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2年目にしてチームの主力へと成長した九嶋恵舜(済2=小林)。学年でただ1人昨シーズンの3大駅伝全てに出走し、東京箱根間往復大学駅伝競走(以下、箱根)では2年連続で6区を務めた。九嶋は、宮崎県高原(たかはる)町出身。「憧れの先輩は今西駿介さんです」。箱根後のインタビューでもそう力強く、同郷で4つ年上の先輩・今西駿介(R1済卒=トヨタ自動車九州)への思いを口にした。そんな九嶋は今西にとってどんな存在なのか。今回はOBとして東洋大を見守る今西に、故郷から箱根路まで同じルートを駆ける後輩への特別な思いと、東洋大へのエールを伺った。
2年連続で6区を走った九嶋
写真:東洋大学/月刊陸上競技
今西は現在トヨタ自動車九州で活躍
写真提供:今西駿介
・今西駿介(取材日・1月29日、聞き手・水越里奈)
――今年の箱根はご覧になりましたか
はい。今年は同期とテレビ観戦していました。小室(R1済卒=愛知製鋼)・定方(R1工卒=マツダ)は2日間、往路は相澤(R1済卒=旭化成)も一緒にです。自分が現役の時下級生だった選手が活躍しているのを見ると成長を感じました。蝦夷森が前半シーズンを苦しんでいる中で、最後の箱根で有終の美を飾れたことに、自分たちの代も非常に喜んでいました。(同期とは)連絡は頻繁にとっていて、お正月休みは全員予定が会うのでご飯に行ったりしています。
――後輩の活躍について
蝦夷森が前半に全日本大学駅伝対校選手権大会(以下、全日本)まで出走できなかったですが、箱根では良い走りをしてくれたので僕は凄く嬉しかったです。(現役選手では)前田、及川(総3=一関学院)、恵舜などとたまに連絡をしています。
――箱根の6区への印象
特殊区間というのもあり、コースの中で流れが変わるというのは魅力でもあると思います。10区間のうちの1区間ですけど、非常にやり甲斐のあるコースかなと感じていました。
(走っているとき)筋疲労で足の感覚が麻痺することはすごくありました。最後の3kmの直線は足の感覚がない中走るので、精神的なタフさはすごく必要になると思います。
第96回大会で6区東洋大記録を樹立した今西
――今西選手から引き継ぐように6区を走る九嶋選手について
正直1回走ってくれたら嬉しいなと思っていました。入学早々順調に力をつけて(5kmを)13分台で走っていますし、(10kmを)29分1桁で走っているので、自分自身も刺激を貰っています。
今まではアドバイスする立場だったんですけど、吸収できるところも多いです。素直なところが恵舜の良いところだと思うので、監督の指示や練習メニューに素直に取り組んでいるから、結果としても出ていると思います。体つきも高校時代から1回りも2回りも大きくなっているのを見ると、フィジカルトレーニングを真剣に取り組んでいるんだなというのがわかります。これから3、4年目と成長してくれるのではないかと感じています。
――前日、当日のアドバイスは
ちょうど相澤といたので2人で電話をしました。アドバイスしたところで結果が左右されることはないと、自身の経験からしても考えていたので、「周りと比較するより自分の走りに集中するだけ」とだけお話しました。
――ご交流は
町対抗のレースでありました。高原町という8000人くらいしかいない本当に小さい町でした。中学・高校・大学と被ってませんし、直接的な関わりはあまりないんです。でも実家も近くて、お正月帰省時には一緒にジョグすることもありました。
――九嶋選手が憧れを語っていることについて
僕のことを尊敬してくれているというところは光栄であり、プレッシャーでもあります。すごく向上心があるので、東洋大学の中だけではなくて、大学陸上界の中でももっと上のレベルで戦って欲しいですし、社会人で一緒に戦えるなら同じレースで一緒に戦う日がくるのを楽しみにしています。恵舜は自分の流れを辿ってきているので、恵舜に対する思入れは強いです。でも、(憧れていることについて九嶋選手は)あんまり直接言ってこないですけどね(笑)。雑誌などに名前をだしてくれたりしているのを見ます。
――箱根の九嶋選手をみて
トラックのタイムからして、もっとタイムとしては伸びるのではないかと思いました。恵舜自身も満足していないのではないかなと思います。でも僕の2年時のタイムとあまり変わらないので、まだまだ伸び代があるのではないかと思います。
――九嶋選手は「今西選手の東洋大記録を超えたい」と意気込んでいらっしゃいます
越して欲しい気持ちと、そう簡単に越されたくはない気持ちがあります。僕自身としても箱根の6区は100点の走りでした。
――飛躍したシーズンについて
すごくタフさがあるのかなと思います。
出雲全日本大学選抜駅伝競争(以下、出雲)も風が強く条件が悪い中で、順位を上げて、テレビ越しにも気迫が伝わる本当に感動する走りをしてくれました。出雲はすごく成長を感じたレースだったなと思います。
――上級生となる九嶋選手はどのような選手になるとご覧になりますか
後輩の面倒見も良いと思います。東洋大学は縦のつながりを大事にするチームです。コミュニケーションを取りながら恵舜が先頭に立ってチーム力を高めていってくれたら、箱根3位以内も見えてくるのではないかな思います。
――九嶋選手へメッセージをお願いします
東洋大学のフィジカルトレーニングは日本で1番ハードなトレーニングだと思います。上級生になっても、根気強くやり続けて欲しいです。
そして、僕の記録を越えてみろ、というところですね(笑)。
九嶋は6区東洋大記録更新を狙う
写真:東洋大学/月刊陸上競技
――4年生の印象は
蝦夷森とは趣味が野球という点で交流があり、宮下とも(東洋大学時代の)合宿でお話ししたりしていました。
――現3年生は来年残る選手で唯一の被った代となります。その世代については
その代も学年として非常にまとまりがあると思うので、期待をしています。
前田はすごい考え方が大人で、周りを見られる選手です。主将として力を発揮してくれるのではないかなと思います。児玉は走力の面でも期待をしています。
――チームのムードメーカーとしても期待される選手はいらっしゃいますか
古川(総3=千原台)や及川ですね。
及川にたまに記録会の結果見て「良かったね」などと連絡を送ります。タイプが性格的にも自分と似ているので、気にかけています。(第96回箱根以降)駅伝の出走がないのでラストシーズンはどうにか頑張って欲しいですね。
第96回箱根は10区・及川(左)、6区・今西(右)が共に出走
――最後に、チームへ応援メッセージをお願い致します
僕の世代で10位になって3位以内という連続歴代記録が途切れてしまったので、もう一度強い東洋を作り上げて欲しいです。総合優勝は狙える位置にいます。今年の箱根を見ても可能性を感じるレースだったので、とても期待をしています。
PHOTO=水越里奈
※弊部撮影写真はコロナ禍以前のものを掲載しております。