのと、エアライフルの公式大会で全国小中学生の大会でファイナルに残れたっていうのがすごい印象に残ってて、ファイナルに残れて嬉しいなって感じでしたね。


《杉若》初めてエアライフルで関東の大会に出たんですけど、そこが埼玉の長瀞にある射撃場で、あそこエアコンがないので夏とかすっごい暑いんですよ。当時は耐性もなくて、私エアライフルの大会も初めてだしで、すごい緊張しちゃって熱中症で試合中に倒れて(笑)それがエアライフルの初めての試合の思い出で。あとスモールボアエアライフル初めての試合の思い出としては、今使ってる銃より重かったんですよ。去年の春の初試合で、伏射撃って終わった時に、なんかすごい手首痛くて、そのうち首からどんどん感覚なくなって、整骨院に行ったら「首悪くて神経が圧迫されてます」って言われてコルセット巻かれてそれ初試合の思い出ですかね。どちらも悪かったです。(笑)


伏射競技中の杉若


――射撃の魅力を一言で表すとどんなことですか

《大月》つながりですかね?個人でやってるとどうしても色んな人に頼ったりとかしてなきゃいけないので、そういうところで色んな人と話してコミュニケーション取れるようになって、自分自身の成長につながりました。そのコミュニケーションを取ったことによって、大学入る以前の関係性もありますし、もちろん大学入った後に学連(学生連盟)って役職をしてて、他の大学の方といろんなお仕事をしたりとかっていうのがありますけど、そういうところでもすごくつながりは生まれていると思います。



――試合前、試合中のルーティーンなどありますか

《大月》あんまりこだわりはないんですけど、少しだけ落ち着く時間は設けます。5分ぐらいとか。深呼吸する時間は絶対設けていて、打っている途中もですけど外した時とかもしっかり呼吸して。うまくいかない場合は水飲んだりとかして落ち着くような動作っていうのはしっかりしてるので、その点では深呼吸とか休憩を置く時間っていうのはすごい大切にしてるかなって思ってます。


《杉若》自分は全然気にしないタイプで。試合中とか練習中でもそうですけど、調子が悪くなってきちゃったりとか、打っても思い通りの点数乗らないなって時は、一旦銃を置いて後ろ(コート外)に行ったりとか、練習中であれば先輩とか同期にどうすればいいんだろうって相談したりとかっていうのはしますね。



――射撃を通して身についた力や自分の成長を感じる瞬間などは

《杉若》分からないことを放置しなくなったことですかね。個人でやっていると、分からないことは本当に分からないんで、銃のこととか。銃に携わる前は分からなかったことを適当にやっちゃえみたいな感じも多かったんですけど、銃っていう精密な武器を扱うようになってからは、ちょっとしたことでも分からなかったらすぐ先輩方とかコーチに聞くようになりました。


《大月》メリハリが結構しっかりしてきました。普段は勉強もしていないので、集中する時間があまり作れないんですけど、射撃をしている間は頭空っぽで集中して打つのが一番いいので、集中する時としない時とか、しっかりスイッチを入れて物事やる時の姿勢っていうのは、身についていて。それは日常生活においても、ふざけたりするシーンはふざけているし、しっかり仕事をする時はちゃんと仕事をするっていうメリハリが射撃をやってて身についたのかなと思います。


競技中の大月


――東洋大学射撃部の特徴や雰囲気は

《大月》ピストルが強い!強いですね。先輩もいらっしゃいますし、ピストルについては実力のあるチームなのかなと思っています。


《杉若》雰囲気については、入部する前はガチガチで厳しい感じだと思ってたんですけど、思ったより和気あいあいとした雰囲気ですね。


《大月》先輩後輩で、先輩に対してビクビクするとかではなく、後輩でものびのびできるような空気感が自分は一番いいと思ってるので、そういうところもしっかり作りつつ、時には締まった方がいいのかなと思いつつ。他の大学を見てみるとやっぱり体育会の空気が残ってる学校もあるし、もちろんうちの射撃部も体育会として残していく部分もあると思うので、そういうところも重んじながら、これからもっと良くするところもあります。雰囲気としては悪くないんで、今後も時代に沿った体育会っていうのを、また出させていければなと思っています。

ピストルでインカレ優勝経験を持つ髙田明(法4=茂原北陵)


――生まれ変わったら、やりたいスポーツはありますか

《大月》……。世界陸上とかが東京でやってますし陸上とかもいいと思いますし。でも変わらず、ちょっとマイナーでニッチというか、そういうところのスポーツやってみたいなっていうのは思います。(笑)


《杉若》カバディ―とか、カヌーとか?


《大月》フェンシングとかね、ちょっとマイナーなスポーツ続けてやりたくなるところです。


《杉若》自分は体動かす系が好きなのでスポーツで言ったら、静止してるのではなくて、アグレッシブなところをやりたいです。でも自分今やってみたいなって思うのがやり投げですね。もし生まれ変わったら、やり投げの選手やります!



――射撃を知らない人にこの競技の魅力や、見てほしいというところを教えてください。

《大月》ルーティーンかな。試合前とかに、銃を下ろしてから弾を込めて構えてまた打つっていう、動作の時間っていうのは、その選手によってまちまちで、ファイナルに出るような選手は、一発50秒を意識しつつ構えるまで、打つまでのルーティーンを作るのかなと思うので、そのルーティーンは人それぞれで面白いのかなっていう風に思います。あと本当に分かりやすいところで言うと、学生試合のトップの選手とかは、10点が普通にはなっていってくれるので、どれくらい10点が続いてるのかっていう風に数えるだけでも、まずは楽しいのかなっていう風に思いますね。


《杉若》自分はその射撃がどんなスポーツかっていうのを全然まだ知らない時に、よく見てたのがコート。ライフルだとコートを着用するんですけど、そのコートの色とか形とかメーカーによって、やっぱり違いが出てくるので、あとは銃の種類、銃の色とか。エアライフルはシリンダーっていうのが付くんですが、ライフルでは色がシルバーとか黒っていうのが多く見られるんですけど、ピストルのシリンダーとかだと青とか紫とか緑とかいろいろな種類があるので、本当に射撃の内容とかが分からなくても、その容姿とか選手の使ってる銃とか見るだけでも自分は楽しかったですね。

今西諒介(社1=清美)のシリンダーは紫



 マイナースポーツという枠を超え、そこには無限の可能性と魅力が広がっている。また、挑戦を重ねるごとに競技者自身を成長させてくれる競技でもある。

 10月23日から始まる全日本学生射撃選手権大会に出場する東洋大の選手たちは、これまで培ってきた経験と確かな技術を武器に、誇りと向上心を胸に4日間の大会へ挑む。そんな彼らの活躍に目を離すな。


TEXT=森花菜 PHOTO=三木万由子、神﨑海希