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引退の日を迎えた二木(左)と靏田
10月20日から4日間に渡り開催された全日本学生ライフル射撃選手権大会(通称、インカレ)。1年のうちで最も規模が大きく、学生最高峰の大会だ。毎年この大会を最後に4年生は現役を引退する。今大会も二人の4年生が東洋大学射撃部に別れを告げた。
最高学年という1年間の大役を務めた彼らを、小山コーチは「優秀な4年生。素晴らしい代だった」と褒めちぎった。主将でエースの実力派二木と、副将としてチームの運営に尽力した頭脳派靏田(法4=大宰府)の4年間を振り返る。
第1弾 二木俊輔
結果で示す“実力派”キャプテン
今季、チームのリーダーとしてけん引したのは、主将でエースの二木。最後のインカレでは出場した3種目ともに予選落ちと悔しい結果に終わったが、今年は春から「インカレ優勝」の言葉を口にし続けた。それだけ自信にあふれていた。
転機は3年生のとき。シーズン初戦となる関東学生春季大会の50mライフル三姿勢120発で自身初となるファイナルに進出。初の舞台に「独特の雰囲気に飲まれてしまった」と話したが、10月のインカレでは8位入賞を果たした。実は、このときの予選は自己ベストとなる1140点を出し全体2位で通過。自分に優勝を狙える実力があるのを知ると、意識が変わった。練習にも前向きに取り組むようになり、オフシーズンでも銃の手入れを怠らなかった。
迎えたラストシーズンは出だしから好調。春季大会では三姿勢120発に加え、伏射60発の2種目で3位入賞を果たす。続く秋季大会でも同じようにダブル入賞を飾ると、3年時から4年時にかけて出場した全大会でファイナルに進出した。「3年からの各大会全てにいい記憶が残っている。自分の中ではとても宝物」と今ではかけがえのない思い出となった。5大会連続、計8度の入賞を誇る抜群の安定感は、彼が絶対的エースであったことを証明する大きな功績といえるだろう。
射撃がくれたライバルの存在
そして4年間で培ったものは射撃の実力だけではない。強さを求めていく過程で巡り合ったのは、同じ志を持ったライバルたちの存在だ。大会の度に会っては意見を交換し、ときには一緒に練習するなどお互いを高め合ってきた。
今大会の最終日、二木が予選落ちした三姿勢120発で優勝を決めたのは、高校時代からの仲だという日本大学の小林。高校、大学の7年間苦楽を渡り合ってきたライバルの勇姿を見て「一緒に頑張ってきたので、優勝してもらって嬉しかった。最終的にはいいインカレの終わり方ができた」と自分のことように喜んだ。
主将としてエースとして、チームメイトにアドバイスを与えるだけでなく、少しでも交流があれば他大学であろうと声援を送る。そんな背中を見ると、小山コーチが「素敵なキャプテン」と称するのも納得だ。
そうはいっても決して口数は多い方ではない。寡黙でありながら、人一倍努力を積み、心の内から仲間を思いやる。これが今季の東洋大射撃部主将を務めた「二木俊輔」なのだ。
◇二木俊輔(ふたぎ・しゅんすけ)
法学部4年。1994年8月31日生まれ、石川県立金沢辰巳丘高校出身。中学時代はサッカー部に所属していたが、子どもの頃から屋台の射的が得意だった。それを見抜いた母親が、進学先の高校に射撃部があったことを機に入部を提案。その後、インターハイ、国体、全日本ジュニアなど数々の全国大会を経験。現在は石川県の強化指定選手に選ばれており、卒業後も競技を継続する。趣味は射撃と音楽鑑賞。好物は「実家に帰ったときに食べる母の肉じゃが」。178㎝、60㎏。O型。
TEXT/PHOTO=伊藤空夢