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野球の国際大会における各世代の日本チームの総称「侍ジャパン」。そんな侍ジャパン、とくに侍ジャパン大学代表を若者世代に広めるために活動しているのが「侍ジャパン学生アンバサダー」だ。一般応募から女子大生5人が選ばれ7月から活動を開始し、8月27日に行われる壮行試合「高校日本代表VS大学日本代表」が活動の集大成となる。アンバサダーの1人が東洋大学スポーツ新聞編集部部員という縁もあり、この夏を全力で駆け抜けている彼女たちの想いを特別に取材することができた。インタビュー後編では学生アンバサダーの視点から日本の野球について考えることなどを熱く語ってもらった。
左から美馬蒔葉さん(東洋大学2年)、志賀楓さん(大妻女子大学3年)、村山南さん(ペロポネソス大学院1年)
―東洋大学ではリオ五輪で萩野選手が金メダルを取ったとき、キャンパスでパブリックビューイングを行ったり、すぐに結果を伝える張り紙がされたり、大学が“リオ一色”になった気がしました。でも、大学が1つになってスポーツを応援するってなかなかないですよね。
村山「ただ抵抗がある人もいると思うんです。とくに野球が大好きなコアなファンはオリンピックの野球自体にいろいろな意見があるみたいで」
―たとえば?
村山「東京でオリンピックが行われるとき、神宮球場が機材置き場とかになって使えなくなって、ほかの球場とかも練習とかに使うようになってプロ野球が開催できないとか問題になっているみたいで」
―それは難しい問題ですね。野球ファンの中にもさまざまな想いがあると思います。それこそヘアアレンジやファッションの企画だって人によっては、うーん…と思うかもしれない
志賀「実際に批判はありましたね」
―音楽とかでもそうだけど、ミーハーだったりにわかファンが嫌煙されることってありますよね。でも、そういった層も取り入れていかないとさらなる人気拡大はない。現状維持だと低下しかないしね。村山さんと志賀さんは、アメリでの留学やインターンの経験があるそうですが日本と比べてどうでした?
村山「アメリカは選手が英雄みたいで。大学生でも。選手の扱いが全然違うんです」
志賀「私はマイナーリーグの球団のインターンをしていたんですけど、試合の盛り上げ方がすごくて。球場も小さいし、お客さんの入る数もそんなに多くはないんですけど、負けてもみんなが笑顔で球場から帰るし、試合を楽しむだけじゃなくて球場に来ることを楽しみにしている感じでした」
―雰囲気がいいんですか?
志賀「そうですね。あとノベルティもクオリティが高くて。アメリカンフットボールデイみたいな日には観客にフットボールを配ったり、いろいろイベントとかをやっていて」
村山「独立リーグの試合を見に行ったんですけどマネイジメントがすごかったです」
―アメリカはスポーツをエンターテイメントとして消化するのがすごくうまいですよね。もちろんスポーツの本質は“闘い”の部分が重要だけど、エンターテイメント性も立派な構成要素だと思うんです。
志賀「日本は大学野球に限らず、プロだって“お堅い”イメージがあると思うんです。球場に行ったらわかると思うんですけど、球団の関係者はみんなスーツを着てビシッとしています。でも、アメリカの球場とかに行くとスタッフもお客さんにすごくフレンドリーで。観客の生の声を聴いて活かすみたいです。そういうところは取り入れるべきだと思う」
グローバルな視点で野球を語ってくれた志賀さんと村山さん
―日本野球界全体がもっとやれることがあると?
志賀「いいところはもちろん残すべきだと思います。甲子園の雰囲気とかは日本特有です。でも発展しなきゃいけないところもあると思います」
―たとえば日本の大学野球でも、六大学野球のポスターなどはとてもセンスがあると感じます。そういった見せ方なども大事ですよね。この学生アンバサダーの活動を通して考えるようになったことはありますか
美馬「広告の出し方がすごく目に付くようになりました。帰省したときに北海道日本ハムファイターズの試合を見に行ったんです。日ハムがアウトをとったらモニター画面にアウトという文字が表示されるんですけど、そこに企業の広告が出るんです。そういう出し方もあるのかと思って。あとは企業とのコラボによる○○デーとか。レアード選手(北海道日本ハムファイターズ)というお寿司が好きな選手と回転寿司屋さんのコラボなんていうのもあったんです」
志賀・村山「めっちゃおもしろいよね」
美馬「以前はプレーだけを見ていたけど、ビジネス的な見方もできるようになりました」
―2人はどうですか
志賀「リーダーをやっているので、仕事をするうえでこれが可能とか、これが不可能だとか、スケジュールの調整とか、社会の勉強ができました。毎週の会議では、トレンドを発表する課題があって、流行に敏感になりましたね。」
村山「言葉の使い方をだいぶ考えるようになりました。SNSにはやわらかい言葉を使ったほうが広がったり通じて。あとは街とかを歩いていても看板や広告のデザインなどを写真で撮るようになりました」
志賀「変な写真ばかり増えていくよね(笑)」
―学生アンバサダーの選考の1つの基準として“将来の夢と結びついているか”というのがあったそうですが、みなさん将来は野球に関わりたいと思っていますか
志賀「スポーツに関わる仕事がしたい反面、ダンスなど趣味もやりたいから絶対土日休みがいいです(笑)でも何らかの形で野球には関わりたいかな。関わり方って色々あるし、球団職員以外にもいろんな形でアプローチできたらと思います」
村山「大学院では、スポーツと開発の分野を勉強していて“スポーツを使って発展途上国などに貢献できるか”をテーマにしています。将来はスポーツを使ってもっといい社会を作りたい」
美馬「地元の北海道が好きで野球にかかわる仕事がしたいですね。日ハムは“地域密着”を掲げていて私もそういった形で貢献したいなって。選手の魅力を伝える仕事がしたくて、今やってる取材をこれからも続けたいなっていうのもありますね」
毎週、代々木のオフィスで会議を重ねた
―ありがとうございます。それでは最後に、学生アンバサダーの活動としても集大成となる27日の試合に向けて意気込みをお願いします
村山「2カ月間ほんとに短かったけど集大成として、みんなで頑張ってきたので楽しみつつもフルスイングします」
志賀「私たちが活動するにあたって、こんなにもたくさんの人が動いてくれているんだと最近感じていて。それだけ重要なことを私たちは託されているんだと思って、新しい爪痕を残せるようにしたいですね。それと、とにかく『球場に来るのが楽しい』と思ってもらえるような企画ができているので遊びに来てほしいです」
美馬「楽しませるので来てください!」
約2時間にも及ぶ取材を通して、5人の想いや覚悟がひしひしと伝わってきました。約2カ月間、若者に野球を広げるため全力投球してきた学生アンバサダー5人の想いをぜひ球場で感じてみてください。
■美馬蒔葉(みま まきば)
東洋大学文学部2年
好きな野球チーム/埼玉西武ライオンズ
好きな守備位置/キャッチャー
「チーム全員のことを見られるから」
■志賀楓(しが かえで)※リーダー
大妻女子大学社会情報学部3年
好きな野球チーム/東北楽天ゴールデンイーグルス
好きな守備位置/ピッチャー
「一番個性が出るから」
■村山南(むらやま みなみ)
ペロポネソス大学院オリンピックスタディ1年
好きな野球チーム/横浜DeNAベイスターズ
好きな守備位置/ショート
「オールラウンダーでかっこいい」
ほかに鈴木悠里さん(立教大学1年)、竹谷朋子さん(横浜国立大学1年)の計5人が活動中
[試合予定]
侍ジャパン壮行試合 高校日本代表―大学日本代表
http://www.japan-baseball.jp/jp/games/u18univ2016/
8月27日(土) QVCマリンフィールドにて 18:00試合開始
※試合観戦はチケットが必要です。
※学生アンバサダー企画イベントは15:00より開始、チケットなしでもお楽しみいただけます。
BSフジにて同日18:00より生中継予定。
取材日 8月23日
聞き手 吉本一生、藤井圭