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2022.05.12
硬式野球

[硬式野球] ルーキー宮下サイクルヒット達成! 「まさか出るとは」

東都大学野球春季2部リーグ戦・専大2回戦

5月11日(水) UDトラックス上尾スタジアム

〇東洋大14 -3専大


サイクルヒットを放った宮下


最後に中前打を放った


本塁打を放った宮下は満面の笑みを浮かべた


投手陣の存在が目立つ東洋大にうれしい悲鳴だ。前の試合で専大に敗北していたものの、この日は19安打と打線が大爆発。その中の4本は1年生の宮下朝陽(総1=北海)のものだ。国士大戦から突如スタメンに名乗り出たルーキーは、この日サイクルヒットを達成することとなった。


 宮下の公式戦初ヒットは、三塁に走者を置く状況。チャンスの場面で放った打球はレフトを襲う適時二塁打となった。二打席目は空振り三振を喫(きっ)したものの、第三打席では右中間へ打球を運び、外野手の頭上を越えたことを確認した宮下は三塁にスライディング。これも適時打となり相手を追い詰めていく。


 他の野手陣の活躍もあり、5回終了時点で13得点していた東洋大ナイン。しかし宮下は六回の第四打席目でも、攻撃の手を緩めることはなく積極的にバットを振っていく。2球目でポールギリギリの大ファールとすると、次は左中間へ綺麗なアーチを描き、その打球を誰も追いかけようとはしなかった。そして見事外野の芝生に着弾し、公式戦初本塁打に。大きくガッツポーズを掲げ、笑顔でダイヤモンドを駆け巡り、先輩たちのいるベンチのもとへ。衝撃を与える一発がルーキーから飛び出た。


 その次の打席では「代打を出そうと思っていた」と杉本監督。しかしサイクルヒットの可能性を残した宮下のために予定を変更。宮下は再び守備位置のセカンドに駆けていき、その後も隙のない守備を披露する。


 八回、走者1死一塁で前のバッターが併殺となり、サイクルヒットがかかる宮下の第五打席は運よく九回の先頭で回ってきた。「ホームランを打ってから意識していた」と唯一打っていない単打を狙いにバッターボックスに立つ。そして相手が投じた3球目。大きく振り抜かれたバットに当たった打球は見事センター前に落下。一塁上に立った宮下は大きく手を掲げ、東洋大ナインのいるベンチに向かって顔をほころばせた。


 「まさか出るとは」と自身でも驚きを隠せなかった。そして東都大学野球史上7人目のサイクルヒットを1年生の春で達成することとなった。


 松本憲(営2=成田)が守っていたセカンドの座を奪い、第2週目の国士大戦からスタメンとして登場。その時の出塁は四球と失策によるもので、活躍は見せなかったものの、ナインが苦手とする送りバントを一発で決めるといった器用さが窺えた。「2試合出た中で、ポイントが分かった」と語ったように、5日のオープン戦では代打での出場にも関わらず、茨城日産から本塁打を放ち、上級生主体のチームで存在感を示していた。この日の朝もバッティング状態が良かったため、井上コーチの提案で打順を9番から6番に変更。この井上コーチの思索は的中し、この日3打点と大活躍を遂げた。


 入学したての頃は木製バットに苦労する選手が多い中、そのようなことをものともせず、練習でも柵越えを連発しており、監督も「化け物ですよ」と大絶賛。宮下が野手陣を引っ張る日が来るのもそう遠くはないだろう。打線が陰り気味な試合では、宮下の一振りで東洋大に“陽”を照らしてほしい。



■コメント

・杉本監督

(打線良くなるきっかけは)いい1年生がいますからね(笑)。みんな打球が強くなってきていて、打球が飛び出してきている。僕なんか暇なので、外に出たボールを拾いに行くんですけど、その数がとてつもなく多くなってきているのが事実です。これはもう今までとは違う数ですね。就任以来ですね。ちょこちょこっと拾ったらOKだったんですけど。それどころの騒ぎじゃないです。右も左もね。でもそれが試合にね通じるかは分からないですけど、一つ間違えば強い打球を打てるのでそれが大きな成長かなと思います。「ピッチャー陣」と言われているんですけど、野手の方には奮起をするように。それだけの野手の方のポテンシャルも才能もある人がたくさんいるので。東洋大学は「投手王国」みたいに言われているんですけど、そうじゃないところを知ってもらえればなと思います。(宮下選手のサイクルヒットについて)(八回裏に)ゲッツ―食らってよかったですね(笑)。もう代打出そうと思って、もうこんだけ打ってたんで。挙動不審だったので。ホームラン打って、ひょっとしたら「あっ」ってなって。次サイクルかってなって「じゃあすぐ守って来い」と言って(笑)。次、先頭バッターだったので。危なかったです(笑)。(宮下選手について)本当にバランスいいですよ。僕はバッティングはもちろんのこと、守備の安定というか雰囲気というのはすごいと思います。二遊間で慣れないと思うんですけど。ショートには石上泰というのがいるので。あいつがけがしたらショートだと思いますけど(笑)。


・宮下(総1=北海)

(最終打席は)ヒットを狙って打ちました。


・杉本監督

「抜けても止まれ」と言っていましたからね(笑)。


・宮下

(最後打球が落ちたときは)まさか出るとは思わなかったので。サイクルヒットは人生で初めてなので嬉しかったです。(いつから意識していたか)ホームラン打ってからですね。(今日の手応えは)今まで2試合出た中で、ポイントが近い部分があったので、今日は前で捉えるようにしました。(東洋大に来て数ヶ月で成長した点は)高校と大学ではピッチャーの球のキレが違うので、その対応をするために工夫して練習してきたので、結果が出て良かったです。(練習とは)変化もキレがあるので、前に突っ込んでしまったりするとボールを振ってしまうので、後ろに重心を置いて、前で捉えるというふうにしています。今日の朝のバッティングも状態が良かったです。


・杉本監督

井上コーチから、松本憲の代わりに入れようかと。9番のところを橋本吏の6番と変えましょうと。バッティング練習を見てね。だからそれくらい良かったんだと思いますけど。


・宮下

(今まで金属バットでは飛んでいたか)飛んでいないです。


・杉本監督

そういう人がいるんですよ。金属バットよりも木のバットの方が合っているんじゃないかなと。金属バットは低重心で根元の方にあるので、ヘッドが軽いので出てきてしまうんですけど、木のバットを使うことによってヘッドが上手いこと遅れて効いている気がします。そうじゃないとあれだけ飛ばないですから。(芯が狭くなる苦労はしていないか)全然関係ないです。


・宮下

(高校での本塁打数は)20本くらいです。


・杉本監督

でももう春来て、3本打ってますからね。それも打った瞬間のホームランですから。


・宮下

(金属と木製どちらが合うか)木製の方が合いますね。金属が合わないというのは高校の時分かっていたので、木製になった瞬間合うようになりました。


・杉本監督

(1年生はこの時期苦労しますもんね)だから結局ね、打ち方が金属打ちじゃなかったんですね。(これからもというところですね)化け物ですよ(笑)。


・宮下

化け物になります(笑)。


・杉本監督

守備の方が素晴らしいですね。こんなに褒めすぎたら明日エラーすると思いますけど(笑)。宮本慎也さんが来てくださったとき、走るときのグローブの使い方は言われたけどな。


・宮下

(いいスタートを切りましたが)高校の時、1年生から出てたんですけど、その時少し勘違いをしてしまったので、高校の時の経験をしっかり大学4年間で活かせるように、しっかり継続して練習していきたいです。(達成したいタイトルはあるか)そこまでは考えていないので、一日一日大切にやっていきたいです。


・杉本監督

(1部でやったら面白いですね)1部でやらせてあげたい選手ですね。監督が悪いので申し訳ないですけど。今年卒業した4年生たちも「2部でやるような人たちじゃない」と言って卒業していったんで。そこはもう選手間も分かっていると思うので。こればっかりは勝負事なのでしょうがない。今日負けたら終わっているのでね。2勝1敗で勝っても1勝2敗で負けても最後まで分からないと思うので、最後まで丁寧に野球をやっていきたいと思います。


TEXT/PHOTO=宮谷美涼