記事
第86回全日本ボクシング選手権大会
11月17日(木)〜20日(日) 松前公園体育館
ライバルを破り、大きくガッツポーズ
チャンピオン相手に果敢に攻めた
※掲載が遅くなり、申し訳ございません。
全日本ボクシング選手権大会(以下、全日)でフライ級の馬場(文3=王寺工)は自身最高位となる準優勝に輝いた。準決勝では国際大会に出場経験のある村田(日大)を下し、初の全国大会決勝の舞台へと駒を進めた。下馬評では、「全日チャンピオンの田中(中京高校職員)と村田が決勝に残るだろう」と言われていたフライ級。それを見事に覆した。
リーグ戦終了とともに、新キャプテンに就任。「あまり引っ張るのは得意じゃない」と語る彼は、個人戦で¨東洋大のキャプテンとして結果を残す¨ことにこだわっていた。昨年主将を務めた秋山(営4=淀川工科)も全日で準優勝を果たし、実力でチームを引っ張ってきたからだ。キャプテンになり最初の試合となった国民体育大会。昨年は同大会で3位に輝いたため、それ以上を狙っていた。しかし結果はベスト8に散った。「キャプテンとして(全日は)負けられない」。穏やかな笑顔の裏に静かな闘志が燃えていた。
今回の全日はシードのため馬場は2回戦からの出場となった。苦手とするサウスポー相手に苦戦を強いられるも、3-0で判定勝ちを収め準決勝へ進む。相手は「勝手にライバルだと思ってる」という村田。村田はユースオリンピック日本代表に選出され、リーグ戦3連覇を達成した日大のフライ級レギュラーだ。高校時代から数回の対戦経験があるものの、勝てたのは一度だけ。「勝てるかな」と不安が頭をよぎったが、応援席の一番前にはご両親の姿があった。実は誰よりも村田との再戦を待ち望んでいたのは、本人ではなく父・由浩さん。「(馬場)龍成は絶対勝つわ。もう(村田に)負けへんよ」と馬場の勝利を心から信じ、願っていた。そんな思いを一身に受け、グローブが重ねられた。出だしから村田の攻撃を読みパンチを空転させ、空いた胸元に連打。焦った相手はがむしゃらに仕掛けてくるが、冷静にかわし続け得意のフックを頬にヒットさせる。最後は渾身の右ストレートを顎に食らわせた。判定のアナウンスが馬場の勝利を告げると、両腕を高く上げグッとこぶしを握り、嬉しそうな表情で大きくガッツポーズを見せた。まさかの番狂わせに会場からはどよめきと共に大きな歓声が上がった。母・幸美さんも「判定のときにガッツポーズしてる龍成は今までで初めて見ました。よほど嬉しかったんやと思います」と息子の行動に驚きながらも、笑顔で決勝進出を祝福した。
迎えた決勝。相手は昨年全日フライ級の王者である田中だ。練習ではスパーリングをした経験はあるものの、試合での対戦経験はゼロ。「公式戦で対戦してみたい」。馬場にとって田中は憧れの選手の一人でもあった。初の決勝で憧れの相手との共演がかなった。「パンチ力があるのは知っていたけどやはり怖かった」とパンチを警戒し手数が伸びない。しかしここで終わる馬場ではない。相手の攻撃を勘で読み切り、すかさずボディにストレート。カウンターを打たれる前に素早く距離を取り、動きを封じ込めた。「持っているものはすべて出し切れた」と本人も納得の内容だったが、判定は0-3で田中の勝利。王座を奪うことはできなかった。「自分の持っている力を100%出し切ってくれた」と三浦監督は馬場を称賛した。だが、本人は「チャンピオン以外はみんな同じ」と今回の結果に満足していない。
個人戦での経験は全てリーグ戦に生きると考えている馬場。彼が望むのはリーグ優勝のみだ。歴代のキャプテンが夢見た頂を、同じように目指している。だからこそ「(木村)蓮太朗(営1=飛龍)が優勝したとかベスト4に何人残ったからといって、それが全てリーグ戦に現れるわけではない」と厳しく戒めた。小柄で穏やかな主将が、流星のごとく東洋大を初のリーグ戦制覇へ導く。
■コメント
・馬場(文3=王寺工)
相手はスパーリングをやった経験があり、パンチ力があるというのは分かっていた。それでも怖かった。すごくパンチ力があって、それを警戒しすぎて攻めることができなかった。1ラウンド目に様子を見すぎて手数が少なくなってしまった。あまり自分から好戦的にいけなかったのが反省点。パンチはあまりもらわなかったのが良かった。見切れたというよりは、勘で避けることができた決勝はチャンピオンなので、そこまでプレッシャーを感じず試合をすることができた。どちらかというとワクワクした。持てるものは全部出した。昨年は3位だったので、絶対落としたくないと思っていたのでそこは良かった。嬉しいよりかは、安心した。キャプテンとして負けられないし。(木村)蓮太朗の試合はめちゃくちゃ良かった。気持ちが前面に出ていて、良い後輩を持ったなと思います。リーグ戦に向けて良い流れを持っていくことができた。でも日大はもっと多くの選手が決勝に残っているので安心はできない。応援もしっかり聞こえて、嬉しかった。両親は毎大会どんなに遠くても応援に来てくれるので感謝している。(来年のリーグ戦に向けて)良い流れできているとは思う。でも蓮太朗が優勝したからとか、他の選手がベスト4に入ったからといって、その結果が全てリーグ戦に現れるわけでは無いので、気を抜かずにやっていきたい。優勝あるのみ。
TEXT=髙橋雪乃 PHOTO=髙橋雪乃、中村緋那子