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2026.06.05
レスリング

[レスリング]パリ五輪女王の意地を見せつけた!/令和8年度 明治杯全日本選抜レスリング選手権大会

令和8年度 明治杯全日本選抜レスリング選手権大会      

   5月21日(木) 〜 24日(日) 駒沢総合体育館


(1日目)

男子フリースタイル97㌔級 

植木優斗 準々決勝敗退

女子59㌔級 

本原理紗 一回戦敗退

太田早也香 一回戦不戦勝(VFO)準々決勝敗退


(2日目)

女子53㌔級

小岩芽以 準々決勝敗退

敗者復活戦

男子フリースタイル97㌔級 

植木優斗 3位決定戦敗退

女子59㌔級

本原理紗 敗者復活戦を勝ち上がるも3位決定戦敗退


(3日目)
女子57㌔級

山下叶夢 1回戦敗退

女子62㌔級

吉川華奈 予選B組敗退

グレコローマン77㌔級

角出直生 準々決勝敗退


(4日目)

グレコローマン77㌔級

角出直生 3位決定戦敗退



  5月21日から24日にかけての4日間、駒沢総合体育館にて令和8年度 明治杯全日本選抜レスリング選手権大会が開催された。東洋大からはOB、OGも合わせて11人が出場。本原理紗(社2=日体大柏)、植木優斗(スポ4=足利大付)、角出直生(法4=志賀)の3選手が3位決定戦に登場し、鏡優翔(R5年度社卒=サントリー)が76㌔級で優勝。鏡はその後のプレーオフも制し、2026シニア世界選手権大会(以下、世界選手権)とアジア大会の代表の座をつかんだ。


 東洋大からは3名の選手が3位決定戦に登場した。

 女子59㌔級に出場した本原は、1回戦で日体大の伊藤渚と対戦するも、0-10とテクニカルスペリオリティ負け。だが、対戦した伊藤が決勝までコマを進めたため、次の日に行われた敗者復活戦に登場。敗者復活戦で中央大の岩﨑美優を4-2のポイント勝ちで下し、その後の3位決定戦に出場した。ここで対戦したのは東洋大の太田早也香(済3=埼玉栄)と準々決勝で激突した日体大の木村美海。ここでは1―4のポイント負けとなり、惜しくも表彰台入りとはならなかった。


組み合いながら相手の隙を窺う本原(右)


 男子フリースタイル97㌔級に出場した植木は、1回戦で日大のリボウィッツ和青と対戦。ローリングからの大量失点で0-10とテクニカルスペリオリティ負けで1回戦敗退となるも、敗者復活で翌日の3位決定戦に出場。中央大の濱田豊喜に1-4で敗退という結果に終わった。


攻防を繰り広げる植木


 グレコローマン77㌔級に出場した角出は、1回戦は日体大の堤大智と対戦し、相手のパッシブからのパーテールポジションで点を奪うなど後半の怒涛の攻めで7-4と勝利を収めた。続く準々決勝で対戦したのはパリ五輪にて金メダルを獲得している日下尚(マルハン北日本カンパニー)。果敢に食らいついていくも、初戦とは打って変わり、開始1分30秒でパッシブをとられ、パーテールポジションからのローリングの失点。0ー8のテクニカルスペリオリティ負けを喫(きっ)し、翌日の敗者復活戦に出場することとなった。


   相手にプレッシャーをかける角出(右)


 敗者復活の3位決定戦で相まみえたのは角出と同様に日下に敗戦した櫻庭功大(自衛隊体育学校)。試合開始1分30秒でパッシブをとられ、ローリングからの失点で3点を追う形に。そのまま第1ピリオドが終了して第2ピリオドに折り返す。次は相手にパッシブが与えられ、パーテールポジションで勝負に持ち込むも得点には至らない。試合終了1分前に体を押され、場外へ押し出されそうになるもうまくかわして、逆に相手を場外に押し出した。その後も果敢に相手に挑んでいくも最終スコアは2ー3で敗退という結果に終わった。試合を振り返って「今までと比べたらいい試合ができた。もっと得意なスタンドの投げとかを出せたら良かった」と手応えと課題の両方を口にした。


 東洋大勢が苦戦を強いられる中、一つ一つ白星を重ねて決勝まで上り詰めたのが鏡優翔だ。

 鏡は1回戦はテクニカルスペリオリティ勝ち、準決勝は2ー1のポイント勝ちと決勝まで駒を進め、昨年、12月に行われた天皇杯で惜しくも敗退した松雪泰葉(ジェイテクト)と激突した。結果は6-2のポイント勝ちで優勝。だが、いつものはじける様な笑顔は見せなかった。「決勝に立つ前に、準決勝だと思って立ちました」。


 場外へ押し出す鏡


 鏡はその後、決勝で対戦した松雪とプレーオフで再戦した。プレーオフは世界選手権ならびにアジア大会の代表内定をかけた試合であり、昨年の天皇杯の優勝者と今大会の優勝が違った場合に行われるものだ。

 決勝から約1時間後に行われたこの試合は会場全体に独特の緊張感をまとう中始まった。試合が大きく動いたのは試合開始後1分30秒。鏡がタックルに入ろうとしたところで相手が体勢を崩し、そこを見逃さず足を持ち上げ場外へ押し出し、鏡が1点を先取。そしてそのまま1-0で第1ピリオドは終了し、試合を折り返す。第2ピリオドでも鏡は攻めの姿勢を崩さない。「攻めを辞めないことと取られても怖がらずに、取りに行くことをこの2試合徹底できたと思います」。後半1分で相手に2つ目のパッシブが与えられ、再び鏡に1点が追加される。そしてその直後、タックルで相手の右足をホールドし、崩しにかかる。だが、逆に相手に体を返され、2点を奪われる形に。試合終了まで残り1分の中、鏡は再びタックルで相手の脚をとり、場外に押し出してスコアは3―2と試合終了までリードを守り抜いた。


感極まる鏡


 「信じて進んできてよかったな」。鏡は試合終了直後、顔を手で覆い、感情をあふれさせた。パリ五輪後も決して楽な道のりではなかった。苦しい時間を乗り越えての今大会での勝利。今は「新たな鏡優翔を見せつけて世界で活躍していきたい、絶対に金メダルを取りたい」と晴れやかな面持ちで世界を見据えている。


観客の歓声に応える鏡




◇角出直生

ーー昨日、今日の試合を振り返って

1回戦は勝てて、準々決勝でオリンピックチャンピオンの日下選手と対戦して、何回も対戦したことはあってスタンドの立ち技の攻防が前と比べて改善しているのですが、寝技の攻防でやられてしまって、今日の3位決定戦の相手も同じような技をかけてくる選手。その寝技の方は昨日の改善点を抑えられて、どちらの相手も全日本で何回も優勝している格上の選手なんですけど、今までと比べたらいい試合ができたので、寝技のグラウンドの攻防を練習もっとしなきゃいけないなと思っています。


ーー昨日今日とコンディションは?

減量が少しあったので、寝る前とか喉が渇いて眠れなかったりしたんですけど、今日のほうが調整がうまくいって体が動いたので、もうちょっとちゃんと調整をうまくしたいなと思っています。


ーー今大会を通じて得た課題は?

スタンドの立ち技の攻防で技が取りきれていないのが何回かあって、そこを改善することと、グラウンドでは得意技がローリングが右とか左とか片方しか掛けられないので、左右のどちらでも技が掛けられるように練習したいなと思いました。


ーー昨日の準々決勝で対戦したパリ五輪禁メダリストの日下選手は、去年の明治杯や天皇杯でも対戦しているが、どんな存在か?

やっぱり外国人相手でもスタンドではなかなか外国人が力が強くて技が取れないんですけど、体力で取りきれるところが、日本人らしいレスリングスタイルなので、自分も真似をして体力とかもつけないといけないなという印象です。


ーー昨日、今日とマットに向かう上で、心持ちに違いはあったか?

どちらも全日本で何回も優勝している強い選手だったので、挑むという気持ちでいたんですけど、今日の方が動きが良かったので、もっと得意なスタンドの投げとかを出せたら良かったなと思っています。


ーー次の大会に向けて一言

次の大会はリーグ戦があって、個人では8月にインカレがあるので、インカレで優勝できるように頑張ります。


◇鏡優翔

ーー今どんな気持ち?

自分自身が頑張って来たのもそうなんですけど、本当に五輪が終わってからずっとたくさんの方に支えていただいて、本当に救われながらレスリングを頑張って来れたので、この方々にはすごい感謝の気持ちでいっぱいです。自分自身本当に久しぶりの優勝ですごい嬉しいです。

ーーどんな思いでマットに立ったか

もう本当に負けてから、誰よりも練習しましたし、練習以外でも本当にレスリングのことを考えて色々な活動や勉強もしながら、本当にすごいスケジュールの中で練習だけは絶対に欠かさずにやっていたし、その姿を見せられなかったかもしれないですけど、私はずっとやってたって言う自分の自信があったので、結果を経て、証明できたと思います。

ーー12月(天皇杯)の負けを踏まえて相手の対策という意味ではどういったことを考えながら

相手の対策ももちろん選手にはあったんですけど、まずは自分自身との戦いかなと思っていて、この5ヶ月間自分の気持ちとの戦いをずっとやってきました。本当にこう試合になると自分の強さが全部100%出しきれないって言うのが私の中でずっと課題なので、本当に自分自身と戦って、その怖さからどう逃げられるか、考えてずっとやってきました。

ーー昨日自分から攻めていく、レスリングっていう気持ちとしてどんどん出していて手応えも口に出して伝えられていたが、今日の2試合振り返ってそのあたりは?

この2試合もずっと攻め続けることはやめずにいられたのと本当に自分の気持ちを練習して、ずっと試合を意識して練習していたので、攻めを辞めないことと取られても怖がらずに、取りに行くことをこの2試合徹底できたと思います。

ーープレーオフ、後半に追いつかれてというシーンもありましたが、緊張や焦りはあったか?

自分自身の焦りは全く無くて、取られたのは自分のタックルで返されたので、タックルは取れると自分で思って、ここで返されたから集中したら今まで通りの自分でここでまたもう1個行くっていうのは、気持ちを作り直せたので、そこはもう20秒くらいあったと思うんですけど、怖い思いは無くて、気持ちを持ち続けられました。

ーー今振り返ってみて去年の12月の時の自分から成長できた部分とか強くなった部分はどういうところが?

ちょっと自分自身に甘えがあったんだろうなっていうのは、結果を得て思ったんですけど、こうやってなんか負けて気付くっていうのはもう二度と無いようにしたいなって思いましたし、自分自身が眠っていたその闘争心があったんだなあっていうのが、今回は気づけたので、それを絶やさずアジア大会と世界選手権で金メダルを取って、その勢いをしっかりつけて勝てるように頑張ります。

ーーまた世界と戦うってことについて、どういう思いで望んでいきたいか?

オリンピックからずっとやってきて、休憩してからはじめて負けを経験して、また新たな鏡優翔で、海外に挑もうと思ってるので、本当に新たな鏡優翔を見せつけて世界で活躍していきたいと思います。

ーー6分間戦い終えた後、顔を覆う仕草があったが、あの時はどういう感情か?

自分が五輪を終えていろんな活動をしてきたと思うんですけど、やっぱり自分は正解だと思って、正解にするために進んできてるんですけど、いろんな意見をいただいて、それでも曲げずに自分の考えを曲げずにやってきたので、報われて良かったなっていう気持ちと、オリンピックが終わってからすごい色んな方と関わる機会がまた増えて、その方々が応援に来てくれて、本当に嬉しくて、やっと勝った姿を見せられたなと思って、いろんな感情が込み上げてきました。

ーー天皇杯で敗戦した時も涙を流していたが、その時とは違う涙か

はい。やっと喜びの涙を流すことができたので良かったですけど、またここでほっとせず、次に向けて頑張っていきたいと思います。

ーー本当に苦しい5ヶ月だったと思うが、自分との戦いを本当にこう乗り越えられたその一番の要因っていうのはどういったことがあるか

そうですね。自分が色んなことを今挑戦してるので、だからこそ、やらなきゃっていう思いにもなれましたし、あとは本当に身近で支えてくれる人がいっぱいいたので、その人たちのためにと思ったら余計に頑張れました。

ーーアジア大会32年ぶりの日本開催ですが、アジア大会にかける思いは

32年ぶりに日本でやるので、私がきっと現役中の最後の日本でやるアジア大会じゃないかなっていう風に思うんですけど、本当に私がまだプレーオフで勝つ前、もちろん1位を取る前に、みんなが切符を買ったよみたいに言ってくれて、この期待をやっぱりいい形で背負っていきたいなと思って、みんな見てくれるので頑張りたいと思いますし、絶対に金メダル取りたいと思います。


自分は正解にするために進んできたんですけど、やっぱりそうじゃない意見がすごい。オリンピックで金メダルを獲って知名度が上がった分、そうじゃない意見もすごい見るようになったし、でもやっぱりそれを信じて進むのもすごい勇気がいることで、本当に頑張ってよかったというか、信じて進んできてよかったなっていうほっとした涙だったんじゃないかなと思います。

ーー明治杯の決勝が終わってから、どのような気持ちで整え直したか

まず決勝に立つ前に、準決勝だと思って立ちました。1位を獲った時に実感というものが全くなく、表彰式で金メダルを掛けてもらったんですけど、その金メダルすらもすぐにしまって、あとで見るっていうのを周りにも伝えて、自分の気持ちがほっとしないように準備していました。

ーー(松雪選手と)2回プレーオフを含めて戦うことをわかっていた中で、今日一日どういうふうに試合を組み立てたか

1試合目は自分の練習を信じて確認しながら、相手の対策を考えながらやったんですけど、2試合目も自分が相手だったら自分に対してどうやって戦うかなっていうのを逆に考えました。周りが「1試合目がよかったからあまり変える必要はない」という強気な言葉をかけてくれたので、それを信じながらも、相手だったらどうするかなという意識を持ちながらプレーオフに臨みました。

ーーポイントを取られても攻める姿勢ができたのは、相手の懐に入るという自信があったから?

そうですね、自分自身の体力に自信があったからです。私はバテてからの練習をずっとレスリングでも普通のトレーニングでもしてきましたので。ここで私がバテてるけど、相手の方がもっとバテてるって思えたし、そこで自分がもう一回気持ちを作り直した時に相手の足がバッて見えたので、入れたなと思いました。

ーー忙しい中で調整できたのはその分12月(天皇杯)が悔しかったから?

本当に悔しかったので、みんなテレビばっかり出てると思ってるんですけど(笑)私は本当に練習して行っているし、絶対に練習量だけは変えずにいました。でもあえて「練習してます」なんて載せないですし、そうやって思われてもいいや、結果でみんな見てるんだったら結果で示してやると強気でいました。

ーー意見があったとおっしゃっていましたが、SNSなども含め、実際に直接面識のある方からも厳しい意見をもらったりしたのか?

そうですね、あったりします。私に攻撃するつもりで言ったわけじゃないんでしょうけど、「ちゃんと練習しなよ」とか、ふいに言われたりするんです。そういうのが結構刺さったりして、「見てろよ」って思っていました。

辞めたらそれまでじゃないですか、流されてるしその出たいから出てるとかじゃなくて、私はレスリング界のためにとかこの先自分が考えてることに対しての今、必要なことだと思ってやってるので、(テレビに)出ることが悪いことっていうのが正解にしたくないなって思います。今後のその未来のある子供たちもそうですし。(テレビに)出てないで頑張った方がいいっていう道じゃなくて違う道もちゃんと切り開いてあげたいなって。

レスリングを広めていくこともそうですし、自分自身の知名度が上がることで、レスリングのイベントを広めていくイベントを開いたり、株式会社「KAWAII」の方の事業でも、知名度があったほうがもっといいことができるんじゃないかと思っています。

ーー世界選手権の開催地も決まりましたが、これからどうしますか?

世界一はそんな簡単なものじゃないですし、76キロ級なのでさらに難しい世界ですが、今の練習でもまだ足りないと自分では思っているのでまだまだ質を上げて、筋力も上げて行こうと思います。

ーーパリ五輪を目指していた時と比べて、心持ちは違うか?

違いますね。すごく新たな気持ちでいますし、新たな鏡優翔としてあの時の自分を超えようというよりも、今の自分でどう戦うか、今の自分でどう勝つかを考えられているので、すごく新鮮な気持ちです。また同じ道をという感じではないですね。


TEXT=土田夏帆、PHOTO=土田夏帆、三木万由子、鈴木真央