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「戦国東都」と語られる通り、6校による接戦が続いた秋季リーグ戦。惜しくも優勝には届かなかったが、立正大2連勝を始め、リーグ戦を通して数々のドラマが生まれた。激戦を終えた選手達は何を考えるのか、彼らの思いをお届けする。
第5日目は、佐藤都志也(法3=聖光学院)捕手。昨年は一塁手としてベストナインや首位打者のタイトルを受賞してきた佐藤。今年からは本職の捕手に再コンバートし、正捕手として扇の要を死守してきた。大学代表にも選出され、ここでは外野手として存在感を見せるなど、様々なことに挑んだ1年を振り返るとともに、新チームの主将にも就任した今の気持ちを伺った。(取材日・11月4日、聞き手=川口朋珠)
――秋季リーグ戦を終えて、今はどんな練習をしていますか
どちらかと言うと、リーグ戦が終わってオフシーズンなので追い込んだ練習を多めに。量を多くしている感じの練習です。
――今年は正捕手として4年生ピッチャーを中心にリードしてきましたが、どんな1年でしたか
個人的には、勉強になった年。いいピッチャーの球を受ける中で、どういう意図をして投げているのか、どういうコミュニケーションをとったらいいのかなど、今年初めてキャッチャーとして出させてもらった年でもあるので、勉強や経験をさせてもらい充実した1年だったと思う。
――今年は侍ジャパンにも選出され、忙しいスケジュールだったと思いますが
全日本(全日本大学野球選手権大会)が終わって、すぐジャパンの選考合宿があって、侍ジャパンに選ばれて日米とハーレムと1ヶ月間海外でやらせてもらって、そのまま帰ってきてリーグ戦2、3週間前という短い時間の中で体的には調整があまりできていない状況でもあった。その中で自分のオンとオフの入れ方であったり自分の体を分かることができたというか。「ああ疲れてるな」とか、「疲れてきたらこうなってくる」とか、自己分析が前に比べたらできるようになったかなと。今回のリーグ戦で不調のときもそうだったんですけど。最初だったので。今までリーグ戦で、こういう結果だったことが無かった。今回初めて(打率)2割台で、ヒット数も11本と満足のいく成績ではなかったので、なぜそこでできなかったかというのが、このシーズンを通して分かったことが大きかったかなと思いました。
――秋季リーグ戦を振り返って、個人としてはいかがですか
前半戦から苦戦というか、ほとんど打てていなかったのでそれが反省。自分がもっと打てれば、もっといい結果につながったかなという感じ。守備においては、どうしても3人(梅津、甲斐野、上茶谷)のピッチャーは良いと言われているので相手もそれなりに分析や対策を練ってきているというのは分かってはいたが、立正戦でそこそこ抑えられてたので大丈夫だろうと思っていた。でもやはり日を追うごとに春と秋で違う部分もあり、秋のリーグ戦を見られて分析や対策をされた中で自分の甘さが出た。甲斐野さん(営4=東洋大姫路)は去年の秋から投げ始めたが、上茶谷さん(法4=京都学園)や梅津さん(営4=仙台育英)は3年のときに先発として投げていた試合は多くなかった。だから春はそんなにデータ分析も無かったのでそれなりに抑えられてたと思うんですけど、やっぱり秋はそれを踏まえてなので、とても難しいと思いました。それを通して妥協は許されないし甘さは絶対にあってはいけないと確認させていただいた秋のリーグ戦でした。
――チーム全体としては
春はリーグ優勝しましたが日本一は取れなかったので、秋は絶対とるぞと臨んだ秋季リーグだった。1戦目が立正大で、春に負けた相手に2連勝できて波に乗れるかと思ったんですけど、次の中大戦でどうしても勝ちきれず、チームが全体的に沈んでしまった感じがあって。ピッチャーが頑張ってくれてたのもあり、優勝戦線に残ることはできたんですけど、あの中大戦の一敗というのはとても大きく響いたと感じます。
――最終戦で亜大に敗れたあと、4年生からはどんな言葉をかけられましたか
自分がキャプテンをやることがその当時からほぼ確定していたので中川さん(法4=PL学園)には「今度はお前が引っ張って、俺らができなかった日本一を託したぞ」と。ピッチャーからは、自分のせいでもあるのに自分のことを責めずに「悪かったな」という風に声かけられて。いや、自分の中では自分のせいってずっと思っていたんですけどそれでも「4年生として自分が情けなかった」ってピッチャー3人にそういう風に声をかけられて「もうちょい俺がこうしとけばな」とか「ごめんな」とか逆に謝られてしまって。なんというか…、自分のせいなのに責任を背負って言ってくれた。「来年はお前が4年なんだから、下級生、同級生のピッチャーをお前が引っ張っていくんだぞ。お前も(正捕手)1年目で大変だったな」っていう風に言われて。「来年はお前が引っ張っていく番だからお前の責任は、大きいぞ」とも言われて身が引き締まる思いでした。
――来年は経験の多くはないピッチャーもリードしていくことになります
そうですね。神宮であまり投げていないので、どうしても一発目の試合でいいピッチングをするにはやっぱり緊張もあるだろうし、そこで自分がどう声をかけていくか。それが自分の仕事だと思っています。
――新チームの主将になりましたが経緯は
4年生の推薦と監督推薦ですかね。4年生は試合後に全員呼ばれて来年のキャプテン、投手キャプテン、内野手キャプテン、外野手キャプテンをそれぞれ選ぶことになっていて、その中で選んでもらった感じです。
――今までの主将経験は
中学校のとき以来です。高校では副将をしていたんですけど、本格的にこうやって引っ張っていくのは初めてですね。
――理想の主将像というのはありますか
自分が絶対妥協はできないし、自分がやってる姿を見て全員がやってくれたらと思う。究極は中川さんみたいな、俺がやるからお前もついてこいっていうキャプテンがやっぱり理想ではあるんですけど、最初はそうはいけないと思うので、しっかり自分の意図とかを下に伝えたいと思う。最終的な主将像としては、中川さんのような背中で語れる男になりたいとは思っています。
――今年のドラフト当日は中継を見ていたりしていましたか
テレビかネットでずっと見てました。ピッチャー3人はどこにいくかが楽しみという感じでした。中川さんに関しては、1年生のときの最初の部屋長が中川さんで、ずっとそうやって1年生のときからお世話してもらっていた先輩。なかなか呼ばれなくて、「お母さんありがとう」(TBS『ドラフト緊急生特番!お母さんありがとう』)の中継が始まり、うわあってじんわりしてるときに呼ばれて、本当にうれしかった。3人もうれしいんですけど、それ以上にうれしかった。去年のキャプテンでもあるし、そうやってずっと下でやらせてもらっていたので。退寮しちゃったんですけどそのときに「来年はお前が、来いよ」って。今年プロにいった4人にそう言われているので、今度は対戦するのか女房役としてやれるのか楽しみなんですけど、プロに入ることができて対戦したときには絶対打ちたいですし、女房役として入れたら、それはまた勝利投手に導けたらなと思ったりします。
――自分も来年は、という思いが強くなりましたか
はい。刺激を受けました。これから来年いろいろ大変だと思いますが、時間があれば見に行ってまた刺激をもらえたらなと思う。
――先程の話に出ましたが、プロに入ったとして、対戦するか女房役になるか強いて言うならどちらがいいですか
どうせなら勝負したいですね。どうせなら。縁もありますし、どうなるかは分からないですけど、基本的に自分としては勝負してみたいですね。受けてきた側なので、今度は全力で真っ向勝負で打者として勝負して、そこでなんか笑顔で終われたらいいかなと思います。ホームランでも打てたらいいかなと思います(笑)
――これから冬の間に取り組みたいことは
個人としてはピッチャーとのコミュニケーションをしっかりとる。あと自分の体づくりもあるんですけど、キャプテンとしてはやはりみんなをまとめる立場でもあります。最強なチームを作る、最高のチームを作るって自分の中で思っていて、みんなが一体となった最高のチームになれればなと思っている。そうできるように自分がまず妥協せずにそういうところからやっていって、自分のことは後でも。後というか、みんなが自分で時間をつくれば出来ることなので、まずはグラウンドにいる間やみんなでやっているときはそういうことを意識してやっていこうと思います。
――来年度の目標は
先輩から託されたこともあるので絶対日本一をとるっていう意識はある。今年のチームはどうしても打たなきゃいけないし守らなきゃいけない。戦力が去年に比べたら落ちてると思うので、堅実な守備や、打てないならちょっと弾いたボールに対していいスタートが切れればノーアウト二塁をつくることもできるし走塁でカバーできるとこであったり、ヒットを打たなくても点数をとれる方法ってたくさんあると思うので、そういうスモールベースボールって言われるような野球ができたらいいかなと思う。目標は日本一で、史上最高のチームにすることです。
◆今後の掲載予定
11/26 竹原 祐太 外野手
11/27 甲斐野 央 投手
11/28 上茶谷 大河 投手
11/29 梅津 晃大 投手
11/30 杉本 泰彦 監督