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第41回全日本競歩能美大会
兼 Asian 20km Race Walking Championships inNOMI 2017
兼 第16回世界陸上競技選手権大会(2017/ロンドン)男子20km・女子20km競歩代表選手選考競技会
併催 第11回日本学生20km競歩選手権大会
兼 第29回ユニバーシアード競技大会(2017/台北)日本代表選手選考競技会
3月19日(日) 日本陸上競技連盟公認能美市営20kmコース(往復2.0km)
日本学生選手権 男子20km競歩
1位 松永 1:19'40
3位 及川 1:21'08
4位 山下 1:21'58
7位 河岸 1:24'43
DNS 石川
東洋大でのラストレースを有終の美で飾った松永
終盤の粘り強い歩きで3位に入賞した及川
日本学生選手権では4名とも表彰台へ上がる好成績を挙げた
今年8月に開催される世界選手権の選考レースである第41回全日本競歩能美大会で松永(工4=横浜)が圧巻の歩きで優勝。見事世界選手権への日本代表の座を勝ち取った。また、及川(済3=愛知)は併催された日本学生選手権で3位に入り、ユニバーシアードの出場権を獲得した。
「自分らしいレースを最後してこよう」。松永は持ち味の積極的に攻めるレースを繰り広げた。スタート直後から勢いよく飛び出し、オーバーペースかと思われるほどのスピードで1kmを通過。序盤で自身のレースパターンに持ち込んだ松永は、山西(京大)と並んで先頭を歩くも5kmに差し掛かるころには単独トップに。そのまま勢いは衰えず最後まで他の選手を寄せ付けることはなく、堂々の1位でゴールテープを切った。
松永は先月の日本選手権はけがで欠場し、その後も準備は十分にできてはいなかった。そんな状況の中で優勝し世界選手権への切符を手にするに至ったのは、一つには昨年のリオデジャネイロ五輪での経験が関係する。「あの舞台でメダル争いをするという思いが世界選手権に彼を連れていったのではないか」と酒井監督は語る。そしてもう一つには今回が東洋大としてのラストレースでもあったからだ。自身が誇りに思う鉄紺のユニフォームで負けるわけにはいかないというプライドが彼を優勝へ導いたのだ。
最後のレースを終え、「本当にいい環境の中でここまでやれた。本当に感謝しかない」と語った松永。今後は実業団に進み、世界一を目指して挑戦していく。
松永の背中を見た3年生以下も奮闘した。ユニバーシアードの代表権をかけてレースに挑んだ及川は9kmを過ぎたあたりで集団から抜け出すが、前のペースに付いていけず徐々に引き離されてしまう。しかし、終盤に3位まで追い上げ無事にユニバーシアードの出場権を獲得した。だが、2位とは1分近く差を付けられ力不足を痛感した。この悔しさはユニバーシアードの舞台で晴らしたい。
今大会、出場した4名全員が表彰台へ上がり、エースの松永が抜けても強者揃いの東洋大ということを知らしめた。「世界を意識したものをやっていきたい」とする酒井監督の指導の下、まだまだ成長する競歩部門から今年も目が離せない。
■コメント
・酒井監督
今回は松永と他の学生で世界選手権の選考を狙うレース、ユニバーシアードの代表を狙うレース、初めて20kmを経験するレースとそれぞれ目的が違った。それをまず明確にした上で出した。(レース前にどんな言葉掛けを)やはり自分の目標とラップなどを冷静に見れるように、視野をしっかり広くしていこうと。みんな同じラップで入るのはおかしい。結果的にこういうラップだったではなく、しっかりレースを見通してやっていこうと。松永に関しては前半落ち着いて入ろうと。最初の1kmは速かったが、自分のレースパターンに持っていったので冷静さは持てていたのかなと思う。(レースの評価は)松永は今回準備不足、故障明けだったし、卒論も理工学部は大変だからその中で集中できたということと、メンタルの面でオリンピックで7位がゴールではなくて、あの舞台でメダル争いをするという思いが世界選手権に彼を連れていったのではないかと思う。(世界陸上ではどんなレースを期待しているか)やはりメダル争い。ラスト5km世界の選手と競えるレース。(及川選手はユニバーシアード出場が掛かったレースだったが)学生がこのレース強くて、(ユニバーシアードには)松永などの4年生は出られないから、3年生、明大の野田、京大の山西、及川は一般に入っても上位だったので、最低でも学生で3番。今回は学生で松永除けば2番手。十分アピールできたかなと思う。(全選手のレースを見て)神戸に比べれば内容が合ったレースをできた選手が多かったなと思う。河岸はもう少しだが、新入生の池田(浜松日体)、河野(御殿場南)というのが二人いるが、池田は一般合わせても7位なので、1時間22分台を出し立派だった。(今年の競歩の意気込みは)西塔(愛知製鋼)がロンドン、松永がリオと2大会連続でオリンピックに出場しており東京はそういった卒業生もライバルとなるのでそんな簡単なものではない。だが、東洋の特に競歩ブロックに関しては他のブロックよりもさらに世界を意識したものをやっていきたいと思う。
・松永(工4=横浜)
(世界陸上出場が決まった気持ちは)日本選手権を欠場していたので今回優勝するしか自分には道がなかったので東洋大としてもラストレースで学生界のトップを背負っていたのでそういった意味では強い選手ばかりだったが勝てて良かったとほっとしている。(最初から攻めるレースだったが)非常に周りからは「慎重にいけ」という指示があったが、やっぱり最後だし自分の持ち味である積極性というのをしっかり自分で分かっていたので、そこは周りの意見は無視して自分らしいレースを最後してこようと。それで負けたらしょうがないと思っていた。飛ばしすぎたが最後まで粘れたのでよかった。(日本選手権を欠場することとなったけがの方は)左膝の炎症と足首の捻挫はまだ完治はしていなかったが、足自体はもってくれてなんとか歩けたので良かった。足裏の火傷の方が痛くてこっちのけがの方は気にならなかった。(東洋大として歩くのは最後だったが)やっぱり東洋大としてレースに出るというのは学生も含めて負けてはいけないなと。2番以下は負けだと思っていたので優勝だけを目指した。鉄紺のユニフォームは誇りだと思っているので負けないように、最後後輩たちがしっかり自分の背中を見て何か残していければと思っていた。そういった意味では今回3年生以下も頑張ってくれた。新入生も含めて頼もしい存在が増えたので来年以降も東洋大OBとして楽しみにしたいと思っている。(ゴール間際にユニフォームに触れる場面もあったが)ラストレースということもあったし、これが競歩王国だとそういった気持ちもあった。(最後のレースを終えて4年間を振り返ってみて)入学式の後の懇親会でご父兄の皆様の前で自分は入学して世界大会でメダルを取ると宣言したのが本当につい最近のことのよう。1年、2年苦しい思いもしたが、苦しさの先に楽しさや嬉しさがあり、本当にいい仲間たちに恵まれて4年間過ごすことができた。監督、コーチ、監督の奥さんだったり本当に支えてくれる人が東洋大は多くて本当にいい環境の中でここまでやれた。本当に感謝しかない。(実業団に進む意気込みは)自分の中で将来的にはやっぱり世界で最強の競歩選手になる目標を立てているので、東京オリンピックも含めて世界大会でしっかり1戦1戦メダルを意識して東洋大出身に恥じないようなレースをこれからもしていきたい。
・及川(済3=愛知)
(レースを振り返って)今の状態の100%は出せたかなと思う。(先月の日本選手権からの調整は)この大会に合わせて2月終わってからもやってきたが、合宿が入ったり色々あった中でも練習はしっかりできていた。だが、動きの面で試行錯誤していく中で上手く噛み合わないところがあったりレースに動きを修正しながらの調整になったので思うような1カ月は過ごせなかった。(ユニバーシアードの選考がかかっていたが)今回ユニバーシアードの代表を取りにいくつもりでレース展開していったが、明大の野田に1分くらいの差を付けられてしまった。本来なら野田に勝つレースをイメージしていたが、結果的に勝つことができずに力不足を感じた。(レースプランは)先頭がどうなるか分からなかったが学生の順位を意識して、ペースも4分前後になるとは思っていてその通りにレースも進んだが、それに付いていけなかったのは力不足だったからだと思う。(今年最終学年を向かえるが)松永さんが卒業されるということで大きい穴は空くが、その穴を自分が埋めるという気持ちで学生のタイトルは全て取っていきたいと思っている。(今回東洋大生として松永選手と歩くのは最後だったが)レース中も頼もしいなと感じていて、色々お世話にもなり、改めてすごい偉大な先輩だなと思った。最後に一緒に歩けて良かった。
・山下(総3=富山商)
(レースプランは)最初1km3分41秒で前半入って、後半の方で上がって最終的に1時間21分台でゴールするというのが今回の目標だった。前半実際は41分20秒くらいで少し遅くなってしまって、それでも21分台はきちんと出しておきたかったのでしっかり後半上げてギリギリ21分58秒でまとめられたのは良かった。しかし、このタイムでは全然戦っていけないと思うし、ユニバーシアードの選考にも選ばれなかったので、悔しさが残るレースになった。今後競技を続けたいと思っているので、しっかりと練習して次の大会は目先の目標で言うと4月の記録会とかになるが、まずしっかりそこに合わせてやっていくことと、最終的な目標は東京オリンピックなので、それに向けてしっかり頑張りたい。(年初めに日本記録を出したが、冬季練習での取り組みは)山形で行われた高畠競歩で失格してしまって、そこから周りの人のいろんな意見を聞きながらやってきたのが成果として出たのかなとは思う。しかし、それから少しけがなどがあり、結局練習も積めずフォームもガタガタのまま出てしまって日本選手権で失格してしまったが、もう一度地力をつけようということで基本に戻ってしっかりと練習することができたので、今回のタイムでゴールというのは評価できる。ダメダメではなくて、今回もしっかり収穫のレースだと思って次回につなげていきたい。(松永選手と挑んだレースだったが)最後の東洋のユニフォームということで、ずっと憧れで本当にお世話になってきた先輩なので最後の試合くらい松永さんと一緒に表彰台に上りたいというのと、恩返しという意味でもしっかり結果を残して安心して東洋を出てってもらおうと思っていた。このような結果では安心できないと思うが、それでも今は自分なりに最大限送り出すことはできたのかなと思う。(最終学年への意気込みを)1番上の学年となるので、また頼もしい後輩も入ってくるので、彼らを伸ばせるようにレースだけではなく私生活でもしっかりサポートと指導をしていきたい。
TEXT=吉川実里 PHOTO=小野由佳莉、吉川実里