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2019.10.02
硬式野球

[硬式野球]スポトウが見る硬式野球部裏方図鑑①「良くも悪くもできる」吉澤光祐学生コーチ

 総勢120名と本校体育会部活動きっての大所帯である東洋大学硬式野球部。グラウンドで華やかにプレーする選手たちの陰には、部内外で選手をサポートしようと様々な仕事に取り組む者たちの姿があった。なぜ、その役割を担うようになったのか。それぞれの想いに迫る。



監督、コーチの次の番号である背番号52を今季背負うのは吉澤光祐学生コーチ(法4=桐生第一)。今年度はメンバーから外れている4年生全員が学生コーチに転身したため、4学年で11人の大所帯になった。公式戦では一塁コーチャーとして選手に指示を飛ばし、オープン戦の後には居残り練習を付きっ切りで見ている姿が印象的な学生コーチに話を伺った。(取材日9月29日、聞き手=須之内海)


--私たち自身のあまり学生コーチのお仕事を知らないので、そこから伺ってもいいですか

ですよね(笑)色々あります。生活面の指導とかもしますし。下級生とか同級生にも口を出していきますし。練習メニューやランニングメニューなんかを考えたり……。選手のケアもしますし。練習中はノックを打ったりして、普通に考えるコーチとしての役割もあります。自分が井上コーチの下についてて、さらにその下にたくさん学生コーチがいるのでそこに伝えてという感じですね。


--なるほど。いまでは学生コーチの注力されてますが、入学時は選手ですか?

いや、違いました。もともとは学生コーチをやりたいと前監督にお願いしたいと伝えてた。でも、当時は1、2年の時は下級生の学生コーチがいなかった。そのあとは選手としてという話もあったんですけど、マネージャーの人手も足りなかったので、マネージャーで入学しました。もともとプレイヤーとしてやろうと思ってなかった。選手入学でも学生コーチになろうと。だからいいかなって感じでした。


--選手として生きるのではなく、学生コーチを志したきっかけは

ちょっと長くなるんですけどね。高校の時にキャプテンをやってたんですけど、試合に出なかったんです。チームキャプテンという形で最後の一年間過ごしていて。試合の中ではゲームキャプテンが別にいました。下手だったんですよ野球。でも、そんな自分のところに聞きにきてくれる選手がたくさんいてやりがいを感じていて。自分でやるよりも人に教える方が楽しいかなって自分の中で思い始めてて。自分ができなくても指導者として通用するのかなって思ったのがきっかけです。


--その頃があるから今があるんですね。ちなみに、それより前のもっと早い段階では指導者などへの憧れはありましたか

指導者というか教員は向いてるかなっていう風に中学生くらいから。本当は大学で教職だけ取ろうと思ってたんですけど、別に野球を辞める理由もないなって思って、それで野球の指導者としてもって考え始めました。


--120人を束ねる学生コーチ、ましてやそのチーフは大変ですか

大変ですね(笑)でも、仕事だと思ってる。職業です。そう思ったらやらざるを得ないじゃないし、弱音は吐けない。自分がこの仕事をやってチームが勝つならそれでいい。職業って考えるのは自分が妥協しないために、責任感を持つためにというところはある。


--公式戦やオープン戦では一塁ランナーコーチも務めていますね

そうですね。一応、学生コーチのトップがやる流れになってます。やるからには仕事なので。学生コーチが学生コーチとして仕事をする。そこは選手に押し付けてはいけないところなので。でも、年によってまちまち。その人の特性によるんじゃないですかね。


--攻守交代時にはコーチャーズボックスから元気に選手を盛り立てる姿が個人的には印象的なのですが

俺が元気なんじゃなくてあいつらが元気ないんですよ(笑)俺がやってるのは普通のこと。あいつらからそういう声がもっと出て欲しいですよね。


--今の選手たちの声、元気はまだまだ足りませんか

そうですね。コーチの理想って何もしないことなんですよ。選手が自分で自発的に動いてくれればそれがベスト。言わないでやってくれれば言わなくていいので。言わなくてもいいことを言ってるんです(笑)例えば、攻守交替を早くしよう!っていうのにも理由があります。早くポジションに行けば確認する時間が多く取れる。守備が終わって帰って来れば休む時間もできるし、作戦の確認もできる。そこを走ることに意味があるんじゃなくて、作った時間でなにをするのかが大事。そういう意識をもっと持ってほしいですね。


--たしかに、そういう考えをしている選手にあまり会ったことがない気がします…。他の選手が持たない感覚なのかなと思いますが、そういった独自の目線はどう養ったんですか

意識して周りと違う視点を持とうと思ったのは中学生くらいかな?なんだかんだ小中高ってキャプテンをやってきて、父親からずっとキャプテンとはみたいな教育を受けていたので。中学時代も周りと同じことをやってたら目立たないと思って。そういう視点を養えましたね。一歩引いて広く選手たちを見渡すみたいな。


--主将やチームキャプテンを歴任してきた吉澤さんにとっての主将像とはどんなものですか

自分の中の理想は説得力のある主将。自分の中のポリシーとして、説得力をいかに持ってやるかってことがあって。何かを他人に言ったって自分がやってなかったら響かないし、伝え方とかもある。その人の性格によって言葉の使い方や言い方もある。そういうところを意識して見極めてやれるのが説得力につながると思う。そういうところがないとやらないと思う。人によって変えてくのは学生コーチにも役に立ってる。キャプテンも使えるんですよね。学生コーチって。中間管理職だけどいろんな人の協力を仰いだり、どう動いてもらえるかで変わるんで。どうやって上手くハマってくかなって考えるんです。そういうのを考えつつ運営を組んでる感じですね。



--チーフの番号である52番を背負うことになった日のことを教えてください

直接監督とかに言われるわけじゃないと思うんだよね。今までは。今年は人がたくさんいるから担当分けがあって、監督からは言われたけど先輩とかは言われてないんじゃないかな。自分の場合は人数が増えて、役割分担ができたからお前がチーフなって言われました。


--前任の川口さんはどんな学生コーチで何か言われて覚えてる言葉はありますか

嫌われることを恐れないタイプ。なんでもズバズバ言うし、選手との距離感はうまくて言えるし仲も良いし。そこらへんは参考にしたい先輩です。オンとオフの差もあるし。川口さんからは「選手に対して妥協するな」と去年の全日本選手権の前に言ってもらって。その試合が初めてランナーコーチとして入って緊張したね。最初で最後の東京ドームだった。何もできなかったね。


--自分自身はどのようなタイプですか

みんなにめっちゃ嫌われてる。嫌われようとしてるし、嫌われてなんぼですし。人の上に立つと嫌われるし、嫌われないのは仕事として成り立ってない。嫌われることを恐れないし、監督から12月くらいに「選手の気持ちに寄り添うなよ」って言われてそれが自分の中で響いた。寄り添うと嫌われたくなくなる。この言葉をもらってから選手に対して厳しく見るようになった。


--ラストシーズンも残りわずかになり後任のことも考えると思いますが、学生コーチの育成をすることの難しさや気をつけることはありますか

選手に言うよりもより厳しく言ってる。怒鳴りますね。でも、そのあとちゃんとフォローしてますよ(笑)選手の前で怒って、選手ができてないことについて言えば意識する。そうすると場も締まりますし。そのあとで何でそうしたのかとかを話してる。自分は見て学ぶしかなかったけど、下の代には見せながら学んでもらってる。学生コーチは学年が上がれば上がるほど苦しい。今苦しめって言ってる。今苦しんでくれれば、自分がやってること以上のことをやれる。


--冒頭で教員のあこがれの話がありました。大学で教職の講義を取りながらだと、野球部との両立は厳しい時もあるかと思いますが4年間を振り返っていかがですか

大変。150位取っててもまだ足りないからね。最初のガイダンスの時点で教職が大変なのは知ってたけど、教職をやめるわけにはいかなかった。野球を教えたかったから、その手段として教員を選んだ。夢を叶えるためですね。母校でやりたいし、いずれ監督をやりたい。


--そもそも、名門校である桐生第一への入学のきっかけは

縁ですね。中学校のチームに3年生の時に来たコーチが桐生第一からうちに進んだ方で、「どうだ?」って。それまでは父親に教わってて、父親に教わったらできちゃうんですよね。それが嫌で、もし自分1人で自立して、親元を離れてやったらどれだけできるかなって。何個か声をかけてもらってる中で唯一の寮制が桐生第一だった。この選択は全く後悔はない。行ってなかったらここにいないし、他の大学でもやってないと思う。楽しくやって終わってたのかな。高校の時は楽しくない(笑)9割以上しんどい。でも、そのおかげで続けたいのかな。1割の楽しいの価値が高いじゃないですか。最後の一瞬を楽しく、良い思いをするために苦しむ。だから、今は苦しまないとなって思ってます。


--チーフ学生コーチという立場から見た今のチームは

あんまよくない。試合とかじゃなくて、チームとしてね。変わっていかないといけない部分は大きい。昔に比べたら変わったけどもっと変わらないと。上の代と下の代とって学年での狭間がある。そうじゃなくて同じTOYOのユニフォームを着てる人間としてチームとしてなってほしい。上級生と下級生との関係性はどうしたらよくなるかなって考えてます。これからもっともっと良くなると思う。威張ることが上級生じゃない。見本になって引っ張るのが上級生。まだまだ甘いなって思いますね。次の4年は良い感じになるんじゃないですかね。でも、チームってすぐに変わらないから。徐々に変えるしかない。その中で我慢する学年がいるから変わる。それが組織。


--最後に吉澤さんにとって学生コーチとは

難しいなぁ。学生コーチは中間管理職だからチームを良くするも悪くするも自分たち次第。それだけの責任は持ってる。学生コーチとしてはそこがいちばんのやりがいだと思う。自分たちがどうするかで、どっちの道にも進められるのがやりがいだと思います。


◇プロフィール◇

生年月日/1997・6・22

出身地/東京都

好きな食べ物/ハヤシライス(カレーライスよりも好き)

嫌いな食べ物/なし

長期オフに行きたいところ(理由)/温泉(飛行機移動はしたくないから)

趣味/探し中だけど最近はMARVEL作品を見ること

無人島に一つ持っていくなら/ボート…面白くないので旗で。振って気づいてもらえるかな

期待したい後輩(理由)/小川翔平内野手(もっとやれるポテンシャルがあるから)


※以降、こちらの裏方図鑑は不定期で更新させていただきます※