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「3人の関係を一言で表すと?」
その問いに、返ってきたのは「土」という答えだった。
「土がなければ花は咲かない。自分たちは、土のようにチームの花を咲かせるために動きたい」
その声は、穏やかで控えめだった。けれど、強かった。
天羽進亮(済4)、浅尾至音(スポ3)、池渕紅志郎(総2)。
彼らが高校時代をともに過ごした城東高校ラグビー部には、「花よりも、花を咲かせる土のような人間になる」という部是がある。
東洋大ラグビー部で過ごす今も、チームを支える「土」としての在り方が変わることはなかった。
※本記事は、2025年8月に取材・執筆したものをもとに構成しています。

組み体操「扇(おうぎ)」を披露する左から池渕、天羽、浅尾
3人の絆の原点は、徳島県・徳島市に所在する城東高校ラグビー部だ。天羽が10番(SO)、池渕が12番(CTB)、浅尾が13番。学年は異なるが、並んだポジションそのままに、彼らはいつも横にいたと振り返る。
「当時から仲がよかったか」。たずねると、「ずっと横におったかもしれないですね」と天羽。
「仲良し」と言葉にするまでもなく、自然と築かれた独特な距離感だった。

取材にこたえる城東トリオ
高校卒業後に、再び交わったのは徳島県から約700キロ離れた地、埼玉県川越市に練習拠点を置く東洋大学ラグビー部。
「また3人でラグビーするんか~(天羽)」
3年の時を経て、ともに楕円球を追う日々が訪れた。
3人の心のつながりには、並んできた分だけ確かなぬくもりがある。その関係性はそれぞれの言葉ににじみ出ていた。
「2人がいたらタックルが入るんだろうなって思いますね」。天羽がそう話せば、「2人にいいことがあったら自分もうれしいし、つらいことがあったら自分も同じくらいつらい。恥ずかしいですけど、兄弟のような関係です」と浅尾。
池渕も「2人がいたから東洋に来たし、何かあっても慰めてくれる。同じところからきているだけで安心感が全然違います」と言葉を紡いだ。

菅平合宿での練習試合後に握手をかわす3人
取材を行った25年8月時点、3人は立場も状況も異なっていた。
天羽は春季交流大会・明大戦で負傷し、秋シーズンを迎えるまで戦列を離れていた。その間、ラグビーに対する思いは強さを増したという。「2人(浅尾、池渕)の活躍する姿を見て、『自分も頑張らないとな』と思わされた。今年は大学日本一を達成したいです」
浅尾は、チームの中核にある立場。「この3人でチームを引っ張ていけるように、実力をつけていきます」。そう語る姿に、頼もしさがあった。
そして池渕は、激しいポジション争いの中で存在感を示している。「僕は頑張って2人に追いついて、3人で試合に出たいです」
それぞれが異なる立場から目指すものがあるが、共通の夢もあると話した。それは、もう一度同じグラウンドで横に並ぶこと。高校のあの日のように、肩を並べてチームの背中を押すことだ。

リーグ戦第6節・流経大戦で勝ち越しトライを決めた池渕(右)と抱き合う浅尾
その思いは、秋の関東大学リーグ戦で現実のものとなった。全7戦中5戦でそろって先発出場。12月14日に行われた大学選手権3回戦・帝京大戦にもキックオフからともにグラウンドを駆けまわった。
中でもリーグ戦第6節の流経大戦では、開始5分の浅尾の独走トライから始まり、前半終了間際の43分に同点に並ぶ天羽、ラストプレーで勝ち越しとなる一発を池渕が決め切るトライを挙げ、チームの勝利に大きく貢献した。
互いに支え合う姿も、シーズンを通して垣間見えている。
同大会第5節・東海大戦でのこと。1点を追う終盤、敵陣深くまで攻め込み、あと数メートルのところまで迫った。
ラストプレーでボールを託された浅尾は、サイド際で相手のタックルに押し出され、そのままノーサイドとなった一戦だ。
試合後、涙を流す浅尾。そのそばには、静かに寄り添う天羽の姿があった。
浅尾が語った「兄弟のような関係」という言葉が、重なる光景に、高校時代から築かれた絆が見えた。

リーグ戦第5節・東海大戦で1点差で敗れ、涙する浅尾(右)に寄り添う天羽
華やかなプレーの裏にある、見えない支え。それは、誰かが飛躍する「土台」となる存在。
この3人は、まさにその体現者だ。
誰が光を浴びるかが重要ではない。仲間の花が咲く、その足元を支える「土」でありたい。そう思いながら楕円球を追う日々は、環境が変わった今も色あせることはない。
花を咲かせるチームの、その根っこには。静かで力強い、3人の絆がある。

☆城東高校ラグビー部
1949年創部。徳島県徳島市に所在し、全国高校ラグビー(花園)には1956年に初出場。昨年度は8大会連続18度目の出場を果たした。花園での最高成績は2回戦進出。主なOBには柳川大樹(リコーブラックラムズ)、八田優太(京産大・U23日本代表)がいる。
TEXT/PHOTO=北川未藍

