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今季から主将を務めるGK伊藤
「決まった時は素直にプレッシャーがあった」。今シーズンの主将を務める伊藤俊祐(国4=柏U-18)はリーグ開幕前の4月にその胸中を明かした。1部昇格1年目にして躍進を続ける東洋大。リーグ開幕からの7カ月間、伊藤は主将としてどのようにチームと向き合ってきたのか。
リーグ戦が開幕した4月。1節の相手は専大だった。昨年まで所属していた2部とは異なり、試合のレベルが一気に上がった1部リーグ。初めの数試合は思うような戦いができない中で、伊藤のGKとしての活躍は大きな力となった。前期を終えて失点数は15と、試合を重ねる度に伊藤は欠かすことのできない存在になっている。そんな伊藤の活躍を柏U-18時代から見てきた松本(国2=柏U-18)は「毎試合決定的なピンチで止めている」とここぞの勝負強さに感心し、そのプレーを手本としている。1年時から公式戦に関わり続けてきたことで、伊藤は誰よりも実戦の中で成長を遂げてきた。その結果が今シーズンのパフォーマンスに表れているのがよく分かる。
そんな伊藤にGKに必要なものは何か、という質問をぶつけてみた。すると伊藤は「目立ちすぎないこと」と短く答え、少し考えてこう続けた。「シュートを止めることが第一だけど、陰でどれだけチームを救えるか」。顔に真剣な表情を浮かべながら、GKのあり方を語ってくれた。15節の駒大戦では味方が取ってくれた1点を守りきり、ウノゼロで勝利。試合後には「気持ちいい」と普段はシャイな男が白い歯を見せながら素直な感想を口にした。ゴールを決めた得点者ばかりに目がいきがちなサッカーというスポーツだが、伊藤のような陰で勝利に貢献する選手もいるということを忘れてはいけない。サッカーはGKを含めて11人のスポーツ、GKもそのうちの1人なのだ。
そして今シーズンからは主将という立場でもチームを支えている伊藤。立候補という形ではなかったものの、今となっては誰もが認めるキャプテンになった。主将になってからの伊藤を見て古川監督も「主導でやる形が増えてそれが自身のパフォーマンスにも反映されている」とその実績を評価している。伊藤自身も「全体を見る力や引っ張る力がついた」と主将を務めることでチーム全体を見る視野が広がったという。また、後輩からは『イトゥー』の愛称でいじられるといったこともあり、その姿からは親しみやすさがにじみ出ているのかもしれない。それもまた伊藤の持ち味の1つと言えるだろう。
来年の選手も1部の舞台で戦わせてやりたい――。迫る引退に先駆け、後期リーグが始まる前に1つの目標を立てた。20節の結果をうけて1部への残留こそ決まったものの、現在チームはリーグ戦5連敗と逆境に立たされている。また、ここ数試合の結果を見ると自分たちで勝ち取った残留とは言いがたい。残りの2試合で伊藤はチームに何を残せるか、そして自身の目標の1つであるインカレへたどりつくことはできるのか。ピッチの最後方からすべてを見渡す伊藤は、あくまでも”目立ち過ぎずに”チームのために全力を尽くす。
4年間の集大成を見せる
■伊藤俊祐(いとう・しゅんすけ)
179㌢/72㌔
H7・9・26
出身/柏U-18
血液型/A型
ポジション/GK
好きなサッカー選手/ケイロル・ナバス
好きなテレビ番組/アメトーーク!
第5回は来週、11月17日(金)に掲載します。
お楽しみに!
TEXT/PHOTO=美浪健五