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第67回全日本大学サッカー選手権大会 2回戦
12月15日(土) 浦安市運動公園陸上競技場
東洋大2-3関西学大
主将の勝野は1年間チームの先頭に立ってきた
全日本大学サッカー選手権大会(以下、インカレ)2回戦、関西学大に延長戦の末2-3で敗れた。この試合をもって4年生は引退。主将の勝野(国4=浦和Y)が大学サッカーに別れを告げた。
「当たり前の日々が終わってしまったことが悲しい」。前半に先制点を許すも一度は勝ち越しに成功。しかし、逃げ切りに失敗すると、迎えた延長戦で失点し力尽きた。勝野が出場したのは延長後半の118分。短い出場時間ではあったが、どうにか1点を取ろうと最後まで走り切った。無情にも終了の笛が鳴り、手で顔を覆っていた勝野。唐突に訪れた引退の2文字を簡単には受け入れられない姿があった。ここで浦上(国4=大宮Y)から代わりに巻いていたキャプテンマークを手渡される。オレンジのキャプテンマークを付けた勝野は気持ちを切り替え、主将として最後の整列に向かった。
浦上からキャプテンマークを受け取る勝野㊧
死力を尽くし好機も多くあったなかでの敗戦に、ほとんどの選手が呆然と立ち尽くしていた。その中に、選手一人一人に声を掛けていく勝野の姿があった。これまで4年間共に戦ってきた同期へ、また来年を戦う後輩へ、丁寧に届けた感謝と激励の言葉。自身が主将を務めた年に創部初のインカレ出場を決めた。わずか2分の出場ではあったものの、「みんなに支えられた1年だった」と初のインカレの舞台に導いてくれたチームメートへの感謝は日が落ちるまで尽きなかった。
選手一人一人に駆け寄り声を掛けた
今季から変わったことの一つに、試合に出られない選手たちの応援スタイルが挙げられる。これは今季の春からけがの影響もあり、スタンドで応援することが多かった勝野がまず取り組んできたことだ。今年は選手一人一人の応援歌もつくられ、試合中は常に明るい応援スタンドがそこにはあった。インカレ出場を決めた関東大学サッカーリーグ戦最終節の国士大戦では、「応援の力も含めて全員の力で出場権を取れた」(張ヶ谷(国4=柏U-18))とピッチの選手にもその声援は力となって届いていた。
関西学大に敗れた後には、応援団はこの試合をもって引退となる4年生への感謝の気持ちを応援歌にのせて歌う粋な演出もあった。勝野がこだわってきた応援が、最後には「ありがとう」の言葉とともに自分の元へと返ってきた。
最後まで声援を送り続けた応援団
決して試合に出場することは多くはなかった。それでも周りの選手たちに話を聞くと、「(勝野)瑛が今のチームをまとめてくれた」(高橋(国4=FC東京U-18))、「一番尊敬している」(荒川(国3=旭川実業))など、勝野の存在の大きさ、感謝を口にした。誰からも信頼されている主将に対し、古川監督も「彼なしでは(インカレ出場は)難しかったと思う」とチームへの貢献度を高く評価した。
サッカーはこれで一区切りだという勝野。主将がチームに残したスピリットは決して消えることはないだろう。主将が築いた土台を基に、“タイトル獲得”のその夢は来季を戦う後輩たちへと受け継がれた。
■コメント
・勝野(国4=浦和Y)
正直に悲しいというのが一番。このチームで1年間やってきてその当たり前の日々が終わってしまったことが悲しい。(4年間を振り返って)最初1年生の時は試合に出れて、4年生になってけがとかで最後スタメンで出ることはなかったけれど、いろいろ自分の成長につながった4年間だった。(主将としては)やっぱり規律とか応援とかチームづくりの部分でしっかり土台をつくることができたかなと思う。(同期に向けて)本当に感謝しかない。自分は今まで主将をやったことがなくて、うまくいかないこともありましたけど、みんなに支えられた1年でした。(どんな学年だったか)すごく仲がいい。ガキって言ったらあれですけど、子供っぽい人が多くて和気あいあいとして素晴らしい学年でした。(後輩に向けて)このインカレの舞台に毎年出るのを当たり前にやっていけるように、チームづくりをしていってほしい。(古川監督へ向けて)ここまで自分たちを支えてくれて本当にありがとうございますと言いたい。主将としていろいろ話をしてきて、1年生から試合に使ってくれて本当に感謝しています。
TEXT/PHOTO=美浪健五