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平成29年度東都大学野球秋季1部リーグ戦
10月12日(木)神宮球場
○東洋大9-0国学大
3点本塁打を放った古田
バックスクリーンにある時計は12時ちょうどを指していた。「縁起がいいな」と打席に入ったのは古田(法4=天理)。目の前で1死二、三塁の好機に三飛に倒れた竹原(法3=二松学舎大付)が「後は任せた、カバーしてほしい」と古田に託した。その思いを胸に2球目を振り抜くと、打球は左翼席へ吸い込まれていき、3点本塁打に。しかし、ダイヤモンドを周り、仲間のもとに戻った古田に笑顔はなかった。「初戦で5点差を追いつかれた。これで点差は開いたが油断できない。ここからもう一回」と喝を入れ直す。
昨季はめざましい活躍を見せ、リーグ優勝に貢献。ベストナインも受賞した古田だったが、今季は夏に負ったけがの影響で出遅れてしまう。開幕前に完治せず、今季開幕戦の日大戦ではベンチに古田の姿はなかった。けがが癒え、再びスタメンに名前を連ねるも、なかなか結果を出すことはできず。「何かを変えよう」と着手したのは、生活の改善だった。当たり前のことを当たり前にやること。寮のトイレを磨き、ゴミが落ちていたら率先して拾った。「野球は練習したから結果が出るわけじゃない。神様は生活から見ていると思う」。そして結果は現れる。スタメンを外れた前日には九回に代打で出場。「狙い球を絞って、思い切って」と放った打球は左安打となり、同点の走者となる。この安打によって、自分自身に思い切りのよさでスタメンを勝ち取っていたことを思い出させ、「原点に戻ることができた」と自信をつけた。この日も第一打席は安打で出塁。きっかけをつかんだパワーヒッターの調子は上がっていた。
今日の古田の活躍を支えたのはこれだけではなかった。前の打席でスライディングを決め、ズボンが破けてしまう。いつものサイズがなく、1つ大きいものをはくことに。「太ももに余裕が生まれてスッキリした」とおどけて見せた。
「監督さんのことは、日本一の監督だと思っているので、形としても日本一になっていただきたい」と古田の思いは強い。リーグ優勝、そしてその先の神宮大会へ。古田にとってのラストシーズン、まだまだ快音を響かせ続ける。
■コメント
・古田(法4=天理)
(本塁打を打った)打席に入る前に竹原(法3=二松学舎大附)が凡退して「後は任せた。カバーしてほしい」という思いが伝わった。打ったのはスライダー。入らないと思った。バックスクリーンの時計が12時を指していて、縁起がいいなと思って打席に入った。センター前ヒットの時にスライディングでズボンが破けて、1つ大きいサイズをはいて、太ももに余裕ができて、リラックスできた。監督さんにはお世話になっている。自分的に日本一の監督だと思っているので、形として日本一になっていただきたい。一昨日まで当てに行くバッティングだった。昨日スタメンを外れて、九回で代打出場して、狙い球を絞って思い切って打つことができ、そこで変わった。思い切りのよさでスタメン出場をしていたことを監督さんに思い出させていただいた。原点に戻ることができた。野手でカバーしなければならないのに打てなくて、接戦でも勝っているので、チームがリーグの中で成長しているのを感じる。(それは)粘り強さ。今までずっとダメで生活から変えて結果が出た。当たり前のことを当たり前にすること。それをもう一回意識した。寮の中でトイレを磨いたり、落ちているゴミを拾うなど。野球は練習したからそのまま結果が出るわけじゃない。いい当たりでも、野手の正面だったらアウトを取られてしまう。生活から神様は見てると思う。怪我で開幕戦は出遅れたが、それをどう生かすかは自分次第だと思った。あとはぶつかるだけ。真っ向勝負。(三回で監督に言われていたのは)走るのが遅く、足が動いていないと言われた。これと、ズボンを変えたことによって気持ちが入れ替わった。(本塁打でホームに戻ってきた時は)初戦で5点差から同点にされてしまったので、自分のホームランで点差は開いたが、油断できない、緩むより、ここからもう一回という気持ちだった。(球場で一番目立ちたいと言っていたが)まだまだ。(次の亜大戦は)負けたら引退、勝ったら全日本になる。結果はどうであれ、下にいい形でつなげるように、今持っている力をすべて出すだけ。
TEXT/PHOTO=伊藤梨妃