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12月15日に、スポーツ東洋第81号が発行しました。特別企画として、中村礼子さんへのインタビューが掲載されています。WEBでは完全版をお届けします!
現在、非常勤講師として東洋大学で水泳の授業を教えている中村礼子さん。かつては、アテネ五輪、北京五輪で200m背泳ぎ2大会連続銅メダルを獲得した選手です。北京五輪でマークした日本記録(2分7秒13)は、未だに破られていない大記録。そんな中村先生に、今夏の世界水泳200m個人メドレーで銀メダルを獲得した大橋悠依選手(国4=草津東)についてお聞きしました。大橋選手が得意とする背泳ぎの解説、大学時代の競技との向き合い方など、内容満載なインタビューです、ぜひご一読ください。(取材日・12月7日 聞き手・菊池美玖)
――大橋選手の背泳ぎを見ていかがですか?
体の半分以上が水面に出て浮いているということは、キックがしっかり打てているということ。ひと掻きのペースはゆっくりだけどパワーがあるなと思います。日本女子背泳ぎが今低迷しているけれど、個人メドレーも(大橋選手のおかげで)一気に記録がバーンっと上がった。背泳ぎに関しては今までの私の日本記録とかも考えずに、思いっきりレースをしてもらいたいなと。世界水泳の時もこの記録を狙おうとかではなくて、手のかきやキックなど自分の意識したところを気をつけながら泳いだというのを聞いたので、背泳ぎも記録を意識するというよりかは、自分の泳ぎに集中できればタイムも伸びるのではないかなと思います。200m個人メドレーは平泳ぎも入ってる中で2分7秒なので、200m背泳ぎはもっと速く泳げると思います。
中村先生も期待する、大橋の背泳ぎ
――カティンカ・ホッスー選手(ハンガリー)や、ミレイア・ベルモンテ選手(スペイン)は、多種目でメダルを取っていて、そんな簡単に個人メドレーだけでメダルを取ってはいけないと、前に大橋選手が話していたのですが…。
すごい!多種目みんな戦っているから、自分も同じ土俵に立ってメダルを取りたいってことですね。私は背泳ぎ1種目だけで戦っていて、それだけでも大変だったのに、多種目に挑戦してメダルを狙うのは精神的な強さとタフさがないといけないので本当にすごいなと思います。ただ今の時代、多種目に挑戦してタフな選手が多く、当たり前になってきているので大橋選手も今、いろんなチャレンジをして経験をしながら強くなっているのだと思います。「この選手は、みんな多種目やってるから…」と、弱気になるのではなく、そこに挑もうとする気持ちがあることが、精神的な強さの現れだと思う。気負わずにいってほしいです。
――中村先生も大学4年生の時にアテネ五輪を経験してどうでしたか?
私は、大学4年生の時に初めてオリンピックに出てメダルを取れたので、初めてメダルを取ることで学んだこともありました。世界はまだまだ強い人がいる!と思ったり。実は、アテネ五輪で辞めようとも思っていて。そしたら3番で、まだ上には速い人がいた。じゃあもっと頑張ろうって思って次も目指しました。どんどん世界の舞台を踏んで、まだまだ戦いたいっていう気持ちが強くなった。大橋選手も同じような気持ちなのではないかなと思います。
――実際に大橋選手とお話ししたことはありますか?
ちょっとだけ、貧血だった頃に話した時があります。あんまりまだ結果が出てない時でした。その時は、今も細いけど、本当に細くて。どちらかというと大人しそうな感じの選手でしたね。でも、ここ最近会ったら、ひとこと話す時に、声のトーンも高く、声自体も大きくなっていて。やっぱり自信がついたのかなと思います。普段の大橋選手の姿から自信があふれ出ているというか、そういうのをすごく感じます。練習をしっかりできたからこそ、結果にもつながっていると思う。貧血っていう原因が分かって本当に良かった。調子が良くなかった時期に練習を適当にやっていたら結果も出なかっただろうし。今は、平井先生とのやりとりの姿を見ていても、自分の意見をはっきり言っているなという印象です。言われてやるのではなくて、自分でちゃんと考えていますよね。
――中村先生が平井先生に教わり始めたのはいつからですか?
大学3年生からなので(大学生からだから)大橋選手と同じぐらいになりますね。
――同じ平井先生から学ぶ者としてアドバイスとかはあったりしますか??
今のままで!平井先生も、平井先生の考えでいろいろアドバイスをくれます。それを全部受けるのもいいのだけど、その中に自分の意見もちゃんと入れないと思うように結果にもつながらないと思う。言われるままではなくて、自分から平井先生に言えるようにね。私が選手だった時に、平井先生は「選手は俺を利用するんだぐらいの気持ちでいいんだ」って言ってたの。“利用する″って極端に平井先生は表現したんだと思うけれど、それぐらい選手からも平井先生にアプローチできるようになったほうがいいのかなと。もしかしたら大橋選手はもうできているのかもしれないけど、どんどん自分の意見を言って、平井先生の意見と合わせながら頑張ってほしいです。
――中村先生が大学時代に頑張っていたことはありますか?
今は高校生で速い選手もいるけれど、社会人になってから成績を出す選手も多くなってきているので”限界を決めない”ってことかな。年齢を重ねていくと、伸びなくなるんじゃないかとか私も考えて、注意されたこともありました。自分の考えとして限界を作らずに、やっぱりチャレンジしていくことが、競技をやっていくことにおいてすごく重要だなと思います。受け身になってしまうとどうしても辛くなってしまう。大学時代、私は特にチャレンジ精神で平井先生に指導を志願して、それまでの練習環境を変えました。限界を決めないで挑戦してほしいです。あと女子選手は特に精神面が20歳超えてからの方がコントロールできるようになり、さらに結果が伴っていくと、より自分の気持ちをコントロールできるようになると思います。大橋選手を見ていてもそれを感じます。
――中村先生にとって水泳の魅力ってなんですか?
泳ぐのと、見るのではまた違うけれど、みんなで目標に向かって頑張っていく楽しさ、泳ぎながら自分と向き合える、泳いでて気持ちいいというところかな。あとは頭の中もリフレッシュされますね。
――背泳ぎをスタイルとしてやっていたのはいつからになりますか?
小学生から、大会に出ても背泳ぎだけ速かったの。だからこれは、骨格の問題かな(笑)あとは4種目泳げる選手はいいな~っていつも思っていました。泳げるけれど、平泳ぎがあまり得意ではなかったので、4種目泳げる個人メドレーの選手って、かっこいいなあと。多種目に挑戦している大橋選手とか、いろんな選手がいるけれど、本当にかっこいいと思います。
――では最後に、大橋選手に向けてエールをお願いします!
自分の可能性を信じて、どんどんチャレンジしてほしいなと思います。200m背泳ぎの日本記録も更新して欲しいです!できると信じてます、大橋選手なら!プレッシャーになっちゃうかな(笑)でも今の大橋選手ならプレッシャーも力に変えることができると思います。
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第81号では6面に水泳部が掲載されています。新体制のチームについてや、社会人で競技を続ける毛利衛選手(営4=金沢)と大橋悠依選手の記事も掲載されていますので、ぜひお手に取ってご覧ください。