記事
平成30年度東都1部秋季リーグ戦・亜大2回戦
10月23日(火)神宮球場
●東洋大1-2亜大
1年間クローザーとして奮闘した甲斐野
甲斐野は1球に泣いた
負ければ優勝が消える崖っぷち。マウンドには十回から守護神・甲斐野(営4=東洋大姫路)がチームの望みをつなぐべく上がる。
「優勝のマウンドに上がりたい」。以前そう語った夢をえかなえるべく、甲斐野は腕を振った。寒さからか普段よりも直球の球速は出ない。しかし、初めの2イニングは難なく抑えチームの反撃を待ち続けた。「甲斐野がここまで頑張ってくれてから」と語った高校から共に戦う中井主務(営4=東洋大姫路)。
ベンチ内外の選手の気持ちを背負った十二回のマウンドへ。「先頭を出したのが負けた要因」と阿部(亜大)に左安を許す。続く打者はこの日徹底されていた犠打で得点圏へ走者を進められる。「コントロールがダメだった。でも、良いスライダーだとは思ったんだ」と悔いる1球。代打の有田(亜大)に上手く打ち返されると打球は無情にも左線を転がる適時打に。喜ぶ亜大ベンチを横目に甲斐野は打球が抜けた先を呆然と見つめた。
味方の攻撃を見守るも最後まで好機であと一本が出ず。「なんとかあと1イニング投げさせてくれ」という願いかなわずに試合が終わった。
この日は「めったに来れないけど、優勝の時は大体来てくれる。勝利の女神じゃないですか」と過去に話していた甲斐野のお母さんが球場に足を運んでいた。試合後がっちりと甲斐野は握手を交わすとあふれる涙を堪えきれず、そのままバスへと消えていった。
大学野球生活に幕を引いたが、甲斐野の野球人生はまだまだ続く。アマ球界最速投手甲斐野央が描く、プロ野球選手としてのストーリー。その第一歩を2日後に迎える。
■コメント
・甲斐野(営4=東洋大姫路)
久しぶりの3イニングでもスタミナとかは全然問題ない。打たれた球も良いところに行ったと思ったスライダー。うまく打たれたなと。ここまでやってきた中でたくさんの人たちに支えられてきたのにこういう結果になって、本当に申し訳ない。あの回は先頭を出してしまって悪い流れができてしまった。抑えないとと思ったが、コントロールの悪さが出た。次のステップという点では明後日のドラフト会議があるけど、正直今日勝って臨む明後日の試合のあとに切り替えをと思ってたので気持ちの切り替えが難しい。亜大は負けたら入れ替え戦という状況だっただけあって、気迫があった。相手のやりたい野球をやらせてしまったなと。ああいう苦しい展開でも粘れる投手にならなければいけないと思う。最後の攻撃はどうにかあと1イニング投げさせてくれという気持ちで見ていた。
・中井主務(営4=東洋大姫路)
今年はドラフト候補が4人いて、今までの主務の先輩方たちと比べると報道の方とかと連絡をさせていただく機会が多かった。そういう点でいい経験ができたなと。今日は甲斐野が打たれて負けたけど悔いはない。自分たちの代はここまで苦しい時とか大事な時とかは甲斐野が投げて抑えてくれたからここまで来れたので。
入学する前は野球から手を引くつもりでいた。その時に高校の監督さんが勧めてくれて、マネージャーとして入学して。途中で何度も辞めようかと思ってた。でも、3年生になる頃になってからはしっかりやらなきゃなって思い始めた。結果的には続けてたからこそのこの経験だから良かった。来年のチームは投手陣がみんな抜ける。だから打者に頑張ってもらわないといけない。しっかりと打てるチームになって来年リベンジしてほしい。
TEXT/PHOTO=須之内海