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天皇賜盃第88回日本学生陸上競技対校選手権大会
9月12日(木)~15日(日) 岐阜メモリアルセンター長良川競技場
▼4日目
男子4×400mリレー決勝
1位 東洋大(齊藤旬-中村-松原-吉津)3'05"85
笑顔で表彰台に上ったマイルメンバー
予選から修正し勢いをもたらした齊藤(奥)
4年生通しのバトンリレーとなった中村(奥)と松原
松原(奥)は主将としての責任を果たした
ラスト100mで他大を圧倒した吉津
天皇賜盃第88回日本学生陸上競技対校選手権大会(以下、全カレ)4日目が行われ、4連覇を目指す4×400mリレー(以下、マイル)メンバーが決勝を戦った。ラスト100mまで大混戦のレースを見事制したのは東洋大だった。
4連覇を託されたスタートリストには1走に齊藤旬(法3=北陸)、2走に中村(ラ4=九州学院)、3走には予選で温存していた松原(法4=九州学院)、アンカーに吉津(ラ3=豊橋南)が選ばれた。1走の齊藤旬は、予選で自己ベストを更新するような走りをしており調子を上げていた。決勝では、予選と同じく4レーンからのスタート。200mからスピードを上げ、ラスト100mではやや失速するもののトップに近い位置で2走の中村にバトンリレー。200m地点で2位につけ直線で一気にトップへ躍り出る。「決勝は周りを見ながら、後半上げていく上手なレースができた」と中村はレースを振り返った。1位でバトンを受け取った松原は余裕を持った走りを見せる。ラストの直線まで力を溜めつつ1位をキープしアンカーの吉津へ。他大学のアンカーは、松清(福岡大)、山下(筑波大)など実力者ぞろいでハイレベルなレースが展開される。必死に逃げる吉津を猛烈な勢いで追い上げる。最後のコーナーで5校が集団になるもレースに終止符を打ったのは吉津だった。メインストレートに入った瞬間、一気にスピードを切り替え後続を突き放す。最後は2位と1秒近い差をつけ見事優勝を決めた。吉津の圧巻の走りに会場は大きな盛り上がりを見せた。
「走った4人だけでなく、他の選手たちも力をつけてきた結果が勝てた要因」と梶原監督は選手を褒め称えた。また主将の松原は「かっこいい4年生を見せられた」と喜びを露わにした。ウォルシュ(H30年度ラ卒=富士通)が卒業し、戦力ダウンが心配された東洋大だったが選手たちはその下馬評を覆すことに成功した。マイルの東洋大時代はまだまだ終わらない。
◾️コメント
・梶原監督
松原はもともと決勝で使うつもりだった。400mから1日休ませればいけると思った。他のチームではそういうことは中々できないが、下から上がってきている選手が力をつけてきているので松原外しても予選は通ると思った。松原を休ませることが大きなアドバンテージになった。また、決勝で誰を走らせるかというところで同じようなレベルのような選手がいたのでその3人を使うということで予選はやれた。それが決勝に向かって大きなアドバンテージとなった。予選の結果を見て、1走は齊藤旬が自己ベストを更新するようなタイムできていて調子がよかった。齊藤旬は気負いしすぎて、力が入りすぎてしまい失敗するということがよくあったが、予選ではうまく力を出して走っていたのでそのまま1走で使った。2走の中村と3走の伊藤はほとんど同じようなラップだった。中村は先頭で行かなきゃという気持ちが強かったせいか前半少し飛ばしすぎてしまった。そこで無理をさせないでいければラップは上がってくるだろうということで中村を使った。3走は休ませた松原を使った。(試合前に)1走、2走には必ずしもトップではなくていいと伝えた。ただ何番でもいいから先頭との距離だけ広げられなければ3走と4走で逆転できるから無理をしないで最後の直線に入ってきたところでそこから頑張れと言った。齊藤旬は最後のところで肩が上がって力が入ってしまうところがあるのでそこはしっかり注意をしてポイントとして挙げた。中村は前半行きすぎないで落とす必要はないけれども途中から急激なスピードアップはしないで入れる順位のところに入っていければいいと伝えた。(実際のレースでは)齊藤旬が思ったよりもトップに近い、いい位置で持ってきてくれたので中村が無理をすることなく上位で渡すことができた。松原も先頭でバトンをもらったので前半そんなに無理をしないで最後の直線までしっかり溜めて、日大がだいぶ競り上げてはきたがトップのままアンカーにつなげられた。吉津はトップでもらえば滅多なことがない限りやられることはないと思ったので、あの時点で8割は勝てると思った。吉津もあまりにも前半溜めすぎることなくスピードに乗って最後までいって完全に2位を引き離して力を発揮した。4人とも「こういうレースをそれぞれがすればいいよね」といったレースをしっかりしてくれたということで本当によくやってくれたと思う。昨年の冬から、ジュリアン(ウォルシュ)がいなくなって、それで勝てなかったら「やっぱりジュリアンのおかげで勝ってたチームだよってみんなが思うよ。ジュリアンがいなくても勝てるところをみんなで見せよう」と伝えた。実際ジュリアンがいなくとも、ジュリアンのところにいい位置で持ってきたり、それぞれが力をつけてきたから3連覇できた。しかし「どうしてもジュリアンがいるから周りは勝てると思ってしまう。それは悔しいよね。だからジュリアンなしで勝って本当にお前らが強かったんだという証明になるからとにかくそこを目指して頑張ろう」と一冬やってきた。それが、予選で松原を休ませることができたとか、誰がよかったというよりも400mの選手みんなが強くなってきたおかげで、余裕を持つことができた。予選では吉津もアンカーである程度楽をすることができたし、そういうところで勝てたと思う。走った4人だけでなく、他の選手たちも力をつけてきた結果がここで1秒近い差をつけて勝てた要因だと思う。このままみんなで強くなりながら、1人でも多くJAPANのユニフォームを着られるようなチームを目指して頑張っていきたい。
・松原(法4=九州学院)
(優勝したお気持ちは)監督に関東インカレ優勝した後に全カレ勝ったら本物だぞ、と言われたのでしっかりそこは勝てて本物になれた。最高にうれしいです!(レースを振り返って)もう考えてなかった。優勝しか見えていなかったので自分のレースというよりはチームのためにどれだけ走れるかというのは、主将としてとかじゃなくて自分がどうやってチームに貢献するかの一心だった。吉津にちょっと強めに1位で持ってこいよと言われたので、怖かったので1位で持っていきました(笑)。(日本選手権リレーについては)まだ予定が上がってないのでわからないが、もし出られるのであれば頑張りたい。たぶん出ないんじゃないか。(4年間の全カレを振り返って)募る思いがあった。去年はスタンドから見て4年生かっこいいなと思っていたので、今回かっこいい4年生を見せれたかはわからないが、見せれたんじゃないか。しっかり4年生が引っ張って東洋をつくってくれたので、先輩たちの流れに僕も加担できて良かった。来年のほうがたぶん層は厚いし、来年もやってくれるとは思っているのでそこは後輩に託したいと思う。
・中村(ラ4=九州学院)
予選の失敗もあったが決勝は生かせてずっと日本一を目標にしてきたので達成することができて素直にうれしい。(予選の失敗とは)2走のコーナー曲がって直線に入るところでスピードを出しすぎて後半スピードが落ちてしまった。決勝は周りを見ながらスピードと調整していきながら後半上げていくという上手にレースができたのでよかった。(監督も評価していたが)最後に4年として起用していただいたのでとても感謝の気持ちと、要望にも応えられたのでとてもうれしく思う。(レース前松原選手との会話は)高校生のときにインターハイで九州学院として優勝して、じゃあ4年ぶりに2人でやってやろうか、みんなを驚かしてやろうぜ、と話していた。見事に優勝できてとても気持ちがよかった。バトンパスのときは頼むからいってくれ!と。あいつとのバトンも多分最後だったので色々な思いがつまって最後は託した。(松原選手への思いは)シンプルに腐れ縁。ここまで一緒か、と。でもあいつがいたからこそ切磋琢磨してここまでやってこれたし、あいつがいたからチームもここまでこれた。とても感謝している。(改めて4連覇の気持ちは)今回は家族や親戚、兄弟、遠くのほうから応援してくれて実際に競技場にも来てくれた。地元のみんなにも応援されて、スタッフやマネージャーはもちろんだがその要望に応えられたというか、自分も「優勝してくる」と言っていたのでとてもうれしい。(今後の予定は)卒業してからも陸上は続けようと思っている。まずはゆっくり休みたい。(4年間を振り返って)とても濃かった。けがが高校に比べて多くなって上手くいかないことが多かった。年々個人200mではベストを出してきたが中々ちょうどよいところで落ちてしまってけがが多くて。色々な面で勉強になった。今後のキャリアに向けて大きく成長できた大学生活の4年間だった。(後輩へ向けては)後輩にかんしては自分の代も強いがその下の代がもっと強いと思っている。大輔(宮本)やジャスティン(塚本)、松尾、吉津、もちろん今回走った齊藤もだがみんな力がある。まだまだ東洋はもっと学生陸上界を騒がせると思うので期待して離れてからエールを送りたい。(同学年には)みんなそれぞれの道へ歩んでいって応援もしているが1番応援したいのは津波。あいつも南九州というか高校のときから知っていて付き合いは長い。今回のドーハ、来年の五輪へ向けてもレベルが違うやつなのであいつには特に応援したい。
・齊藤旬(法3=北陸)
(レースを振り返って)4年生と走る最後の大会でこのような優勝という形で終われて本当によかったと思う。(予選からの修正は)予選では前半攻めきれない部分と後半の伸びが足りなかったのでそこを修正しようと思った。決勝の雰囲気というものがあって予選からは修正できたと思う。(監督からどのような言葉をいただいたか)監督の思ってたプラン通りに全員が走れたということで自分も前半からいけて、いい流れで2走に渡せたとでよかった。(4年生にむけて)3年間色々苦労かけたし、世話してもらって感謝しかない。最高の形で恩返しできたと思う。(次の試合にむけて)個人で記録を残していきたい。
・吉津(ラ3=豊橋南)
(1位でバトンを受け取ったがレースプランは)逃げるだけ。他の大学のアンカーが実力者ばっかりだったので、とにかく逃げるしかないと思っていた。(ラスト100mは)前半はある程度余裕を持って、他の大学に前に入られないくらいのテンポで走って、後半のラスト直線で一気に切り替えて、突き放していこうと考えていた。メインストレートに入ってきた時に、切り替えれたんですけど、歓声がすごくて足音が全然聞こえなくて、実際は離れてたから足音が聞こえなかったんですけど、近くても聞こえなかったと思うので、後ろを見る余裕もなくてとにかく逃げないとと思って、ラストは切り替えることができた。(全カレでのマイル4連覇について)安心した。ジュリさん(ウォルシュ)と一緒に抜けてった、朴也さん(櫻井)と、仁さん(池田)がいなくなったってことが、精神的に大きくて、その3人がいなくなったかつ、自分がエースとして最後決めないといけないっていう精神的な不安さがすごくあって、1番で帰って来れた時は、嬉しかったっていうのもあるんですけど、安心したっていう気持ちの方が大きかった。(松原さんと走る全カレがこれで最後だったが)確かに最後なんですけど、特にそんなこと考えずに。ただ、4連覇あの人の代で終わらせたくなかったので、せめて終わらせるなら自分の代だと思ってたので、とにかくあの人に花を添えれられてよかった。(4年生へ向けて)特に今日一緒に走った2人は、高校からずっと一緒で7年目の腐れ縁の仲で、一緒に走ってくれてありがたかったし、前の3人がしっかり走ってくれないと、自分がアンカーで他の大学強いので、負けるかもしれなかったので、ありがとうっていうのと、お疲れ様でしたっていう感じです。これから厳しい練習がなくなる人が多いので、楽しいだろって思うんで(笑)、楽しんでくださいって伝えたい。(来シーズンへ向けて)ラストーイヤーなのと、東京オリンピックがあるのと、全カレはマイル5連覇がかかっていて、まずは個人として日本代表を狙えるようなレベルにならないといけないと思ってますし、マイルは王者として関東インカレも全カレも迎えるのでそこはみんなでしっかりと準備をして挑んでいきたい。
TEXT=小島敦希 PHOTO=長枝萌華、両角あずさ、稲村真織