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第95回関東学生陸上競技対校選手権大会
5月21日(土)日産スタジアム
▼3日目
男子200m 予選
2組
7着 中村 21"44 ※準決勝進出
男子800m 予選
1組
5着 長尾 1'52"93
3組
5着 眞柄 1'52"68
4組
3着 増田 1'53"28
男子1万m競歩 決勝
1位 松永 38'16"76
2位 及川 40'03"67
7位 山下優 41'41"16
男子400m障害 予選
3組
6着 横川 53"05
男子走高跳 決勝
3位 山下義 2m19
男子4×400mリレー 予選
2組
1着 東洋大 ( 松原ー櫻井ー花岡ーウォルシュ ) 3'08"64 ※決勝進出
女子200m 予選
4組
3着 鈴木 24"85 ※準決勝進出
女子400m障害 予選
3組
7着 長畑 1'04"88
表彰台で笑顔を見せる松永と及川(左)
1走松原と2走櫻井朴(左)で流れをつくった
山下義は自己新と東洋大新の記録を出し3位表彰台へ上がった
関東インカレ(以下、関カレ)3日目はトラック種目優勝への重要な得点源である競歩部門が登場した。松永(工4=横浜)が圧倒的な強さで3連覇を達成し、及川(済3=愛知)がその後に続いて2位へと輝いた。山下優(総3=富山商)が7位に沈み表彰台独占はかなわなかったが、東洋大の競歩陣の強さを見せつけた。また、フィールド種目では山下義(法4=小樽水産)が走高跳で自己新記録に加えて東洋大記録を樹立。勢いに乗った東洋大は4×400 mリレーを予選1位で通過し最終日へと弾みをつけた。
まさに観客をも圧倒する歩きであった。1万m競歩に出場した松永はスタート直後から先頭へ出ると 500 m過ぎには後続を突き放す勢いでレースを進める。付いていける選手は誰一人としていない。最速敵なし。2位と1周差をつけてのゴールに王者の貫禄を見せた。今年8月のリオデジャネイロ五輪の日本代表が決まっている松永にとって、鉄紺のユニフォームを着て挑むレースは今大会が最後になるかもしれなかった。1年目の関カレでは4位と悔しい思いを経験し、それから3年間、東洋大のエースとして松永は競歩部門を引っ張ってきた。そしてエースたる最高の歩きで関カレ3連覇を達成。大会記録、自身の持つ関東学生記録に加えて日本学生記録も更新した。「東洋に恩返しができたと思う」と華々しい戦績を置き土産に、今後は日の丸を背負い世界へ挑戦していく。
同じく1万m競歩に出場した及川はレース終盤まで野田(明大)との2位争いになった。お互いに一歩も譲らない並走に、先に仕掛けたのは及川であった。残り2km付近で野田の前へ出ると徐々に差を広げ、引き離す。右腕に書かれた「怯まず前へ」の文字のごとく前へと攻め2位争いを制した。1日目には堀(済3=大牟田)がこの言葉を荒武(済3=小林)に書いてもらい試合に挑み1500m3位に輝いた。その時に「3年生で 30 点取ろう」と誓い合ったという。及川は表彰台へ上がることでその誓いを果たした。競歩部門が目標に掲げていた表彰台独占はかなわなかったが上位2名が東洋大から出たことで得点を稼ぎトラック優勝へと一歩近づいた。
200 mでは中村拓(ラ1=九州学院)と鈴木(食2=埼玉栄)がそれぞれ自己ベストを更新して準決勝へコマを進めた。「もう一度自己ベストを出せれば決勝にいける可能性が出てくる」と梶原監督が期待するように、準決勝と言う舞台でも自分の走りができれば決勝への道も開けてくるだろう。
3日目のトラック競技の最終種目は4× 400mリレーの予選だ。1年生二人と2年生二人の下級生で構成されたメンバーで挑み、 15 チーム中1位で予選を通過した。1、2走で流れをつくり、3走花岡(ラ1=九州学院)もバックストレートは2位と差を詰める走りだったが、ホームストレートで失速してしまう。勝負の行方はアンカー・ウォルシュ(ラ2=東野)に託された。5番目にバトンを受け取ったウォルシュは一気に3人を抜き去るとそのままスピードを落とすことなく先頭を追い抜く。前日に 400 mの決勝を走った疲れを少しも感じさせない快走であった。この結果を受けて梶原監督は「(ウォルシュ)ジュリアン頼みになってしまった」と反省点を上げるが、まだまだ若いチームで可能性に満ちている。4日目へ向け調整し、優勝を狙う。
フィールド競技では走高跳に出場した山下義が自己ベストを大幅に更新する2m 19 を跳び、さらに東洋大記録を樹立。3位で表彰台へと上がった。「素晴らしい跳躍だった。さすが4年生」と梶原監督も称賛する跳躍であったが、「嬉しさもあるが、悔しい気持ちの方が大きい」と山下義自身はこの結果に満足はしていない。「桐生(法3=洛南)とウォルシュの二人のエースが優勝して、キャプテンとして優勝するべきだと思っていた」と語る。優勝者との高さの差は3cm。優勝を目指していただけにあと一歩及ばなかった悔しさが募る。だが、キャプテンが表彰台へ上がったことはチームにとって必ず力になるはずだ。
関カレも残すところあと1日となった。東洋大は3日目でトラック種目の得点を41 点に伸ばし1位に躍り出た。しかし2位とは3点差の僅差だ。最終日にはハーフマラソンや 5000 mといった長距離部門の注目種目、 200 mの準決勝、リレーなどまだまだ得点源はある。「最後に優勝できるようにみんなで優勝するつもりで頑張っていきたい」。梶原監督の言葉通り、部門を超えて東洋大というチームで最終日へと挑む。
■コメント
・梶原監督
400m 障害は昨日の 400m と同じで風の向きが難しい中で、少し強い練習が足りなかったという部分の弱さが出てしまった。けがはないのでここからもう一度鍛え直して戦えるようにしたい。 200m は女子も自己ベストを出して、1年の中村も自分の記録よりも上を追い風参考だが出していた。うまく追い風を利用して走れたので予選を通ってくれた。1年生、2年生としてはよくやってくれたと思う。このまま勢いで上までいってくれたらいいと思う。マイルは1組目を見ても思ったほどタイムが出ていなくて、バックが向かい風がきついのかなというところで、1走、2走はそこそこ。3走の花岡がバックストレートを気持ちよく走れていたので、ホームに入ったときに伸びてきてくれると思っていたが少し伸びが足りなかった。1年生だから仕方ない部分もあるが、結局(ウォルシュ)ジュリアン頼みになってしまった。もう少し前の方でペースを上げられるように一晩でコンディションを整えて、明日は優 勝を狙っていきたい。山下義は大幅に自己ベストを更新して、集中してキャプテンらしい頼もしい跳躍をしてくれて良かった。大学記録も更新してくれて素晴らしい跳躍だった。さすが4年生。去年に引き続き表彰台に強い選手がいる中でも上がったのでよく頑張ったと思う。(明日は)200m はもう一度自己ベストを出せれば決勝にいける可能性が出てくる。とにかく自分の走りをしっかりして自己ベストを出してもらいたい。マイルは積極的に前を狙っていき、最後に優勝できるようにみんなで優勝するつもりで頑張っていきたい。
・谷川コーチ
今日は表彰台独占を狙っていたので1位2位7位になってしまったことは少し残念。松永は立派だと思う。これを弾みにして五輪で最高のパフォーマンスをしてほしいと思う。及川は練習を見ていても2位になることは予想できていた。しっかりと大きな舞台で発揮してくれたことは成長したと思う。山下優は歩形の方に不安があって早い段階に警告が出ていた。歩形を意識して少し抑えながらのウォーキングになってしまった。失格ではなく確実に点数を取れたことは良かったと思う。(明日に向けて)長距離部門としては全員入賞するつもりで頑張っていきたい。特に櫻岡(済4=那須拓陽)と口町(法4=市立川口)には期待している。4年生以外にも、来年戦えるような成果を上げてほしいと思う。経験とい う意味でも思い切ってやってほしい。
・山下義(法4=小樽水産)
嬉しさもあるが、悔しい気持ちの方が大きい。今日は優勝を狙っていて、桐生(法3=洛南)とウォルシュの二人のエースが優勝して、キャプテンとして優勝するべきだと思っていた。自己ベストも更新して2 m22 も跳べると思っていたが、高さ慣れをしていなくて跳べなかった。優勝を狙えた人間だと思っていたので、その部分で悔しさがある。(コンディションは)かなり調子が良くて日大記録会で自己ベストを更新してから2m 10 を練習で2回跳べていて、練習で跳べたのは初めてだったので調子の良さを感じていた。今までで一番狙っていた。(競技中の監督のアドバイスは)練習の時は気持ちが入ってなくてだめだったが、試合になると監督も動きが変わったと言ってくれた。最初踏切位置が近くて足が合わなかったが2 m10まで跳べた。そこから助走位置を下げることとか色々してくださって、2 m13 ではまるようになった。足を内側に入れることによって遠心力で上がれる。それを意識してうまくいった。(2 m22 のときは)2 m16 も 19 も自己ベストで多少疲れもあった。その中でもいける自信があったが、自分のイメージしている動きとは違う感覚があった。(今後は)個人選手権でも記録は狙っていくが、それよりも日本選手権で2 m20 台を跳んで入賞、表彰台が取れるといいと思う。(明日の最終日は)トラック優勝を狙っているので、ハーフマラソンと 5000 m、200 mで変わってくる。難しいと思う人もいるかもしれないが、何があるかわからない。自分はトラック優勝には貢献できないが、流れは作ってきたつもりなので頑張ってほしい。
・松永(工4=横浜)
予想以上に自分の体が動いてくれていた。3分50 秒というペースに対して恐れも無かったので学生新記録が出たのは良かった。ただ、ブロックとして表彰台独占を目標にしていたが、山下が7位ということで警告が早いうちに2枚出てからしっかり耐えることができていたので、そういった面ではこの状況でのベストだったのかなと思う。(目標設定は)大会記録が元々自分の自己ベストより遅かったので、自己ベストを目標にしていくつもりだった。練習の段階で自己ベストが出せる状態というのがある程度自分で分かっていたので 38 分半くらいを出せればいいかなと思っていた。だが、それ以上に最初が速かったというのもあり、その分後半に余裕が生まれたので3分 50 秒のペースより遅くてもある程度は大丈夫かなという認識で走っていた。(3年連続1位という結果には) 1 年生のときに4番で悔しくて、そういった経験が3年連続優勝というのにつながっていると思う。東洋のエースとして引っ張っていかなければいけないという立場になってからは、しっかり優勝を確実に取るというのができていたので、東洋にこの4年間貢献できて良かったと思う。チームとしてトラック3連覇を目標としているので、欲を言えばもう少し競歩で点を取りたかったというのはあるが、個人としてはもしかしたら今回が最後の鉄紺のユニフォームを着て歩くことになるかも知れなかったので、(優勝できたことで)東洋に恩返しができたと思う。
・及川(済3=愛知)
目標タイムは 39 分 10 秒だった。調子自体は良かったのでしっかり勝負できると思っていたが、タイムがあまり伸びなかった。タイム的には足りなかったが2位をとれて良かった。(課題は)歩型違反でレッドカードを2枚もらってしまった。4分を切るペースだとまだまだ歩型が安定しないと感じた。(右腕の文字は)同期の荒武が書いた。堀が初日で3位になったときに3年生で 30 点取ろうと話していて、みんなで腕に書いて頑張ろうと思っていた。(今後は)明後日に海外の国際陸連主催のグランプリレースでスペインに陸連の派遣で行くことになっている。海外の 20km レースに出場することになっているので、この調子のまま 20km をしっかりやっていきたい。
TEXT=吉川実里、PHOTO=吉川実里、福山知晃、畑中祥江