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平成29年度東都大学野球1部春季リーグ戦
優勝 東洋大学
聖地・神宮球場で12季ぶりの優勝に笑顔を見せる東洋大学硬式野球部
優勝旗が、東都大学野球連盟役員から主将・飯田(営4=常総学院)に手渡された瞬間、ようやく"東洋大学優勝"の実感がわいた。神宮球場に響く国歌に涙をこらえながら、授与式までの間を思い返す。
第1試合の亜大対国学大3回戦で、亜大が勝利すると勝率の差で東洋大学の優勝が決まる。先日の寮取材の際に、宝楽(営4=PL学園)が口にした「国学大が勝って、自力優勝しかないプレッシャーの中で日大に2連勝したい」。この言葉に感銘を受けたこと、今でも鮮明に覚えている。昨春秋ともにあと一歩及ばなかった"優勝"に、今春は最も近い存在であり、正直「優勝できるならどんな形でもいいや」とスポーツ東洋の記者としてタブーな感情を抱いていた。それだけに、東洋大学硬式野球部の選手、そして応援してきたOBの方々、ファンの皆様へのお詫びで胸が苦しくなった。「亜大の勝ち負け関係なく、自分たちは東洋大を信じ取材するだけ」と気持ちを改め、迎えた決戦日。緊張感漂う神宮球場で、硬式野球班はただひたすら見守っていた。
延長の末、亜大が3ランで勝ち越し、裏の国学大を抑えれば試合終了。「勝ったらラッキー、2連勝で自力優勝」と深呼吸をし、心を落ち着かせる。淡々と二死まで打ち取り、最後の打者が打席に向かう。試合開始してから1イニングが普段より長く感じていたが、その時だけはあっという間だった。国学大選手のバットが空を切ると、驚きと戸惑いで開いた口が塞がらなかった。「本当に優勝したんだ」と確かめるように、部員を何度も見て頷くの繰り返し。そして、ここまで引っ張ってくれた美馬チーフの手を握る。「ありがとう」。そう告げて、取材ムードを取り戻し、いつも通りカメラ席に向かった。
試合後、観客席から多彩な紙テープが流れ、歓声ともに優勝の喜びを分かち合った。特に印象的だったことは、ロッカー室から飛び跳ねて出てきた西川(営4=浦和学院)。他の選手も、関係者から「おめでとう」の祝福に笑顔で応え、バスは神宮球場を後にした。
優勝から一夜明け、勝ち点をかけた2回戦、竹原(法3=二松学舎大附)、古田(法4=天理)の2試合連続本塁打で突き放すも9回無死満塁のピンチを迎える。片山翔(法4=大社)からボールを譲り受けたエース・飯田が圧巻の投球で事なきを得た。試合終了後、お待ちかねの胴上げ。選手の待つところへ高橋監督が歩み寄り、「胴上げの予習だよ」と言うと、そのまま3度宙を舞った。そして、授与式に移り、"優勝"というこの上ない結果を噛みしめ、春季リーグ戦の幕を閉じた。
次なる舞台は、全日本大学野球選手権。トーナメント方式のため、日本一には勝ち進まなければならない厳しい戦いだ。だが、福原理事長が仰った「レベルの高いリーグ」で優勝した東洋大に敵知らず。「全日本でも優勝したい」。東都の王者を見せつけ、もう一度、"本番"の胴上げで監督を男にする。
◼︎コメント
・星川(済3=東京女子学園)
(優勝した瞬間は)びっくりして、時が止まった感じだった。本当に優勝したんだ、と半分信じられなかった。でも、部員を見て、これは現実なんだと思った。やっぱり、優勝はとても嬉しい。今こうやって取材できることがすごいと思う。(チーフには)とりあえず、ありがとう、と感謝の言葉を伝えた。同期、後輩をまとめてくれたチーフには感謝しきれない。(リーグ戦を振り返って)まだ東洋大学の戦いは終わりではないので、気を抜かせられない。全日本終わって、ゆっくりしてからこの2ヶ月を振り返りたい。(全日本に向けて)初めての取材ということで、手探り状態だが、みんなで力を合わせて頑張りたい。カメラとスコアブックを片手に、日本一となった東洋大学硬式野球部を取材したい。
TEXT/PHOTO=星川莉那